愛する猫のお腹が膨らんでいる、なんだかいつもと違う…。もしかしたらそれは「腹水」かもしれません。
猫の腹水は、さまざまな病気が隠れている可能性を示唆する重要なサインです。しかし、見た目だけでは単なる肥満や食べ過ぎと見間違えてしまうことも少なくありません。
本記事では、猫の腹水を早期に発見し、適切な対応をするために、飼い主さんが知っておくべき見分け方、考えられる原因、そして取るべき行動について詳しく解説します。
愛猫の健康を守るための一歩として、ぜひご一読ください。
この記事の結論
- 猫の腹水は、心臓病や腎臓病、FIPなど深刻な病気のサインであり、自然治癒は期待できない
- 見分けるには、お腹の不自然な膨らみや触感、元気・食欲の低下、呼吸の異常などがある
- 腹水の疑いがある場合、迷わず動物病院を受診し、獣医師に正確な情報を伝えることが重要
- 治療後は投薬や食事管理、定期的な通院を通じて獣医師と連携し、再発防止に努める
目次
猫の腹水とは?基本的な知識と危険性

猫の腹水とは、お腹の中に本来ないはずの液体が溜まってしまう状態を指します。腹水は病気そのものではなく、さまざまな病気が原因となって引き起こされる症状のひとつです。
例えば、心臓病、腎臓病、肝臓病といった内臓疾患や、FIP(猫伝染性腹膜炎)などの感染症、さらには腫瘍が原因となることもあります。
単なるお腹の膨らみと見過ごされがちですが、放置すると命に関わる深刻な病気が隠れているケースも少なくありません。
早期に異変に気づき、適切な対応をすることが愛猫の命を守る上で非常に重要です。
猫の腹水が示す病気のサイン
猫の腹水は、体に何らかの異常が発生していることを知らせる重要なサインです。
腹水が溜まることで、お腹の膨らみだけでなく、食欲不振、元気消失、体重減少、嘔吐、下痢、呼吸困難といったさまざまな症状が同時に現れることがあります。
これらの症状は腹水の原因となる病気によって異なりますが、複数の症状が複合的に見られる場合は、深刻な状態である可能性が高いと言えます。
飼い主さんが日頃から愛猫の様子を注意深く観察し、小さな変化にも気づくことが、早期発見の第一歩となります。
腹水と単なる肥満・食べ過ぎの違い
猫のお腹が膨らんでいると、「太っただけかな?」「食べ過ぎかな?」と考えてしまいがちです。しかし、腹水による膨らみと肥満・食べ過ぎによる膨らみには、明確な違いがあります。
肥満の場合は全体的に丸みを帯びていますが、腹水の場合は下腹部が不自然に膨らみ、左右に揺するとチャプチャプと音がすることもあります。
また、腹水の猫は食欲不振や元気がないことが多いのに対し、肥満や食べ過ぎの猫は基本的に元気で食欲も旺盛なことが多いでしょう。これらの違いを理解することが、適切な判断に繋がります。
【要注意】猫の腹水を見分ける具体的なポイント

愛猫の異変に気づくためには、普段の様子をよく観察することが何よりも大切です。
特に腹水の可能性がある場合、見た目や行動に以下のような特徴が現れることがあります。これらのポイントを参考に、ご自身の愛猫の状態をチェックしてみてください。
見た目での判断基準
猫の腹水を見分ける上で、まず確認したいのがお腹の見た目です。日頃から愛猫のお腹の形や大きさを把握しておくことで、変化に気づきやすくなります。
お腹の膨らみ方(丸い・垂れ下がっているなど)
腹水が溜まっている猫のお腹は、単なる肥満とは異なる膨らみ方をすることが多いです。具体的には、以下のような特徴が見られます。
- 下腹部が不自然に膨らむ:お腹全体が丸くなるのではなく、おへそから下にかけてが特に張っているように見えます。
- お腹がたるんで垂れ下がる:特に猫が立ち上がった時や歩く時に、お腹がたるんで地面に近づくように垂れ下がる場合があります。
- 脇腹がくびれて見えない:通常、猫は座ったり横になったりすると脇腹に軽くくびれが見えますが、腹水がある場合はこのくびれが失われ、寸胴に見えることがあります。
触った時の感触(弾力があるか・硬いか)
お腹を優しく触ってみることも、腹水を見分ける重要な手がかりになります。ただし、猫が嫌がる場合は無理に行わないでください。
- 水の貯留感:お腹の膨らみが全体的に柔らかく、振るとチャプチャプと水の音が聞こえることがあります。
- 弾力性:皮膚の弾力性が失われ、触るとプヨプヨとした感触がする場合があります。
- 張り:お腹がパンパンに張っているように感じられ、猫が触られるのを嫌がることもあります。
行動や仕草から読み取るサイン
見た目の変化だけでなく、愛猫の行動や仕草にも腹水を示すサインが現れることがあります。これらの変化は、病状の進行度合いと関連していることも多いです。
元気の有無や食欲の変化
腹水が溜まっている猫は、全身的な不調を抱えていることが多いため、元気や食欲にも変化が見られます。
- 元気がない・ぐったりしている:普段活発な猫が遊びたがらない、寝ている時間が長いなど、活動量が著しく低下します。
- 食欲不振・食欲のムラ:ご飯を食べたがらない、あるいは食べる量が以前に比べて明らかに減るといった変化が見られます。
- 体重減少:腹水でお腹が膨らんでいても、実は体重が減少していることがあります。これは筋肉量の低下などによるものです。
呼吸の様子や排泄の変化
腹水がお腹を圧迫することで、呼吸や排泄にも影響が出ることがあります。
- 呼吸が速い・苦しそう:お腹が肺を圧迫することで、呼吸が浅く速くなったり、開口呼吸をするなど、苦しそうな様子が見られることがあります。
- 排尿・排便の異常:頻尿になったり、逆に尿の量が減ったり、便秘や下痢になるなど、排泄パターンに変化が見られることがあります。
その他、普段と違う行動
上記の他にも、普段の猫には見られないような、以下のような行動や仕草が現れることがあります。
- 隠れるようになる:体調不良を隠すために、普段入らない場所に隠れたり、人との接触を避けるようになることがあります。
- 毛づくろいをしない:体調が悪いため、毛づくろいをしなくなり、被毛が荒れたり、フケが多くなったりします。
- 鳴き声の変化:普段と違う声で鳴いたり、ほとんど鳴かなくなるといった変化が見られることもあります。
猫が腹水を貯める主な原因と関連する病気

猫の腹水は、さまざまな病気が原因となって引き起こされる症状です。
腹水が見られた場合、その根本には何らかの深刻な病気が隠れている可能性が高いと認識し、迅速な原因究明が求められます。
ここでは、猫が腹水を貯める主な病気について解説します。
心臓病や腎臓病による腹水
心臓病や腎臓病は、猫の腹水の主要な原因のひとつです。
心臓病(特に右心不全)の場合、血液の循環が悪くなり、血管内の圧力が上昇することで、血管から水分が漏れ出し、腹水として貯留することがあります。
また、腎臓病が進行すると、体内の水分バランスやタンパク質の調節機能が損なわれ、低タンパク血症を引き起こし、血管内の浸透圧が低下することで腹水が発生することがあります。
これらの病気は、早期発見と適切な治療が重要であり、腹水は病状が進行しているサインである可能性が高いです。
肝臓病による腹水
肝臓は、体内のさまざまな物質の代謝や合成、解毒を行う重要な臓器です。
肝臓病が進行すると、アルブミンなどのタンパク質を合成する能力が低下し、低アルブミン血症を引き起こすことがあります。
アルブミンは血液の浸透圧を保つ上で非常に重要な役割を担っており、その濃度が低下すると血管から水分が漏れやすくなり、腹水として溜まってしまいます。
また、肝臓のうっ血や門脈圧の上昇も腹水の原因となることがあります。肝臓病による腹水は、食欲不振、黄疸、嘔吐などの症状を伴うことが多いです。
FIP(猫伝染性腹膜炎)による腹水
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルスが変異して発症する、猫特有の重篤な病気です。
FIPには「ウェットタイプ(滲出型)」と「ドライタイプ(非滲出型)」がありますが、腹水が見られるのは主にウェットタイプです。
ウェットタイプのFIPでは、血管炎が全身に起こり、血管からタンパク質に富んだ液体が漏れ出すことで、腹水や胸水が貯留します。ウェットタイプのFIPによる腹水は、粘り気が強く、黄色っぽいのが特徴です。
発熱、食欲不振、元気消失、体重減少などの症状も同時に現れることが多く、非常に進行の早い病気として知られています。
腫瘍やその他炎症による腹水
猫の腹水は、悪性腫瘍(癌)や、腹腔内の炎症によっても引き起こされることがあります。
例えば、消化器系の腫瘍やリンパ腫などが腹腔内に転移したり、腹膜に発生したりすることで、がん性腹膜炎を引き起こし、腹水が溜まることがあります。
また、細菌感染などによる重度の腹膜炎や、膵炎などの炎症性疾患が腹腔内に波及した場合も、炎症性の液体が滲出し、腹水の原因となることがあります。
これらの場合、腹水は単なる症状ではなく、深刻な病態の進行を示唆しています。
もしも愛猫に腹水の疑いがある場合:飼い主がすべきこと

愛猫に腹水の兆候が見られた場合、一刻も早く動物病院を受診することが重要です。自己判断せずに、冷静かつ迅速な行動が求められます。
緊急性の判断基準と速やかな受診の重要性
腹水は、放置すると命に関わる重篤な病気が隠れている可能性が高いため、緊急性の高い症状と認識すべきです。
特に以下のような症状が同時に見られる場合は、夜間や休日であっても速やかに動物病院を受診することを強くおすすめします。
- 呼吸困難:お腹の膨らみが胸を圧迫し、呼吸が苦しそうな場合。
- ぐったりしている:意識が朦朧としている、呼びかけに反応が薄いなど、重度の元気消失が見られる場合。
- 嘔吐や下痢が止まらない:脱水症状や体力の消耗が懸念される場合。
- 明らかな痛みがある:お腹を触られるのを極端に嫌がったり、うずくまっている場合。
腹水は進行が早い病気を示唆していることもあり、早期発見・早期治療が猫の命を救う鍵となります。
受診前に飼い主が準備・伝えるべき情報
動物病院を受診する際は、獣医師に愛猫の状態を正確に伝えることが、適切な診断と治療に繋がります。以下の情報を事前に整理しておくとスムーズです。
- いつから症状が出ているか:腹水の膨らみに気づいた時期、その他の症状(食欲不振、元気のなさなど)が現れた時期。
- 症状の変化:症状が悪化しているか、変化はないか。
- 普段の食事内容と量:最近の食事量に変化はあったか。
- 排泄の状態:尿や便の回数、色、量、形状に異常はあったか。
- 既往歴:過去にどんな病気をしたか、現在服用している薬はあるか。
- 飼育環境:多頭飼いか、室内飼いか、野外に出る機会はあるかなど。
可能であれば、お腹の膨らみの写真や動画を撮っておくと、診察の参考になる場合があります。
病院での検査内容と診断の流れ
動物病院では、まず身体検査を行い、お腹の触診や聴診で腹水の有無を確認します。その後、腹水の原因を特定するために、以下のような検査が行われます。
- 血液検査:貧血の有無、肝臓や腎臓の機能、炎症反応、タンパク質(特にアルブミン)の数値などを調べます。
- レントゲン検査:腹水の貯留量や、臓器の異常、腫瘍の有無などを確認します。
- 超音波検査(エコー検査):腹水の詳細な量や性状、腹腔内の臓器の異常、腫瘍の有無などをより詳しく評価します。
- 腹水穿刺・腹水検査:お腹に針を刺して腹水を採取し、その性状(色、濁り、粘り気)や細胞成分、タンパク質濃度などを分析することで、原因疾患の手がかりを得ます。
- ウイルス検査:FIPなどが疑われる場合は、血液や腹水を用いてウイルス検査が行われることがあります。
これらの検査結果を総合的に判断し、獣医師が診断を下し、それぞれの原因疾患に応じた治療方針が提案されます。
猫の腹水に関するよくある質問と回答
猫の腹水について、飼い主さんからよく寄せられる質問にお答えします。腹水に関する正しい知識を持つことは、愛猫の健康を守る上で非常に重要です。
猫の腹水は自然に治る?
残念ながら、猫の腹水が自然に治ることは基本的にありません。
腹水は、何らかの基礎疾患が原因で起こる症状であり、その原因となる病気を治療しない限り、腹水が消えることは期待できません。
むしろ、原因疾患が進行すれば腹水も悪化し、猫の命に関わる状態に陥る可能性が高いです。
腹水が見られた場合は、自己判断せず、速やかに動物病院を受診し、適切な診断と治療を受けることが不可欠です。
早期発見・早期治療が、愛猫の回復に繋がる唯一の道と言えるでしょう。
猫の腹水を予防する方法はある?
腹水そのものを直接的に予防する方法は確立されていませんが、腹水の原因となる病気を予防したり、早期に発見・治療したりすることで、結果的に腹水の発生リスクを低減することは可能です。具体的には、以下の点に注意しましょう。
定期的な健康診断
年に1~2回の健康診断で、隠れた病気を早期に発見することが重要です。特に高齢猫は、心臓病や腎臓病などのリスクが高まります。
バランスの取れた食事
高品質で栄養バランスの取れたフードを与え、肥満を防ぎましょう。
ストレスの少ない環境
猫が安心して過ごせる快適な環境を整え、ストレスを軽減することも免疫力維持に繋がります。
飲水量の管理
特に腎臓病などの場合は、適切な水分摂取が重要になります。
ワクチン接種
FIP(猫伝染性腹膜炎)など一部の感染症に対してはワクチンが存在します(ただしFIPワクチンは現在日本では一般的な接種ではありません)。かかりつけの獣医師と相談し、必要な予防策を講じましょう。
猫の腹水の治療後のケアと再発防止策は?
腹水の治療は、その原因となる病気によって大きく異なります。
例えば、心臓病であれば心臓病薬の投与、腎臓病であれば食事療法や点滴、FIPであれば特効薬の使用(一部の場合)などが挙げられます。
治療が開始された後も、飼い主さんのケアが非常に重要です。
投薬の継続
獣医師の指示に従い、処方された薬を正しく、継続して与えましょう。自己判断で中断しないことが大切です。
定期的な通院
病状のチェックや治療効果の確認のため、定期的な診察や検査が必要です。
食事管理
病気の種類によっては、療法食への切り替えや、塩分・タンパク質の制限など、厳密な食事管理が求められます。
環境整備
安静を保てる環境を整え、ストレスを与えないように配慮しましょう。
日常の観察
再発の兆候(お腹の膨らみ、元気のなさ、食欲不振など)がないか、日頃から注意深く愛猫の様子を観察することが再発防止に繋がります。
まとめ:愛猫の健康を守るために知っておきたいこと
愛猫の腹水は、単なるお腹の膨らみではなく、重篤な病気が隠れているサインである可能性が高いです。
本記事で解説したように、腹水は心臓病、腎臓病、肝臓病、FIP、腫瘍など、多岐にわたる病気が原因となり得ます。
大切な愛猫の命を守るためには、飼い主さんの早期発見と迅速な対応が何よりも重要です。
日頃から愛猫の様子をよく観察する:お腹の膨らみ方だけでなく、元気や食欲、呼吸、排泄など、些細な変化にも気づけるようになりましょう。
愛猫が健康で幸せな日々を送るために、飼い主さん自身が病気について正しい知識を持ち、行動することが何よりも大切です。この記事が、愛する猫の健康維持の一助となれば幸いです。
この記事の執筆者
nademo編集部
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