環境省「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」が立ち上げられたのが、2013年11月。
日本における殺処分ゼロへの取り組み元年となるこの年、川崎市動物愛護センターはいち早く犬の殺処分ゼロを達成しました。
2019年2月には市民からの請願により、手術室やレントゲン室も備えた延床面積2,308㎡の施設へ移転&リニューアルオープン。
全国の行政やNPO団体からも見学者が訪れる「川崎市動物愛護センター(アニマモールかわさき)」を、nademo編集部が取材させていただきました。
ライター
現在、“在宅部長”こと2代目保護猫と暮らしながら、nademoの記事を書かせていただいています
プレゼント企画やお友だち限定企画も用意してありますので、友だち追加お待ちしております!
目次
犬抑留所から動物愛護センターへ
川崎市動物愛護センターの出発点となる川崎市立犬抑留所が開設されたのは、1951年11月のことでした。
戦後10年を経たとは言え、当時はまだ飼い主のいない野良犬や野生化した野犬が住宅街でも見かけられました。
野良犬や野犬は家畜や時には人を襲うこともあり、犬抑留所はこういった犬たちを収容するための施設でした。
やがて1973年11月、「川崎市飼い犬等の飼養管理に関する条例」が施行され、センターも動物愛護精神を基本理念とする方向へ大きく舵を切ります。
「わんわん条例」の基本理念と共にあゆむ
川崎市飼い犬等の飼養管理に関する条例は、「わんわん条例」という愛称で市民に親しまれています。
人と動物が共生する社会の実現を図る目的で定められました。
犬抑留所は遡ること1971年に川崎市畜犬管理事務所と改められ、さらに1974年には川崎市飼い犬管理センターに改称。
1997年に川崎市動物愛護センター条例が一部改正されたのに伴い、施設名称も「川崎市動物愛護センター」と改められました。
飼い犬管理センター時代から川崎市における動物行政の実践的役割を担ってきましたが、施設は40年以上を経て老朽化。
見かねた市民から2010年6月に「川崎市動物愛護センター建設に関する請願」が市議会に提出され、全会一致で採択されました。
空調設備や床暖房も整えた快適な設備
2019年2月、川崎市動物愛護センターは、最寄駅から徒歩圏内の敷地2,500㎡に3階建て新施設を建設し、移転・開業しました。
鳴き声対策や臭気対策、被毛等の飛散防止対策もほぼ万全で、周辺の街並みとの調和も図られています。
充実の設備は市民の理解と協力があればこそですが、企業からの支援を得るための行政による仕組みづくりも功を奏していると言えるでしょう。
川崎市は以前からスタジアム、歩道橋などへのネーミングライツ(命名権)パートナー募集を実施していますが、これを動物愛護センターにも導入。
コイル巻線機専門メーカーのNITTOKU適正飼育啓発室、ペット用品事業経営企業のペピイにゃんmeetsルーム、ペットフードメーカーのヒルズ研修室があります。
なぜ「ANIMAMALL(アニマモール)かわさき」?
川崎市動物愛護センターは、別名「ANIMAMALL(アニマモール)かわさき」と呼ばれています。
2018年5月から1ヶ月間、市民に愛称募集を行い、517人から727作品の応募がありました。
最終候補として5作品が厳選された後、ウェブと新センター近隣7校の小学生による投票の結果、川崎区に住む小学5年生の作品「ANIMAMALL」に決定。
「アニマモール=動物を守る」と「動物のための施設」という意味をかけた愛称だそうです。
「いのちを学ぶ」場として
川崎市動物愛護センターのコンセプトは、動物を通じて、誰もが集い、憩い、学べる交流施設。
いのちをテーマに、いのちを学ぶ、いのちをつなぐ、いのちを守る場としての役割を果たしています。
動物のいのちを思うことは他者への共感や思いやりを育てると言われるため、特に小・中学生へいのちの大切さを伝える活動を重視しています。
子どもたちのための動物愛護教室
小・中学校を対象とした動物愛護教室「いのち・MIRAI教室」は、センターで開催する来所型プログラムと各学校で実施する訪問型プログラムの2種類。
夏に実施するサマースクールは、夏休みの自由研究にする子どもたちもいて盛況です。
保護されたワンちゃんやネコちゃんは人慣れしていない場合もあるので、直接触れ合わなくてもいのちについて学べる工夫をしています。
例えば、いのちの重みを実感できるよう子猫の体重と同じ重さのぬいぐるみを手作りしたり、ボディランゲージを学べる写真や動画を用意したり。
獣医師の資格を持つ職員が小・中学校に出張して行う訪問型プログラムも好評です。
常時見学OK!開かれたセンターを目指して
開館日であれば、当日センターの受付で申し込みしてすぐに館内見学ができます。
また、通常は見ることができない子猫室などが見学できるバックヤードツアーも開催。毎週水・日曜の11時~と14時~の2回実施しています。
職員の方が案内してくださる30分程度のツアーで、こちらはセンターへ直接お電話(044-589-7137)での予約が必要となります。
「いのちをつなぐ」場として
センターに保護されたワンちゃんやネコちゃんの情報は公式サイトに公開されているので、万が一、大切なペットが迷子になってしまったらすぐご確認を。
また、里親さん募集中の譲渡情報もチェックでき、川崎市動物愛護センターの公式Facebookや公式X(旧Twitter)でも随時情報が発信されています。
なお、譲渡には以下の条件があります。
- 市内及び県内、都内に在住している成人であること。
- 家族全員の同意があること。
- 譲渡される動物を適正に飼養管理し、終生飼養すること。
- 飼養場所が集合住宅や借家の場合、動物の飼育が承認されていることが明示されている規約等の文書(写し)が提出できること。
- 不妊去勢手術を実施すること。
- マイクロチップを挿入し、所有者明示をすること。
- 犬の場合には登録、狂犬病予防注射を実施すること。
- 原則として65歳以上の高齢者世帯でないこと。
- 原則として独居ではないこと。
- 譲渡時の誓約書の内容を理解し、遵守できること。
- センターが実施する譲渡前講習会を受講すること。
- センターが実施する譲渡後調査(現地訪問を含む。)に協力できること。
- センターが指導する飼養方法を遵守すること。
- 本市の動物愛護行政に係る施策等を理解していること。
- その他センター所長が必要と認める要件を満たしていること。
また、必要書類の提出やセンター職員との面談による選考もあり、譲渡前講習会も受けなければなりません。
保護&迷子への対応方法
「飼い犬が逃げて行方不明になってしまった!」「捨て猫を保護したけど、どうすればいい?」…市民からのこんなご相談も日々センターに寄せられます。
迷子の場合は、動物愛護センターや地域のみまもり支援センター衛生課に即連絡し登録を。また、警察署への連絡も必須です。
保護の場合も同様ですが、残念ながらすべての保護動物をセンターで引き受けることはできません。まずは職員の方にアドバイスをもらいましょう。
「理由(ワケ)あり猫」の譲渡会も
譲渡会は、飼い主のいないワンちゃんやネコちゃんと里親さんとのいわば婚活パーティー。川崎市動物愛護センターで開催される譲渡会は毎回盛況です。
2021年度は247匹の猫、犬40匹が返還・譲渡され、返還・譲渡率は76.7%でした。
保護されたワンちゃんやネコちゃんが全員健全とは限りませんが、ケガや病歴・持病のある子にも幸せに生きる権利があります。
そこで、アニマモールかわさきの新たな試みとして、2023年9月10日に「理由(ワケ)あり猫の譲渡会」を開催。
猫エイズキャリアや慢性の風邪症状がある成猫、少し大きく育った子や人慣れしていないシャイな子猫が里親さんとのお見合いを果たしました。
高齢などによる「飼えない問題」にも対応
コロナ禍により在宅時間が増えたことでペットを飼う人も増え、ペットはパートナーやファミリーという認識が日本でも浸透してきました。
家族同様の存在としてペットを飼うのであれば、その生涯にわたって一緒に暮らし、お世話する覚悟が必要です。
けれど、飼い主さんの高齢化により、入院や介護施設への入居で飼えなくなったり、事故や急病でペットが飼い主を失ったりというケースもあります。
こういったケースに対応するため、川崎市動物愛護センターでは飼い主さんの引き継ぎ相談も実施。
公式サイトでは「コーディネート情報」として、新しい飼い主さん募集中のワンちゃんやネコちゃんの情報も公開しています。
「いのちを守る」場として
強風、大雨、さらに高潮、波浪などで土砂崩れや浸水といった風水害が生じ、飼い主さんやペットが避難できずに命を落とす悲しい事故も起きています。
そこで、川崎市では風水害の発生に際し、避難所にペット用のスペースを確保するなど、同行避難に備えています。
ただ、避難所でペットが数日過ごすためのケージやいつものご飯は先に準備し、日頃からワクチン接種や駆虫、しつけなどを行っておきましょう。
また、災害発生時には2014年3月締結の「災害時の動物救護活動に関する協定書」に基づき、川崎市獣医師会が川崎市動物救護本部をセンターに設置。
被災動物の一時保護を行えるよう、センターの4つの災害備蓄倉庫には700個以上のケージが保管され、災害発生を想定した救護訓練も行われています。
動物由来の感染症情報も発信
世界中を席巻した新型コロナウイルスは、人から犬や猫、そしてライオンやトラ、ミンクへ感染した事例も報告されています。
意外なことですが、俗に水虫と呼ばれる白癬菌というカビの一種による皮膚病は人から犬や猫、逆に犬や猫から人へも移ります。
狂犬病、エキノコックス症、トキソプラズマ症、猫ひっかき病なども人に感染しますが、ワクチン接種や手指のこまめな消毒で予防が可能です。
逆に、膿皮症、ケンネルコフ、猫風邪、猫エイズなどは人間には移りません。
感染症に関する正しい知識を得ることもペットと暮らしていく上で重要なため、センターでは情報発信や啓蒙活動を行っています。
多様な主体との連携でSDGsな活動を
2014年度に「動物愛護基金」が創設され、市内外からの寄附によりセンターの運営は支えられています。
金銭だけでなく、フード、ペットシーツ、タオルなどの物品寄附も、公式SNSで募集と報告が行われています。
実は、記者も物品寄附をさせていただきましたが、川崎市長からお礼状が届いてちょっとびっくりしました。
さらに、センターの施設や設備はワンちゃんやネコちゃんだけでなく、市民のためにも還元。
2つの市民協働室と音響機器、マイク、プロジェクターが備わるヒルズ研修室は、川崎市内でボランティア活動などを行う団体なら無料で利用できます。
ネーミングライツや広告掲載による支援
2023年現在、センターにはNITTOKU適正飼育啓発室、ペピイにゃんmeetsルーム、ヒルズ研修室のネーミングライツ(命名権)契約施設があります。
あと5ヶ所、学習コーナー、行動観察室(犬)、手術室、行動観察室(猫)、譲渡猫室がネーミングライツのパートナー募集中だとか。
ネーミングライツ料は1室あたり年額30万円~(消費税・地方消費税込)、契約期間は契約日から3年間以上で、もちろん個人でも申し込めます。
また、公式ホームページのバナー広告も募集中。こちらは月額広告料が1枠3,000円(税込)で、1ヶ月単位の掲載だそうです。
獣医師会の協力は欠かせません
川崎市動物愛護センターには、鑑定室、検診室、野良猫手術室、検査室、レントゲン室、手術室が完備。
連携・協働する川崎市獣医師会のドクターが、保護されたワンちゃんやネコちゃんの検診・治療を行っています。
2023年現在、常勤・非常勤含め12名の獣医さんがアニマモールかわさきで働いているそうです。
ボランティアさんは2年に1回募集
アニマモールかわさきは川崎市の運営なので、センターの職員になるにはまず公務員試験に合格しなければなりません。
また、2023年現在、センター職員21名のうち半数以上が獣医師免許の取得者。獣医師免許を取得するには、獣医学科のある大学で学ぶ必要があります。
特に資格がなくても、「かわさき犬・猫愛護ボランティア」なら応募OK。
ただし、18歳以上の川崎市民で、川崎市が推進する適正飼養及び動物愛護精神の普及啓発に協力できる人のみです。
2023年現在、167名のボランティアさんがいて、研修会や運営に関する会議にも参加されています。
館内でお会いしたボランティアさんはどなたも笑顔で、生き生きと楽しそうに働いていらしたのが印象的でした。
川崎市制100周年記念事業イベント開催
2024年7月1日に川崎市は市制100周年を迎えます。
そこで、川崎市動物愛護センターでも「市制100周年記念事業100年続く人と動物のきずな」と題し、さまざまなイベントを企画しています。
「12人でつむぐ人と動物の物語 ~ひととどうぶつ つぎの未来へ~」をはじめ、オンライン上でもプレ事業を展開中。
ワンちゃんネコちゃん好きの方、動物保護活動に興味・関心のある方は、ぜひこの機会にアニマモールかわさきの公式サイトを覗いてみてください。
川崎市動物愛護センター(アニマモールかわさき)の詳細
動物愛護センター(ANIMAMALL(アニマモール)かわさき)
神奈川県川崎市中原区上平間1700番地8
- 目安予算
- -
- アクセス
- JR南武線・平間駅より徒歩約7分・鹿島田駅より徒歩約11分
- 営業時間
- 8:30~12:00、13:00~17:15
おすすめポイント
保護猫と会える
保護犬と会える
譲渡相談ができる
その他店舗データ
お問い合わせ | 044-589-7137 |
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予約可否 | - |
定休日 | 金曜日、土曜日 |
施設の詳細
公式サイト※本記事は2023年9月時点の情報です。掲載情報は現状と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。
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この記事の執筆者
楠 涼
ライター
現在、“在宅部長”こと2代目保護猫と暮らしながら、nademoの記事を書かせていただいています。
また、キャットヘルスケアアドバイザー資格取得にチャレンジ中ですので、皆様の愛猫の健康生活に役立つ情報をお届けしてまいりたいと存じます。
※ 当コンテンツで紹介する商品は、実際に社内で利用した経験と、ECサイトにおける売れ筋商品・口コミ・商品情報等を基にして、nademo編集部が独自にまとめています。
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