猫は普段からあまり水を飲まない動物であることは、愛猫家の方なら知っていることでしょう。
そのため、日常的に水を飲ませようと意識していると思いますが、多尿である場合には何が起きているのか心配になりますよね。
一般的に多尿ということはそれだけ飲水量が多い、ということでもあり、飲水量が多い猫は多くありません。
飼い主として心配になってしまう多尿の原因、そして治療法や予防法についてもまとめました。
この記事の結論
- 猫の正常な尿量は1日あたり、体重1kgにつき20~30ml程度と言われている
- 加齢や食事の影響、ホルモン異常や腎疾患などが原因となり、多尿になる
- 糖尿病や慢性腎不全、尿崩症などの腎疾患が病気としては多く見られる
- 健康的な食事と飲水、適度な運動に定期的な健康診断が何よりも大事
目次
猫の多尿を判断する基準と仕組み

猫の正常な尿量は、一般的に1日あたり体重1kgにつき20~30ml程度とされています。これを超えて、たとえば1kgあたり40ml以上の尿を排出している場合、多尿と判断されることが多いです。
また、多尿はしばしば水を大量に飲む多飲とともに現れるため、飲水量の増加も判断基準のひとつとなります。
そもそも猫は飲水量が多い動物ではなく、どちらかといえば飲水量の少ない動物でもあるため、多尿になるには何かしらの不調があると考えられます。
多尿が起こる仕組み
腎臓は体内の水分バランスを調整する重要な役割を担っています。通常、腎臓は尿を濃縮し、体に必要な水分を保持します。
しかし、何らかの原因で腎機能が低下したり、ホルモンの異常が生じたりすると、尿を適切に濃縮できなくなり、多尿が発生します。
また、糖尿病などの疾患では、尿中に糖が排出されることで水分の損失が増え、多尿の症状が現れることがあります。
多尿になりやすい猫種
多尿の原因となりやすい腎疾患は、普段から飲水量の少ない猫にとって注意すべき病気です。
これは猫種に関わらず、全猫種において注意したいポイントでもあるので、以下はあくまでも一例であると捉えておくのが良いでしょう。
- メインクーン(腎疾患が多い傾向)
- シャム(甲状腺機能亢進症が多い)
- アビシニアン(糖尿病のリスクが高い)
- ペルシャ(腎疾患の遺伝的リスクがある)
多尿の症状が続く場合は、早めに動物病院を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
正常な尿量と異常の基準値
多尿とは、1日に体重1kgあたり50ml以上の尿が出ることです。例えば、体重4kgの猫であれば、1日に200ml以上のおしっこをしている場合、「多尿」と判断されます。
猫の体は効率よく水分を再吸収するようにできているため、この基準を超える場合は「腎臓などの機能が低下し、水分を体内に留めておけなくなっている」可能性が疑われます。
多くの場合、多尿になると失った水分を補おうとして水をたくさん飲むようになるため、「多飲多尿(たいんたにょう)」というセットの症状で現れます。
【体重別早見表】おしっこの正常量と多尿の目安
愛猫の体重に合わせて、正常範囲と注意が必要なラインを確認してみましょう。
| 体重 | 1日の正常な尿量 (目安) | 多尿の基準値 (これを超えたら注意) |
|---|---|---|
| 3kg | 60ml 〜 120ml | 150ml 以上 |
| 4kg | 80ml 〜 160ml | 200ml 以上 |
| 5kg | 100ml 〜 200ml | 250ml 以上 |
| 6kg | 120ml 〜 240ml | 300ml 以上 |
| 7kg | 140ml 〜 280ml | 350ml 以上 |
※正常量は個体差や食事(ドライフードかウェットフードか)によっても異なりますが、体重1kgあたり20〜40ml程度が一般的です。
「多尿」と「頻尿」の違いに注意
「おしっこの回数が多い」=「多尿」とは限りません。似ているようで全く原因が異なる「頻尿(ひんにょう)」との違いを理解しておきましょう。
| 項目 | 多尿(たにょう) | 頻尿(ひんにょう) |
|---|---|---|
| 1回の尿量 | 多い(色が薄いことが多い) | 少ない(ポタポタ程度) |
| 1日の回数 | 普通 〜 多い | 明らかに多い(何度もトイレに行く) |
| 1日の総量 | 増える | 変わらない、または減る |
| 主な原因 | 腎臓病、糖尿病、ホルモン異常など | 膀胱炎、尿路結石など |
| 緊急性 | 内臓疾患の疑いあり(早めの受診) | 痛みを伴うことが多い(早急な受診) |
nademo編集部のポイント
トイレに行く回数だけを見るのではなく、「1回に出ている量」と「色(薄くないか)」をセットで観察することが大切です。
猫の多尿の原因

多尿になる原因として、まず第一に考えられるのが水をたっぷりと飲んだという状況です。
単純に飲水量が多ければその分、尿量も多くなるというのは猫でも人間でも同じこと。
ですが注意しなければいけないのは、多飲多尿が継続することや、他の原因であることです。
大量の水を飲んだ場合
猫が一時的に大量の水を飲むと、それに伴い尿の量も増加します。たとえば、暑い日や運動後など、体温調節のために水分摂取が増えることがあります。
また、乾燥した環境にいる場合やドライフードを中心に与えられている猫は、自然と飲水量が多くなり、それに応じて尿量も増えます。
こうした生理的な理由による多尿は問題ありませんが、特に理由もなく急に水を大量に飲むようになった場合は、基礎疾患の可能性があるため注意が必要です。
加齢
年齢を重ねると猫の腎機能は徐々に低下し、尿の濃縮能力が衰えるため、薄い尿を大量に排出するようになります。
特にシニア期(7歳以上)の猫では、慢性腎不全のリスクが高まり、それに伴う多尿が発生しやすくなります。
加齢に伴う腎機能の低下は自然な変化ですが、進行すると脱水や食欲低下を引き起こし、全身状態の悪化につながることがあります。
そのため、高齢猫には定期的な血液検査や尿検査を受けさせ、腎機能をチェックすることが推奨されます。
食事の影響
食事内容も猫の尿量に影響を及ぼします。たとえば、塩分の多い食事を摂取すれば、体内のナトリウム濃度を調整するために喉が渇き、水分摂取が増えることで尿量が増加します。
また、ウェットフードやスープ状のフードを多く与えると、水分摂取量が増えるため、一時的に尿量が増えることがあります。
逆に、ドライフード中心の食生活では水分摂取が少なくなりがちですが、それでも飲水量が過剰に増える場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。
健康な猫であれば食事による影響は一時的なものですが、継続的に多尿が見られる場合は獣医師の診察を受けることが重要です。
ホルモン異常
ホルモン異常によっても多尿が引き起こされることがあります。特に猫に多いのが「甲状腺機能亢進症」です。
この病気では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることにより、新陳代謝が活発になることで体の水分代謝が増加し、多尿の症状が現れます。
また、糖尿病も猫の多尿の原因となります。糖尿病では血液中の糖が尿に排出されることで水分の損失が増え、それを補うために猫は大量の水を飲み、大量の尿を排出するようになります。
これらの病気は放置すると深刻な健康問題を引き起こすため、早期の診断と治療が必要です。
腎疾患
猫の多尿の原因として最も重要なのが腎疾患です。
特に「慢性腎不全」は高齢猫に多く見られる病気で、腎臓の機能が徐々に低下し、尿の濃縮ができなくなるため、大量の薄い尿を排出するようになります。
「尿崩症」という病気では、抗利尿ホルモンの分泌異常により腎臓が水分を十分に再吸収できず、大量の尿を排出してしまいます。
腎疾患は進行性の病気が多く、早期に適切な治療を受けることで症状の進行を遅らせることができます。そのため、定期的な健康診断を受け、早期発見・早期治療を心がけることが大切です。
薬の副作用
一部の薬剤も猫の多尿を引き起こすことがあります。特に「ステロイド剤」は副作用として多尿や多渇を引き起こすことが知られています。
これはステロイドが体内のホルモンバランスに影響を与え、腎臓の水分再吸収機能に変化をもたらすためです。
また、「利尿剤」も尿の排出を促進する薬のため、服用中は尿量が増えることが一般的です。その他にも、血圧を下げる薬や特定の抗生物質が多尿を引き起こすことがあります。
これらの薬剤を投与している場合は、獣医師の指示を守り、異常な多尿が見られる場合は適切な調整を行うことが重要です。
猫の多尿時に考えられる病気

多尿の原因が病気であった場合には、次のようなものが一般的には考えられます。
どんな病気であるのかは、もちろん正確な診断が必要ですが、事前知識として知っておくと良いでしょう。
糖尿病
糖尿病ではインスリンの不足や抵抗性により血糖値が上昇し、尿中に糖が排泄されることで多尿の症状が現れます。
糖尿病の猫は水を大量に飲み、食欲は増すものの体重が減少することが特徴です。進行すると、ケトアシドーシスを引き起こし、命に関わる状態になることもあります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで代謝が活発になり、水分代謝が増加し、多尿や多渇の症状が見られます。
初期は一見元気な姿が見られることも多いので気づきづらい一方で、進行すると体重減少や多飲多尿などが見られるようになります。
高齢猫に多い傾向にあり、下痢・嘔吐や過剰な食欲も伴うことがあります。
慢性腎不全
慢性腎不全では、腎機能の低下により尿を濃縮できなくなり、大量の薄い尿が排出されるようになります。
原因のひとつは加齢だと言われていますが、その他にも外傷や感染症、中毒、免疫疾患などが原因です。進行すると、食欲不振や体重減少などの症状も見られます。
腎臓障害は一度進行してしまうと元には戻らなくなるため、事前の予防がとても大事な病気とも言えます
尿崩症
尿崩症は抗利尿ホルモンの異常により、腎臓が水分を十分に再吸収できなくなり、多尿が見られる病気です。
原因には中枢性と腎性の2種類があり、中枢性は下垂体の異常により、バソプレシンがうまく分泌されないことが原因です。
腎性は甲状腺機能亢進症や腎盂腎炎により、バソプレシンがうまく機能しないことが原因となる病気です。
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は猫の女の子にのみ発生する病気で、子宮内に膿が溜まることで全身状態が悪化し、多尿・多渇の症状が現れることがあります。
細菌感染などによって子宮内に膿が溜まってしまい、陰部からの膿や血が見られるようになります。
初期は無症状であることが多いものの、症状が進行すると食欲の低下や多飲多尿、嘔吐やお腹の張りなども見られます。
自宅でできる!猫のおしっこ量の測り方

「多尿かどうか確かめたいけれど、どうやって測ればいいの?」 そんな飼い主さんのために、nademo編集部おすすめの自宅でできる計測テクニックをご紹介します。
システムトイレの場合(シートの重さを測る)
システムトイレを使用している場合は、比較的正確に計測できます。
- 未使用のペットシートの重さをキッチンスケールで測っておく(例:Aグラム)。
- 24時間使用した後の使用済みシートの重さを測る(例:Bグラム)。
- 「B - A」が、おおよその1日の尿量です。
※多頭飼いの場合は、カメラを設置するか、部屋を分けないと個別の量は測れないため注意が必要です。
固まる猫砂の場合(砂の塊の大きさ・数で推測)
固まる砂の場合は、正確な「ml」を出すのは難しいですが、変化には気づけます。
- 塊の数を数える: 普段1日3個なのが、5個、6個と増えていないか。
- 塊の大きさを比べる: 普段ピンポン玉サイズなのが、テニスボールや野球ボールサイズになっていないか。
- 重さで測る(上級編): おしっこで固まった砂の塊をビニール袋に入れて重さを測り、そこから「乾いた状態の砂の重さ(推定)」を引くことで、ある程度の水分量を推測できます。
100円ショップで売っている「計量カップ」や「おたま」をトイレ掃除専用にして、新しい砂で擬似的に50mlの水などを垂らしてみると、「50mlだとこれくらいの塊になるんだ」という基準がわかりますよ!
猫の多尿の予防法

猫の多尿を予防するには、基本的な健康のためのケアが何よりも大切です。
常日頃から愛猫の変化に気づけるようにし、健康的な生活を送ることができればそれが最善。
病気を予防できるならそれが何よりですから、予防法を把握して普段から意識してみましょう。
定期的な健康診断を受ける
健康診断を受けることで、腎疾患や糖尿病などの早期発見が可能となります。特に高齢猫は腎機能が低下しやすいため、年に1~2回の健康診断が推奨されます。
10歳を超えてくるようであれば、年に2~3回といったペースで健康診断を受ける方が良いでしょう。
健康診断を定期的に行うことで病気の進行を防ぎ、早い段階で治療を行うことができるようになります。
バランスの取れた食事を与える
猫の健康維持には、タンパク質やビタミン、ミネラルが適切に含まれた食事が必要です。
腎臓に優しい食事を意識しつつ、良質な動物性タンパク質(チキン・ターキー・魚など)を適量含むフードを選ぶというのが良いでしょう。
植物性タンパク質が多すぎると消化しにくく、腎臓に負担がかかることがあります。塩分控えめの低ナトリウムのキャットフードや、リンやリン酸塩が控えめのものでも良いでしょう。
ただ、一般的に主食にできる総合栄養食などであれば、栄養バランスを考えて作られているので安心して与えられるものが多くなっています。
新鮮な水を常に用意する
そもそも猫は飲水量の多くない動物なので、単純な多飲によって多尿になることはあまり多くありません。
ですが、病気によって多飲多尿となることもあるため、常日頃からどれくらいの飲水量であるかを確認することは重要です。
できれば目盛り付きの給水器を用意してあげて、毎日どれくらいの水を飲めているのか量っておくと安心できます。
いつでも新鮮な水を飲めるように用意し、猫の動線を考えて用意してあげることが、飲水量アップにつながります。
適度な運動をさせる
健康的な生活のためには、誰であろうと適度な運動が大事であることは間違いありません。
マイペースだからといって放置するのではなく、運動不足を防ぎ、血流を促進することで、健康維持につながります。
単独でも遊べるような環境構築はおすすめですが、飼い主と共に遊ぶ時間も猫にとっては必要不可欠です。
猫の多尿の治療法

多尿を改善するためには、多尿の原因となる病気に応じた治療が必要です。
たとえば、糖尿病の場合はインスリン治療、慢性腎不全の場合は食事療法や点滴治療が行われます。
ホルモン異常や感染症の場合も、適切な薬物療法が必要となります。
原因がどのようなものであるかをまずは突き止め、そしてその原因に適した治療法が選択されるのです。
この記事の執筆者
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