犬の全体重を支え、地面と接触して刺激を受ける部位である肉球。愛犬の肉球が大好き!という飼い主さんは多いと思います。
そんな犬の手足の裏にある肉球は、可愛いチャームポイントなだけではありません。
実は犬にとって、細かい脈管や神経が多く分布した皮膚であり、さまざまな役割を担う大切な器官です。
肉球の役割だけでなく、肉球に現れる病気の症状やケアの方法をご紹介します。
この記事の結論
- 犬の肉球は角質層が厚くなったもので、正六角形・正六角柱になっている
- 前肢と後肢では肉球の種類が異なり、前肢には手首にあたる手根球がある
- 肉球はクッション代わりや体温調節機能を持つ
- 散歩などで荒れやすいため、日頃から肉球のケアを心がける
ライター/JKCトリマーB級/JKCハンドラーC級/愛玩動物飼養管理士2級/訓練士補 キャットグルーマーC級/日本化粧品検定1級
動物病院併設サロンでの勤務歴も活かし、ペットがいつまでも健康で幸せに暮らせるよう美容面を中心に、しつけの相談、食事やおうちでのお手入れ等のアドバイスをさせていただいています。
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目次
犬の肉球の構造
犬の肉球は皮膚の角質層が厚くなったもので、拡大して見てみると正六角形または正六角柱を隙間なく並べた構造(ハニカム構造)になっているといわれています。
ハニカム構造は衝撃を分散させることができる構造のことでもあり、弾力性のあるエラスチン線維や、衝撃を吸収する脂肪などから肉球はできているのです。
人間で例えると手の「まめ」や、硬くなったかかとに似ています。
表面は皮膚が硬くなった角質細胞、内側は脂肪とエラスチン・コラーゲンでつくられた弾力のある繊維でできており、表面はザラザラしていても触るとプニプニとした柔らかい感触が特徴です。
前肢
前肢には3種類の肉球があり、実は人間で言うところの手のひらだけにあるものではありません。
指球(しきゅう) | 爪の真下にある5つの肉球 |
掌球(しょうきゅう) | 真ん中にある肉球 |
手根球(しゅこんきゅう) | 手首付近にある肉球 |
犬の肉球の正式名は「蹠球(しょきゅう)」といい、それぞれ部位ごとに名前があります。
また、前肢と後肢で数と名前が異なり、前足についた4つの肉球を「指球」といい、後ろ足の場合は「趾球」と呼びます。
「手根球」は、人でいう手首部分にあたる場所にあり、地面に接しない部位にある肉球です。
犬の進化の段階で退化していった肉球と捉えられており、現代では使われることがない肉球です。
後肢
後肢は前肢と違い、肉球の種類は2種類のみとなっています。
趾球(しきゅう) | 爪の真下にある4つの肉球 |
足底球(そくていきゅう) | 真ん中にある肉球 |
中心にある一番大きな肉球も前肢と後肢で名前が異なり、前肢の場合は「掌球」、後肢の場合は「足底球」と呼びます。
前肢に対して後肢の場合、手根球に位置する肉球はありません。
犬の肉球の役割
犬の肉球にはきちんとした役割があり、生活する上で必要不可欠な部位です。
肉球にはどんな役割があるのか、大きく分けて4点をご紹介します。
衝撃から足を守るクッション機能
肉球は全体重がかかる足先を保護し、人間で例えると靴の役割を果たしています。
肉球の地面に接する部分は、表面には毛が生えていません。
表面の角質が厚くなっていて、地面に足をつく際の衝撃を吸収しています。
これにより走ったり、高い所から飛び降りたりする際の関節や骨への衝撃を和らげるクッションの機能を果たしています。
また肉球には、現代の犬たちにはあまり必要ないかもしれませんが、狩りの時に獲物にこっそり近づけるように、足音を消す役割もあります。
体温調節の機能
犬は人間のように全身には汗腺がないため、暑いときは主に舌を出してハァハァと呼吸をするパンティングで熱を外へと排出させています。
そんな犬ですが、肉球にはエクリン汗腺があり、犬の体で汗のかける場所となっています。
犬が汗をかける場所は肉球と、鼻の一部といわれています。
呼吸とともに肉球にも汗をかくことで体温の調節を行い、また緊張によってもじんわりと汗をかくことがあります。
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地面からの影響を感知する機能
肉球は、人の手のひらや足の裏のように温度や触覚、痛みなどの変化を感じとることができます。
表面の厚い角質層により地面からの熱を感じにくく、多少であれば温度が高い場所を歩いても火傷をしないようになっています。
また犬の肉球は動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう)といって、毛細血管を通さずに動脈と静脈が直接繋がっています。
このため、冷たい地面で静脈内の血液が冷えてしまってもすぐそばを流れる動脈の血液が温め直すため、寒い場所でも元気に走ることができるのです。
滑り止めやブレーキの機能
犬の肉球の表面はなめらかではなく、ざらっとした触り心地になっています。
これは一番外側の表皮と言われる部分が、円錐乳頭という突起状の構造物でできているためです。
これが犬が走りながら急ブレーキや急カーブをかける際のグリップのような役割を担っています。
また、肉球にあるエクリン汗腺より汗を出し、適度に肉球を湿らせることで滑りにくくする役割も果たしています。
注意したい犬の肉球に関するトラブル
肉球は愛犬自身を守るためのものでもあるため、守るための肉球にトラブルが起こることもあります。
足の裏なので普段はなかなか気づきにくいですし、意識的に確認することもないかもしれません。
だからこそどんなトラブルがあり、何に気をつけるべきなのか、それぞれの対処法と合わせて確認してみましょう。
ケガ
肉球は地面に直接接する場所のため、走っている最中の急ブレーキや急カーブで擦りむいたり、散歩中に尖ったものを踏んで出血したりするなど、ケガを負いやすい場所でもあります。
肉球に傷ができると、そこから菌が入りやすくなるため注意しなければなりません。
ケガの対処法
まず傷口をきれいな水で洗い、ガラス片や金属片など異物がないか確認します。
出血がある場合は、きれいなタオルやガーゼなどで傷口を5分程度圧迫止血をします。
深い傷でなければ5分程度で出血が収まってくるはずですが、興奮すると再び出血するため、できるだけ安静にさせた状態で動物病院を受診しましょう。
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火傷
真夏の気温が高い時間帯の散歩や、家庭内にて暖房器具に触れてしまうなどが原因で火傷になることがあります。
軽症だと見た目の変化が少ないこともありますが、重症化すると肉球がめくれてしまうなど痛みを伴い、歩けなくなることもあるので注意しましょう。
火傷の対処法
火傷になった場合は、まず流水で冷やしたあと、冷たいタオルをあてて冷やしましょう。
また、火傷により皮膚が傷ついて場合には、傷口にタオルがくっつかないようにラップで覆った上からタオルで冷やします。
傷口が重症化すると肉球の色が黒ずんだり、真っ赤になったりするほか、肉球が膨れ上がったり、水ぶくれになります。
応急処置を行ったら必ず動物病院を受診しましょう。
また肉球の火傷を予防するには、お散歩を始める前に地面を手で触って暑くないか確認しましょう。
また、散歩時間の変更を検討しましょう。夏は早朝または深夜に散歩に行くことをおすすめします。
最近は犬用の靴などもいろいろな種類がありますので、愛犬が嫌がらない範囲で活用してみるのも良いでしょう。
乾燥・ひび割れ
犬の肉球は汗をかくことによって、ある程度の乾燥は防げるようになっていますが、空気の乾燥する季節にひび割れを起こしてしまうことがあります。
またコンクリートなど硬い地面を歩くことが多いことが原因でも乾燥し、ひび割れてしまうことがあります。
乾燥・ひび割れの対処法
保湿クリームで定期的に保湿をすることがおすすめです。
大切なのは濡れたままにしないことです。お手入れや、雨の日の散歩などで濡れた際、水分が蒸発する際に皮膚の水分も一緒に蒸発してしまいます。
水分が蒸発すると乾燥の原因に繋がり、場合によってはひび割れを起こすこともありますので、保湿剤をしっかり使いましょう。
また、甲状腺疾患などが原因で肉球がひび割れを起こすこともあるので、元気がない、脱毛、ご飯を変えていないのに体重が増えるなど、ひび割れと合わせて気になる症状がある場合は動物病院に相談しましょう。
指間炎
指間炎は指の間に起こるトラブルです。汚れなどによる刺激、細菌感染が炎症の原因です。
肉球は汗をかくため、その周りの指間の皮膚は、汗や分泌物、汚れなどが溜まりやすく、炎症が起きやすい場所となります。
特に、シー・ズーやフレンチ・ブルドッグ、コッカーなど、体質的に脂性の肌になりやすい犬種は注意が必要です。
指間炎の対処法
濡れた状態のままにしていると、蒸れて刺激になってしまい、犬がその部分をさらに舐めてしまうことによって、さらに炎症を起こしてしまいます。
足の裏は常に清潔を保ち、濡れたままにしないようにしましょう。
炎症が見られる場合は動物病院での治療が必要となります。舐める頻度が高い場合は、エリザベスカラーなどで対策をしましょう。
異物・腫瘍
散歩のときに、爪の間に小石などの異物が挟まったり、肉球にケガをしてしまうことがあります。
また腫瘍は体だけではなく肉球や指間などにもできます。
異物・腫瘍の対処法
最初は大した怪我や大きな腫瘍ではなくても、違和感を感じた犬が足先を舐め続けることで皮膚炎を起こしてしまうことがあります。
犬がしきりに肉球を舐め続けている、化膿や血が出ている、腫れている、歩きにくそうにしている、脚を触られることを嫌がるといった症状がある場合は動物病院で診てもらいましょう。
湿り
犬の肉球がじんわりと湿っているとき、これは犬が何らかの緊張やストレスを受けていることによるものです。
人が緊張すると手のひらに汗をかくことと同様に犬もまた汗をかきます。
湿りの対処法
環境の変化や苦手な場所など、ストレスの原因がわかる場合は取り除いてあげる工夫が必要です。
ストレスを受けやすい犬は、ちょっとした環境の変化が直近でなかったか、ひとつずつ確認していきましょう。
愛犬の肉球ケア方法
肉球にトラブルがあると併発する病気や歩きづらさなど、注意点が増えていきます。
愛犬に健康的な生活を送ってもらうならば、日頃からできる肉球のケア方法も確認しておきましょう。
常に清潔に保つ
基本的なことではありますが、常に地面に触れている肉球だからこそ、肉球を清潔にすることが大切です。
外から帰ってきたら肉球や指の間を拭いたり洗うなどして、汚れなどをきれいに取り除きましょう。
汚れを取り除くのと同時に、肉球になにか異常はないか、よく確認しておきましょう。
乾燥には保湿クリームを塗る
最近では肉球のケアクリームなども販売されてきているので、肉球専用のクリームなどを使って乾燥を防ぎましょう。
肉球や肉球の間にクリームを塗る際には、指を広げたり、軽く引っ張りながらマッサージをすると足先の血流の循環も良くなります。
ホホバオイルやミツロウのように舐めても大丈夫な原材料のものもありますので、原材料のチェックもしっかり行いましょう。
肉球周りの毛をカットする
肉球の間の被毛が長くなってしまい、肉球の表面を覆っている状態だと汚れがついたり、フローリングなどで滑りやすくなります。
定期的にトリミングサロンや動物病院できれいにカットすることをおすすめします。
肉球周りぐらいなら自分でやることも不可能ではないですが、プロに任せてしまった方が安心でしょう。
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ケガをしやすい時間帯の散歩を避ける
散歩は犬の肉球が地面に接するため、夏場のアスファルトや砂浜は日差しが強く大変危険です。
日中は避け、気温が低い朝の時間や、日が暮れた夜間などに散歩に行くようにしましょう。
その際、散歩前にアスファルトに触れてみて、暑くないか確認してみることをおすすめします。
また大雨など天気の悪い日に無理に散歩をすることで足元が見えず、かえって怪我をする場合があります。
そうしたときは代わりに室内で遊ぶことで楽しんでもらいましょう。
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愛犬が肉球を舐める理由は?
単なるお手入れの場合は、お手入れが終われば舐めることもなく、舐め方も穏やかです。
ですがときに、肉球を舐め続けているケースもあります。
しきりに舐め続ける場合、以下の可能性が考えられます。
①痒みがある
痒みがある場合は舐めるだけでなく手先全体を口の中に入れてしゃぶるようになったり、噛むようになることもあります。
この場合、細菌などの感染や、アレルギーが考えられます。
食物アレルギーはもちろんのこと、常に地面に触れている肉球はさまざまな影響を受けやすいです。
舐めるだけではなく噛むこともあるため、早めの治療が必要になります。
②暇つぶしやストレス
暇つぶしやストレス解消のために舐め始め、それがクセになってしまい問題行動になってしまうことがあります。
飼い主さんとのコミュニケーション不足や生活環境の変化による緊張など、自分を落ち着かせるために手を舐め始めているうちに習慣になってしまうことが多いです。
見かけたらやめさせるのではなく、ストレスを解消してあげたり、暇つぶしの対象をほかのものに移す方が良いです。
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③トラブルを抱えている可能性
舐めるクセが続き、唾液をそのままにしておくと皮膚炎を起こすことがあります。
この他にも地面からの刺激を受ける場所である肉球や肉球の周辺は、皮膚に関するトラブルが起こりやすい場所でもあるのです。
全く肉球を舐めないようにやめさせるのは難しいため、明らかに回数が増えている場合や、舐め続けているときには動物病院へ行きましょう。
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愛犬の肉球トラブルで動物病院を受診すべきタイミングは?
肉球に異変を見つけた際、動物病院に行くべきか迷うことがあります。
そんなときは以下の点に注目してみてください。
- 肉球がはがれている
- 痛み
- 出血
- 悪臭
- 妙に肉球が硬くなった
- 腫れている
- 形がおかしい
- 不自然な歩き方
これらを確認し、気になる様子が見られる場合には動物病院で診てもらうことをおすすめします。
肉球のトラブルが見られなかったとしても、噛んでいたり舐め続けていたりと、異変があれば受診してみましょう。
早めに受診しておくことで、早期発見早期治療が可能になるケースも多いですよ。
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この記事の執筆者
ライター/JKCトリマーB級/JKCハンドラーC級/愛玩動物飼養管理士2級/訓練士補 キャットグルーマーC級/日本化粧品検定1級
動物病院併設サロンでの勤務歴も活かし、ペットがいつまでも健康で幸せに暮らせるよう美容面を中心に、しつけの相談、食事やおうちでのお手入れ等のアドバイスをさせていただいています。
愛犬はトイ・マンチェスター・テリアの"もぐ"です。小型犬ですが好奇心旺盛で楽しいことが大好き。
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