日本では、猫の飼い主さんの間で「うどん職人」や「餅こね」などと呼ばれている、愛猫のふみふみ。
実は英語でも、「(水と粉)をこねる、(パン生地)を練る」という意味のあるkneadという動詞を使って、猫がふみふみする動作を表します。
猫がふみふみするのは、赤ちゃん猫の頃、母猫のおっぱいを前足でもみながら母乳を飲んでいた名残りだとか。
そう思うと、ますます愛猫のふみふみが愛おしく感じられますね。そんな猫のふみふみに隠された秘密について探ってみました。
この記事の結論
- ふみふみは子猫の頃、授乳中の母猫に対して行っていた仕草の名残り
- きちんと離乳を済ませて成長すると、ふみふみしなくなる猫もいる
- 一般的にふみふみは飼い主さんへの愛情や安心感の表れだが、ストレスや不安解消など要注意な場合もある
- 愛猫にふみふみしてもらいたかったら、まず飼い主さんが親猫のように愛猫へ愛情を注ぎ、信頼関係を築くこと
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猫の「ふみふみ」とはどういう行動?
前足をグーパーさせながら、タオルや毛布、クッションやぬいぐるみなどのやわらかいものを何回も繰り返し揉む、愛猫のふみふみ。
ときには、ゴロゴロと喉を鳴らしながら、飼い主さんのお腹や寝ている布団をふみふみすることも。
爪を切っていないとちょっと痛いなと思うこともあるけれど、愛猫が飼い主さんを親猫のように慕ってくれていると思うとますます可愛くなりますよね。
「でも、うちの子は、ふみふみしてくれないんだけど」…そんな少々寂しい思いをしている飼い主さんもいらっしゃるようです。
ふみふみをしない猫もいる
猫のふみふみは子猫が最も愛する母猫に対して行う仕草ですが、ふみふみしないからと言ってその子が飼い主さんに愛情を感じていない訳ではありません。
また、愛猫に対する飼い主さんの愛情不足という訳でもありませんから、不安に思わないでください。
あるアンケート調査では、愛猫にふみふみされたことのない飼い主さんは全体の約35%もいたそうです。
成猫になっても子猫のような気持ちになってふみふみする子もいますが、成長過程でふみふみしなくなる子も実は存在するのです。
成長過程でふみふみをしなくなる猫もいる
そもそも、ふみふみは母猫の授乳中に乳飲み子の猫がおっぱいを十分飲むための行為ですから、卒乳すれば自然にその行為をしなくなる子もいます。
授乳期に母猫からお乳を存分に与えられ、離乳期を迎えてからちゃんと乳離れして、自立心のある成猫に育った子はふみふみしなくなる場合もあるのです。
事実、ふみふみする子には、まだ授乳期のうちに何らかの理由で母猫と離れてしまった猫が多いことも確認されています。
猫がふみふみする理由
猫がふみふみするのは、乳飲み子だった頃のお母さんの感触を思い出すから。
そのため、モフモフのもの、やわらかいものに触れたとき、お母さんのようで思わずふみふみしてしまうようです。
ふみふみしているとき、愛猫はどんなことを思っているのでしょう?どんな心理状態なのでしょう?
そして、愛猫がふみふみしているとき、私たちはどう接したら良いのでしょうか。
飼い主さんへの愛情表現
飼い主さんのお腹、抱っこされているときの洋服、寝ているときのお布団などをふみふみするのは、愛猫の愛情と信頼の証。
いつもごはんをくれたり、トイレを片付けてくれたり、お世話してくれる飼い主さんのことをお母さんのように思って、甘えているのでしょう。
そんなときの愛猫の表情は、成猫でもまるで子猫の頃に戻ったかのよう。飼い主さんの顔をうっとり見つめることもあり、思わず抱きしめたくなりますね。
ふみふみしながら喉をゴロゴロ鳴らすことも
飼い主さんをふみふみしながらゴロゴロ喉を鳴らしたら、甘えモード全開でご機嫌も最高潮!
頭や鼻先をすり寄せてきたら、やさしく撫でてあげましょう。
親猫や飼い主さんと一緒で安心しているときやお腹いっぱい食べて満足しているとき、猫は目を細めて気持ちよさそうにゴロゴロ喉を鳴らします。
猫のゴロゴロ音は25Hz(ヘルツ)前後の低周波で、私たち人間に対しても「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促す効果があるそうです。
リラックスしている
ふみふみしながらご機嫌が良いということは、愛猫がリラックスしている証拠です。
大事なソファやクッションが愛猫の爪で傷むのは困りものなので、愛猫がふみふみしてOKなものだけ置くようにして、そっと見守ってあげましょう。
愛猫ご愛用の毛布やタオルでふみふみしながら、リラックスしてそのまま眠ってしまうこともあります。
寝る前のルーティン
ふみふみすることでリラックスできるため、愛猫たちにとっては睡眠導入効果があるのではないかとも言われています。
毎晩、就寝前の習慣のように、ベッドに敷かれた毛布やタオルを前足でふみふみしてから眠りにつく子もいます。
幼い頃、母乳を飲んだ後にお腹が膨らんで眠くなっていた、その感覚が身にしみついているのかもしれません。
ニオイを付けてマーキング
猫の肉球には臭腺があり、ここからフェロモンを分泌して自分の存在や縄張りを主張します。
前足を交互に動かしてふみふみするのも、そうしたマーキング行為の一種と考えられます。
愛猫に新しい寝具を用意してあげたとき、あるいは一緒に寝ようと飼い主さんの寝床に入ってきたとき、ふみふみするのはそのためです。
ストレスや不安の解消
たとえば、飼い主さんに叱られた、どこかへ飛び移るのを失敗した…というとき、気まずさをごまかすように猫がふみふみすることもあります。
ふみふみでストレスを発散し、不安を払拭して心を落ち着かせようと、猫なりに気分転換を図っているのです。
また、愛猫のゴロゴロ音がいつもより低音で大きかったら要注意。上機嫌のゴロゴロとは真逆で、ストレスや緊張感が強い場合だからです。
病気やケガを隠している可能性もありますので、愛猫の様子をよく観察して、具合が悪そうなときはすぐ動物病院へ、
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行動前のウォーミングアップ
オモチャでじゃらすと、飛びかかる前や走り出す前に愛猫がカーペットなどを前足で交互につかんだり放したり、ふみふみすることがありませんか?
人間もランニングなどのスポーツをする前に準備運動をしますが、これはまさに運動前の猫のウォーミングアップです。
狩りをしていた野生時代、猫たちは獲物を前足で捉えていました。そのためには手足のしなやかさが必要で、体を整える名残りではないかと考えられます。
猫のふみふみで注意が必要なケース・対処法
愛猫のふみふみは可愛らしいものですが、ときにはストレスや不安から解放されようとする行為の場合も。
あまりにふみふみが長く続いたり、タオルや毛布などをくわえながらだったりするのは注意が必要です。
問題行動につながる場合や病気が原因という場合もあります。
ふみふみしながらウールサッキングする
ウールサッキングとは、直訳すると「ウール=羊毛」を「サッキング=しゃぶる」行為のことです。
ウールだけでなく、タオルや布、あるいはビニール袋やダンボールなどをしゃぶったり、かじったりしながら愛猫がふみふみするなら要注意。
万が一、愛猫が糸くずや端切れを飲み込んでしまったら一大事です。
食欲不振、腹痛、嘔吐、発熱などを起こし、外科治療が必要となる場合もあります。
ウールサッキングは同じ行動を繰り返す「常同障害」のひとつと考えられ、愛猫のトラウマになるような強いストレスや欲求不満が要因とされます。
また、胃腸の具合が悪くて異物を食べたがる場合もあるので、愛猫のウールサッキングに気づいたら獣医師に相談し、診察してもらいましょう。
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急にふみふみするようになる
今までふみふみしたことのなかった愛猫が、突然、激しくふみふみするようになった場合も、往々にしてストレスが原因と考えられます。
転居したり、飼い主さんやご家族が留守がちになったり、多頭飼いになったり、近所の騒音が激しくなったりしていませんか?
ストレスの原因を探って愛猫が不安を感じないように工夫し、落ち着いてリラックスしながら過ごせる環境を整えてあげましょう。
また、ウールサッキングを伴う場合は誤飲・誤食を防ぐため、対象物は愛猫の手の届かない場所へ隠し、遊び時間を増やすなどしてストレス解消をしてあげてください。
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男の子が後ろ足でふみふみをする
男の子猫が後ろ足でふみふみして、ときどきお尻を振ったりするのは、マウンティングのまねごとが始まった発情期のサイン。
交尾したいのにできないのは愛猫にとってもストレスになるので、繁殖予定がないなら去勢手術をしてあげましょう。
去勢の目安は男の子猫が性成熟し、マーキング行動する前の生後6か月~7か月頃とされています。
ですがもちろん、成猫になってからでも手術は可能です。
ただし、5歳を過ぎたら手術前に必ず疾病などがないか検査し、手術内容についても獣医師からきちんと説明を受けましょう。
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長い時間ふみふみする
愛猫が長時間、あるいはあまりに頻繁にふみふみする場合も、ストレスや不安を抱えていることが懸念されます。
ストレスの原因を取り除いても続くようなら、やはり獣医師に相談しましょう。
過剰なふみふみは、まだ授乳期なのに母猫と引き離されてしまった早期離乳の子猫にも見られ、大人になっても続く場合があります。
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愛猫からのふみふみを叶える方法
ブリーダーさんや保護主さんのおうちではふみふみしていたのに、ずっとのおうちである我が家に来たら愛猫がふみふみしてくれなくなっちゃった。
…それは、もしかしたら、愛猫が大人になった証かもしれませんし、ストレスや不安が解消されて満ち足りているからかもしれません。
あるいは、まだ飼い主さんやおうちに慣れていなくて、愛猫が心からリラックスできていないという場合もありますね。
懐いてくれた証として、愛猫に可愛くふみふみしてもらいたいとお望みの飼い主さんは、以下のことを心がけてみてください。
愛猫に十分な愛情を注いで信頼関係を築く
猫から愛されようとする前に、まずは飼い主さんが猫に愛情を注ぐことです。
一時、川口晴著「犬と私の10の約束」(文藝春秋社刊)や、作者不詳の「犬の十戒」という英文の詩が話題となりました。
これにインスピレーションを得た「猫の十戒」も、さまざまなバージョンが出現しました。その中のひとつ(作者不詳)をご紹介します。
日本愛玩動物協会 長崎県支所
- 第一戒:私の生涯はだいたい15 年くらいしかありませんが、たまに20 年以上生きてしっぽが裂けます。ほんのわずかな時間でもあなたが離れていると腹が立ちます。私が家族になってやるので、そのことを覚悟しなさい。
- 第二戒:あなたが私に望むことを理解するつもりはありません。待っても無駄です。
- 第三戒:私を崇拝しなさい。私にとって、それがいちばん大事なことなのです。
- 第四戒:私を長い時間叱ったり、罰として閉じ込めたりしてはなりません。でも、狭いところは好きなのでダンボール箱を用意するのは許可します。あなたには仕事や楽しみもあり、友だちだっているかもしれませんが、私のお世話をすることに勝る喜びはないはずです。
- 第五戒:私に話しかけなさい。あなたの話していることが何かはどうでもいいですが、話しかけるあなたの声はわかるのです。褒め言葉は特に。
- 第六戒:あなたが私にどんなふうにしてくれたか、私は決して忘れません。恨みは倍返しします。
- 第七戒:私をたたいたりする前に思い出しなさい。私の歯はあなたの手の骨をかみ砕くことぐらい簡単にできるのに、気が向いたときにしかかまないようにしていることを。
- 第八戒:私が言うことを聞かないと怒る前に、まずは自分に問いかけてみなさい。たっぷり食事を与えてましたか?それは私の好きなシーバですか?日なたで気持ちよく昼寝をしているのをじゃましませんでしたか?もしかすると歳を取って体が弱ってきているのかもしれませんが、どのみち私がしたいことに従わないほうが悪いのですから、あきらめなさい。
- 第九戒:私が歳を取っても世話をしなさい。あなたも同じように歳を取りますが、私は歳を取っても可愛いのです。
- 第十戒:最期の旅立ちのときには、そばにいて私を見送りなさい。「かわいそうで見ていられない」とか「私のいないところで逝かせてあげて」なんて言うのは許しません。撫でなさい。撫で続けなさい。可愛いね、いい子だねと言いなさい。言いまくりなさい。そうすれば私は着替えの時間を少し短くしてやってもよいです。まあ、気が向いたら。
猫の飼い主さんなら、「いかにも猫が言いそうなことだ」と、クスリと笑えるのでは?
ある意味、猫の本音かもしれませんので、愛猫と信頼関係を築くヒントとしてお役立てください。
日頃から愛猫が喜ぶスキンシップをする
猫が撫でられると喜ぶ部分は、頭や顔周り、耳の付け根、あごの下など。逆に触られるのを嫌がる部分は、一般的にしっぽや足先です。
また、猫が構われたいときは、以下のような態度を取ります。
猫がかまってほしいとき
- しっぽをピーンと立てて近寄ってくる
- 体をスリスリする
- 頭や鼻先を押し付けてくる
- 「ニャーーーン」と甘えた声で長めに鳴く
- 目の前にゴロンと転がって道をふさぐ
- 後を付いてくる
- お腹を見せてクネクネする
- オモチャをくわえてきて目の前にポトリと落とす
自ら飼い主さんの膝の上に飛び乗ってくる積極的な子がいるかと思えば、中にはスキンシップが苦手な子もいます。
そういう子は無理やり触るとかえって嫌われるどころか、噛まれたり引っ掻かれたりしてケガしないとも限りません。
アンタッチャブルで、そっとしておいてあげましょう。ほどよい距離のお付き合いをしていると、ある日、気まぐれで近づいてくれることもありますよ。
ストレスを溜めない環境を作る
案外、猫は保守的で、環境が変わることが一番のストレスになります。
転居するときは愛猫の使い慣れたベッドやトイレ、オモチャなどを必ず持っていくこと。
新しいものを購入してもすぐに取り替えず、少しずつ慣らすこと。
多頭飼いや新しい家族が増えたときも、いきなり対面させずに最初はケージ越しに会わせるなど、徐々に慣れさせることが大切です。
また、聴覚が人間の3倍以上あるため騒音が大の苦手ですから、静かで落ち着ける場所にベッドを置くことも重要なポイント。
外の景色や飼い主さんの様子が見られる日当たりの良い場所にキャットタワーを設置するなど、昼間過ごすお気に入りの場所も用意してあげましょう。
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ウールやタオルなど猫が好む素材の服を着用する
毛布、タオル、クッションなど、猫がふみふみするのはフワフワ毛の生えたやわらかな母猫の体に似た感触のもの。
ですから、飼い主さんがウールのセーターやタオル地の服などを身に着けたとき、ふみふみしてくる子が多いようです。
また、愛情や信頼関係が築けている子は飼い主さんのニオイが大好き。飼い主さんが脱ぎ捨てた服やさっきまで寝ていた布団にふみふみする子もいます。
無理強いはせずふみふみしてもらえるまで待つ
愛猫がなかなかふみふみしてくれないからと言って、けっしてイラ立ったり、焦ったりしてはいけません。
まして、愛猫を追いかけて無理やり抱っこするのは厳禁。人間だって、知らない人にいきなりハグされたら、不審に思ってその人を避けるでしょう。
愛猫との間に愛と信頼が育つのをじっくり待ちましょう。それに、愛猫からの愛情表現はふみふみに限りませんから。
ふみふみを始めたら構わずに見守る
愛猫が初めてふみふみを始めるのを見たら、思わず歓喜の声を上げそうになるかもしれませんが、慌てず騒がずお静かに。
SNSに写真や動画を上げたいなどと思って、スマホやカメラを構えるのも控えましょう。
愛猫がビックリして、ふみふみを止めてしまうかもしれません。また、ふみふみすると飼い主さんが大騒ぎして、悪いことが起きると勘違いする可能性も。
愛猫がふみふみを始めたら、黙ってそっと見守りましょう。
まとめ
愛猫のふみふみは、子猫の頃に母猫のおっぱいを飲む仕草の名残り。飼い主さんへふみふみするのも、母親のような愛と信頼感を抱いているから。
でも、それだけではありません。愛猫のふみふみにはちょっと心配なストレスサインや不安な感情が込められている場合もあります。
飼い主さん自身がまず親猫のような気持ちで、愛猫を毎日見守りましょう。そして、愛を込めてお世話しましょう。
そんなあなたに、ふみふみだけでなく、愛猫はきっとあなたを幸せな思いにさせる可愛い仕草や行為で応えてくれますよ。
この記事の執筆者
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