猫の病気・健康

【獣医師解説】猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状や原因、予防策とは?

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猫伝染性腹膜炎(FIP)とは?症状・原因・治療法・予防策を解説

“猫伝染性腹膜炎”や“FIP”という言葉を耳にしたことがあるという猫の飼い主さんも多いのではないでしょうか?

猫伝染性腹膜炎は感染・発症をしてしまうと致死率が極めて高く、ほぼ100%亡くなってしまうと言われている恐怖の感染症です。

そして、現在の獣医療でも有効な治療法が確立されていないのが実情です。

今回はそんな猫伝染性腹膜炎という病気について詳しく解説します。

この記事の結論

  • 猫伝染性腹膜炎(FIP)に感染&発症すると、ほぼ100%亡くなってしまう危険な感染症
  • 現在のところ、FIPウイルスに対するワクチンは存在せず、予防することもできない
  • 感染経路はウイルスの持続感染をしている猫からが多く、外出をさせないことがひとつの予防になる
  • 有効な治療法も存在しておらず、飼い主さんが主治医と相談して方針を決めることになる

長谷川 諒

執筆・監修

長谷川 諒

獣医師/潜水士/株式会社Ani-vet代表取締役/犬猫生活財団評議員

大学卒業後、動物病院での診療や保護猫活動の支援に携わる傍ら、現役獣医師によるメディアでの知識啓蒙にも取り組んでいる。

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猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状

猫伝染性腹膜炎は猫伝染性腹膜炎ウイルス、通称FIPウイルスの感染によって起こる病気で、これは猫のコロナウイルスが突然変異をしたものとされています。

ウイルス学的には世界を恐怖に陥れた新型コロナウイルス(COVID-19)の近縁にあたり、ニドウイルス目コロナウイルス科アルファコロナウイルス属に分類されます。

子猫のうちに発症することが多く、発症から数日や1か月以内程度で死に至る可能性のある病気でもあります。

ほとんどの猫は無症状

猫のコロナウイルスと言えば、一般的には猫腸コロナウイルスのことで、感染してもほとんどの猫では無症状です。

もしくは軽い胃腸炎の症状が出る程度で、数日のうちに自然に治ることも多いです。

症状が見られるようなときには食欲減退や体重の減少、下痢が引き起こされるようなこともあります。

致死率が高いウイルスに変貌することもある

しかし、この猫腸コロナウイルスが体内でその遺伝子に突然変異を起こすと、致死率が極めて高い猫伝染性腹膜炎ウイルスに変貌すると考えられています。

病気が進行すると急速に健康状態が悪化していき、神経症状が出るようになることもあります。

猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異し、一度発症してしまうと腹膜炎や血管炎、髄膜脳炎などの全身性に重度の炎症を起こし、やがて死に至ります。

猫伝染性腹膜炎(FIP)に予防法はない

現在のところ、猫伝染性腹膜炎ウイルスに対するワクチンは存在しません。

そうなると、突然変異を起こす前の猫腸コロナウイルスの感染を予防すれば良いと考えてしまいますが、現在のところ日本ではこちらのウイルスに対するワクチンもありません。

そのため、猫伝染性腹膜炎に感染・発症しないため、現在できることはまず猫腸コロナウイルスに感染しないことが大切になってきます。

猫腸コロナウイルスは生まれ持って感染している可能性は低く、ほとんどの場合でウイルスの持続感染をしている猫から感染してしまいます。

ですので、生活の中で感染しないようにするには屋外に出さないのはもちろんのこと、感染が疑わしい他の猫やそのウンチに触れることがないよう注意をしてあげましょう。

猫伝染性腹膜炎(FIP)は他の猫に感染する可能性が低い

この猫“伝染性”腹膜炎という名前の通り、かつては感染性がとても強く、同居猫などにもどんどん感染が広がっていくと考えられていました。

しかし、近年その考え方が見直されてきています。

猫腸コロナウイルスは腸管の細胞に感染し、増殖するのでウンチの中にウイルスが排出され、それが他の猫にも感染してしまうことがあります。

しかし猫伝染性腹膜炎ウイルスでは、突然変異したことによりウイルスの性質が変わり、ウンチの中に排出されにくくなるので、排泄物から他の猫に感染する可能性は低いと考えられています。

とは言っても感染すると命に関わる猫伝染性腹膜炎、飼い主さんを含めて猫腸コロナウイルスや猫伝染性腹膜炎ウイルスへの感染がわかっている猫との接触はなるべく避けた方が無難なところです。

猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療

残念ながら現在のところ、猫伝染性腹膜炎の治療を目的とした動物用医薬品は存在せず、有効な治療法は確立されていません。

一方で近年になり、猫伝染性腹膜炎の治療を目的としたサプリメントや化合物が次々と流通するようになっています。

しかし、これらのほとんどは治験が行われておらず、その中身がなんなのかも不明であることが多いです。

そんな中、コロナ禍を経てCOVID-19治療薬として開発されたモルヌピラビルやレムデシビルといった人間用の抗ウイルス薬を使って治療する、という方法が見られるようになってきました。

しかしどれも確実に有効な治療とまではいかず、これらの状況を総合的に考えるとどの製剤で治療すべきかという明確な答えがありません。

ですので、猫伝染性腹膜炎の治療にあたっては、飼い主さんが主治医の先生とよく相談して決める必要があります。

従来より行ってきた対症療法

抗ウイルス薬以外の治療として、従来より行なってきた対症療法も存在します。

対症療法とは根本的な病気の治療が難しい場合に、症状を和らげてあげる目的の処置です。

猫伝染性腹膜炎では一般的に、炎症を抑えるためにステロイドや抗ウイルス効果を期待して、インターフェロンなどを投与します。

病態によっては炎症により腹水や胸水が溜まることがあるので、液体の圧迫で苦しくならないように針を刺して液体を抜去することもあります。

ですがこれはあくまで対症療法なので病気が治ることはなく、どうしても徐々に進行してしまいます。

コロナ禍を経て治療も変わりつつある

今までなす術がなく、対症療法で亡くなるまで緩和をしてあげるしか方法がなかった猫伝染性腹膜炎ですが、コロナ禍を経てその治療の流れが変わりつつあります。

ですが、現状では有効な治療と設定できるだけの製剤とエビデンスがないので、今後の有効な治療法が確立されることを願って止みません。

この記事の執筆者・監修者

長谷川 諒

執筆者情報

長谷川 諒

獣医師/潜水士/株式会社Ani-vet代表取締役/犬猫生活財団評議員

大学卒業後、動物病院での診療や保護猫活動の支援に携わる傍ら、現役獣医師によるメディアでの知識啓蒙にも取り組んでいる。
獣医学生時代に保護猫を迎えたことから猫にどハマりして、今では3頭の元保護猫と暮らしています。

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