犬の病気・健康

【獣医師執筆】犬のワクチン接種が必要な理由とワクチンの種類

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犬のワクチン

愛犬と暮らし始めたら必ず必要になるワクチン接種。予防接種、ワクチンを打つことで愛犬を守ることができます。

犬のワクチンの中には接種が義務化されているものもありますし、任意で選択できるものもあります。

ワクチンの重要性を飼い主さん自身が理解しておかないと、接種忘れや適切な接種の判断が難しくなってしまいます。

愛犬の命にかかわる重要なことですので、飼い主さんは必ず知っておきましょう!

この記事の結論

  • 犬には接種義務となっている狂犬病ワクチンと、任意となっている混合ワクチンがある
  • 狂犬病は発症すると死亡率がほぼ100%でもあり、接種を怠ると罰金が科せられる
  • 混合ワクチンは約2種~8種の病気を防ぐ目的として、接種が勧告・推奨される
  • 混合ワクチンにはコアワクチンとノンコアワクチンの2種類がある

杉山 杏奈

執筆・監修

杉山 杏奈

獣医師

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、動物看護士・トリマーの専門学校で教員を行う傍らトリミングのライセンスも取得。
その後、ペット保険会社、動物病院向けの専門商社に勤務。現在は2児の母で子育て奮闘中です。

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犬のワクチン接種・予防接種が必要な理由

愛犬を重篤な感染症から守るためにも、ワクチン接種が推奨されています。

感染症の中には犬から人へ感染するものもあり、人獣共通感染症と呼ばれています。

人獣共通感染症の中に『狂犬病』があり、狂犬病予防法が制定されるより以前の日本において、人も狂犬病に感染して死亡していたほどです。

狂犬病予防法が制定されてからはわずか7年で狂犬病撲滅に至るまでとなり、現在でも狂犬病は犬に対しての年1回の予防接種が義務付けられています。

ペットホテルやドッグランなどではワクチン接種証明書の提示が必要な施設も多いため、ワクチン接種について知っておきましょう。

犬のワクチン・予防接種の種類

犬のワクチンは法律で必ず接種しなければならないと義務付けられているワクチンと、飼い主の判断で接種する任意のワクチンに分けられます。

接種が義務付けられているワクチンは「狂犬病ワクチン」1種類です。

任意接種のワクチンはコアワクチンと、ノンコアワクチンの2種類に分類されます。

コアワクチンは感染すると致死率が高い感染症に対するワクチンで、すべての犬に接種するよう勧告されています。

ノンコアワクチンは感染率が高い感染症に対するワクチンで、生育環境などにより接種が推奨されています。

コアワクチンやノンコアワクチンは約2種~8種の病気を防げる「混合ワクチン」として接種されます。

狂犬病ワクチン

狂犬病は犬も人も発症すると治療法はなく、ほぼ100%の確率で死亡するとても恐ろしい感染症です。

日本国内での狂犬病発生事例は1957年以来ありませんが、人が海外で感染して国内で発症した事例は近年でも見受けられます。

そのため、厚生労働省が定める狂犬病予防法により、全犬に狂犬病ワクチンの接種が義務付けられています。

狂犬病ワクチンの接種を怠った場合は20万円以下の罰金が科せられる場合もあり、愛犬と人を守るためにも必ず年1回の狂犬病ワクチン接種を行いましょう。

参考:厚生労働省 狂犬病に関するQ&Aについて

複数の病気を予防する混合ワクチン

コアワクチンとノンコアワクチンで予防できる病気は次のとおりです。

病名2種3種4種5種6種7種8種
犬ジステンパー
犬アデノウイルス1型(犬伝染性肝炎
犬アデノウイルス2型(犬伝染性喉頭気管炎
犬パルボウイルス
犬パラインフルエンザ
犬コロナウイルス
犬レプトスピラ(イクテモヘモラジー)
犬レプトスピラ(カニコーラ)

コアワクチン

コアワクチンに含まれる病原体は、全世界に分布し、致死率がとても高いためワクチン接種が勧告されています。

犬では、犬ジステンパーウイルス感染症、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス2型感染症、犬パルボウイルス感染症があります。

ノンコアワクチン

ノンコアワクチンは、感染力が強いので感染のリスクがある個体のみ接種することが推奨されています。

他の犬との接触が多いなど、生活環境や地域性によって接種の有無を検討します。

犬では、犬パラインフルエンザウイルス感染症、犬コロナウイルス感染症、犬レプトスピラ感染症があります。

犬のワクチンを接種するペースとタイミング

愛犬のワクチン接種をする際のペースとしては、狂犬病ワクチンか、混合ワクチンかで異なります。

それぞれ次のペース・タイミングで接種を検討してください。

狂犬病ワクチン

生後91日に1回目を接種することが推奨されています。その後は、毎年1回の追加接種が必要になります。

病気などの理由で狂犬病ワクチン接種が出来ない場合などは、動物病院の獣医師より「狂犬病予防注射猶予証明書」が発行され、猶予手続きが必要となります。猶予期間は原則として1年ごとです。

混合ワクチン

1歳を迎える前に3~5回の接種が必要で、1回目は生後6~8週頃に接種し、その後は3~4週間ごとに接種を繰り返します。

1歳以降はコアワクチンは3年に1回、ノンコアワクチンは1年に1回の接種が推奨されています。

しかし、混合ワクチンでコアワクチンとノンコアワクチンが分かれているものが少ないため、日本では1年に1回の追加接種が基本となっています。

昨今では抗体検査キットも充実してきているので、抗体検査をして十分な抗体量があれば接種を見送ったりする病院も増えてきています。

犬のワクチン接種・予防接種ができる場所と費用

犬のワクチン接種については、動物病院であればどちらも対応しています。

狂犬病ワクチンについては義務でもあるため、ワクチン接種できる場所が動物病院以外にも存在します。

狂犬病ワクチン

4~6月に狂犬病ワクチンの集団予防接種を行う市区町村が多いので、そこで接種をするか、個別に動物病院で接種をしてもらいます。

費用は3,000円~4,000円が一般的で、550円の「狂犬病予防注射済票」交付手数料が別途かかる場合もあります。

混合ワクチン

混合ワクチンは動物病院で接種をしてもらいます。

何種混合を接種するかで費用が異なりますが、一般的に4,000円~10,000円前後の病院が多いです。

病院によって費用が変わってきますが、かかりつけの動物病院で接種する方がおすすめです。

犬のワクチン接種・予防接種における注意点

ワクチンは病原体の力を弱くしたものや感染力を無くした病原体そのものなどを使用することが多いため、からだが弱っているときに接種することは避けましょう。

接種当日に発熱、嘔吐や下痢、食欲不振などが見られたらワクチン接種を見送ったほうがよいでしょう。

また、健康なときであってもワクチン接種には副反応も伴います。

万が一、体調変化が起こった際に動物病院に相談できるよう、予定が無い午前中にワクチン接種を行うのがベストです。

どのワクチンをどのタイミングで受けさせるかなどは、実際に愛犬を診てくれている獣医師と相談して決めましょう。

犬のワクチン接種後に気を付けること

接種して30分以内にアナフィラキシーショック(痙攣、意識消失、呼吸・心停止などの生死にかかわる症状)を起こすことが多いので、特に注意してみてあげましょう。

その後、数時間はムーンフェイス(顔が腫れる)、全身の痒み、蕁麻疹、嘔吐、下痢、発熱などの副反応が出やすいため、よく観察して気になることがあれば病院に相談しましょう。

また、接種当日は長距離の散歩や激しい運動は避けてゆったりと過ごし、シャンプートリミングなどは1週間は控えましょう。

ムーンフェイス

典型的な副反応の症状で、ワクチン接種2~6時間後に顔面のかゆみ、目の周りや口の周りの腫れや赤みを特徴とした変化が見られます。

上記画像(左)では目の周りが普段の状態に比べて、赤みがかっているのがわかります。

症状によっては病院での処置が必要な場合もあるため、すぐに動物病院に連絡し受診するか判断しましょう。

副反応が起こったら、次回のワクチン接種は打たないという選択肢もあります。かかりつけの獣医師とよく相談してみましょう。

この記事の執筆者・監修者

杉山 杏奈

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杉山 杏奈

獣医師

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、動物看護士・トリマーの専門学校で教員を行う傍らトリミングのライセンスも取得。現在は2児の母で子育て奮闘中です。

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