日本ではまだほとんど飼育されておらず、なおかつあまり知られていない小動物のスローロリス。
最後の「リス」にイメージを持っていかれますが、実際には猿の仲間です。
出会えることも多くないスローロリスですが、可愛いのに知られきっていない理由も気になるでしょう。
今回はまず、スローロリスの個体価格から確認していき、特徴や飼い方、お迎え前の注意点をご紹介します。
この記事の結論
- スローロリスの個体価格は非常に高く、50万円~150万円程度である
- お迎え場所は、大型ペットショップやエキゾニックアニマル専門店になる
- とても大人しく鳴き声がほとんどなく静か、ただストレスを抱えやすい
- 絶滅危惧種でお迎えが難しく、日本での生活は適していない
目次
スローロリスの値段相場は50万円~150万円

スローロリスの生体価格はとても高く設定されており、最低でも50万円程度は見ておく必要があります。
平均価格では100万円程度が上限とされていますが、実際にはこれより高くなることもよくあります。
高くなると通常でも150万円程度の価格帯になっていることがあり、なかなか簡単にはお迎えできない生体価格であることがわかるでしょう。
エキゾチックアニマル自体の飼育は犬猫に比べて多くありませんが、高くなる理由はそれだけではありません。
スローロリスの初期費用内訳(生体代、ケージ、食事、医療費など)

スローロリスをお迎えする際には、生体価格だけでなく、快適な飼育環境を整えるための初期費用がまとまって必要になります。
これらはスローロリスが新しい環境で健康に暮らすために欠かせない投資であり、事前に内訳を把握しておくことが重要です。
安価なものを揃えることも可能ですが、長期的な視点で見ると、質の良い設備を選ぶことが結果的にスローロリスの健康を守り、無駄な出費を抑えることに繋がります。以下に主な初期費用の目安を挙げます。
生体代
スローロリスの生体代は、その種類や性別、月齢、血統、そして販売ルート(ブリーダー、専門店など)によって大きく変動します。
- 一般的な目安: 50万円~150万円
- 高価なケース: 希少種や特定の血統を持つ個体は、さらに高額になることもあります。
この価格はあくまで目安であり、購入する際は複数の店舗やブリーダーから情報を集め、信頼できる場所から健康な個体を選ぶことが最も大切です。
安すぎる個体には、健康上の問題や違法な取引の可能性も潜んでいるため注意が必要です。
ケージと主要飼育器具
スローロリスが安全かつ快適に過ごせる環境を整えるためには、質の良いケージと主要な飼育器具が不可欠です。これらは一度購入すれば長く使えるものが多いため、初期投資としてしっかり選びましょう。
- ケージ(目安:1.5万円~5万円): 高さがあり、網目が細かく脱走防止対策が施されたものが理想です。
- ヒーター・サーモスタット(目安:1万円~3万円): ケージ内の温度を一定に保つために必須です。
- 加湿器(目安:5千円~1.5万円): 適切な湿度を維持するために必要です。
- 温湿度計(目安:2千円~5千円): ケージ内の環境を正確に把握するために必須です。
- 給水器・食器(目安:2千円~5千円): 食事と飲水のために必須です。
これらの設備は、スローロリスが熱帯地域の環境で快適に過ごすために欠かせないものであり、品質の良いものを選ぶことが健康維持に直結します。
初期の食事とサプリメント
お迎え直後からスローロリスに与える食事も、初期費用として考慮しておくべき項目です。
- 専用フード(目安:2千円~5千円): スローロリス専用のフードは種類が少ないため、事前に手配しておきましょう。
- 昆虫(目安:2千円~3千円): 主食となるコオロギやミルワームなどの活き餌や冷凍餌。
- サプリメント(目安:1千円~3千円): カルシウム剤やビタミン剤など、栄養補助のために必要なもの。
これらは最初の数週間から数か月分を見込んで購入しておくと安心です。
医療費(初診料・健康チェック)
スローロリスをお迎えしたら、健康状態を確認し、今後のアドバイスをもらうために、できるだけ早くエキゾチックアニマル専門の動物病院で初診を受けることを強くおすすめします。
- 初診料・健康チェック(目安:5千円~1万円): 定期的な健康診断が必要。
これは単なるチェックだけでなく、今後の健康管理計画を立てる上でも非常に重要です。特定の病気の検査や、ワシントン条約に基づく登録に必要な診断書発行費用などが別途かかる場合もあります。
その他(床材、隠れ家、登り木など)
ケージ内のレイアウトを整え、スローロリスが安心して過ごせる環境を作るための費用も考慮に入れましょう。
- 床材(目安:1千円~3千円): 定期的な交換が必要なため、初期に数ヶ月分を準備しておくと良いでしょう。
- 隠れ家・シェルター(目安:2千円~5千円): スローロリスが身を隠して休める場所を複数用意します。
- 登り木・止まり木(目安:1千円~3千円): ケージ内に設置し、運動スペースを確保します。
- 特定動物飼育許可申請費用: 自治体により異なりますが、数千円~1万円程度かかる場合があります。
これらの初期費用を合計すると、生体代とは別に約5万円~15万円以上の費用がかかると見込んでおくべきです。余裕を持った資金計画を立てて、スローロリスをお迎えしましょう。
スローロリスの年間維持費と生涯コスト

スローロリスの飼育には、生体代や初期費用だけでなく、長期にわたる年間維持費、そしてその合計である生涯コストが発生します。
これらはスローロリスと快適に暮らす上で見過ごせない費用であり、計画的な準備が不可欠です。特に、熱帯環境を再現するための電気代や、エキゾチックアニマル特有の医療費は、予想以上にかさむ可能性があります。
ここでは、具体的な費用の内訳とシミュレーションを交えながら、スローロリスの年間維持費と生涯コストについて詳しく解説します。
年間ランニングコストの内訳(食事代、電気代、医療費など)
スローロリスの年間ランニングコストは、飼育環境や個体の健康状態によって変動しますが、主な内訳は以下の通りです。
- 食事代: スローロリスは昆虫、果物、野菜、専用フードなどさまざまなものをバランス良く摂取する必要があります。これらの費用は季節や購入場所によっても変わりますが、質の良い食事を安定して供給することが重要です。
- 目安: 月あたり 5,000円~10,000円(年間 6万円~12万円)
- 電気代(空調費): スローロリスは温度25~28℃、湿度60~80%の環境を常に維持する必要があるため、ヒーターや加湿器、エアコンの使用は避けられません。特に夏場や冬場は高額になりがちです。
- 目安: 月あたり 3,000円~10,000円以上(年間 3.6万円~12万円以上)※季節や地域、契約プランで大きく変動
- 医療費: 定期的な健康診断はもちろん、体調不良や怪我の際には専門医による治療が必要です。エキゾチックアニマルの医療費は、一般的なペットよりも高額になる傾向があります。
- 目安: 定期健診 年1~2回 1万円~3万円。病気や怪我の治療費は、内容により数千円~数十万円以上かかる可能性もあります。
- 消耗品費: 床材、ケージの清掃用品、必要に応じたサプリメントなどがこれに該当します。
- 目安: 月あたり 1,000円~3,000円(年間 1.2万円~3.6万円)
- 登録料・更新料: 特定動物の飼育許可は定期的な更新が必要です。更新時に手数料が発生する場合があります。
- 目安: 数年に一度、数千円~1万円程度(自治体による)
生涯コストのシミュレーション(10年間飼育した場合)
スローロリスの平均寿命は約10年と言われています。この期間、安定して適切な飼育を続けるために、生涯でどれくらいの費用がかかるかをシミュレーションしてみましょう。
- 生体代: 50万円~150万円
- 初期費用(ケージ、主要器具、初診料など): 5万円~15万円
- 年間維持費の合計: 年間 10.8万円~26.6万円(食事代+電気代+医療費(健診のみ)+消耗品費)
これらを基に10年間飼育した場合の生涯コストを計算すると…
- 低コストの場合:
- 50万円 (生体代) + 5万円 (初期費用) + (10.8万円 × 10年) = 約163万円
- 高コストの場合:
- 150万円 (生体代) + 15万円 (初期費用) + (26.6万円 × 10年) = 約431万円
このシミュレーションはあくまで目安であり、予期せぬ大きな医療費や設備の買い替えなどで、さらに費用がかさむ可能性もあります。
スローロリスをお迎えする際は、これらの費用を継続的に負担できる経済的余裕があるかを十分に検討し、計画を立てることが非常に重要です。
スローロリスの値段が変動する要因

愛らしいスローロリスの価格は、いくつかの要因によって大きく変動します。生体を迎え入れる前に、これらの要因を理解しておくことは、適切な判断を下す上で非常に重要です。
血統・品種による違い
スローロリスにはいくつかの品種(種)があり、それぞれで希少性や特徴が異なります。
例えば、小型のピグミースローロリスや、特定の特徴を持つ希少な品種は、一般的なベンガルスローロリスなどに比べて高額になる傾向があります。
ブリーダーによっては、親の血統や遺伝的な特性が明確な個体(「血統書付き」のような概念は犬猫ほど確立されていませんが、健康な親から生まれたことが保証される個体)は、その価値が評価され高値で取引されることもあります。
年齢による違い
一般的に、スローロリスは幼体(赤ちゃん)の方が高価に設定されていることが多いです。幼体は小さいほど愛らしく、飼い主が最初から育てる喜びを感じられるため人気があります。
しかし、幼体はデリケートで飼育が難しく、専門知識がより一層求められる点には注意が必要です。一方、成長した個体や、ある程度の年齢になった個体は、幼体よりは価格が下がる傾向にあります。
これは、性格が落ち着いている、飼育の手間が比較的少ないといったメリットがある一方で、飼育期間が短くなる可能性も考慮されるためです。
性別による違い
スローロリスの価格に性別が影響することは、犬猫ほど明確ではありませんが、繁殖目的での需要などによって変動する場合があります。
一般的には大きな価格差はないとされていますが、ブリーダーや販売店によっては、雄と雌でわずかな価格差を設けていることもあります。
特定の性別を希望する場合は、複数の販売元に確認してみると良いでしょう。
ショップによる違い
スローロリスの販売価格は、購入するショップやブリーダーによって大きく異なります。
- 専門ブリーダー: 飼育環境や血統、健康管理にこだわり、手間暇をかけて繁殖しているブリーダーの場合、価格は高めになる傾向があります。しかし、その分、健康状態が良く、飼育に関する詳細なアドバイスを受けられるなど、手厚いサポートが期待できます。
- エキゾチックアニマル専門店: 専門知識が豊富で、適切な飼育環境を整えている店舗では、生体管理のコストが反映され、価格もそれなりになります。お迎え後の相談にも乗ってくれることが多いでしょう。
- 一般的なペットショップ: スローロリスの取り扱いが少ない店舗や、仕入れルートによっては、価格が比較的安く設定されていることもありますが、個体の健康状態や飼育環境、アフターサポートの面で注意が必要です。
同じスローロリスでも、販売元の信頼性や提供される情報、サポート体制によって価格に差が出るため、価格だけでなく総合的なサービス内容を比較検討することが重要です。
スローロリスのお迎え方法

スローロリスをお迎えしようと思ったら、基本的には大型ペットショップを利用することになります。
そもそもの個体数が多くないので、通常のペットショップに行っても出会えることは多くないでしょう。
お迎え自体がかなり難しいこともあって、スローロリスの存在を知っている人も少ないはずです。
エキゾチックアニマル専門店でも出会える
スローロリスはエキゾチックアニマルなので、エキゾチックアニマルの専門店でも出会えることがあります。
場合によっては大型ペットショップよりもエキゾチックアニマル専門店の方が、出会える確率が高いこともあるのです。
ただ、いずれにしても非常に個体数が少なく次の条例もあるため、飼育自体がかなり難しいです。
絶滅危惧種なので国内での繁殖された子だけが販売される
スローロリスは森林伐採や密輸によって絶滅危惧種となり、2007年9月13日からはワシントン条約によって国際取引が原則禁止となりました。
これ以前も輸入に許可が必要な動物とされており、2005年からは人獣共通感染症を防止する目的として、ペット目的としての猿の輸入が禁止されています。
そのため国内で繁殖された子しかお迎えすることはできず、なおかつ飼育には環境省から発行される“登録票”が必要になります。
スローロリスの飼育がおすすめできない理由

スローロリスはとても可愛らしい一方で、ペットとしての飼育はおすすめできません。その理由は複数ありますので、生体価格以外の面でも確認しておきましょう。
絶滅危惧種である
スローロリスを飼ってはいけない、というわけではないものの、前提として絶滅危惧種ということをまず理解しなければなりません。
ワシントン条約によって日本国内において繁殖された子ならば、販売や譲渡は可能とされています。
ですが、スローロリスの飼育は難易度が高く、またスローロリス自身にとっても最適な環境とは言えません。
後述のように毒を持っている点や、抜歯がされている点、適切な飼育が難しい知識や環境が作れないというのは、スローロリスにとって負担になるのです。
参考:認定特定非営利活動法人 野生生物保全論研究会 ペットトレード
飼育によるスローロリスへの負担が大きい
野生であれば犬や猫と同じように15年ほど生きてくれますが、飼育環境では長生きすることが少ないと言われています。
つまり野生の環境がスローロリスにとっては最適で、飼われる環境ではストレスを始めとした負担が大きいのだとわかります。
前述の通り絶滅危惧種でもあることから、より丁寧なケアも必要になってくるでしょう。
飼い主さん自身の負担はもちろんのこと、飼われることはスローロリスにとって適していないのです。
毒を持っている
とても可愛らしい顔をしていますが、スローロリスは毒性哺乳類なので実は毒を持っています。
上腕腺から出る分泌物を唾液と合わせることによって、スローロリス特有の毒になるのです。
この毒は酸性の刺激臭があり、自分や子どもにつけておくことで外敵から身を守るという効果があるもの。
毒は猫アレルギーに類似していると言われており、人間であってもアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。
抜歯による感染症の死亡率が高い
ペットとして飼育される際、スローロリスは噛むこともあるため歯を抜くという習慣があるのです。
ですが当然これは理想とされているわけではなく、歯を抜いた場所が炎症を起こし、死亡することもある処置です。
抜歯によって歯牙感染を引き起こす恐れもあり、感染してしまうと致死率は90%以上とも言われています。
スローロリスは毒を持っていますが、歯を抜いても毒がなくなるわけではないため、咬傷事故を防ぐためだけの処置とも言えます。
ただ、こうした処置がされた子は野生で生活することができなくなるので、結果として死亡する確率が高くなります。
まとめ
スローロリスは非常に可愛らしく、個体価格が高いからこそ飼ってみたいと思う人もいるかもしれません。
ですが、実際には飼育が非常に難しく、スローロリスのためを思うならばその判断は推奨できないところ。
繁殖も非常に難しいとされており、もともとが野生動物でもあるのでペットとして飼育するのは難しいでしょう。
一度だけでも会ってみたいということであれば、動物園などで出会えることもあるのでぜひ確認してみてください。
この記事の執筆者
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