猫の食事

【獣医師執筆】猫の腎臓病(腎不全)の治療法と療法食

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愛猫の健康が気になる飼い主さんとしては、どんなことに注意すべきか調べている人も多いでしょう。

調査内容にもよりますが、猫の死因として第2位は腎臓病でもある腎不全だとされています。

もし、愛猫が腎臓病だと判明してしまったら、飼い主としてどうすべきなのか。

かかりつけの動物病院を受診することはもちろんのこと、事前情報として知っておきたい猫の腎臓病について、獣医師執筆のもとで詳しい内容をご紹介します。

この記事の結論

  • 腎不全は猫の死因でも非常に多い病気のひとつで、有効な治療方法は見つかっていない
  • 腎機能は一度失うと元に戻ることはないため、早期発見・対策が重要
  • 腎臓病療法食は、腎臓病の動物のために栄養素が調整されたフード
  • 療法食は獣医師の指示をの元で与え、水分もしっかりと補給させることが大切

原 駿太郎

執筆・監修

原 駿太朗

獣医師/ペット管理栄養士/ペット用品取扱士

大学卒業後、総合診療に加え夜間救急、整形外科の専門治療、東南アジアでの診察指導などに従事。
現在ではオンラインペットショップを運営する25Holdings Japanにてグローバル全体の自社ブランドの商品開発をする傍ら、”現役の臨床医”であり続けることにこだわり非常勤獣医師として動物病院に勤務も続ける。

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猫の腎臓病である腎不全とは

猫にとって腎不全とは死因の第2位(調査にもよるが、1位はガンなどが多い)。

そして15歳以上の猫は81%が慢性腎臓病という報告があるように、ある種の宿命ともいわれるほどよく見られる病気です。

腎不全はその重篤度によっていくつかのステージに分けられますが、比較的早期の段階で出やすい症状としては以下のようなものが挙げられます。

  • 水をいつも以上に飲むようになった
  • 猫砂の塊が大きくなった気がする(尿の量が増えた)
  • いつも通り食べているのに痩せた気がする
  • 毛並みが前と比べてボソボソとしてきた気がする
  • 食欲が落ちてきた
  • 嘔吐の回数が増えた

腎不全は腎臓がダメージを受けることによって、十分に機能しなくなる病気でもあります。

進行していくと体重減少や、嘔吐、痙攣、発作、などの全身に影響を与える症状が見られるようになります。

猫の腎不全の治療法

病院

肝心の腎不全になってしまったときの治療法ですが、残念ながら現時点での慢性腎臓病に対する根本的なものはまだ見つかっていません。

それは「腎臓は再生をしない臓器」だから。

そのため一度失ってしまった腎機能が元に戻ることはありません。

ですので、“どれだけ早く気づいて悪化を防ぐ対策をしてあげられるか”ということが重要になってきます。

その対策を考えていくときに、腎不全の進行を遅らせる効果が期待できるのが、腎臓病療法食を用いた食事療法になります。

猫の腎臓病療法食はどんなときに必要?

猫のほとんどは年齢とともに腎機能が徐々に落ちてきます。

腎臓の機能は体にとって必要ない物質を尿として体の外に排出してくれますが、腎機能が落ちると排出のペースが落ちてしまうので体の中に溜まりやすい状況に。

すると尿毒症など命に関わる状態になってしまうことも…。

腎臓病療法食はそんな腎臓病の猫の体に合わせて、体に溜まりやすい成分の配合量などが調整されたフードになります。

療法食は獣医師の判断によって選択する

どのタイミングで療法食を始めるのか、どんな療法食を選択するのかは、獣医師の判断を仰ぎましょう。

療法食にも色々な種類があり、さまざまな病気に対応している療法食が存在しています。

その子ごとに何が必要なのか、何を必要としないのかは、かかりつけの獣医師に相談して、必要かどうかを選択することになります。

療法食を選ぶかどうかで、自己判断はしない

療法食を始めるべきかどうか、どの療法食にするかどうかは、自己判断しないようにしましょう。

療法食は一般的に、健康体の子と比べると一部の成分量を抑えられていることが多く、ここがポイントになっています。

健康体の子に療法食を与えると、体にとって必要となる成分までも摂取できなくなる可能性があります。

まずは獣医師に相談し、その上で選択をすることになるというのが原則です。

猫の腎臓病療法食の特徴

腎臓病療法食は腎臓病を患っている動物のために特別に調整されたフードですが、簡単にまとめると以下のような特徴があるといえます。

①タンパク質・リンの量を制限

②ω3系脂肪酸など不飽和脂肪酸の補給

このうち①はIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)による提言の中で“治療として有効である”とされ、特に意識していきたい重要な項目になります。

タンパク質・リンの量を制限

タンパク質は純粋な肉食動物である猫にとって最も重要ともいえる栄養素なのですが、腎機能が落ちてきてしまっている状況においてはマイナスに働いてしまうことも。

摂取しすぎたり、不要になったタンパク質は体の中で分解され「尿素窒素」という形で尿から排出されます。

ですが、腎機能が落ちてしまっているとこの尿素窒素を排出しきれなくなり、体の中に過剰に尿素窒素が溜まると尿毒症などを引き起こす原因となります。

そのため、腎臓病においては良質なタンパク質を適度に取るようにしつつも、「過剰な」タンパク質の摂取を制限する必要があります。

リンは腎機能が落ちた時、尿素窒素同様に体の外に排出するのが苦手になりやすいミネラルのため、摂りすぎに注意する必要があります。

ω3系脂肪酸など不飽和脂肪酸の補給

ω3系脂肪酸などの不飽和脂肪酸には抗酸化作用や抗炎症作用があることが知られ、腎臓病になる前から積極的に摂取してもらいたい栄養素になります。

腎臓病になると今までと比べて気をつけることが増え、食べられるフードの種類も限られてしまうことが多いです。

ただ、不飽和脂肪酸については病気になる前と変わらずしっかりと摂取していくようにしましょう。

猫の腎臓食はどこでも入手できる

キャットフードの種類と目的

腎臓食は『療法食という扱いのフードになります。

療法食は、基本的には動物病院で獣医師の処方のもとでのみ購入が可能となります。

かかりつけの動物病院の先生の指示をしっかりともらって購入をするようにしましょう。

通販サイトでも購入できるようになっていますが、始めは必ず獣医師の指示の下で選択するようにしてください。

ペットショップなどで療法食と同じく「腎機能に配慮した〜」などと記載されたフードを見かけたことはありませんか?

これらは総合栄養食の範囲の中で栄養素を配慮しているだけで、実際は療法食ではないフードもたくさんありますので混同しないよう注意しましょう。

猫の腎臓病でフード以外に気をつけたいこと

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獣医師から療法食の指示があれば、その指示通りに食事を徹底することは重要なポイント。

ですが、気をつけるべきはそれだけではありません。次の2つについても確認しておきましょう。

水分補給をさせてあげる

療法食へ切り替える食事療法以外にも、腎臓病になってしまった猫のためにしてあげられることがあります。

それはしっかりと水分補給をさせてあげることです。

腎臓病になると腎機能の低下から尿を濃くすることが苦手になるので、薄くたくさんの尿が出るようになります。

そうなると体は脱水状態に簡単になってしまうので水分を積極的に補給していくことがとても重要になります。

お家の中で常に新鮮なお水が飲める状況を作ってあげるようにしましょう。

ウェットフードで水分補給

水分を補給する時に、水を飲ませる以外にウェットフードを与えるというのもひとつのアイデアです。

ドライフードはその保存性を保つために水分の量が10%以下まで抑えて作られています。

そのため、ドライフードだけだと食事から摂取できる水分量は非常に少なくなります。

猫は元々水を飲む量が少なくなりがちな動物ですので、無理に水を飲ませようとするよりもウェットフードを毎日の食事の中に取り入れると簡単です。

ウェットフードであれば食事から摂取できる水分量を増やすことができるので、ドライフードだけではなくウェットフードやフレッシュフードも取り入れてみましょう。

この記事の執筆者・監修者

原 駿太郎

執筆者情報

原 駿太郎

獣医師/ペット管理栄養士/ペット用品取扱士

大学卒業後、総合診療に加え夜間救急、整形外科の専門治療、東南アジアでの診察指導などに従事。
現在ではオンラインペットショップを運営する25Holdings Japanにてグローバル全体の自社ブランドの商品開発をする傍ら、”現役の臨床医”であり続けることにこだわり非常勤獣医師として動物病院に勤務も続ける。

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