目は生き物が過ごす日常生活の中でとても重要な役割を持っている器官のひとつです。
それは猫も例外ではありません。
しかし、様々な理由で視覚に障害がでたり、最悪失明してしまうこともあるでしょう。
この記事では失明リスクの軽減や、失明した猫のサポートについて解説します。
この記事の結論
- 猫の失明の原因は、怪我の他に病気による続発や脳が関係している
- 失明すると日常の行動に変化が表れる
- 失明後でも飼い主がサポートすることにより、ストレスがない生活を送れる
- 日々のケアが失明リスクを軽減させ、他の病気の予防にもなる
ライター/愛玩動物飼養管理士/トリマー/グルーマー/ベテリナリーテクニシャンズ
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目次
猫の失明はどの年齢でも起こり得る
猫が失明する原因は多種多様に渡っており、一概にこれとは言えません。
先天的な疾患や加齢が要因になることもあれば、怪我や感染症が要因になることもあります。子猫や歳が若いから大丈夫ということはありません。
また、発症自体は稀ですがペルシャやアビシニアンは、発症しやすい遺伝子を持っています。
猫にとって目は生活の中で大切な器官であり、失明すると日常生活に大きな負担が生じかねません。
治療においても外科的治療が必要になることもあるでしょう。しかし、早期に治療を始めれば進行を抑えることができる病気もあります。
愛猫の瞳孔の動き、普段の行動で物にぶつかることが多いと感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。
失明に繋がりやすい病気
猫が失明しやすい代表的な病気は以下の病気になります。
- 網膜剥離
- 緑内障
- 白内障
- マイボーム腺機能不全
- 突発性後天性網膜変性症(SARD)
- 脈絡網膜炎
これらの病気は徐々に視野が狭くなる病気もあれば、急速に視力に影響を与える病気もあります。
ただし、いずれも放置すると進行してしまい、永遠に視力を失う要因になりかねません。
また高血圧や糖尿病、慢性腎不全や甲状腺機能亢進症など、他の病気により併発することもあるでしょう。
目の病気は外観の診察だけでは判断できません。瞳孔や眼圧の検査で異常が発見されることもあります。
定期的に動物病院で検診を受けて、早期発見に繋がるように心がけましょう。
若年で発症することもある病気
目は加齢により機能が低下する器官のひとつです。それは猫でも人間でも同じでしょう。
しかし、若年だから大丈夫というわけではなく、以下の病気は若い猫でも発症することがあります。
- 老齢性白内障
- 緑内障
- 進行性網膜萎縮症(PRA)
- 角膜炎
- 網膜剥離
進行性網膜萎縮症、緑内障、白内障は一度発症すると治療方法はありません。
しかし、治療により進行を遅らせたり、続発する病気を予防することが可能なこともあります。
また痛みを伴う角膜炎なども早期発見により、緩和ケアや視力低下の予防も望めます。
他の病気にも言えることですが、早期発見と早期治療が失明予防にはもっとも重要と言えるでしょう。
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猫が失明する原因
猫が失明する原因の中には痛みを伴わないことがあります。
また神経の損傷や異常、脳障害など外見では判断できない内的要因により視力に支障をきたすことも少なくありません。
動物病院で専門的な検査を受けないと、特定できないことも多いでしょう。
これらの目の病気は自然治癒することはありません。また他の病気が原因で併発することもあります。
視力は一度失うと、ほぼ取り戻すことができません。
手遅れにならないように、様子がおかしいと感じたら早めに動物病院で検査を受けましょう。
目の異常
猫の目は大きく分けると角膜、レンズ、瞳孔、硝子体、タペタム層で構成されています。
下記のような症状は、その目の構造の中で異常が生じています。
- 角膜や水晶体の濁り
- 水晶体の脱臼
- 網膜が縮む、剥がれる
白内障は角膜や水晶体が濁るために、進行すると外見からでも瞳に白濁色が確認できるでしょう。
しかし初期では目の変化がなく、わかりません。また進行すると緑内障に発展する可能性があるでしょう。
水晶体脱臼は目を見るとズレて落ちているのがわかることがあります。
目の中にある網膜が剥がれてしまう網膜剥離などは小さな剥離ではわかりにくく、剥離が広がってしまいます。
これらの病気は発見が遅れれば遅れるほど視覚の回復が難しくなります。
日頃から目の光のチェックや行動におかしなところがないか注意するようにしましょう。
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神経の異常
目を取り巻く神経に異常をきたすことにより、失明に繋がることがあります。主な原因は下記になるでしょう。
- 視神経の損傷
- 視神経が動作しない
視神経は眼球(網膜)で集められた情報を脳に伝える大切な神経線維の集まりです。
この視神経に損傷が起きたり、動作しないと情報が脳に伝わらないために「見る」ことができなくなるでしょう。
視神経に関わる失明する病気では緑内障があげられます。
緑内障は、水晶体の後ろにある房水が正常に排出されないために視神経を圧迫し、視覚障害を引き起こします。
進行がゆっくりな病気ですが、治療することができません。
進行すると部分的または完全な失明に繋がるため、進行を遅らせる治療が必要になるでしょう。
脳の異常
モノを見るには、視神経から伝達された情報を脳で処理することが必要になります。
しかし下記のように脳の異常があると、視覚に支障が生じるでしょう。
- 視覚情報を認識できていない
- 視覚情報を正しく伝えられていない
目で見た情報は網膜から視神経を通り、脳にある視覚野へと伝わって認識します。
そのために脳に異常が生じると、目で見た情報が正確に脳に伝わらず、見た物を認識できなかったり、正しく把握できなくなるでしょう。
脳や脳神経の異常は脳の中で起こるために外見ではわからなく、MRIの精密な検査が必要となります。
愛猫が物にぶつかることが増えたり、見ているのに認識できないような行動が見られたら、一日でも早く動物病院を受診するようにしましょう。
猫の失明の症状と行動の変化
猫にとって目は物を把握したり、高いところを昇り降りする時の着地地点を見極めたりする重要な器官です。
そのために目が見えなくなると、今までと違う行動をするようになるでしょう。
しかし怪我や事故などの外的要因による失明以外は進行性の病気が多く、突然目が見えなくなることは多くありません。
日常的な生活を観察することで、視野が狭くなっていることや物が見づらくなっている様子がうかがえます。
また瞳孔や水晶体に変化が表れることもあります。
目の病気は進行性の病気が多いですが、毎日のコミュニケーションや行動を確認することで、早めに発見することも可能でしょう。
増加傾向にある行動
視覚は五感のひとつです。猫が失明すると、視覚以外の感覚で補う行動を取るようになります。
もしも愛猫に、以下のような行動の傾向が見られる場合は注意が必要でしょう。
- モノや人にぶつかる、つまづく
- ニオイを嗅ぐことが多くなる
- 物音に敏感になる
- 人や物を噛む
- 吠える
- 常に飼い主さんの近くにいる
視覚を失うと、モノの位置の把握や奥行きの認識ができなくなるでしょう。
そのために、猫は取り巻く周囲の環境を嗅覚や聴覚で把握しようと試みます。
人間も同じように聴覚が発達する傾向がありますが、猫は元々人間よりも聴覚も嗅覚も感度が優れています。
聴覚で把握できるように声をかけたり、怪我をしないように家具に工夫を凝らすと良いでしょう。
また飼い主さんの声や匂いを感じることで、気持ちもリラックスします。
日常生活がストレスにならないように考えてあげましょう。
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減少傾向にある行動
視覚を失うことにより、以下のような行動が少なくなる傾向があります。
目が見えなくても楽しめるような聴覚や嗅覚を刺激する遊びを用意してあげましょう。
- 運動への意欲がなくなる
- 睡眠時間が長くなり、行動時間が短くなる
目が不自由になると、動くことを避けるような傾向があります。
運動不足になると肥満や他の病気を発症する可能性が高くなります。
猫じゃらしなどに鈴を付けたり、カサカサ音が鳴るおもちゃを準備して聴覚を刺激して遊んであげましょう。
また遊びに夢中になってモノや家具にぶつからないようにスペースを広く取ったり、柱や家具の角にはぶつかっても怪我をしないようにカバーを付けてあげましょう。
猫の失明後のケア
目は一度失明してしまうと、回復がほぼ見込めません。
全盲までいかない視野狭窄でも、正常な視力の時のような周囲の環境の把握は難しいでしょう。
しかし、飼い主さんがサポートすることで目が見えなくても安全に暮らすことができます。
また事故や病気などの後天的な失明は、目が見えていた時の記憶や行動パターンに沿って行動することもあります。
工夫を凝らして目が見えなくても部屋の中でストレスなく快適に過ごせるように、フォローしてあげましょう。
ケガしやすい場所は保護し、歩行経路を安全に確保する
目が見えないと足元に何かあっても視認することができません。わずかな段差でもつまずいたり、足を踏み外す要因になります。
部屋の敷居や玄関の土間付近は特に要注意。マットを敷いて段差を無くしたり、柱などにクッション性のあるカバーを付けて、怪我をしないように安全に歩けるようにしましょう。
階段やベランダなどがあるお宅の場合は、猫がうっかり落ちないように衝立や格子を用意して、近づけないようにする必要もあります。
高いキャットタワーなどは怪我や落下の原因になる可能性がありますので、なるべく片付けるようにしましょう。
家具の配置はなるべく変えない
猫は失明しても目が見えていた時の記憶や匂いは覚えています。
家具の配置を可能な限り変更しないことで予測不可能な事故を防げるでしょう。
家具を買い替える時も配置はそのままにして猫の歩行経路を妨げないようにすると、猫の混乱も回避できます。
どうしても配置の変更が必要な時は、暫く付き添って家具の位置を教えてあげましょう。
よく歩く場所に肌触りの違うマットを敷いて、感触で誘導するのもひとつの手段です。
誘導時には声をかけてサポートする
目が見えなくなった猫は聴覚や嗅覚で周りの環境を知ろうとします。
とくに耳はアンテナのように角度を変えて、声が聞こえる方向を正確に測ります。
ご飯や水の場所、トイレを教える時など、誘導する時は必ず声をかけてあげましょう。
名前を呼んであげることで、猫も呼ばれていることに気がつくことができます。
焦らずにゆっくりと安心できる場所だと伝えるようにしましょう。
食事場所やトイレの場所を固定して、迷わないようにする
目が見えなくなってもご飯やお水の場所も覚えています。
そのために食事の場所やトイレの場所を同じ場所のままにしておくと、迷うことが少なくなるでしょう。
ただし、深めのトイレや扉付きのトイレは、高さに戸惑うことがあるかもしれません。
その際は、トイレの場所は変更せずに、トイレを浅めの容器に交換しましょう。
部屋に敷いてある絨毯とは別にマットを敷いて、触覚で場所がわかるようにするのも良いでしょう。
周りの人には失明していることをきちんと伝える
猫が失明していても、一見では失明しているとはわかりません。
突然、家族の方以外に撫でられると猫はびっくりしてしまい、時には噛んでしまうこともあります。
周囲の親しい方々や、来客の方にはあらかじめ失明していることを伝えておきましょう。
また触る前に声をかけるなども一緒に伝えておくと、不慮の事故を未然に防ぐことができます。
一緒に暮らしている飼い主さんやその家族には当たり前のことでも、外部の人間にも伝わっているわけではありません。
愛猫のためにも必ず事前に伝えておくようにしましょう。
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愛猫の失明リスクを軽減する対策
猫の失明の原因は怪我の他にも病気や加齢など多種多様に渡るため、抜本的に対策することは非常に難しいです。
とくに加齢になれば、猫に限らず視力が衰えるでしょう。
しかし、日頃からケアすることにより失明を免れたり、病気を発症しても早期発見することで進行を遅らせることは可能です。
視力は日常生活を送る上でとても大切な役割を果たしています。
毎日のコミュニケーションの中に目の状態のチェックやケアを取り入れるように心がけましょう。
目や目の周りのケアを徹底する
角膜炎による炎症や目の周囲の怪我は、日頃から目の周りをチェックすることで早期発見ができます。
遊びに夢中になっているうちに、何かの拍子で目蓋に傷がついてしまうこともあるでしょう。
傷ができると怪我そのものは軽くても、周辺が赤く腫れてしまいます。
また傷が細菌に感染してしまうと、目の中にも細菌が侵入してしまう可能性は否定できません。
外的要因であれば、点眼や投薬で治ることも多いです。
怪我が軽いからとそのままにせずに、動物病院を受診するようにしましょう。
健康診断を定期的に受ける
目の奥で起きている障害や視神経や脳の異常は、外見では判断できません。
しかし進行すると失明に繋がる大きな病気になったり、外科的治療が必要になることがありますので、早期発見はとても重要です。
また他の病気の影響により続発して目に異常が生じることもあるでしょう。
健康診断を受けることは失明リスクを減らすと同時に、他の病気の予防にもなります。
定期的に動物病院で健康診断を受けて、早期発見に繋げるようにしましょう。
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この記事の執筆者
ライター/愛玩動物飼養管理士/トリマー/グルーマー/ベテリナリーテクニシャンズ
地元の動物園や水族館に観察しに行ったり、遠方の生物イベントまで足を運んだりしています。
現在は、保護猫と拾い猫の下僕。毎日布団の奪い合いをしています。
nademo編集部
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