犬のお迎え

犬の性格は生まれつき?育ち?気になる疑問を解決する性格判断のコツ

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犬の性格

「うちの子の性格は生まれつき?それとも育て方?」愛犬との暮らしで気になる性格の疑問。

この記事では、犬の性格が遺伝と環境、どちらの影響を強く受けるのか、しつけでどこまで変わるのかを詳しく解説します。

子犬や成犬の性格の見分け方、人気犬種の性格傾向もご紹介。

結論として、犬の性格は生まれ持った素質と育つ環境の両方が複雑に関係して形成されます。

愛犬の個性を理解し、より良い関係を築くヒントが満載です。

この記事の結論

  • 犬の性格を決める要素は、生まれ持った素質と、生まれ育った環境の両方が重要
  • 育った環境によっても性格は変わることはあるものの、しつけは管理のひとつに過ぎない
  • 飼い主にとって重要なのは、愛犬の性格よりも、どのようにして幸せに暮らしていくかという術
  • 子犬の行動によって将来の性格を予測することができ、お迎え時の参考になることもある

nademo編集部

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目次

犬の性格は生まれつき決まる?遺伝の影響

愛犬との暮らしを想像するとき、「どんな性格の子かな?」と気になるのは当然のことです。

人懐っこい子、ちょっぴりシャイな子、元気いっぱいな子…。犬の性格は、人間と同じように千差万別です。

では、その性格はいつ、どのように決まるのでしょうか?巷でよく聞かれる「犬の性格は生まれつき」という説は本当なのでしょうか。

実は、性格を決める要素は生まれ持ったものだけではなく、育った環境も大きく影響してくることがわかっています。

生まれつき持っているものも影響してきますが、育った環境も影響してくるため、その両方が性格には影響します。

犬種による性格の一般的な傾向

犬には非常に多くの犬種が存在し、それぞれが特定の目的を持って人間によって選択的に交配されてきました。

例えば、牧羊犬は羊の群れを誘導するために、狩猟犬は獲物を見つけたり追いかけたりするために、愛玩犬は人々に癒やしを与える伴侶となるために、それぞれの役割に適した身体的特徴や気質が重視されてきたのです。

この長い歴史の中で、特定の作業に適した行動特性や気質、例えば「勇敢さ」「従順さ」「警戒心の強さ」「スタミナ」「人懐っこさ」などが、特定の犬種において遺伝的に強化されてきました。

これが、「犬種ごとの性格の一般的な傾向」として私たちが認識しているものです。

例えば、以下のような傾向が知られています。

犬種性格特徴
ボーダー・コリー牧羊犬として活躍してきた歴史から、非常に賢く、作業意欲が高く、エネルギッシュな性格の傾向があります。
ゴールデン・レトリーバー鳥猟犬として人間と協力してきた歴史から、温和で友好的、学習能力が高く、家族に対して愛情深い性格の傾向があります。
柴犬古くから日本で獣猟犬や番犬として飼われてきた歴史から、独立心が強く、頑固な一面があり、警戒心が強く、飼い主には忠実な性格の傾向があります。
ビーグル集団でウサギなどを追う猟犬だったため、好奇心旺盛で、他の犬や人に対して友好的、食いしん坊で、時に頑固な一面を見せる傾向があります。

このように、犬種が持つ遺伝的な背景は、その犬の性格や行動の「土台」となる部分に影響を与えます。犬種グループごとにも、大まかな性格の傾向が見られます。

種類主な作出目的一般的な性格傾向
牧羊犬・牧畜犬家畜の管理、誘導賢い、活動的、作業意欲が高い、訓練性能が高い、状況判断力に優れる
狩猟犬(ポインター、セターなど)鳥などの狩猟補助(発見、回収)友好的、エネルギッシュ、人間との協調性が高い、学習意欲がある
狩猟犬(ハウンドなど)獣などの狩猟補助(追跡、発見)独立心が強い、頑固な一面、勇敢、優れた嗅覚や視覚を持つ、持久力がある
テリア害獣駆除活発、勇敢、気が強い、好奇心旺盛、頑固な一面、エネルギッシュ
愛玩犬伴侶、愛玩人懐っこい、甘えん坊、小型で室内飼いに適した性格が多い、活発な犬種もいる
使役犬警備、救助、運搬など力強い、忠実、勇敢、警戒心が強い、防衛本能が高い、訓練が必要な場合が多い

ただし、これはあくまで「一般的な傾向」であり、統計的なものに過ぎません。

同じ犬種であっても、一頭一頭の個性は大きく異なります。ゴールデン・レトリーバーの中にもシャイな子はいますし、柴犬の中にも非常にフレンドリーな子もいます。

犬種だけで性格のすべてが決まるわけではないことを、心に留めておくことが重要です。

親から子へ受け継がれる犬の性格的要素

犬種全体の傾向に加えて、より直接的に子犬の性格に影響を与えるのが、その子の両親から受け継がれる遺伝的要素です。

人間でも「親子の性格が似ている」と感じることがあるように、犬の世界でも親犬の気質は子犬に遺伝する可能性が高いと考えられています。

特に、「気質(Temperament)」と呼ばれる、生まれ持った感情の反応パターンや行動の特性は、遺伝の影響を強く受けると言われています。例えば、以下のような要素です。

  • 臆病さ・大胆さ:物音や見慣れないもの、新しい状況に対する反応の仕方。
  • 興奮しやすさ・落ち着き:刺激に対する反応の強さや、平静さを保つ能力。
  • 社交性:他の犬や人に対する興味や関心の度合い、友好的な態度。
  • 攻撃性:恐怖や縄張り意識、競争心などからくる攻撃的な行動の現れやすさ。
  • 活動レベル:全体的なエネルギー量や、じっとしていることへの耐性。

信頼できるブリーダーは、子犬を繁殖させる際に、健康面だけでなく、性格や気質の良い親犬を選ぶことを非常に重視します。

穏やかで精神的に安定した親犬から生まれた子犬は、同様に育てやすい安定した気質を持つ可能性が高まります。

逆に、過度に臆病な親犬や、理由なく攻撃性を見せる親犬から生まれた子犬は、将来的に同様の問題行動を示すリスクが高まる可能性があります。

お迎え時には兄弟・姉妹のチェックがおすすめ

子犬を迎える際には、可能であれば親犬や兄弟犬の様子を見せてもらうことも、その子の将来の性格を予測する上で参考になるでしょう。

どのような環境で、どのような親犬から生まれたのかを知ることは、遺伝的な背景を理解する手がかりとなります。

もちろん、親から受け継がれるのはあくまで「素質」や「傾向」です。

親が臆病だからといって、その子犬が必ず臆病になるとは限りませんし、親が非常に社交的でも、子犬が内気な性格になることもあります。

遺伝は犬の性格を決定づける要因のひとつではありますが、それが全てではないのです。

後の章で詳しく解説しますが、生まれた後の環境や経験も、犬の性格形成に非常に大きな影響を与えます。

犬の性格は育ちで変わる?環境としつけの力

犬の性格形成において、遺伝的な要素と並んで非常に重要なのが「育ち」、すなわち経験や環境、そして飼い主によるしつけです。

生まれ持った気質があったとしても、その後の経験によって行動の現れ方は大きく変化します。

特に子犬期の経験は、その後の性格の土台を作る上で決定的な役割を果たすことがあります。

ここでは、犬の性格が後天的にどのように形成され、変化していくのかを詳しく見ていきましょう。

子犬期の社会化が犬の性格形成に与える大きな影響

犬の性格形成において、最も重要と言っても過言ではないのが「社会化期」と呼ばれる子犬の時期です。

一般的に生後3週齢頃から12週齢(長く見て16週齢頃まで)とされるこの期間は、犬が外界からの刺激に対して非常に感受性が高く、さまざまなことをスポンジのように吸収する大切な時期にあたります。

この時期に経験したことは、良くも悪くもその後の犬の行動や反応に深く刻まれます。

この社会化期に、犬は将来出会うであろうさまざまな物事に対して「これは怖くないものだ」「これは楽しいものだ」と学習していきます。

適切な社会化を行うことで、環境への適応能力が高く、精神的に安定した、他の犬や人とも上手に付き合える社交的な性格を育むことができます。

具体的には、以下のような対象や経験にポジティブな形で触れさせることが推奨されます。

他の犬

ワクチンプログラムを考慮しつつ、獣医師と相談の上で、他の健康で穏やかな犬(特に社会性を身につけた成犬や、月齢の近い子犬)と安全な環境で触れ合う機会を作ります。

犬同士の挨拶の仕方、遊び方、力加減などを学ぶ重要な機会です。パピークラスや子犬向け幼稚園への参加も非常に有効な手段です。

人間

家族以外の人々、例えば子供からお年寄り、男性、女性、帽子やメガネを着用している人、配達員さんなど、さまざまなタイプの人に優しく接してもらう経験を積ませます。

人に対する警戒心を解き、友好的な態度を学習させます。

さまざまな音

日常生活で発生するさまざまな音(掃除機、ドライヤー、洗濯機、インターホン、電話の着信音など)や、家の外から聞こえる音(車、バイク、電車、工事の音、サイレン、雷、花火など)に徐々に慣らしていきます。

最初は遠くで小さな音から聞かせ、おやつを与えるなどしてポジティブな印象と結びつけると効果的です。

無理強いはせず、犬が怖がらない範囲で進めることが大切です。

さまざまな場所や物

散歩デビュー後は、交通量の少ない静かな道から始め、徐々に公園、商店街、駅の近くなど、さまざまな環境に連れて行きます。

また、首輪やハーネス、リード、ブラシ、爪切り、歯ブラシ、キャリーケース(クレート)、おもちゃなど、日常的に使う物やケアに必要な道具にも、遊びながら少しずつ慣れさせておきましょう。

さまざまな経験

短時間のドライブ動物病院(最初は診察なしで、おやつをもらったり体重測定をするだけなど、ポジティブな経験を)、体を優しく触られること(特に耳、口周り、足先、尻尾など、ケアや診察で触る必要のある部分)といった経験も重要です。

これらの経験を通じて、さまざまな状況への耐性を養います。

社会化期にこれらの経験が不足したり、逆にネガティブな経験(他の犬に襲われる、人間に乱暴に扱われる、大きな音で恐怖を感じるなど)をしてしまうと、将来的に特定の物事に対して過剰な恐怖心や警戒心を持つようになります。

他の犬や人に対して攻撃的になったり、分離不安や常同行動(同じ行動を繰り返す)などの問題行動につながる可能性が高まるのです。

適切な社会化は、犬が自信を持ってさまざまな状況に対応できる、バランスの取れた性格を育むための基礎となります。

生活環境が犬の性格に与える影響

犬が日々過ごす生活環境も、その性格や行動、精神的な安定に大きな影響を与えます。

犬は環境の変化に敏感であり、安全で予測可能な環境で暮らすことは、犬の安心感を育み、ストレスを軽減する上で不可欠です。

以下のような環境要因が犬の性格に関連してきます。

家族構成とライフスタイル

飼い主が一人暮らしか、夫婦のみか、小さな子供や手がかかる高齢者がいるか、他のペット(犬や猫など)が同居しているかによって、犬が受ける刺激の量や種類、飼い主からの注目度、要求への対応などが異なります。

また、飼い主の活動レベル(アクティブで頻繁に外出するか、家で静かに過ごすことが多いか)も重要です。

特に犬種によっては、満たされない欲求がストレスとなり、問題行動や性格の変化につながることがあります。

住環境

家の広さ、庭の有無、集合住宅か戸建てか、日当たりの良し悪し、近隣の騒音レベル(工事現場、交通量の多い道路、他の犬の鳴き声など)は、犬の活動量やリラックス度合いに影響します。

特に聴覚が優れた犬にとって、騒がしい環境は慢性的なストレス源となり、警戒心を強めたり、神経質な性格を助長したりする可能性があります。

飼い主との関係性とコミュニケーション

留守番時間の長さは、分離不安のリスクと関連します。

また、飼い主が愛犬と過ごす時間の質(ただ同じ空間にいるだけでなく、積極的に関わる時間があるか)と量、遊びや散歩の頻度と内容(単調な散歩だけでなく、頭を使う遊びを取り入れるなど)、コミュニケーションの取り方(優しい声かけ、アイコンタクト、適切なタイミングでの撫で方など)は、犬の安心感、信頼感、社会性、学習意欲などに深く関わります。

一貫性のない対応や、逆に過干渉もストレスの原因となり得ます。

日々のルーティンと予測可能性

食事の時間、散歩の時間、遊びの時間、寝る時間などがある程度決まっていることは、犬に「次に何が起こるか」という予測可能性を与え、安心感につながります。

頻繁な生活リズムの変化や、予測不能な出来事が多い環境は、犬を不安にさせ、ストレス耐性を低下させる可能性があります。

安心できるパーソナルスペースの有無

自分だけの静かで安全な場所(クレートやケージ、ベッドなど)があり、そこで邪魔されずに休息できることは、犬の精神衛生上非常に重要です。

特に、多頭飼育の場合や来客が多い家庭では、犬が一人になれる避難場所を確保することが、ストレス軽減に役立ちます。

この場所は罰を与える場所として使わないようにしましょう。

例えば、常に騒がしい環境や、予測不能な出来事が多く、飼い主とのポジティブなコミュニケーションが不足している環境では、犬は不安やストレスを感じやすくなります。

それが過剰な吠え、破壊行動、自傷行為、あるいは逆に無気力や引きこもりといった形で現れることがあります。

犬種や個々の犬の特性に合った、安全で安心でき、適度な刺激のある、一貫性のある環境を提供することが、穏やかで安定した性格を育む上で重要です。

しつけによって犬の性格はどこまで変えられるのか

しつけは、単に「おすわり」や「待て」といったコマンドを教えることだけではありません。

人間社会のルールを教え、犬との間に明確なコミュニケーション方法を確立し、深い信頼関係を築くための重要なプロセスです。

このしつけを通じて、犬の行動を望ましい方向へ導き、社会に適応できるようにサポートすることができます。

しつけが犬の「性格」そのものを根本的に変えるかというと、それは難しい側面があります。

例えば、元々非常に臆病な犬を、どんな状況でも物怖じしない大胆な犬に変えることは困難です。

しかし、しつけによって、持って生まれた気質に基づいた「行動の表出」をコントロールし、学習によって新しい、より適切な行動パターンを形成していくことは十分に可能です。

しつけを通じて、以下のような具体的な変化や改善を期待できます。

衝動性のコントロールと自己制御力の向上

「待て」「おすわり」「伏せ」などの基本的なコマンドを教え、それをさまざまな状況で実践してみます。

そうすることで、欲求に対する衝動的な行動(例:食べ物に飛びつく、散歩で引っ張る)を抑え、落ち着いて指示を待つという自己制御力を養います。

興奮レベルの管理

来客時や散歩中に興奮しやすい犬に対して、興奮のサインを早期に読み取るようにします。

落ち着かせるためのコマンド(例:「ハウス」「リラックス」)や、代替行動(例:おもちゃを噛む)を教えることで、過剰な興奮をコントロールしやすくなります。

恐怖心や警戒心への対処と克服(脱感作・拮抗条件付け)

特定の物(掃除機など)や状況(他の犬とのすれ違いなど)を怖がる犬に対して、その対象に少しずつ、犬が怖がらないレベルで慣らしていく「脱感作」

怖いものと楽しいこと(おやつなど)を結びつける「拮抗条件付け」といった手法を用いることで、恐怖対象へのネガティブな反応を和らげ、少しずつ慣らしていくことができます。

ただし、恐怖心を完全に取り除くことは難しい場合も多く、根気強い取り組みが必要です。

要求行動の適切な形への誘導

吠えたり、飛びついたり、噛んだりして要求を通そうとする行動に対してもできることがあります。

無視や、より適切な要求の仕方(例:静かにおすわりして飼い主の目を見る)を教え、その行動を強化することで、望ましいコミュニケーション方法を学習させます。

社会性の向上と適切な対人・対犬スキルの習得

他の犬や人に対して適切な距離感を保つこと、しつこくしないこと、穏やかな挨拶の仕方などを、経験豊富な犬やトレーナーの助けを借りながら教えるとよいです。

こうすることで、トラブルを未然に防ぎ、より友好的な関係を築けるように導くことができます。

すかさず褒めて報酬を与えることが大事

効果的なしつけの基本は、犬が望ましい行動をした時に、すかさず褒めて報酬(おやつ、おもちゃ、撫でる、褒め言葉など)を与える「ポジティブリンフォースメント(陽性強化)」です。

これにより、犬は「この行動をすると良いことがある」と学習し、自発的にその行動をとるようになります。

逆に、恐怖や痛みを与える罰(叩く、大声で叱責する、チョークチェーンを強く引くなど)を用いる方法は、一時的に行動を抑制するかもしれません。

ですが、犬に強いストレスや恐怖心、不安を与え、飼い主への不信感を招き、場合によっては防御的な攻撃性を誘発するリスクがあるため、現代の動物行動学では推奨されていません。

しつけによって変えられることにも限界がある

ただし、しつけで変えられる範囲には限界も認識しておく必要があります。

非常に強い遺伝的要因が疑われる気質(犬種特有の強い捕食性や、原因不明の極端な臆病さ・攻撃性など)、子犬期の深刻な社会化不足によるトラウマ、あるいは身体的な問題(慢性的な痛み、ホルモン異常、脳の疾患など)が行動の背景にある場合、しつけトレーニングだけでの改善は困難なことがあります。

このような場合は、行動修正だけにとらわれず、問題行動を専門とする獣医師(行動診療科)や、経験豊富なドッグトレーナーに早期に相談し、原因を特定した上で、適切な治療や管理方法、トレーニングプランを立てることが重要です。

しつけは、魔法のように一瞬で犬を変えるものではありません。

それぞれの犬の個性、学習スピード、感情を尊重し、飼い主が一貫性のある態度で、愛情と忍耐を持って接することが重要。

長期的な視点で根気強く続けることが、望ましい行動を定着させ、犬との間に揺るぎない信頼関係を築くための最も大切な鍵となります。

結局 犬の性格は生まれつきと育ちどちらが重要?

「うちの子のこの性格は、親譲りなのかな?」「それとも、育て方が影響しているの?」犬の性格について考えるとき、多くの飼い主さんが抱く疑問ではないでしょうか。

活発な子、臆病な子、甘えん坊な子…犬たちの個性豊かな性格は、一体どのようにして形作られるのでしょう。

遺伝的な要因(生まれつき)と、環境やしつけといった後天的な要因(育ち)、どちらがより強く影響するのか、あるいはどちらか一方だけでは説明できないのか。

性格を決めるのに重要な要素はひとつではない

結論から言えば、犬の性格形成において「生まれつき」と「育ち」のどちらか一方だけが重要ということはありません。

両者は複雑に絡み合い、相互に影響を与えながら、その犬独自の個性を形作っていきます。

料理のレシピのように、素材(遺伝)の良し悪しだけでなく、調理法(環境・しつけ)によって最終的な味わいが大きく変わるのと同じです。

遺伝的に特定の傾向を持っていたとしても、その後の環境や経験によって、その現れ方は大きく変化する可能性があるのです。

親から受け継ぐ要素はひとつの傾向

犬の行動遺伝学の研究では、特定の性格特性(例えば、大胆さや攻撃性、訓練性能など)に対して、遺伝がどの程度影響するか(遺伝率)が調査されています。

しかし、多くの性格特性において、遺伝率だけで全てが説明できるわけではなく、環境要因が無視できない影響力を持つことが示唆されています。

前述の通り、犬種ごとの気質や、親犬から受け継がれる特定の性格的要素は、確かに存在します。これは、犬が持つ遺伝的な「素質」や「傾向」と言えるでしょう。

例えば、牧羊犬種は動くものを追いかける傾向が強く、猟犬種は獲物を追跡する本能的な行動が見られやすいなど、その犬種が作出された目的や歴史に由来する特性が、性格の基盤となることがあります。

しかし、これはあくまで「傾向」であり、全ての個体が同じ性格になるわけではありません。同じ犬種であっても、個体差は非常に大きいのです。

育つ環境も大きな影響を与える

一方で、子犬期の社会化経験、日々の生活環境、そして飼い主による一貫したしつけは、遺伝的な素質をどのように伸ばし、あるいはコントロールしていくかを決定づける上で非常に重要です。

特に、生後3週齢から12週齢頃までの「社会化期」に、他の犬や人、さまざまな物音や環境に触れる経験は、その後の犬の社交性や順応性、問題行動の発生リスクに大きな影響を与えます。

適切な環境とポジティブなしつけによって、臆病な傾向を持つ子犬が自信をつけたり、逆に、過剰な興奮を示す傾向がある子犬が落ち着きを学んだりすることも可能です。

愛情深い家庭で育ち、多様な経験を積んだ犬は、遺伝的な素質に関わらず、より安定した性格を示す傾向があります。

遺伝と環境の相互作用

遺伝と環境の相互作用について、具体的な例を考えてみましょう。

遺伝的素質(生まれつき)環境・しつけ(育ち)性格への影響(例)
警戒心が強い傾向(例:柴犬など)社会化期にさまざまな人や犬、環境にポジティブに触れる機会が多い。
一貫したルールと安心できる環境が提供される。
状況判断ができ、むやみに吠えたりせず、落ち着いて対応できる。
信頼する飼い主には従順で、適度な警戒心を持つバランスの取れた性格に育ちやすい。
警戒心が強い傾向(例:柴犬など)社会化期に外部との接触が少なく、孤立した環境で育つ。
または、恐怖体験や一貫性のないしつけを受ける。
些細な物音や見知らぬ人に対して過剰に吠える、唸るなどの強い警戒心や恐怖心を示す。
場合によっては恐怖からくる攻撃性につながる可能性もある。
人懐っこくエネルギッシュな傾向
(例:ラブラドール・レトリーバーなど)
十分な運動と遊びの機会があり、飼い主とのポジティブなコミュニケーションが多い。
適切なしつけでエネルギーを発散する方法を学ぶ。
非常に友好的で、人間や他の犬ともうまく付き合える。
トレーニングにも意欲的で、活動的な家庭の良きパートナーとなりやすい。
人懐っこくエネルギッシュな傾向
(例:ラブラドール・レトリーバーなど)
運動不足で、留守番時間が長いなど、エネルギーを発散する機会が少ない。
飼い主との関わりが希薄、または甘やかしすぎる。
有り余るエネルギーから、家具の破壊、過度な要求吠え、飛びつきなどの問題行動を示すことがある。
分離不安を発症するリスクも高まる。

このように、同じ遺伝的素質を持っていても、育つ環境や飼い主さんの関わり方によって、性格の現れ方は大きく異なることがわかります。

遺伝は設計図のようなものであり、環境やしつけはその設計図をどのように実現するか、あるいは修正していくかのプロセスと言えるでしょう。

飼い主にとって重要なのは「愛犬と共に幸せに暮らしていく術」

では、「結局、どちらが『より』重要なのか?」という問いに戻ると、これは非常に難しい問題です。

研究者によっても見解が分かれることがあり、特定の性格特性によっては遺伝の影響が強く出るものもあれば、環境の影響をより受けやすいものもあります。

例えば、特定の恐怖症などは遺伝的な要因が強く関与すると考えられる一方、基本的なしつけの入りやすさや社交性は、環境やトレーニングの影響を大きく受けます。

しかし、飼い主にとって重要なのは、「どちらの要因が何パーセント影響しているか」という数字ではありません。

むしろ、変えることのできない遺伝的素質(犬種特性や親からの気質)を理解した上で、変えることのできる環境やしつけを通じて、愛犬が持つ可能性を最大限に引き出し、共に幸せに暮らしていくにはどうすれば良いか、という視点を持つことです。

素質を活かし、愛情を持って接することが重要

生まれ持った気質は、その子の個性として受け入れる必要があります。例えば、非常に活発な犬種に、一日中静かに寝ていることを期待するのは難しいでしょう。

しかし、その活発さを適切な運動やトレーニングで満たし、社会的なルールを教えることで、問題行動を防ぎ、そのエネルギーをポジティブな方向に向けることは可能です。

これは、飼い主の「育ち」への関与、つまり愛情深いケアと根気強い適切なしつけによって達成されます。

その意味で、飼い主が直接的に働きかけることができる「育ち」の側面は、愛犬との良好な関係構築と、社会に適応した行動を促す上で極めて重要であると言えるでしょう。

結論として、犬の性格は「生まれつき」の遺伝的要因と、「育ち」の環境的要因の双方が、切っても切れない関係で複雑に影響し合って形成されます。

どちらか一方だけが決定的な要因となるわけではなく、両者の相互作用がその犬ならではのユニークな個性を作り上げるのです。

飼い主は、愛犬の持つ素質を理解し尊重しつつ、愛情ある適切な環境としつけを提供することで、その子の素晴らしい個性を育み、より豊かな共生を実現していくことができます。

あなたの愛犬の性格は?性格判断のコツと見分け方

犬

愛犬との暮らしをより豊かにするためには、その子の性格を正しく理解することが第一歩です。

ここでは、子犬から成犬まで、愛犬の性格を見極めるための具体的な方法や観察のコツ、そして注意すべき性格のサインについて詳しく解説します。

子犬の行動から見る将来の性格予測のヒント

子犬期の行動は、将来の性格を予測する上で貴重な手がかりとなります。

もちろん、成長過程や環境、しつけによって変化する可能性はありますが、生まれ持った気質の片鱗を見つけることができます。

子犬を選ぶ際や、迎え入れたばかりの子犬の性格を知りたい場合に役立つ観察ポイントを見ていきましょう。

以下の点を注意深く観察することで、その子の持つ基本的な性格傾向が見えてきます。

好奇心の強さ新しいおもちゃや見慣れない物、初めて会う人に対してどのような反応を示しますか?
積極的に近づいて匂いを嗅いだり、遊ぼうとしたりする子は好奇心旺盛で物怖じしないタイプかもしれません。
逆に、隅に隠れたり、吠えたりする子は警戒心が強い、あるいは臆病な傾向があるかもしれません。
社会性(対犬・対人)兄弟犬や他の犬、人間とどのように関わりますか?
自分から遊びに誘う、他の子にちょっかいを出すなど積極的に関わる子は社交的な性格と言えるでしょう。
一方で、他の子を避けたり、威嚇したり、無関心だったりする場合は、それぞれの理由(怖がり、独立心が強いなど)を探る必要があります。
人に対して尻尾を振って近づくか、距離を取るかも重要な指標です。
物音への反応掃除機やドアの閉まる音、外の車の音など、生活音に対する反応はどうでしょうか。
一瞬驚いてもすぐに落ち着く子は、環境への順応性が高い可能性があります。
過剰に怯えたり、パニックになったり、逆に全く無関心だったりする場合も、その子の感受性を示すサインです。
要求の仕方お腹が空いた時や遊びたいとき、飼い主にどのように要求を伝えますか?
控えめにそばに来て見つめる、前足でちょんちょんと触る、あるいは大きな声で吠え続けるなど、要求の仕方も性格を表します。
自己主張の強さや、学習能力(どうすれば要求が通るかを学んでいるか)が垣間見えます。
しつけへの反応と集中力短い時間でも「おすわり」などの簡単な指示に注意を向けられますか?
おやつなどの報酬に意欲を見せるか、飽きやすいかなども、集中力や学習意欲、しつけやすさのヒントになります。
遊び方おもちゃに対する執着心は強いですか?
一人で黙々とおもちゃで遊ぶのが好きか、人と一緒に遊ぶことを好むか。
遊び方が激しいか、穏やかかなども、その子のエネルギーレベルや好みを示しています。

これらの観察結果を総合的に判断することが大切です。ひとつの行動だけで決めつけず、さまざまな状況での反応を見て、その子の個性として捉えましょう。

子犬の行動と予測される性格傾向(例)

観察ポイント行動例予測される性格傾向(一例)
好奇心新しい物や人に積極的に近づく大胆、物怖じしない、探求心が強い
警戒して距離を取る、隠れる慎重、臆病、警戒心が強い
社会性他の犬や人に友好的に接する社交的、フレンドリー、遊び好き
他の犬を避ける、威嚇する怖がり、独立心が強い、他の犬が苦手
物音への反応すぐに落ち着く、あまり気にしない順応性が高い、鈍感、落ち着いている
過剰に怯える、パニックになる繊細、臆病、ストレスを感じやすい
要求の仕方大きな声で吠える、飛びつく自己主張が強い、要求が通りやすいことを学習している
じっと見つめる、控えめにアピール控えめ、我慢強い、穏やか

上記はあくまで一般的な傾向であり、子犬の性格は今後の環境や経験、しつけによって大きく変化します。

特に生後3週齢から12週齢(または16週齢)頃までの「社会化期」の経験は、その後の性格形成に非常に重要です。

さまざまな人、犬、物、音、環境にポジティブな形で触れさせる機会を作りましょう。

成犬の性格を見極めるためのチェックポイント

成犬になると、子犬期よりも性格が安定してきます。しかし、環境の変化や加齢によっても性格は変化することがあります。

愛犬の現在の性格をより深く理解するために、以下のチェックポイントを参考に、日々の行動を観察してみましょう。

保護犬を迎える場合など、過去の経験が不明な犬の性格を知る上でも役立ちます。

人に対する態度

  • 家族に対して:甘えん坊か、クールか、指示をよく聞くか。
  • 初対面の人に対して:すぐに懐くか、警戒するか、無関心か。
  • 子供に対して:優しく接するか、避けるか、興奮するか。
  • 高齢者に対して:穏やかに接するか、気にしないか。
  • 特定の性別やタイプの人(帽子をかぶった人、背の高い人など)に特別な反応を示すか。

他の犬に対する態度

  • 散歩中:他の犬に興味を示すか、避けようとするか、吠えかかるか。
  • ドッグランなど:積極的に遊びに誘うか、他の犬を威嚇するか、マイペースに過ごすか。
  • 特定の犬種や大きさの犬に特別な反応を示すか。

環境への適応力

  • 新しい場所(散歩コース、旅行先、動物病院など):好奇心を示すか、不安がるか、すぐに慣れるか。
  • 大きな音や予期せぬ出来事(雷、花火、工事音など):パニックになるか、落ち着いていられるか、飼い主に助けを求めるか。
  • 来客時:興奮して吠えるか、隠れるか、友好的に挨拶できるか。

留守番時の様子

  • 飼い主が出かける準備を始めると:ソワソワするか、落ち着いているか。
  • 留守番中(可能であればカメラなどで確認):リラックスして寝ているか、吠え続けたり、物を破壊したりしていないか。
  • 帰宅時:過剰に興奮するか、穏やかに出迎えるか。

しつけ・トレーニングへの反応

  • 指示への理解度と従順さ:喜んで従うか、渋々従うか、無視するか。
  • 学習意欲と集中力:新しいことを覚えるのが早いか、飽きっぽいか。
  • 苦手なことや嫌いなことへの反応:抵抗を示すか、我慢できるか。
  • 頑固さの度合い:自分の意思を通そうとすることが多いか。

活動レベルと遊び

  • 必要な運動量:散歩や遊びを十分にしないとストレスが溜まるか、比較的少ない運動量でも満足するか。
  • 好きな遊び:ボール遊び、引っ張りっこ、知育トイ、追いかけっこなど、どんな遊びを好むか。
  • 室内での過ごし方:常に動き回っているか、寝ている時間が多いか。
  • 興奮のしやすさとクールダウン:遊びなどで興奮しやすいか、興奮してもすぐに落ち着けるか。

感情表現

  • 喜び:尻尾の振り方、表情、体の動きでどのように表現するか。
  • 不安や恐怖:耳や尻尾の位置、体の震え、パンティング(ハァハァ息をする)、あくびなどでどのように表現するか。
  • 要求や不満:鳴き声の種類(クンクン、キャンキャン、ワンワンなど)、行動でどのように伝えるか。

触られることへの反応(ボディハンドリング)

  • 体のどこを触られても平気か:頭、耳、口周り、足先、尻尾など。
  • 特定の部位を触られるのを嫌がるか。
  • 抱っこされることへの反応。
  • ブラッシングや爪切り、歯磨きなどのお手入れ時の様子。
  • 動物病院での診察時の態度。

成犬の性格チェックリスト(例)

チェック項目観察ポイント考えられる性格特性
対人態度(初対面)尻尾を振って近づく、撫でられるのを喜ぶ友好的、社交的、人懐っこい
距離を取る、後ずさる、吠える警戒心が強い、シャイ、臆病
対犬態度他の犬と遊びたがる、挨拶が上手社交的、犬好き、遊び好き
他の犬を避ける、唸る、攻撃的になる他の犬が苦手、縄張り意識が強い、怖がり
環境適応力新しい場所でも落ち着いている、好奇心を示す順応性が高い、大胆、好奇心旺盛
慣れない場所で不安がる、固まる、震える繊細、臆病、ストレスを感じやすい
留守番落ち着いて寝ている、おもちゃで遊んでいる自立心がある、留守番に慣れている
吠え続ける、物を破壊する、粗相をする分離不安の可能性、寂しがり屋
活動レベル長時間の散歩や遊びを必要とする活発、エネルギッシュ、運動好き
室内で静かに過ごすことが多い穏やか、落ち着いている、省エネタイプ

これらのチェックポイントを通して愛犬の行動を観察し、記録をつけてみるのも良いでしょう。

特定の状況でどのような反応を示すかを知ることで、愛犬の「好き」「嫌い」「得意」「苦手」が明確になり、より良いコミュニケーションやしつけ、環境設定に繋がります。

注意が必要な犬の性格 問題行動とのつながり

犬の性格は多様であり、それぞれが個性です。

しかし、中には日常生活に支障をきたしたり、犬自身や周囲にとって危険を伴ったりする可能性のある「問題行動」につながりやすい性格傾向も存在します。

これらのサインに早期に気づき、適切に対処することが重要です。

ただし、「問題行動」とされる行動の多くは、犬にとっては自然な行動であったり、何らかの原因(恐怖、不安、痛み、学習、環境要因など)があって表出している場合がほとんどです。

性格だけで判断せず、その背景にある原因を探ることが不可欠です。

過度の警戒心・恐怖心

行動例:

  • 見慣れない人、犬、物、音に対して過剰に吠える。
  • 特定の対象(例:傘、帽子、バイク)を極端に怖がり、避ける、隠れる、震える。
  • 恐怖の対象が近づくと、パニックになって逃げようとしたり、逆に攻撃的になったりする(恐怖性攻撃)。
  • 散歩中に特定の場所を通りたがらない。

考えられる背景:社会化期の経験不足、過去のトラウマ(虐待、事故など)、遺伝的な要因。

問題点:犬自身のストレスが大きいだけでなく、恐怖から攻撃行動に出てしまうリスクがあります。日常生活の質も低下します。

対処のヒント:まずは犬が安心できる環境を整えることが最優先です。無理に慣れさせようとせず、ポジティブリンフォースメント(褒めたりおやつを与えたりすること)を用いて、怖い対象に対して少しずつ良いイメージを持たせる「脱感作」や「拮抗条件付け」といったトレーニングが有効な場合があります。ただし、専門的な知識が必要なため、行動診療を行う獣医師や経験豊富なドッグトレーナーに相談することをお勧めします。

攻撃性(支配性・縄張り意識・恐怖性など)

行動例:

  • 特定の人(家族を含む)や他の犬に対して、唸る、歯をむき出す、噛みつく。
  • 自分の寝床、おもちゃ、食べ物などを守ろうとして攻撃的になる(リソースガーディング)。
  • 特定の場所(家、庭など)に近づく人や犬を激しく威嚇する。
  • 触られるのを嫌がり、攻撃的な反応を示す。

考えられる背景:遺伝的要因、社会化不足、不適切な飼育環境やしつけ(体罰など)、恐怖や不安、痛みや病気、縄張り意識、支配欲(※近年、犬の行動における「支配性」の概念は見直されています)。

問題点:人や他の犬に怪我をさせる可能性があり、最も深刻な問題行動のひとつです。飼い主との信頼関係も損なわれます。

対処のヒント:攻撃性の原因を特定することが非常に重要です。まずは病気や痛みが隠れていないか、獣医師の診察を受けましょう。その上で、行動の専門家(行動診療科獣医師やドッグトレーナー)に相談し、原因に応じた対処法(環境改善、行動修正プログラム、薬物療法など)を検討します。一貫性のあるポジティブなしつけと、安全管理(リード、マズルガードの使用など)の徹底が不可欠です。自己流の対処は状況を悪化させる可能性があるため、必ず専門家の指導を仰ぎましょう。

分離不安

行動例:

  • 飼い主が不在の時に、長時間吠え続けたり、遠吠えしたりする。
  • 家具や壁、ドアなどを破壊する。
  • 普段はしない場所で排泄する(粗相)。
  • 自分の体(足先、尻尾など)を舐め続けたり、噛んだりする(自傷行為)。
  • 飼い主の外出準備を察知すると、落ち着きがなくなる、震える、後をついて回る。

考えられる背景:環境の変化(引っ越し、家族構成の変化)、飼い主との過度な依存関係、過去の飼育放棄の経験、加齢に伴う認知機能の低下。

問題点:犬自身の精神的ストレスが非常に大きく、近隣への迷惑(騒音)や家財の損壊にもつながります。

対処のヒント:留守番に慣らすトレーニング(短い時間から始め、徐々に時間を延ばす)、外出・帰宅時の対応(過剰に構わない)、留守番中の環境エンリッチメント(知育トイを与えるなど)、十分な運動などが有効です。重度の場合は、行動療法と並行して、獣医師による抗不安薬などの薬物療法が必要になることもあります。専門家への相談が推奨されます。

過剰な興奮・落ち着きのなさ

行動例:

  • 常に家の中をウロウロと動き回っている。
  • 人や犬を見ると、過剰に興奮して飛びついたり、吠えたりする。
  • 要求(遊び、ごはん、散歩など)があると、激しく吠えたり鳴いたりする。
  • トレーニングや指示に集中できない、すぐに飽きてしまう。
  • ちょっとした刺激にも過敏に反応する。

考えられる背景:犬種特性(ワーキングドッグなど)、運動不足、精神的な刺激不足、しつけ不足(興奮をコントロールする練習をしていない)、若さ(特に若年期の犬)。

問題点:飛びつきによる怪我のリスク、騒音、しつけの困難さ、他の犬とのトラブルの原因になることがあります。

対処のヒント:その犬種や年齢、体力に合った十分な運動(散歩だけでなく、走ったり、頭を使ったりする活動)を提供することが基本です。ノーズワークや知育トイなど、精神的な刺激を与える活動も取り入れましょう。「待て」「おすわり」「フセ」などの基本的な指示で落ち着かせる練習や、ハウスやマットでリラックスする練習(ハウストレーニング、マットトレーニング)も有効です。興奮している時には要求に応えず、落ち着いてから応えるようにするなど、一貫したルールを設けることも大切です。

執着心・独占欲

行動例:

  • 特定のおもちゃや食べ物、場所(ソファ、ベッドなど)への執着が異常に強い。
  • それらに他者(人や他の犬)が近づくと、唸ったり、隠そうとしたり、攻撃的になったりする(リソースガーディング)。
  • 飼い主の特定の人物を独占しようとし、他の家族やペットが近づくのを嫌がる。

考えられる背景:不安感(取られるかもしれないという不安)、所有欲の強さ、過去に奪われた経験、競争環境(多頭飼いなど)。

問題点:攻撃行動につながるリスクがあり、家族や他のペットとの関係が悪化する可能性があります。

対処のヒント:無理に取り上げようとせず、「ちょうだい」や「交換」のトレーニングをポジティブに行うことが有効です。犬が何かを「守る」必要がない、安心できる環境を作ることも重要です。食事の場所を分ける、おもちゃは出しっぱなしにしないなどの工夫も考えられます。リソースガーディングが強い場合は、専門家の指導のもとで慎重に対応する必要があります。

これらの「注意が必要な性格」が見られる場合、それは犬からのSOSサインかもしれません。叱ったり罰したりするのではなく、なぜそのような行動をとるのか、その背景にある原因を探り、犬の気持ちに寄り添った適切な対応を心がけましょう。困ったときには、一人で悩まず、必ず獣医師やドッグトレーナーなどの専門家に相談してください。

犬種ごとの性格を知ろう 代表的な例

犬の性格は個体差が大きいものの、犬種ごとにある程度の傾向が見られます。

これは、それぞれの犬種が特定の目的(狩猟、牧羊、愛玩など)のために長年かけて改良されてきた歴史と深く関わっています。

ここでは、日本で人気の高い代表的な犬種の一般的な性格と、飼育する上でのポイントをご紹介します。

ただし、あくまで一般的な傾向であり、すべての個体に当てはまるわけではないことを理解しておきましょう。

人気犬種の性格 トイ・プードル

好奇心が強く、非常に賢い

他人や犬に対しても懐く

臆病な面もあるため吠えやすい

とにかく体を動かすのが大好き

 その他情報

原産地 ドイツ,フランス
犬種グループ 9G:愛玩犬
大きさ 超小型
平均寿命 12歳~15歳
なりやすい病気 膝蓋骨脱臼,流涙症,白内障,副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群),外耳炎
参考価格 30万円前後
       

被毛

抜け毛 少ない
毛質 シングルコート
毛色 ブラック,ホワイト,シルバー,グレー,アプリコット,ブラウン,ブルー,カフェ・オ・レ,クリーム

体高

男の子24cm~28cm
女の子24cm~28cm

体重

男の子3kg~4kg
女の子3kg~4kg

トイ・プードルは、その愛らしい見た目と賢さで、常に人気ランキング上位に位置する犬種です。

非常に賢く、学習能力が高いのが最大の特徴と言えるでしょう。飼い主の指示をよく理解し、さまざまなトリックを覚えるのも得意です。

また、活発で遊び好き、人懐っこく社交的な性格の子が多い傾向にあります。

家族に対して深い愛情を示し、甘えん坊な一面も見せます。抜け毛が少なく体臭も少ないため、室内飼いに適している点も人気の理由です。

一方で、賢いがゆえに甘やかすとわがままになったり、神経質な一面が現れたりすることもあります。

寂しがり屋な面もあるため、長時間の留守番は苦手な場合があります。子犬の頃からの社会化としつけが重要です。

性格特性レベル(5段階評価)補足
賢さ★★★★★非常に高く、しつけやすい
活発さ・運動量★★★★☆小型犬ながら活発。毎日の散歩と遊びが必要
社交性★★★★☆人や他の犬とも友好的な子が多い
甘えん坊度★★★★☆飼い主とのスキンシップを好む
しつけやすさ★★★★★学習能力が高く、しつけは入りやすい
お手入れの手間★★★★☆抜け毛は少ないが、定期的なトリミングが必須

飼育のポイント

定期的なトリミング、毎日の散歩や遊びを通じた運動、賢さを活かしたトレーニング、分離不安にならないための工夫(留守番トレーニングなど)が大切です。

骨が細いため、高い場所からの飛び降りなどには注意が必要です。

人気犬種の性格 柴犬

主人に忠実で警戒心が強い

飼い主には忠実だが、独立心もある

警戒心から多くなることもある

元々猟犬であったため、運動能力は高い

 その他情報

原産地 日本
犬種グループ 5G:原始的な犬・スピッツ
大きさ 小型
平均寿命 12歳~15歳
なりやすい病気 食物アレルギー性皮膚炎,アトピー性皮膚炎,膿皮症
参考価格 10万円~40万円
       

被毛

抜け毛 多い
毛質 ダブルコート
毛色 胡麻,赤,赤胡麻,黒褐色,黒胡麻,白

体高

男の子38cm~41cm
女の子35cm~38cm

体重

男の子10kg
女の子8kg

柴犬は、日本原産の犬種であり、その凛々しい姿と忠実な性格から国内外で高い人気を誇ります。

飼い主や家族に対しては非常に忠実で、深い愛情を示します。勇敢で警戒心が強く、番犬としての適性も持っています。

また、独立心が旺盛で、自分の意思をしっかり持っている頑固な一面もあります。キレイ好きな子が多く、体を舐めて自分で手入れする姿も見られます。

その反面、警戒心の強さから、他人や他の犬に対して距離を置くことがあります。頑固さゆえに、しつけには一貫性と根気が必要です。

子犬の頃からの社会化トレーニングで、さまざまな環境や刺激に慣れさせることが、穏やかな性格を育む上で非常に重要になります。

性格特性レベル(5段階評価)補足
賢さ★★★☆☆状況判断能力は高いが、頑固さも併せ持つ
活発さ・運動量★★★★☆十分な散歩や運動が必要
社交性★★☆☆☆警戒心が強く、慣れない相手には距離を置く傾向
忠実度★★★★★飼い主や家族には非常に忠実
しつけやすさ★★☆☆☆頑固な面があり、根気強いトレーニングが必要
お手入れの手間★★★☆☆ダブルコートで抜け毛が多い。換毛期は特に念入りなブラッシングが必要

飼育のポイント

子犬期からの社会化、一貫性のあるリーダーシップを示したしつけ、十分な運動量の確保、抜け毛対策(特に換毛期)が重要です。

縄張り意識が強い傾向もあるため、来客時などは注意が必要です。

人気犬種の性格 チワワ

知性と独立心の両方を持つ

飼い主に対しては懐きやすい

見知らぬ人に吠えることもある

一般的な運動量と能力

 その他情報

原産地 メキシコ
犬種グループ 9G:愛玩犬
大きさ 超小型
平均寿命 12歳~20歳
なりやすい病気 膝蓋骨脱臼,水頭症,尿路結石症,気管虚脱,僧帽弁閉鎖不全症
参考価格 30万円前後
       

被毛

抜け毛 多い
毛質 ダブルコート
毛色 ホワイト,ブラック,レッド,ブルー,チョコレート,クリーム,ブラック&タン

体高

男の子15cm~25cm
女の子15cm~25cm

体重

男の子1.5kg~3kg
女の子1.5kg~3kg

世界最小の犬種として知られるチワワは、その小さな体に似合わず、勇敢で好奇心旺盛な性格を持っています。

飼い主に対しては非常に愛情深く、甘えん坊で、常にそばにいたがる子が多いです。活発で遊び好きな一面もあります。

一方で、警戒心が強く、見知らぬ人や物音に対して吠えやすい傾向があります。また、臆病な一面もあり、雷や大きな音を怖がることがあります。

体が小さいため、少しの段差や落下でも骨折などの怪我につながりやすい点には十分な注意が必要です。

寒さにも弱いため、冬場の温度管理は欠かせません。過保護になりすぎず、社会性を身につけさせるための経験も大切です。

性格特性レベル(5段階評価)補足
賢さ★★★☆☆飼い主の気持ちを察するのは得意
活発さ・運動量★★★☆☆室内での遊びや短い散歩で満足することが多い
社交性★★☆☆☆警戒心が強く、内気な子も多い。社会化が重要
甘えん坊度★★★★★飼い主への依存心が強く、常に一緒にいたがる傾向
しつけやすさ★★★☆☆甘やかしすぎると問題行動につながることも
お手入れの手間★★☆☆☆スムースコート、ロングコートで異なる。歯磨きなど口内ケアも重要

飼育のポイント

子犬期からの社会化(特に音や人への慣れ)、寒さ対策、安全な環境作り(落下防止など)、歯のケア、要求吠えなどをさせないための一貫したしつけが大切です。

体が小さいため、他の犬との接触には注意が必要です。

人気犬種の性格 ダックスフンド

好奇心旺盛でいたずら好き

人懐っこく甘えたがり

頑固で警戒心が強く、吠えることも多い

頭と体の両方を動かすことが好き

 その他情報

原産地 ドイツ
犬種グループ 4G:ダックスフンド
大きさ 小型
平均寿命 12歳~16歳
なりやすい病気 皮膚病,外耳炎,椎間板ヘルニア,腫瘍,眼疾患,副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群),進行性網膜萎縮症(PRA)
参考価格 30万円前後
       

被毛

抜け毛 多い
毛質 ダブルコート
毛色 レッド,イエロー,シルバー,ゴールド,ブラック&タン,チョコレート&タン,ブラック&イエロー,チョコレート&イエロー

体高

男の子21cm~24cm
女の子21cm~24cm

体重

男の子3.5kg~4.8kg
女の子3.5kg~4.8kg

胴長短足のユニークな体型が魅力のダックスフンドは、明るく友好的で、好奇心旺盛な性格です。

遊び好きで、家族と一緒に過ごすことを楽しみます。元々はアナグマ猟で活躍していた犬種のため、勇敢で粘り強い一面も持っており、時に頑固さを見せることもあります。

また、獲物を追いかける本能から、動くものを追いかけたり、穴を掘ったりするのが好きな子もいます。

その特徴的な体型から、椎間板ヘルニアを発症しやすいというリスクがあります。肥満は腰への負担を増大させるため、体重管理が非常に重要です。

また、猟犬としての性質から、吠えやすい傾向があるため、子犬の頃からのしつけが大切になります。

性格特性レベル(5段階評価)補足
賢さ★★★☆☆賢いが、頑固な一面も
活発さ・運動量★★★★☆遊び好きで活発。適度な運動が必要
社交性★★★★☆友好的で、他の犬や人ともうまくやれる子が多い
頑固さ★★★★☆猟犬由来の粘り強さ、頑固さを持つ
しつけやすさ★★★☆☆根気強いトレーニングが必要。吠えのしつけも重要
お手入れの手間★★★☆☆毛質(スムース、ロング、ワイヤー)により異なる。垂れ耳のため耳掃除も大切

飼育のポイント

体重管理、腰に負担をかけない生活環境(段差をなくす、滑りにくい床材など)、吠えや穴掘りに対する適切なしつけ、定期的な耳掃除が重要です。

運動は必要ですが、ジャンプや急な方向転換など、腰に負担のかかる動きは避けましょう。

人気犬種の性格 ゴールデン・レトリーバー

温厚で知的、気配りもできる

主人に気に入られるよう努力するほど

大人しいためあまり吠えない

能力は高くなく、運動不足になりがち

 その他情報

原産地 スコットランド
犬種グループ 8G:7グループ以外の鳥猟犬
大きさ 大型
平均寿命 10歳~12歳
なりやすい病気 股関節形成不全,耳血腫,甲状腺機能低下症,悪性リンパ腫
参考価格 10万円~30万円
       

被毛

抜け毛 多い
毛質 ダブルコート
毛色 ゴールド,クリーム

体高

男の子56cm~61cm
女の子51cm~56cm

体重

男の子29kg~34kg
女の子24kg~29kg

ゴールデン・レトリーバーは、その名の通り、元々は水鳥猟で撃ち落とした獲物を回収(retrieve)する役割を担っていた犬種です。

非常に賢く、穏やかで友好的な性格から、家庭犬として絶大な人気を誇ります。人懐っこく、子供や他のペットに対しても寛容な態度を示すことが多いです。

学習意欲が高く、訓練性能に優れているため、盲導犬や介助犬、セラピー犬としても活躍しています。

温厚な性格ですが、元々は猟犬であるため、十分な運動量を必要とします。遊び好きで、特にボール遊びなどを好む子が多いです。

大型犬であるため、飼育スペースや食費、医療費なども考慮する必要があります。

また、寂しがり屋な一面もあり、家族とのコミュニケーションを大切にします。

性格特性レベル(5段階評価)補足
賢さ★★★★★非常に賢く、訓練性能が高い
活発さ・運動量★★★★☆大型犬のため、毎日の十分な運動が不可欠
社交性★★★★★非常に友好的で、誰にでも優しい
従順さ★★★★★飼い主に従順で、しつけやすい
しつけやすさ★★★★★物覚えが良く、トレーニングを楽しめる
お手入れの手間★★★★☆ダブルコートで抜け毛が多い。定期的なブラッシングが必要

飼育のポイント

毎日の十分な運動(散歩、ドッグランなど)、知的好奇心を満たすトレーニングや遊び、定期的なブラッシング、大型犬特有の病気(股関節形成不全など)への注意、家族との十分なコミュニケーションが大切です。

力が強いので、基本的なしつけは必須です。

犬の性格を理解して良い関係を築くために飼い主ができること

愛犬との絆を深め、共に幸せな生活を送るためには、その子の性格を深く理解し、個性に合わせた接し方をすることが不可欠です。

犬の性格は、生まれ持った素質だけでなく、育った環境やしつけによっても大きく影響を受けます。

ここでは、愛犬の性格を尊重し、より良い関係を築くために飼い主ができる具体的なアプローチについて詳しく解説します。

愛犬の個性を尊重したコミュニケーション

私たち人間と同じように、犬にも一頭一頭、異なる個性があります。

活発な子、おっとりした子、甘えん坊な子、独立心の強い子など、その性格はさまざまです。

愛犬の個性を理解し、尊重することは、信頼関係の基盤となります。

一方的な期待を押し付けるのではなく、愛犬の「らしさ」を受け入れ、その子に合ったコミュニケーションを心がけましょう。

観察による感情の読み取り方

犬は言葉を話せませんが、体全体を使って感情や意思を表現しています。

日々の生活の中で愛犬の行動やしぐさを注意深く観察することで、その気持ちを読み取ることができます。

体の動き感情
しっぽの動き単に振っているだけでなく、高さや振り方(大きくゆっくり、小刻みに速くなど)で感情が異なります。
喜びだけでなく、警戒や不安を表している場合もあります。
耳の動きピンと立てている時は注意や興味、後ろに伏せている時は不安や服従を示していることが多いです。
穏やかに細めているときはリラックス、大きく見開いている時は興奮や警戒、そらしている時は不安やストレスを感じている可能性があります。
口元リラックスしている時は自然に閉じているか少し開いています。
歯を見せて唸るのは威嚇、唇をしきりに舐めるのはストレスや不安のサイン(カーミングシグナル)である場合があります。
姿勢体を低くするのは服従や不安、お腹を見せるのは降参や信頼の証ですが、状況によってはストレスを感じている場合もあります。
背中の毛を逆立てるのは興奮や威嚇のサインです。
鳴き声要求、喜び、警戒、不安など、鳴き方やトーンによって意味合いが変わってきます。

これらのサインは単独ではなく、組み合わせて読み取ることが重要です。

例えば、しっぽを振っていても耳が伏せられていれば、喜びと不安が入り混じった複雑な心境かもしれません。日々の観察を通して、愛犬が出すサインのパターンを理解しましょう。

以下の表は、犬が示す代表的なサインと、考えられる感情や欲求、そしてそれに対するコミュニケーションのヒントをまとめたものです。

サイン(例)考えられる感情/欲求コミュニケーションのヒント
しっぽを振る(振り方による)喜び、興奮、警戒、不安表情や耳の動きと合わせて判断。低い位置でゆっくりなら不安かも。
高い位置で小刻みなら興奮や警戒の可能性も。
耳を伏せる不安、恐怖、服従、リラックス状況による。他のサインと合わせて判断。
怖がっている場合は優しく声をかけ、安心させる。
体を低くする不安、服従、遊びの誘い(プレイバウ)お尻を高く上げているプレイバウなら遊びたいサイン。
そうでなければ不安を感じている可能性。
あくびをするストレス、眠気、カーミングシグナル状況を確認し、ストレス要因があれば取り除く。眠そうなら休ませる。
他の犬との間で緊張緩和のために行うことも。
唇をしきりに舐めるストレス、不安、カーミングシグナル状況を確認し、安心できる環境を作る。無理強いしない。
お腹を見せる服従、信頼、リラックス自発的に見せている場合は撫でてあげる。
無理やりひっくり返すのはNG。
前足を片方上げる不安、緊張、期待、集中何かを要求している、または次の行動を考えているサイン。
状況を見て対応する。

犬種特性と個性の違いを理解する

犬種ごとに、作出された目的や歴史的背景からくる一般的な性格の傾向(犬種特性)があります。

例えば、牧羊犬は活動的で賢く、猟犬は好奇心旺盛でスタミナがある、といった具合です。これらの情報は、愛犬の行動を理解する上でのヒントになります。

しかし、犬種特性はあくまで一般的な傾向であり、すべての犬がその通りとは限りません。

同じ犬種であっても、人間と同じように個性はさまざまです。

犬種図鑑に書かれている情報だけで判断せず、目の前にいる愛犬自身の性格、行動、反応をしっかりと観察し、その子ならではの個性を尊重することが大切です。

「うちの子は〇〇犬だからこうあるべき」という固定観念にとらわれず、柔軟な視点を持ちましょう。

愛犬に合わせたコミュニケーション方法

愛犬の性格に合わせて、コミュニケーションの方法を調整しましょう。

声かけ・穏やかで優しいトーンを基本
・遊びのときは明るく高い声
・指示を出すときは落ち着いたはっきりとした声
・怖がりな子には突然大きな声を出さないように注意
撫で方・どこを撫でられるのが好きか、どんな強さが心地よいかは、犬によって異なる
・頭を撫でられるのを嫌がる子もいる
・愛犬がリラックスしている表情や反応を見る
・様子を見て好みの場所や撫で方を見つける
視線・犬にとって、じっと見つめられることは威嚇や挑戦と受け取られる場合がある
・特に初対面や臆病な犬に対しては、真正面から見つめず、少し視線をそらすなどの配慮が必要
・信頼関係ができている場合は、穏やかなアイコンタクトがコミュニケーションになる
遊び・ボール遊び、ロープの引っ張りっこ、知的なおもちゃなど、好みはさまざま
・愛犬が夢中になる遊びを見つけ、一緒に楽しむ時間を作る
・運動欲求を満たすだけでなく、ストレス解消や信頼関係の強化にも繋がる
距離感・常にべったりくっついていたい子もいれば、ある程度の距離を保ちたい子もいる
・愛犬が安心して過ごせるパーソナルスペースを尊重し、構いすぎたり、逆に放置しすぎたりしない
・適切な距離感を保つことが大切
・甘えたいサイン、そっとしておいてほしいサインを見極める

安心できる環境作り

犬が安心して過ごせる環境を整えることも、個性を尊重したコミュニケーションの一環です。

特に臆病な子や警戒心の強い子には、静かで落ち着ける隠れ家(クレートやハウスなど)を用意してあげると良いでしょう。

また、大きな音や苦手な刺激から守ってあげる配慮も必要です。愛犬の性格に合わせて、生活空間をカスタマイズしてあげましょう。

ポジティブなしつけで信頼関係を深める

しつけは、単に犬に言うことを聞かせるためだけのものではありません。

人間社会で犬が安全かつ快適に暮らすためのルールを教え、飼い主との間に深い信頼関係を築くための重要なプロセスです。

特に、罰を与えるのではなく、良い行動を褒めて伸ばす「ポジティブ・レインフォースメント(正の強化)」に基づくしつけは、犬の学習意欲を高め、飼い主との良好な関係構築に非常に効果的です。

ポジティブ・レインフォースメントの基本

ポジティブ・レインフォースメントとは、犬が望ましい行動(例:「おすわり」をする)をした直後に、その犬にとって嬉しいこと(ご褒美:おやつ、褒め言葉、撫でるなど)を与えることで、その行動が再び起こる可能性を高める方法です。

犬は「この行動をすると良いことがある」と学習し、自発的にその行動をとるようになります。

このプロセスを通じて、犬は飼い主を「良いことをしてくれる存在」と認識し、信頼感を深めていきます。

恐怖や痛みを与える罰を用いたしつけは、一時的に望ましくない行動を抑制するかもしれませんが、犬に恐怖心や不安、ストレスを与え、場合によっては攻撃性を引き起こすリスクもあります。

また、飼い主に対する不信感を招き、長期的な関係性に悪影響を及ぼす可能性があります。

ポジティブなしつけは、犬が楽しく学び、自信を育むことをサポートします。

一貫性を保つための家族ルール

しつけにおいて最も重要なことのひとつが「一貫性」です。家族間で指示の言葉やルールが異なると、犬は何を求められているのか混乱してしまいます。

例えば、「おすわり」を教える際に、ある人は「おすわり」、別の人は「シット」と言う、あるいは、ソファに乗って良い時とダメな時が気まぐれに変わる、といった状況は避けなければなりません。

新しい犬を迎える前や、しつけを始める際には、家族全員で以下の点について話し合い、ルールを統一しましょう。

家族ルール方法
指示語(コマンド)「おすわり」「まて」「おいで」など、基本的な指示に使う言葉を統一する。
許可すること・禁止することソファやベッドに乗って良いか、人の食べ物を与えて良いか、来客時に飛びついて良いかなど、具体的なルールを決める。
褒め方・ご褒美の種類どのようなタイミングで、どのように褒めるか。
おやつ、おもちゃ、声かけなど、ご褒美の種類と与え方。
望ましくない行動への対応叱るのではなく、どのように対応するか(無視する、代替行動を教えるなど)を決めておく。

全員が同じルールで一貫した対応をとることで、犬は安心してルールを学び、混乱することなく適切な行動を身につけることができます。

失敗したときの正しい対応

犬がしつけの途中で失敗したり、望ましくない行動をとったりすることは当然あります。そのようなときに、感情的に叱りつけたり、罰を与えたりするのは避けましょう。

犬はなぜ叱られているのか理解できず、ただ飼い主を怖がるようになる可能性があります。

失敗したときの適切な対応は以下の通りです。

正しい対応理由
無視する注目を集めたいがための行動(例:無駄吠えの一部)などは、反応せずに無視することが効果的な場合があります。
ただし、安全に関わる行動や、他の人や犬に迷惑をかける行動は無視できません。
環境を変える問題行動が起こる状況を作らないように、環境を整えます。
例えば、盗み食いをするなら、食べ物を犬の届かない場所に置くなどです。
正しい行動へ誘導する(代替行動を教える)望ましくない行動をする代わりに、してほしい行動(代替行動)を教え、それができたら褒めます。
例えば、来客に飛びつく犬には、「おすわり」や「まて」を教えて、できたら褒めるようにします。
天罰方式(間接的な罰)望ましくない行動をした瞬間に、犬にとって嫌なこと(大きな音を立てるなど、飼い主がやったと悟られないように)が起こるようにする方法もあります。
ただ、タイミングや方法が難しく、専門家のアドバイスなしに行うのは推奨されません。

大切なのは、なぜその行動をとるのか、犬の気持ちや原因を探ることです。その上で、罰ではなく、どうすれば良いかを教えるという視点で対応しましょう。

効果的なご褒美の使い方

ポジティブなしつけにおいて、ご褒美は非常に重要な役割を果たします。ご褒美を効果的に使うためのポイントは以下の通りです。

ご褒美の使い方理由
タイミング望ましい行動をした直後(1~2秒以内)に与えるのが最も効果的です。
時間が経つと、犬は何に対して褒められているのか分からなくなってしまいます。
犬にとっての価値ご褒美は、その犬が本当に喜ぶものでなければ意味がありません。
おやつが好きな子、おもちゃが好きな子、撫でられるのが好きな子、褒め言葉だけで喜ぶ子などさまざまです。
愛犬が何に一番モチベーションを感じるかを見極めましょう。
ご褒美の多様性常に同じおやつばかりだと飽きてしまうこともあります。
普段のフード、特別なおやつ、おもちゃ、遊び、褒め言葉、撫でるなど、さまざまな種類のご褒美を使い分けると、モチベーションを維持しやすくなります。
特に難しい課題に挑戦する時は、より価値の高い「スペシャルなご褒美」を用意するのも効果的です。
与えすぎに注意特におやつをご褒美に使う場合は、与えすぎによる肥満に注意が必要です。
1日の摂取カロリーを考慮し、主食の量を調整するか、小さくカットして与えるなどの工夫をしましょう。
低カロリーのおやつや、野菜などを活用するのも良い方法です。
ご褒美なしでもできるように最終的には、ご褒美がなくても指示に従えるように、徐々にご褒美を与える頻度を減らしていく(間欠強化)ことも目指します。
ただし、完全に無くすのではなく、時々サプライズで与えることで、行動の維持に繋がります。

以下の表は、しつけにおける褒め方(ご褒美)の種類とその特徴をまとめたものです。

ご褒美の種類特徴使い方のポイント
おやつ(フード)多くの犬にとって最も分かりやすく、強い動機付けになる。小さくカットする。カロリー計算をする。特別なものを用意すると効果アップ。
褒め言葉「いい子!」「上手!」など。明るく優しいトーンで。いつでもどこでも使える。おやつや撫でることと組み合わせるとより効果的。
撫でる・触る犬が喜ぶ場所を優しく撫でる。スキンシップ。犬が好む場所やタイミングを見極める。興奮している時は避ける場合も。
おもちゃ・遊び好きなおもちゃで遊んであげる。引っ張りっこ、ボール投げなど。遊び好きな犬に効果的。トレーニングの合間や最後に使うと良い。

根気と愛情を持って向き合う

しつけは一朝一夕にできるものではありません。

犬の学習スピードには個体差があり、すぐに覚える子もいれば、時間がかかる子もいます。焦らず、根気強く、そして何よりも愛情を持って接することが大切です。

うまくいかないときでも、決して愛犬を責めたり、諦めたりしないでください。飼い主がリラックスして、楽しみながら取り組む姿勢が、犬にも伝わります。

愛犬の性格を理解し、個性を尊重したコミュニケーションと、ポジティブなしつけを継続することで、犬は安心して飼い主を信頼し、深い絆で結ばれた、かけがえのないパートナーとなるでしょう。

まとめ

犬の性格は、犬種や親からの遺伝といった「生まれつき」の要素と、子犬期の社会化や生活環境、日々のしつけといった「育ち」の要素の両方が複雑に絡み合って形成されます。

どちらか一方だけで決まるわけではなく、その両方が重要であることを飼い主として覚えておかなければいけません。

生まれ持った気質を完全に変えることは難しくても、適切な関わり方やトレーニングを通じて、行動を良い方向へ導き、信頼関係を深めることは十分に可能です。

愛犬の個性を理解し尊重することが、幸せな共生への第一歩と言えるでしょう。

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