愛猫の健康に関わる治療費は、痛い出費だとしても惜しむわけにはいきません。
ですが、人間の医療技術が進歩するように、犬猫などの動物に関する医療技術も進歩し、それに伴って高額になってきています。
対応できる病気やケガの種類が増える一方、飼い主としての出費も増えていきますよね。
現在ではどれくらいの費用感になっているのか、手術や入院にかかる費用について、詳しくまとめました。
この記事の結論
- 猫を飼う上で一生涯に必要となる経費は、大体150万円ほどである
- 食事や健康などの毎月かかるものとは違い、治療費は一回あたりの費用が大きくなりがち
- 治療費は専門性の高さや治療できる病気の幅が広がり、高くなる傾向にある
- 通常の治療では数千円から1万円程度で、特定の病気治療になると10万円近い金額になりがち
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猫の生涯必要経費は約150万円
まずは一般的な猫の生涯必要経費について、ペットフード協会がまとめた令和5年 全国犬猫飼育実態調査の資料があります。
この資料によると、2023年の猫の生涯必要経費は約150万円となり、前年度よりは20万円ほど上がりました。
2018年頃と比べればわかるように、生涯必要経費は40万円増えており、上下する年はあるものの増加傾向です。
経費の内訳は次の通り。
- 市販の猫主食用キャットフード
- 市販の猫おやつ用キャットフード
- 獣医にかかる医療費
- 猫の保険
- 市販の猫の雑貨
- 市販の猫のおもちゃ、衣類
などで、月平均の支出としては約8,005円です。こちらも2018年から2,000円弱、上がっています。
食費よりも医療費・保険代の方が高くなりがち
必要経費のうち、その多くがキャットフードではないか?というイメージの方も多いはず。
ですが実際には、毎月の食費と健康に関わる部分の経費としては、ほぼ同額やそれ以上となっています。
年度 | キャットフード(合計) | 医療費・保険(合計) |
---|---|---|
2018年 | 3,691円 | 4,141円 |
2019年 | 4,048円 | 5,365円 |
2020年 | 3,914円 | 4,676円 |
2021年 | 3,914円 | 6,098円 |
2022年 | 4,233円 | 4,461円 |
2023年 | 4,550円 | 5,388円 |
ひと月ごとにかかる経費は、キャットフードで約4,000円。医療費・保険もあわせて5,000円を超えます。
「食費さえなんとかなれば」というイメージをもし持っているのであれば、医療費・保険でも同額程度がかかると想定しておいた方が良いでしょう。
支出は犬の半分でも、増加傾向にある経費
2023年の犬の飼育経費では、約250万円となっています。猫の倍近くありますよね。
この数字を見ると猫はそこまでお金がかからない、という印象になるかもしれません。
ですが、現実として過去数年と比べても必要経費は上がってきています。
もしいま、愛猫が子猫だったとしたら、シニア期の頃には大きく上がっているかもしれませんね。
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猫の治療費が高くなる理由
高額になってきているといわれる猫の治療費・保険代。
月平均で見れば4,000円ほどですが、実際に治療を受けてみると数十万円になる、ということも少なくありません。
なぜここまで高くなるのでしょうか。
猫には公的な医療制度・保険がない
人間の場合、国民健康保険や社会保険などが用意されており、負担額は原則3割となっています。
毎月、一定額を収めており、治療を受けた際には保険証を提示するだけで実際に支払うのは3割だけ。
ですが猫の場合、こうした公的な医療制度・保険制度が用意されていません。
どんな治療になろうとも、愛猫が受けた治療は全額、飼い主さんが負担することになっています。
治療の専門性が高くなってきている
一昔前と比べれば医療技術は進歩しているので、難易度の高い治療も可能になってきています。
できることが増えていく一方で、難易度が高ければ治療費も高額になってしまうもの。
それでも費用を惜しまない、という飼い主さんも多いですが、負担は当然大きくなりますよね。
治療費は動物病院ごとに異なる
動物病院での治療費は、病院側が自由に決められるようになっています。
人間の場合であれば大体の費用感が明確であるものの、動物の場合には異なっている、という実情があります。
人間の病院ほど病院自体の数も多くないため、治療費に大きな差が出ることもあります。
獣医師団体が基準料金を決めることは禁じられている
なぜ動物病院ごとに治療費が異なるのかというと、独占禁止法によって禁じられているからです。
獣医師の診療料金は、獣医師団体が基準料金を決めてはいけない決まりになっています。
獣医師同士が協定して決めることも禁止なので、各々料金を決めて価格競争を維持できるように、としています。
猫の治療費目安
内容 | 中央値 |
---|---|
初診料 | 1,500円 |
再診料 | 750円 |
往診料 | 2,500円 |
時間外診療(平日) | 2,500円 |
時間外診療(休診日) | 2,500円 |
時間外診療(深夜) | 6,250円 |
入院料(猫) | 2,500円 |
入院料(ICU) | 4,000円 |
診断書 | 2,500円 |
猫混合ワクチン(FeLVを含まないもの) | 4,000円 |
猫混合ワクチン(FeLVを含むもの) | 6,250円 |
猫ワクチン(FIV) | 4,000円 |
猫ワクチン(FeLV) | 4,000円 |
輸血料(猫) | 11,250円 |
猫去勢(麻酔料除く) | 12,500円 |
猫避妊(卵巣切除、麻酔料除く) | 22,500円 |
猫避妊(卵巣子宮切除、麻酔料除く) | 22,500円 |
日本獣医師会の令和3年度調査から、猫の治療費目安として上記にまとめました。
初診料や再診療などは犬猫全体の費用となっており、後半には猫を中心とした費用となっています。
迎え入れ直後にはワクチン接種や去勢・避妊手術なども検討すると思います。
その治療費目安となるので、参考にしてみてください。
猫風邪の治療費(実録)
筆者の愛猫が猫風邪をひいたときの治療費については、以下の通りとなりました。
内容 | 合計治療回数 | 合計費用(税込) |
---|---|---|
初診料・診察料 | 5回 | 5,720円 |
注射 | 3回 | 13,200円 |
点眼点鼻薬 | 3本 | 9,900円 |
合計 | - | 28,820円 |
お迎えしたばかりの子猫で、生後4か月。診断の結果、猫風邪であることがわかりました。
初診料を含めて通院は合計4回。初診から1週間で3回の注射と、合計3本の点眼点鼻薬でした。
避妊手術の治療費(実録)
子猫の避妊手術を行った際の治療費は以下のとおりです。
内容 | 合計治療回数 | 合計費用(税込) |
---|---|---|
診察料 | 3回 | 2,640円 |
術前検査 | 1回 | 22,000円 |
避妊手術 | 1回 | 33,000円 |
エリザベスカラー | 1個 | 1,650円 |
抜糸 | 1回 | 1,100円 |
合計 | - | 60,390円 |
避妊手術の前には術前検査が必要となるため、これだけでもそれなりの費用がかかりました。
これに加えて避妊手術が前述した相場よりやや高めでもあったため、これだけでも合計で55,000円(税込)に。
一生涯で一度きりのことではありますが、それなりの費用がかかるのだとわかるでしょう。
猫の病気別治療費
傷病名 | 平均値 | 中央値 |
---|---|---|
慢性腎臓病 | 272,598円 | 71,517円 |
嘔吐・下痢・血便 | 37,601円 | 8,748円 |
膀胱炎 | 45,741円 | 12,852円 |
胃炎・胃腸炎・腸炎 | 36,334円 | 8,748円 |
心筋症 | 164,135円 | 50,933円 |
結膜炎 | 18,647円 | 5,368円 |
外耳炎 | 28,166円 | 7,560円 |
元気喪失 | 48,947円 | 12,420円 |
糖尿病 | 321,831円 | 122,319円 |
皮膚炎 | 24,592円 | 6,480円 |
挫傷・擦過傷・打撲 | 24,756円 | 5,724円 |
尿石症 | 82,175円 | 14,256円 |
歯周病・歯肉炎 | 71,061円 | 20,196円 |
膵炎 | 209,220円 | 54,714円 |
鼻炎・副鼻腔炎・上部気道炎 | 39,019円 | 7,639円 |
甲状腺機能亢進症(バセドウ病) | 191,908円 | 60,588円 |
猫伝染性腹膜炎 | 117,439円 | 40,360円 |
膀胱結石 | 122,033円 | 21,596円 |
くしゃみ・鼻汁 | 22,877円 | 6,372円 |
便秘 | 59,061円 | 10,021円 |
2019年のアニコム家庭どうぶつ白書では、猫の病気別治療費についてまとめられています。
上記20種類は傷病件数として多いものとなっており、もっとも多いのが腎不全などを含んだ慢性腎臓病です。
これだけでもわかるように、中央値は約7万円ですが、平均値は約27万円となっています。
治療費が高額になっている傷病は年間診療回数も多くなっているため、治療が長期になりやすく、治療費も高額になります。
愛猫の高額治療に備えるならペット保険
猫の治療費が高額になってきている現在、もしもに備えるならばペット保険を検討すると良いでしょう。
通常であれば治療は全額自己負担となってしまうところ、人間と同じように保険加入しておけば臨時の出費を抑えられます。
ペット保険に加入していると愛猫が病気やケガになったとき、一定の割合で保険会社が補償してくれます。
保証割合は「100%、70%、50%」などがあり、どんな病気を補償してくれるのか?といったことも選べます。
補償内容がどういったものなのか、支払う保険料と比較して自分たちに合ったものを選ぶのが良いでしょう。
必ずしもペット保険でなければいけない、ということはありませんが、ペット保険を選ぶメリットはたくさんあります。
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貯金よりも保険の方が心理的負担も少ない
ペット保険であろうと貯金であろうと、治療費を支払うことには変わりありません。
そのためペット保険に加入して保険料を支払うのではなく、貯金していればいいのでは?と思う方もいるでしょう。
ですが、ペット保険に加入しておけば緊急時にも負担なく対応できますし、高額治療方法となっても悩みづらくなります。
高額治療になってしまった場合、貯金が一気に消えてしまうのは心理的にも辛いでしょう。
ペット保険は毎月の保険料の支払いはありますが、万が一、高額治療になった場合に飼い主の経済的な負担を抑えることが出来ます。
想定していない高額出費を防げる
治療内容によっては高額出費になることも少なくない、というのが近年の猫の治療です。
そんなときに貯金だけでは、もしかしたら足りなくなってしまうかもしれません。
その点、ペット保険に加入しておけば、急な高額出費であっても大半を補償でカバーすることができます。
もちろん何ら負担はない、というだけの貯金があればそれで良いでしょう。
相談サポートなども用意されていることがある
ペット保険には、必要なときにペット保険としての保険金が下りる、というのもありますが、それ以外の特典もあります。
例えばそのひとつが相談サポートで、愛猫になにかあったとき、すぐに相談することができるというサポートのことです。
飼い始めは特に気になることも多く、「すぐに相談したいけれどかかりつけの病院は休院」ということもあるでしょう。
そんなときに相談になってくれる専門家がいれば、飼い主さんとしても少しは不安が拭えるのではないでしょうか。
猫のペット保険の注意点
ペット保険に加入しておけば、愛猫に何かあっても耐えることが可能です。
しかし、メリットばかりではありません。デメリットもありますので、必ず確認しておきましょう。
特にもっともトラブルとなりやすいのが、「もらえるはずだった保険金がもらえなかった(対象外だった)」ということです。
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年齢制限がある
ペット保険とはいっても、あくまで保険制度のひとつです。
人間と同様に、年齢を重ねれば重ねるほどに、加入する条件は厳しくなります。
一般的には1歳から10歳ほどまでが加入できる期間で、それ以降は厳しいと考えておきましょう。
また、特に注意したい時期は高齢であるにも関わらず、高齢になるとペット保険に加入できなくなる、という条件のものも存在しています。
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病歴や治療歴による加入制限
年齢に関わらず、病歴によっても加入が難しくなります。
お迎えしてすぐに猫風邪をひいてしまったり、ストレスから体調を崩してしまったとき、動物病院を受診しますよね。
こうした病歴や治療歴があると、ペット保険への加入ハードルが高くなってしまい、断られることもあります。これはすぐに治るような病気であったとしてもです。
何事もなく元気で1年ほど過ごせていれば加入ハードルは下がりますが、その間はペット保険に加入できない…というケースも。
仮に加入できたとしても、保険料が高額になってしまう、ということも少なくありませんよ。
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治療費の全額が必ず補償されるわけではない
ペット保険に加入したからといって、治療費の全額が補償されるというわけではありません。
治療費 | 補償割合 | 保険金 |
---|---|---|
50,000円 | 50% | 25,000円 |
50,000円 | 70% | 35,000円 |
主な補償割合は50%と70%。仮に5万円の治療費だとすると、50%で25,000円。70%で35,000円が保険金として支払われます。残りが負担分です。
補償割合100%というペット保険もありますが、その分かなりの高額保険料となるため注意が必要です。
1日の上限額や免責金額
保険金は当然全額が下りるわけではなく、その割合は前述の通り決まっています。さらに注意したいのが、1日の上限額と免責金額です。
例えば、補償割合が70%だったとしても、1日の上限額がその70%を超えていれば自己負担になります。
補償割合 | 70% |
治療費 | 30,000円 |
1日の支払上限 | 12,000円 |
受け取れる金額 | 12,000円 |
自己負担 | 18,000円 |
補償割合が70%で治療費が30,000円だった場合、1日の上限額がなければ下りる保険金は9,000円です。
しかし、自己負担を9,000円とするなら21,000円が補償されているわけですから、上記のように1日の上限額が12,000円だった場合、差額が自己負担となります。
つまり、保険金が下りると思っていた21,000円分が上限額の12,000円になるため、差額の9,000円+元の自己負担分9,000円=18,000円となるわけです。
また、これに近い形で設定されている免責金額は、「あらかじめその金額だけは負担してください」というもの。
免責金額が3,000円だとすると、(治療費3万円-免責金額3,000円)×保証割合70%=18,900円が受け取れる金額となります(1日の上限額設定なしの場合)。
ペット保険は掛け捨て型が基本
保険の大まかな種類としては、貯蓄もできる貯蓄型と、貯蓄のできない掛け捨て型となっています。
貯蓄型は貯蓄をしながら保険料を納めることができる一方、掛け捨て型は支払って終わりという形です。
ペット保険は後者の掛け捨て型となっており、保険期間を終了したらその時点で補償が終わります。
貯蓄型ではないため、支払った分は支払ったものとして返ってくることはありません。
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予防接種や先天性疾患などは補償対象外
ペット保険は病気やケガなど、保険に加入してから起こった病気・ケガに対して治療費の一部を補償してもらえるものです。
健康体に対する治療費は補償されないため、「予防接種、去勢・避妊手術」などは該当しません。
また、先天性疾患などのペット保険加入前の病気・ケガについては該当しません。
治療前にペット保険に加入していたとしても、補償されないことを覚えておきましょう。
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愛猫のいざに備えて事前対策をすべき
愛猫の急な病気やケガは、いつか起こるものとして想定しておくのがベターです。
想定していないとパニックに陥る可能性もありますし、冷静な判断ができなくなってしまいます。
これに加えてお金の問題も出てきます。余裕がないと、満足のいく治療を受けさせてあげることが難しくなるでしょう。
これらを踏まえて、事前の準備や対策が必要になります。
治療費が高額になってきている今だからこそ、愛猫に長生きしてもらうため、十分な準備をしておきましょう。
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この記事の執筆者
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