活発に走り回る犬たちにとって、骨折は決して珍しいケガではありません。
高いところからの落下や交通事故、ドアに挟まれるなど、思わぬタイミングで骨折が起こることがあります。
この記事では、犬が骨折したときに見られる主な症状や原因、応急処置の方法、治療費や治療期間の目安、回復後のケアまで、飼い主として知っておきたい情報を網羅的に解説します。
いざというときのために、正しい知識を身につけておきましょう。
この記事の結論
- 犬の骨折は落下や事故などが主な原因で予防が大切
- 骨折時は安静を保ち、すぐに動物病院を受診する
- 治療は保存療法や手術があり、費用や期間は状況次第
- 回復後のリハビリや生活環境の見直しで再発を防ぐ
目次
犬の骨折とは?よくある原因と骨折の種類

犬の骨折とは、骨にヒビが入ったり完全に折れたりする状態を指します。
人間と同様、外的な衝撃や転倒、交通事故などが原因で起こることが多く、犬種や年齢、体格によって骨折のリスクも異なります。
骨折は早期発見と早期治療が重要で、放置すると骨の変形や歩行障害が残るおそれがあります。
犬の骨折は、前脚・後脚・骨盤・顎などさまざまな部位に発生し、折れ方によっても種類が分かれます。以下で詳しく見ていきましょう。
犬が骨折する主な原因とは
犬の骨折には、飼い主の予想外のタイミングで発生するものも少なくありません。以下のような原因が多く見られます。
- 高所からの落下(ソファや階段から飛び降りるなど)
- 車や自転車との接触事故
- 重いドアに足を挟まれる
- 他の犬とのケンカやじゃれあい
- 散歩中の転倒や滑りやすい床での転倒
特に室内飼育されている小型犬は、飼い主の不注意や環境によって事故が起こりやすくなります。事故を未然に防ぐためには、生活空間の安全対策が欠かせません。
犬に多い骨折部位と骨折の種類
犬の骨折は体のどこにでも起こり得ますが、特に多いのは以下の部位です。
よくある骨折部位 | 説明 |
---|---|
前脚(橈骨・尺骨) | 高所からの落下時に多発。小型犬に特に多い。 |
後脚(大腿骨・脛骨) | 走行中の衝突や転倒時に起こりやすい。 |
骨盤 | 自動車との接触事故など強い衝撃による。 |
顎 | 落下や硬いものを噛んだときに起こることも。 |
また、骨折の種類は以下のように分類されます。
種類 | 状態 |
---|---|
単純骨折 | 1か所だけ折れており、皮膚の中に収まっている状態 |
複雑骨折 | 骨が粉砕していたり、複数箇所で折れていたりする状態 |
開放骨折 | 骨が皮膚を突き破り、外に露出している重度の骨折 |
それぞれで治療法や治療期間が異なるため、正確な診断が重要です。
小型犬やシニア犬が特に注意すべき理由
小型犬やシニア犬は骨折のリスクが特に高いため、注意が必要です。
小型犬の場合
- 骨が細く、軽量であるため衝撃に弱い
- 高いところから飛び降りただけで骨折することがある
- 室内飼いでフローリングの滑りやすさが骨折の原因になることも
シニア犬の場合
- 加齢により骨がもろくなっている(骨粗しょう症に近い状態)
- 反応や視力の低下で転倒しやすくなる
- 回復力が低く、治療にも時間がかかる
特に小型犬は、ソファやベッドなどの段差も危険です。スロープを設置したり、床材を滑りにくいマットに替えるなど、生活環境の見直しが大切になります。
犬が骨折したときに見られる症状

犬が骨折すると、普段と明らかに異なる行動や身体的な変化が見られます。歩き方がぎこちなくなったり、患部を触ると強く嫌がったりするなど、さまざまなサインが現れます。
ただし、犬は痛みを隠す傾向があるため、飼い主が少しの変化に気づいてあげることが重要です。以下では、特に注意すべき症状や確認ポイントを具体的に解説します。
歩き方や仕草の変化
骨折した犬は、明らかに歩き方が不自然になります。以下のような変化が見られたら、骨折の可能性を疑いましょう。
- 足を地面につけずに浮かせる(非負重歩行)
- びっこを引いて歩く(跛行)
- 歩行を嫌がる、立ち上がらない
- 急に元気がなくなり、じっとして動かなくなる
- 触られるのを極端に嫌がる
特に後肢の骨折は一見して気づきにくいこともあるため、「いつもと違う動き」があればすぐに観察を強化することが大切です。
患部の腫れ・痛み・出血
骨折した部位には、痛みや腫れといった典型的な症状が現れます。中には外傷を伴って出血するケースもあります。
- 骨折部位の腫れや熱感
- 強い痛みで鳴く、触ると噛もうとする
- 出血や傷が見られる(開放骨折の場合)
- 骨の異常な形や変形、曲がり
これらの症状は骨折以外のケガでも起こりえますが、重症化する前に動物病院での診察が必要です。出血がある場合は応急止血も重要な対応となります。
飼い主がすぐにできるチェック方法
犬が骨折しているかどうか、飼い主が自宅で確認できるポイントがあります。ただし、無理に触ったり動かしたりせず、慎重に観察することが前提です。
- 足を引きずっていないか観察する
- 四肢の長さや角度に左右差がないか確認
- 腫れや熱を感じる部分がないか軽く手で触れる
- 軽く圧をかけた際に痛がる反応をするか見る
- 犬の鳴き声や表情に痛みの兆候がないか
なお、疑わしい症状がある場合はすぐに動物病院に連れて行くのが原則です。応急的な判断はあくまで参考にとどめましょう。
犬の骨折時に飼い主が取るべき応急処置

犬が骨折したと疑われる場合、飼い主が最初に取る対応がその後の回復に大きく影響します。無理に動かすと状態が悪化するおそれがあるため、焦らず冷静に対処することが重要です。
応急処置では「安静の確保」「患部の保護」「病院への迅速な搬送」が基本となります。以下で、状況に応じた正しい対処法を解説します。
動かさずに安静を保つ
骨折が疑われる犬には、何よりもまず「安静にさせる」ことが最優先です。骨がずれてしまうと、治療が複雑になったり神経を損傷したりする可能性があります。
- 犬を無理に立たせず、できるだけその場で静かにさせる
- 抱き上げるときは患部を動かさないようタオルなどで支える
- 小型犬の場合は洗濯かごやクッションで保護しながら移動させる
また、興奮して暴れないよう声をかけて落ち着かせるのも効果的です。移動時は平らな板や段ボールなどで体全体を支えると安全です。
出血している場合の対処法
骨折に伴い皮膚が裂け、出血している場合は「開放骨折」の可能性が高く、非常に緊急性が高い状態です。感染や大量出血を防ぐため、適切な止血処置が必要です。
- きれいなガーゼや布で出血箇所を優しく押さえる
- 強く押しすぎず、圧迫して止血を試みる
- 決して骨が露出している部分を直接押さえない
- 汚れた布を使うのは避け、できるだけ清潔な素材を使用
止血ができても安心せず、できるだけ早く動物病院へ搬送することが重要です。応急処置はあくまで一時的な対応です。
すぐに動物病院へ連れていくべきタイミング
犬の骨折が疑われる場合、飼い主が判断に迷うのが「すぐに病院へ行くべきかどうか」です。以下のような症状が見られる場合は、できる限り早く動物病院へ連れて行く必要があります。
- 明らかに骨が変形・飛び出している
- 足を全くつかずに浮かせている
- 患部がパンパンに腫れている
- 犬が鳴き続ける、触ると攻撃的になる
- 出血が止まらない、または大量に出ている
これらの状態は、痛みや損傷が深刻である可能性を示します。事前に動物病院へ連絡し、状況を説明してから向かうと、スムーズな対応を受けられます。
犬の骨折の診断方法と動物病院での治療法

犬の骨折が疑われる場合、動物病院ではまず正確な診断が行われます。
骨折の状態や部位、重症度によって治療方針が異なるため、画像検査による詳細な確認が欠かせません。
診断後は、骨のズレや安定性に応じてギプスや外科手術など適切な処置が取られます。早期治療が後遺症のリスクを軽減するため、なるべく早く受診しましょう。
レントゲンやCTによる検査内容
骨折の有無や状態を把握するためには、画像検査が基本となります。主に以下の方法が用いられます。
レントゲン検査 | 骨の位置や折れ方、ズレを確認。ほとんどの骨折に対応可能。 |
CT検査 | 骨の内部構造を立体的に把握。関節や複雑な骨折の診断に有効。 |
CT検査は全身麻酔を伴うことが多く、小型犬やシニア犬では慎重に検討されます。検査結果に応じて、保存療法か手術かが判断されます。
保存療法(ギプス・添え木など)とは
保存療法とは、外科手術を行わずに自然治癒を促す治療法です。軽度な骨折や骨のズレが少ない場合に選ばれます。
ギプス固定 | 患部をしっかりと保護して動きを制限 |
添え木(スプリント) | 一部を補強する簡易固定具 |
この方法は侵襲が少なく、費用も抑えられる利点があります。
ただし、動かさないことが前提のため、活発な犬や固定が難しい場所の骨折では効果が限定されることもあります。
外科手術が必要なケースとは
骨のズレが大きい場合や複雑骨折の場合には、外科手術が選択されます。手術ではプレートやボルトなどの器具を用いて、骨を正しい位置に固定します。
- 骨が皮膚を突き破っている(開放骨折)
- 関節に近い部位の骨折
- ギプスでの固定が難しい場所(骨盤や大腿骨など)
- 骨折が複数に分かれている(粉砕骨折)
術後は一定期間の入院やリハビリが必要ですが、しっかり固定できるため治癒の成功率は高いです。
犬の骨折にかかる治療費や治療期間

犬の骨折治療には一定の費用と期間がかかります。治療法によって金額や回復までの日数は大きく異なり、手術を伴うと高額になるケースもあります。
また、入院や通院、リハビリの有無でも総額は変動します。以下で、治療費や期間の目安、保険の適用範囲について詳しく解説します。
治療法ごとの費用の目安
治療法別にかかる費用の目安を以下にまとめました。
治療法 | 費用の目安(目安) |
---|---|
レントゲン検査 | 5,000~15,000円 |
CT検査 | 30,000~70,000円 |
ギプス・保存療法 | 20,000~50,000円 |
外科手術(単純) | 100,000~200,000円 |
外科手術(複雑骨折) | 200,000円以上 |
再診やリハビリ、薬代などは別途発生する点にも注意が必要です。
治療にかかる日数や入院期間の例
犬の骨折の治癒期間は、骨折の場所や治療法、犬の年齢などによって変わります。
軽度の骨折(保存療法) | 約3~6週間 |
手術後の回復 | 6~12週間程度 |
入院期間 | 手術ありで3日~1週間が一般的 |
高齢犬や多発性骨折の場合はさらに長引くことがあり、リハビリや経過観察も含めると数か月に及ぶケースもあります。
ペット保険が適用される場合とは
多くのペット保険では、骨折に伴う検査や治療、手術費用が補償対象となっています。ただし、保険の内容や契約条件によっては以下のような制限がある場合もあります。
- 通院・入院・手術それぞれに上限が設定されている
- 年齢や既往歴によっては適用外になることがある
- 加入から待機期間中のケガは補償されない場合がある
加入前や利用時には、事前に補償内容をしっかり確認しておくことが大切です。
犬の骨折の回復後に気をつけるケアと再発防止策

犬の骨折は治療が終わったあとも油断はできません。完治後の適切なケアを怠ると、再骨折や関節の機能障害を引き起こす可能性があります。
骨の修復が進んでいても、筋力や可動域の回復には時間がかかるため、リハビリや生活環境の見直しが重要です。ここでは、リハビリのポイントや再発を防ぐために飼い主が気をつけたい点を具体的に解説します。
リハビリや運動制限の重要性
骨折治療後は、急な運動を避け、段階的なリハビリで筋力と関節機能の回復を目指す必要があります。
特に長期間安静にしていた場合、筋肉の萎縮が進んでいることが多いため注意が必要です。
- 獣医師の指導のもと、軽い散歩から開始
- 水中歩行(ハイドロセラピー)など関節に負担をかけない運動が効果的
- ストレッチやマッサージで血流を促進
焦って激しい運動を再開すると、治った骨に再び負担がかかるため、段階的に負荷を上げていくことが大切です。
日常生活での注意点と再発予防
家庭内での生活環境にも気を配ることで、骨折の再発リスクを大きく下げられます。特に足腰に負担がかかりやすいシーンを減らすことがポイントです。
- 滑りやすい床には滑り止めマットを敷く
- ソファやベッドの上り下りにステップを設置
- 高い場所へのジャンプを避けるようしつけを行う
- フローリングよりもカーペットやクッション性の高い床材を活用
日常のちょっとした行動が、犬の骨や関節に大きな負荷をかけていることもあるため、環境の見直しは非常に重要です。
骨折を防ぐためにできること
犬の骨折は予防できるケースも多く、日々の管理がリスク軽減に大きく寄与します。特に小型犬や高齢犬は骨が弱くなりやすいため、日頃のケアが欠かせません。
栄養管理 | カルシウムやビタミンDを含むバランスの良い食事 |
定期的な健康診断 | 骨の状態や関節の異常を早期発見 |
適度な運動 | 筋力を維持し、骨の強度を保つ |
また、肥満も関節や骨に負担をかけるため、適正体重の維持も大切な予防策となります。
まとめ|犬の骨折に備えて正しい知識を持とう
犬の骨折は突然起こるケガですが、正しい知識があれば慌てずに対応できます。
骨折の原因や症状、治療法、そして回復後のケアまでを理解しておくことは、飼い主として非常に重要です。
特に小型犬や高齢犬は骨折しやすいため、日頃からの予防対策も忘れずに行いましょう。
いざというときに備えて、信頼できる動物病院を事前に探しておくのも安心につながります。犬の健康を守るために、ぜひ本記事の内容を役立ててください。
この記事の執筆者
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