「最近、愛猫の口臭が気になる」「ごはんを食べにくそうにしている」――もしかしたら、それは歯のトラブルのサインかもしれません。
猫にとって歯の健康は、全身の健康に直結するとても大切なものです。しかし、犬に比べて猫のデンタルケアはあまり知られておらず、「どうしたらいいの?」と悩む飼い主さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、子猫の時期からシニア猫まで、愛猫の歯の成長に合わせたケアのポイント、気をつけたい歯周病などのトラブル、そして自宅で簡単にできる歯磨きのコツまで、猫の歯に関するあらゆる疑問を解決します。
大切な愛猫がいつまでも美味しくごはんを食べ、元気に過ごせるよう、一緒に歯の健康について学びましょう。
この記事の結論
- 歯周病は全身の健康に影響を及ぼすため、段階に合わせたデンタルケアが不可欠
- 歯磨きは歯垢除去の基本であり、愛猫に合わせた歯ブラシやペーストを選ぶ
- 口臭や歯茎の腫れなどは歯周病のサインであるため、日々の観察と獣医師への相談が重要
- 自宅での日々の歯磨きと、定期的な動物病院での専門的な歯石除去を連携させることが重要
目次
なぜ猫の歯のケアが大切なの?

猫にとって歯の健康は、単に食事を楽しむだけでなく、全身の健康を維持するために不可欠です。私たち人間と同じように、猫も歯周病をはじめとするさまざまな口腔トラブルを抱えることがあります。
これらの問題は、口の中だけでなく、やがて全身に悪影響を及ぼす可能性を秘めているため、日頃からの適切なケアが非常に重要になるのです。
愛猫がいつまでも元気に、そして快適に過ごせるように、歯の健康への意識を高め、適切なケアを実践していきましょう。
猫の歯の構造と役割

猫の歯は、獲物を捕らえ、引き裂き、そして飲み込むという肉食動物ならではの役割を果たすよう進化してきました。全部で30本の永久歯(乳歯は26本)を持ち、それぞれに重要な機能があります。
前歯である切歯は、獲物をくわえたり、毛づくろいをしたりする際に使用します。犬歯は、長く鋭く尖っており、獲物を捕らえたり、引き裂いたりするのに適しています。そして奥歯の臼歯は、肉を噛み砕くためにハサミのように機能します。
これらの歯が適切に機能することで、猫は栄養を効率的に摂取し、健康を維持できるのです。
人間の歯と猫の歯の違いは?
猫の歯は、人間とは異なる特徴をいくつか持っています。最も顕著な違いは、歯の形状と数、そしてその使われ方です。
人間の歯はさまざまな形をしていて、食物を細かくすり潰すための臼歯が発達していますが、猫の臼歯は肉を切り裂くことに特化しており、すり潰す機能はほとんどありません。
また、人間の唾液には消化酵素が含まれていますが、猫の唾液にはほとんど含まれていません。そのため、猫は食物をすり潰すよりも、飲み込む前に切り裂くことを得意としています。
この違いを理解することが、猫のデンタルケアを考える上で非常に重要になります。
歯の健康が全身に与える影響
歯の健康は、単に口の中だけの問題ではありません。歯周病が進行すると、口の中の細菌が血管に入り込み、心臓、腎臓、肝臓などの主要な臓器に運ばれ、全身性の疾患を引き起こす可能性があります。
例えば、心臓病や腎臓病の悪化につながるケースも報告されています。また、歯の痛みが原因で食欲不振に陥ったり、飲水量が減ったりすることで、脱水症状や栄養失調につながることもあります。
愛猫の歯を健康に保つことは、病気の予防にも繋がるため、日々のケアを怠らないようにしましょう。
子猫からシニア猫まで!成長段階別の歯のケア

猫の歯のケアは、子猫の時期からシニア猫になるまで、その成長段階に合わせて変えていく必要があります。
それぞれの時期に特有の口腔内の変化があるため、それに合わせた適切なケアを行うことで、生涯にわたる歯の健康をサポートできます。
特に子猫の乳歯の時期から適切なケアを始めることは、将来的な歯のトラブルを予防する上で非常に重要です。
子猫の乳歯と生え変わり
子猫は生後約2~3週間で乳歯が生え始め、生後約6~8週間で26本の乳歯が揃います。
これらの乳歯は非常に小さく、鋭いのが特徴です。そして、生後約3か月頃から永久歯への生え変わりが始まり、約6~7か月頃までに30本の永久歯が生え揃います。
この生え変わりの時期は、子猫にとって不快感を伴うことがあり、口の中を触られるのを嫌がったり、物を噛みたがったりする行動が見られることがあります。
この時期に歯磨きに慣れさせる練習を始めることは、将来的なデンタルケアの習慣化に大きく役立ちます。
乳歯が抜けない「乳歯遺残」に注意
乳歯が永久歯に生え変わる際、本来なら乳歯が自然に抜け落ちるはずですが、稀に乳歯が抜けずに残ってしまうことがあります。これを「乳歯遺残」と呼びます。
乳歯遺残があると、永久歯と乳歯の間に食べかすが挟まりやすくなり、歯垢や歯石が蓄積しやすくなるため、歯周病のリスクが高まります。
また、永久歯の生え方が異常になったり、噛み合わせが悪くなったりすることもあります。生後6か月を過ぎても乳歯が残っている場合は、動物病院で相談し、必要に応じて抜歯処置を検討しましょう。
永久歯への移行期のケア
乳歯から永久歯への移行期は、口の中がデリケートな時期です。この時期に歯磨きに慣れさせることで、永久歯が生え揃ってからのデンタルケアをスムーズに始められます。
まずは口に触れることに慣れさせることから始め、少しずつ歯ブラシや歯磨きシートを使ってみましょう。この時期は、柔らかいおもちゃや歯磨き効果のあるおやつを与えるのも良いでしょう。
ただし、過度に硬いものは、生えかけの永久歯に負担をかける可能性があるので注意が必要です。
成猫・シニア猫の歯の特徴とケア
成猫になると永久歯が生え揃い、食事や遊びを通して歯を使う機会が増えます。しかし、同時に歯垢や歯石がつきやすくなる時期でもあります。
シニア猫になると、長年の蓄積により歯周病が進行しているケースが多く、より一層の注意とケアが必要になります。定期的な歯のチェックと、年齢に合わせたデンタルケアが欠かせません。
歯垢・歯石がつきやすい理由
猫の口の中は、食べかすと唾液、細菌が混ざり合い、歯に「歯垢」を形成しやすい環境です。
歯垢はベタベタした物質で、放置すると約2~3日で唾液中のカルシウムなどと結合して「歯石」へと変化します。歯石は非常に硬く、歯磨きでは除去できません。
歯石の表面はザラザラしているため、さらに歯垢が付着しやすくなり、悪循環に陥ります。この歯垢・歯石が、歯周病の主要な原因となります。
特に猫は、ドライフードを食べる際に歯の表面を擦ることで歯垢が落ちにくい傾向にあるため、デンタルケアがより重要になります。
自宅でできるデンタルケアの基本
自宅でできるデンタルケアの基本は、やはり歯磨きです。歯磨きによって歯垢を除去することが、歯周病予防の最も効果的な方法です。
毎日行うのが理想ですが、週に2~3回でも効果があります。歯磨きに加えて、デンタルケア効果のあるおやつやフード、おもちゃなども活用すると良いでしょう。
しかし、これらのアイテムはあくまで補助的なものであり、歯磨きの代わりにはならないことを覚えておきましょう。また、定期的に猫の口の中をチェックし、異常がないか確認する習慣も大切です。
猫の歯磨きを成功させるためのコツとアイテム

猫の歯磨きは「難しい」「嫌がる」というイメージがあるかもしれません。
しかし、いくつかのコツを抑え、愛猫に合ったアイテムを選ぶことで、歯磨きをストレスなく習慣にすることが可能です。
歯磨きは、猫の口腔健康を維持し、将来的な医療費の削減にも繋がる重要な予防策です。
歯磨きの必要性とメリット
「うちの猫はドライフードを食べているから大丈夫」「口臭もないし、必要ないかな」と考えている飼い主さんもいるかもしれません。
しかし、歯磨きは猫の健康を保つ上で非常に重要です。歯磨きによって歯垢を除去することで、歯周病の進行を食い止め、口の中の細菌が引き起こす全身疾患のリスクを低減できます。
歯磨きで防げるトラブル
歯磨きをすることで、以下のようなさまざまなトラブルを予防できます。
| 歯周病の進行 | 歯垢や歯石の蓄積を防ぎ、歯茎の炎症や出血、歯のぐらつき、最終的な歯の喪失を防ぎます。 |
| 口臭の改善 | 口臭の主な原因である歯垢や細菌を除去することで、口臭が大幅に改善されます。 |
| 全身疾患の予防 | 歯周病菌が血流に乗って全身に広がることで引き起こされる、心臓病、腎臓病、肝臓病などのリスクを低減します。 |
| 口腔内の不快感の軽減 | 歯や歯茎の痛み、違和感を軽減し、猫が快適に食事や生活を送れるようになります。 |
歯磨きを習慣にする重要性
歯磨きは、一度やれば終わりというものではありません。毎日、あるいは数日に一度の継続が重要です。
歯磨きを習慣にすることで、猫も次第に受け入れるようになり、飼い主さんにとっても負担が減ります。
子猫の頃から始めるのが理想ですが、成猫になってからでも根気強く続けることで習慣化は可能です。
日々の積み重ねが、愛猫の将来の健康を大きく左右すると認識しておきましょう。
猫の歯磨きの始め方と手順
猫の歯磨きを始める際は、焦らず、少しずつ慣れさせることが成功の鍵です。
最初は口に触れることから始め、徐々にステップアップしていきましょう。猫が嫌がったら無理強いせず、短い時間で切り上げ、褒めてご褒美をあげることを忘れずに。
ステップ・バイ・ステップで慣れさせる
ステップ1:口に触れることに慣れさせる
まずは、猫がリラックスしている時に、優しく顔を撫で、口の周りに触れる練習から始めます。抵抗がなければ、唇をめくって歯や歯茎に触れてみましょう。
ご褒美を与え、良い経験として記憶させます。
ステップ2:歯磨きシートや指サックブラシで慣れさせる
口に触れることに慣れたら、指サックブラシや歯磨きシートを指にはめて、歯の表面を優しく擦る練習をします。最初は奥歯から始めると良いでしょう。
猫用歯磨きペーストを少量つけて、味に慣れさせるのも効果的です。
ステップ3:猫用歯ブラシを使ってみる
指サックブラシに慣れたら、いよいよ猫用歯ブラシを使ってみます。最初は数本だけ磨くことから始め、徐々に本数を増やしていきましょう。
特に歯垢がつきやすい犬歯と奥歯の外側を中心に磨きます。
効果的な歯磨きの体勢
猫の歯磨きをする際には、猫が安心できる体勢を見つけることが重要です。
抱っこして行う:膝の上に抱っこし、猫の体を安定させることで、猫が暴れにくくなります。
タオルで包む:猫が落ち着かない場合は、タオルで体を優しく包んであげると、安心感を与えられます。ただし、無理に拘束するのは避けましょう。
落ち着いた場所を選ぶ:静かで猫がリラックスできる場所で行いましょう。
おすすめのデンタルケアグッズ
猫の歯磨きをサポートするさまざまなデンタルケアグッズがあります。愛猫の性格や好みに合わせて、最適なものを選びましょう。
歯ブラシの種類と選び方
猫用の歯ブラシには、さまざまな種類があります。
指サック型歯ブラシ:歯磨き初心者や、口の中を触られるのを嫌がる猫におすすめ。指の感覚で優しく磨けます。
超小型ヘッド歯ブラシ:口の小さな猫や、奥歯など細かい部分を磨くのに適しています。ヘッドが小さく、毛が柔らかいものを選びましょう。
360度ブラシ:どの方向からでも磨きやすい形状で、効率的に歯垢を除去できます。
猫の口の大きさに合ったもの、毛が柔らかく歯茎を傷つけにくいものを選ぶことが大切です。
歯磨きペーストと歯磨きシート
歯磨きペースト:猫が好む味(チキン味、魚味など)のものが多く、歯磨きのモチベーションアップに繋がります。酵素配合で歯垢を分解する効果のあるものもあります。人間用は絶対に与えないでください。
歯磨きシート:歯ブラシに抵抗がある猫でも比較的受け入れやすいアイテムです。指に巻き付けて歯の表面を拭き取るように使います。手軽に始められますが、歯ブラシほどの効果は期待できません。
デンタルおやつ・おもちゃの活用法
デンタルケア効果を謳うおやつやおもちゃは、歯磨きの補助として活用できます。
デンタルおやつ:噛むことで歯の表面の歯垢を除去する効果や、特定の成分が歯垢の付着を抑制する効果が期待できます。ただし、カロリーオーバーにならないよう、与えすぎには注意しましょう。
デンタルおもちゃ:噛むことで歯をきれいにしたり、歯茎をマッサージしたりする効果があります。猫が興味を持って遊び続けられるものを選びましょう。
これらのアイテムは、あくまで歯磨きの補助であり、歯ブラシを使った直接的なケアの代わりにはならないことを理解しておく必要があります。
気をつけたい猫の歯のトラブルと病気

猫の歯のトラブルは、飼い主さんが気づかないうちに進行していることが少なくありません。
日々の観察で異変に気づき、早期に動物病院を受診することが、愛猫の健康を守る上で非常に重要です。
ここでは、猫に多い歯のトラブルとそのサイン、そして見過ごしてはいけない症状について詳しく解説します。
猫の歯周病のサインと進行
歯周病は、猫の口腔疾患の中で最も多い病気のひとつです。歯垢や歯石の中にいる細菌が原因で、歯を支える歯周組織(歯茎、歯根膜、歯槽骨)に炎症が起きる病気です。
初期段階では気づきにくいですが、進行すると痛みや食欲不振を引き起こし、全身に影響を及ぼす可能性があります。
歯周病の初期症状を見逃さない
歯周病の初期段階では、以下のようなサインが見られることがあります。
- 口臭が強くなる:細菌の繁殖により、独特の不快な臭いがします。
- 歯茎が赤く腫れている:健康な歯茎はピンク色ですが、炎症があると赤く腫れ、出血しやすくなります。
- 歯の表面に歯垢や歯石が付着している:黄色や茶色の固まりが見られることがあります。
- よだれが増える:炎症や痛みから唾液の分泌量が増えることがあります。
これらのサインは、見逃されがちですが、早期発見・早期治療のために非常に重要です。
進行するとどうなる?
歯周病が進行すると、以下のような重篤な症状が現れることがあります。
- 歯茎からの出血や膿:歯磨きや食事中に歯茎から出血したり、膿が出たりします。
- 歯がぐらつく、抜け落ちる:歯周組織の破壊が進み、歯が不安定になったり、自然に抜け落ちたりします。
- 食欲不振、食べにくそうにする:口の痛みから、硬いものを食べなくなったり、食欲が落ちたりします。
- 顔の腫れ、目の下の膿:歯根の炎症が顎の骨や顔の組織に広がり、顔が腫れたり、目の下に膿の塊ができたりすることがあります。
- 全身性の病気への影響:歯周病菌が全身に広がり、心臓病、腎臓病、肝臓病などのリスクが高まります。
口内炎・吸収病巣などその他の口のトラブル
歯周病以外にも、猫の口の中にはさまざまなトラブルが発生する可能性があります。これらの病気も、猫に痛みや不快感を与え、食欲不振などの原因となるため、注意が必要です。
口内炎の原因と症状
猫の口内炎は、口の中の粘膜に炎症が起こる病気です。原因はさまざまで、ウイルス感染(猫カリシウイルスなど)、免疫異常、アレルギー、歯周病の悪化などが考えられます。主な症状は以下の通りです。
- 口の中の強い痛み:食事を嫌がったり、よだれを大量に出したりします。
- 歯茎や舌、喉の奥の赤み、ただれ:口の中全体が赤く腫れ、潰瘍が見られることもあります。
- 口臭の悪化:口腔内の細菌が増殖し、強い口臭を伴います。
- 体重減少:痛みのために食事ができなくなり、体重が減少します。
猫の吸収病巣とは?
猫の吸収病巣(FORL:Feline Odontoclastic Resorptive Lesions)は、歯の組織が溶けてしまう原因不明の進行性の病気です。
歯茎のすぐ上の部分や歯根の奥で発生し、進行すると歯に穴が開いたり、歯がもろくなって折れたりします。
見た目にはわかりにくいことも多く、歯の表面は健康そうに見えても、内部で病変が進行していることがあります。
非常に強い痛みを伴うため、猫が食事を嫌がったり、口を触られるのを極端に嫌がったりするようになります。
診断にはレントゲン検査が必要となることがほとんどで、治療は病変歯の抜歯が一般的です。
歯根膿瘍や口の中の腫瘍
歯根膿瘍:歯の根元に細菌が感染し、膿がたまる病気です。顔が腫れたり、発熱したりすることがあります。重症化すると顔の皮膚を突き破って膿が出てくることもあります。
口の中の腫瘍:稀ですが、口の中に腫瘍ができることもあります。良性のものもありますが、悪性の場合は進行が早く、早期発見・早期治療が重要です。食事の仕方の変化、口からの出血、顔の腫れなどに注意しましょう。
こんな症状が出たらすぐに動物病院へ!
愛猫に以下のような症状が見られたら、自己判断せずにすぐに動物病院を受診しましょう。早期に適切な処置を行うことで、症状の悪化を防ぎ、猫の苦痛を最小限に抑えることができます。
食欲不振やよだれが増えたら
食欲不振:急に食事を食べなくなった、硬いものを避けるようになった、食べ方がぎこちないなど。
よだれが増える:口の中の痛みや炎症、吐き気などが原因で、普段よりよだれが多くなることがあります。特に、血が混じったよだれや、泡立ったよだれには注意が必要です。
これらは口腔内の問題だけでなく、他の病気のサインである可能性もあるため、早めの受診が大切です。
口臭がひどい、歯茎が赤い・腫れている
口臭が異常に強い:生臭い、腐ったような臭いがするなど、明らかに普段と違う口臭が続く場合。
歯茎の異常:歯茎が赤く腫れている、出血しやすい、歯肉が退縮して歯根が見えている、歯茎にできものがあるなど。
これらの症状は、歯周病がかなり進行している可能性が高いサインです。
顔を触られるのを嫌がる
口周りを触ると嫌がる:顔を洗う時や撫でる時に、口の周りを触られるのを極端に嫌がったり、攻撃的になったりする場合。
片側だけで食べる:口の片側に痛みがあるため、痛くない側の歯で食べるようになることがあります。
顔が腫れている:目の下や頬が腫れている場合は、歯根膿瘍などの可能性があります。
これらの行動は、猫が口の中に痛みや不快感を抱えている明確なサインです。痛みを我慢していることが多いので、少しでも異変を感じたら、専門家である獣医師に相談しましょう。
猫の歯の専門的な治療と予防

自宅でのデンタルケアも重要ですが、すでに進行してしまった歯周病や、歯石が大量に付着している場合には、動物病院での専門的な治療が必要になります。
獣医師による適切な診断と治療、そして自宅ケアとプロのケアの連携が、愛猫の口腔健康を維持する上で不可欠です。
動物病院でのデンタルケア
動物病院では、自宅では除去できない歯石の除去や、進行した歯周病の治療、その他の口腔疾患の診断と治療が行われます。特に、歯石除去は専門的な知識と技術が必要な処置です。
歯石除去(スケーリング)の重要性
歯石は非常に硬く、歯ブラシでは除去できません。歯石除去(スケーリング)は、麻酔下で行われることが一般的です。
超音波スケーラーと呼ばれる専用の器具を使い、歯周ポケットの奥深くにある歯石まで徹底的に除去します。スケーリング後には、歯の表面を滑らかにするポリッシングを行い、歯垢が再付着しにくいように処置します。
これにより、歯周病の進行を食い止め、口臭の改善にも繋がります。麻酔のリスクを心配される飼い主さんもいますが、事前に十分な検査を行い、安全に配慮しながら行われます。
抜歯が必要なケース
歯周病が重度に進行し、歯を支える骨が吸収されて歯がぐらついている場合や、歯根膿瘍、吸収病巣などにより歯が回復不可能な状態になっている場合は、抜歯が必要になります。
抜歯は、痛みの原因となっている歯を取り除くことで、猫の苦痛を和らげ、口腔内の健康状態を改善する重要な治療法です。
抜歯後の猫は、痛みがなくなり、以前よりも食欲が増したり、元気になることがよくあります。
自宅ケアとプロのケアの連携
愛猫の歯の健康を維持するためには、自宅での毎日のケアと、動物病院での定期的な専門的ケアを組み合わせることが最も効果的です。
どちらか一方だけでは不十分であり、両方をバランス良く行うことで、より良い結果に繋がります。
定期的な健康チェックのススメ
年に1回、あるいは半年に1回は、定期的に動物病院で猫の口腔内の健康チェックを受けましょう。
獣医師は、歯肉炎の有無、歯石の付着具合、歯周ポケットの深さ、歯のぐらつきなどを確認し、必要に応じて専門的なクリーニングや治療を提案してくれます。
また、自宅でのデンタルケアの方法についてもアドバイスをもらえます。定期的なチェックは、病気の早期発見・早期治療に繋がり、愛猫のQOL(生活の質)を高める上で非常に重要です。
獣医師と相談しながら進めるデンタルケア
猫の歯磨きがうまくいかない、どんなデンタルグッズを選べば良いか分からない、といった悩みがあれば、迷わず獣医師に相談しましょう。
愛猫の性格や口の状態に合わせて、最適なデンタルケアの方法やアイテムをアドバイスしてもらえます。
また、口腔内の異常に気づいた場合も、自己判断せずにすぐに獣医師の診察を受けることが大切です。
獣医師は、あなたの愛猫の「かかりつけの歯医者さん」として、生涯にわたる口腔健康のパートナーとなってくれるでしょう。
愛猫の歯の健康を守るために飼い主ができること

愛猫の歯の健康を守るために、飼い主さんができることはたくさんあります。日々の生活の中で少し意識を変えるだけで、愛猫の口腔環境は大きく改善され、より長く健康で快適な生活を送れるようになります。最も大切なのは、愛猫への愛情と、継続的なケアへの意識です。
毎日の観察とコミュニケーション
愛猫の歯や口の中を毎日観察する習慣を持つことは、小さな異変に早期に気づくための第一歩です。
猫は痛みを隠すのが得意な動物なので、飼い主さんの注意深い観察が非常に重要になります。
歯や口の中をチェックする習慣
食事の前や、撫でる時など、猫がリラックスしているタイミングを利用して、毎日数秒でも良いので口の中をチェックする習慣をつけましょう。
- 口臭:普段より口臭が強くなっていないか。
- 歯茎の色:健康なピンク色か、赤く腫れていないか、出血がないか。
- 歯の汚れ:歯垢や歯石が付いていないか、歯がぐらついていないか。
- よだれ:よだれの量が増えていないか、血や泡が混じっていないか。
- その他:口の周りを触ると嫌がらないか、顔が腫れていないか。
これらのチェックポイントを意識することで、異常の早期発見に繋がります。
愛猫の小さな変化に気づく
猫は口の中に痛みがあっても、ごはんを食べるのをやめないことが多いです。
しかし、食べ方が変わったり、特定のフードを嫌がったり、以前より食べきるのに時間がかかったりするなどの小さな変化を見逃さないようにしましょう。
例えば、片側の歯だけで食べるようになったり、固いおやつを避けるようになったりするのも、口の中に不調があるサインかもしれません。
日頃から愛猫の行動をよく観察し、いつもと違う様子があれば注意深く見守り、必要に応じて動物病院に相談しましょう。
食生活と歯の健康
毎日の食生活は、猫の歯の健康に大きく影響します。適切なフード選びや、おやつの与え方を工夫することで、歯の健康維持をサポートできます。
デンタルケアを意識したフード選び
市販されているキャットフードの中には、「デンタルケア」を目的としたものが数多くあります。これらのフードは、以下のような工夫がされています。
- 粒の形状や硬さ:噛んだ時に歯に食い込み、歯垢をこすり落とすように設計されています。
- 特定の成分配合:歯石の形成を抑制する成分(例:六メタリン酸ナトリウム)が配合されているものもあります。
これらのフードは、歯磨きの補助として有効ですが、フードだけでは歯垢を完全に除去することはできません。あくまで歯磨きと併用することが前提です。
硬いおやつは与えても大丈夫?
「硬いおやつを噛ませると歯がきれいになる」と考える飼い主さんもいますが、注意が必要です。
過度に硬いおやつ(例えば、鶏の骨や硬すぎるジャーキーなど)は、歯が欠けたり、折れたりする原因となることがあります。特に、すでに歯周病が進行している猫や、歯が弱い猫には避けるべきです。
デンタルケア効果を謳うおやつを選ぶ際は、獣医師に相談し、安全性を確認してから与えるようにしましょう。また、与えすぎはカロリーオーバーにも繋がるため、適量を守ることが大切です。
猫の歯に関するよくある疑問をQ&A形式で解決!
愛猫の歯の健康について、飼い主さんからよく寄せられる疑問にお答えします。正しい知識を身につけて、愛猫の歯のケアに役立てましょう。
犬にはキシリトールが危険だと聞きますが、猫にも危険ですか?
猫にとってもキシリトールは非常に危険な物質です。犬がキシリトールを摂取すると、インスリンの急激な分泌を促し、重度の低血糖や肝不全を引き起こす可能性があります。
猫に関する研究データは犬ほど多くありませんが、猫にも同様の毒性を示す可能性が指摘されており、絶対に与えてはいけません。
キシリトールは、人間用のガム、歯磨き粉、一部の食品などに含まれています。愛猫が誤って摂取しないよう、これらを猫の手の届かない場所に保管することが重要です。もし誤って摂取してしまった場合は、すぐに動物病院を受診してください。
うちの猫は歯磨きが大嫌いで、全くやらせてくれません。どうすればいいですか?
歯磨き嫌いの猫に無理強いすると、かえって歯磨きが嫌いになるだけでなく、飼い主さんとの関係性も悪化してしまう可能性があります。まずは、焦らず、少しずつ慣れさせることが大切です。
ご褒美を活用する
歯磨きの後に大好きなおやつを与えるなど、良い経験として結びつけます。
短い時間から始める
最初は数秒でもOK。口に触れる、歯茎を軽くマッサージする、など簡単なことから始め、徐々に時間を延ばします。
歯磨きシートや指サックブラシから試す:歯ブラシに抵抗がある場合は、まず指サックブラシや歯磨きシートから試してみましょう。
猫用歯磨きペーストの味に慣れさせる
美味しい味のペーストで、歯磨きを楽しいものだと認識させます。
デンタルおやつやデンタルジェルを併用する
これらはあくまで補助ですが、歯磨きへの抵抗を減らす手助けになることがあります。
動物病院に相談する
獣医師から、愛猫の性格に合わせた歯磨きのコツや、口の状態に合ったケア方法のアドバイスをもらうことも有効です。
無理はせず、愛猫がリラックスできるタイミングで、少しずつステップアップしていきましょう。
麻酔下での猫の歯石除去は安全なのでしょうか?リスクが心配です。
麻酔はどんな動物にとっても少なからずリスクを伴いますが、現在の獣医療では、麻酔の安全性は非常に高まっています。歯石除去のために麻酔をかける際には、以下のような対策が取られます。
事前の健康チェック
血液検査や心臓の検査など、麻酔に耐えられる健康状態かを事前に徹底的に確認します。
個体に合わせた麻酔計画
猫の年齢、健康状態、病歴などを考慮し、最適な麻酔薬の種類や量を決定します。
麻酔中のモニタリング
麻酔中は、心拍数、呼吸数、血圧、体温、酸素飽和度などを常に監視し、異常があればすぐに対応できる体制が整っています。
専門医による実施
経験豊富な獣医師や動物看護師が麻酔管理を行います。
麻酔のリスクと、歯周病を放置した場合のリスク(全身疾患への影響、痛み、食欲不振など)を比較すると、多くの場合、麻酔下での歯石除去によるメリットの方がはるかに大きいと言えます。
獣医師から、麻酔のリスクについて十分に説明を受け、疑問があれば納得がいくまで質問しましょう。
この記事の執筆者
nademo編集部
編集部
「いつまでも どこまでも」必要な情報を理解するだけではなく、心もお腹も満たされるような日々のために。
&nademo(アンドナデモ)のコンセプトをもとに、飼い主さんとペットが安堵できる時間を演出します。
※ 当コンテンツで紹介する商品は、実際に社内で利用した経験と、ECサイトにおける売れ筋商品・口コミ・商品情報等を基にして、nademo編集部が独自にまとめています。
※ 本記事はnademoが独自に制作しており、メーカー等から商品提供を受けることもありますが、記事内容や紹介する商品の意思決定には一切関与していません。
※ 記事内で紹介した商品を購入すると、売上の一部がnademoに還元されることがあります。
※ 監修者は掲載情報についての監修のみを行っており、掲載している商品の選定はnademo編集部で行っております。
※ 掲載している商品の順番に意図はなく、掲載の順番によってランク付けしているものではありません。








