腎臓や膀胱などのいわゆる泌尿器の病気は、猫の健康を考える上で避けては通れないほど密接に関係している問題です。
そこで今回は泌尿器の病気の中でも特に遭遇率の高い、膀胱の炎症である“膀胱炎”についてお話ししたいと思います。
そもそも膀胱とは腎臓で作られたおしっこを体の外に出す前に貯めておく袋のような器官で、そこに何かしらの原因で炎症が起きた状態が“膀胱炎”です。
猫は特に膀胱炎になりやすく、原因不明な場合も多くなっているため、どんな症状が膀胱炎であるのかまず理解しておくことが肝要です。
この記事の結論
- 猫の膀胱炎は、主に細菌感染・尿石症・特発性が原因で膀胱に炎症が起きた状態
- 猫の膀胱炎は尿検査やレントゲンなどの検査で、原因を把握後に治療方針が決まる
- 猫の膀胱炎の治療方法は、薬・療法食・ストレス除去など原因によって異なる
- 自宅では飲み水や食事の配慮をしながら膀胱炎対策を行う
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目次
猫の膀胱炎の症状
おしっこをためる機能のある膀胱は、さまざまな原因によって膀胱炎に繋がってしまいます。
猫が膀胱炎を発症すると、多く見られる症状として以下のものがあげられます。
- 何回もトイレに行く(頻尿)
- ほんの少ししかおしっこが出ない
- 排尿姿勢で痛そうに鳴く
- 血尿
- トイレ以外の場所でおしっこをする(異所性排尿)
膀胱炎は生活の質を低下させるだけでなく、元気や食欲までも低下することがあるので早期発見、早期治療が大切になってきます。
こういった症状が見られる場合は、早めに動物病院の受診を考えてあげましょう。
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猫の膀胱炎の原因
頻尿や血尿など見た目には全く同じ症状が出る膀胱炎ですが、その原因は大きく3つに分けられます。
膀胱炎は頻繁に起こることでもあります。原因を理解しておくと共に、原因不明の膀胱炎も存在することを理解しておかなければいけません。
細菌感染
外部から尿道を通って大腸菌などの細菌が侵入し、膀胱内で増殖することによって炎症が起こります。
同じ愛玩動物である犬と比べると猫は少ないと言われており、大腸菌やブドウ球菌が原因となって起こるものです。
肛門と陰部の距離が近いこともあり、排泄物が肛門についた状態から舐め取ろうとして、排泄物に含まれる菌が陰部から侵入するケースも考えられます。
尿路結石症
おしっこの中にできた砂粒程度の結晶やそれらが集まってできた結石が、膀胱や尿道を傷つけることにより炎症が起こります。
結石自体は食事内容はもちろんのこと、遺伝によってもできることがあり、膀胱炎の原因となってしまうのです。
代表的なものがストルバイトと呼ばれる結石で、尿道に詰まる尿道閉塞などの原因でもあります。
尿道閉塞が起こるとトイレに行っても尿が出なくなるため、早期発見・早期治療がとても重要です。
特発性
細菌感染や尿路結石症が見られないのに炎症が起こる、原因がはっきりとしない膀胱炎。
細菌や尿石による刺激から起きる膀胱炎はどちらかと言えば少なく、原因がはっきりしない特発性膀胱炎が全体の70%近くを占めると言われています。
一般的に特発性膀胱炎は、生活環境での強いストレスがきっかけとなり発症すると考えられています。
しかし目に見えないものが原因なので、どれくらいのストレスがかかると発症するかなど詳しいことはよくわかっていません。
編集部メンバーの愛猫も特発性膀胱炎の経験があり、排泄物がついた肛門をシャワーで洗い流したというだけで、特発性膀胱炎になった経験があります。
考えたくないもうひとつの原因
ほとんどの膀胱炎は先の3つの原因であることが多いですが、もうひとつあまり考えたくない病気が原因のことがあります。
それは腫瘍性疾患。多くはないですが、移行上皮がんや扁平上皮がんといった悪性腫瘍が原因となり、頻尿や血尿が見られることもあるのです。
初期段階では検査でわからないこともあるので、なかなか治らない膀胱炎の場合には注意が必要です。
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猫の膀胱炎の検査とは?
膀胱炎はその原因によって治療も大きく変わってくるので、まず何が原因で膀胱炎になっているのかをはっきりさせることが大切です。
検査には大きく分けて2種類があり、尿自体を検査する尿検査と、体の内部を確認する画像検査です。
尿検査
一口に尿検査と言っても、おしっこからわかることはさまざまあります。
おしっこの濃さである尿比重、尿蛋白、尿糖、pH、ビリルビン、潜血、亜硝酸塩などの化学的性状、結石や結晶、細菌、細胞などの出現の有無など一度にたくさんの体の情報を知ることができます。
この検査で細菌が多く見られれば細菌性膀胱炎、結晶成分が多く出ていれば尿路結石症が原因の膀胱炎である可能性が高くなります。
反対に尿検査で細菌や結晶成分が見られないときには原因がわかりづらく、特発性膀胱炎であると考えられます。
画像検査
レントゲンやエコーで膀胱内の様子を画像で確認することで、結石があるかどうかを発見することが可能になっています。
大きな結石はレントゲンで一目瞭然なので、尿検査をする前から簡単に原因を特定できるものです。
また、膀胱内の形がおかしければ腫瘍ができている可能性もありますので、必要に応じて画像検査も行います。
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猫の膀胱炎の治療方法
膀胱炎を起こしている原因を特定したうえで、その原因に対するそれぞれの治療を行います。
ここでご紹介するのは一般的な治療法となっており、治療方針や方法は病院ごとに異なり、個体差もありますので必ずかかりつけの動物病院に相談しましょう。
細菌感染は必要に応じて抗菌薬を飲んで治療
細菌感染による膀胱炎であると考えられる場合には、抗菌薬を飲むことで治療することが考えられます。
お薬を飲んだり飲まなかったり、勝手な判断で止めてしまうと再発をしやすいだけでなく、細菌が耐性を持ってしまうことに繋がります。
耐性化を防ぐためにも、決められた期間しっかりお薬を続けましょう。
尿路結石症は療法食への食事の変更
病気を治すための特別なフードである療法食への変更で溶けるタイプの結石の場合は、食事の変更で長期間かけて治療します。
一方で、溶けないタイプであったり、石があまりにも大きい場合は手術で取り除くこともあります。
結石の種類や大きさによって異なってくるため、かかりつけの獣医師に診てもらいながら判断することになります。
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特発性膀胱炎はストレスを取り除くこと
ストレスを取り除くことが一番の治療と言われている特発性膀胱炎ですが、何が原因になっているのかを簡単に特定することは難しいです。
ただ、トイレの環境にストレスを抱えていることが多いため、トイレの設置場所や数、大きさ、砂材を一度見直してあげましょう。
一般的にトイレの数は、猫の匹数+1個以上設置してあげるのが良いとされています。
日中、排泄物が残っている時間が長いと満足にトイレに行けないので、留守時間が長い人は自動トイレの導入も検討すると良いです。
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日常生活でのポイント
冬場は猫の泌尿器の病気が特に増える時期。寒くなると活動性が落ちるだけでなく、飲み水が冷たくなりやすいので、あまり水を飲まなくなります。
そうなると濃いおしっこが長時間、膀胱に貯まるので尿石成分が生まれやすくなり尿路結石症、ひいては膀胱炎のリスクが跳ね上がると考えられています。
また、長時間に渡っておしっこが貯まっていると、細菌に対して増殖させる時間を与えることにもなってしまいます。
おうちでできる猫の膀胱炎対策
下部尿路疾患は猫に多く見られる病気ですが、自宅で何もできないわけではありません。
膀胱炎になってからでは愛猫の体に負担がかかりますし、経済的にも飼い主さんに負担がかかるものです。
自宅で日頃からできることもたくさんありますので、ぜひ覚えておきましょう。
お水をたくさん飲んでもらう
おうちでできる一番のことはお水をたくさん飲んでもらい、おしっこの量を増やすことです。
そのためにはまず、一度給水した水をなくなるまでそのままにしておくのではなく、水をこまめに替えてあげましょう。
38℃前後のぬるま湯を好む猫も多いので、できれば水を交換する度に温水にしてあげるとより飲んでくれるようになるかもしれません。
給水ボトルは楽ちんですが、なかなか飲水量が増えない場合には自動給水器を利用するなど、興味を引く工夫が必要になります。
水飲み場の場所変更や飲水場所を増やす
その他にも普段くつろいでいる場所から水飲み場まで遠かったり、他の猫が水を飲んでいると遠慮して飲まなくなってしまう猫もいます。
そのため水飲み器は複数個、さまざまな場所に用意してあげることをおすすめします。
最近ではモーターで水が流れるタイプの水飲み器もあるので、動く水が好きな猫では準備してあげてもいいですね。
自動給水器の方が興味を持って近づいてくれることも多く、一台あるとよりよいでしょう。
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ウェットフードでも水分補給してもらう
基本的な食事はドライフードのみ、という飼い主さんは多いと思いますが、これだけでは水分不足になることが多いです。
そのため、ドライフードだけでなく含まれている水分量が多いウェットフードやフレッシュフードを与えるというのがおすすめです。
食事からも水分を摂ることができ、おしっこの量も増えるためぜひ実践してみてください。
ウェットフードとは異なり、手作りごはんとして与えられるフレッシュフードも同様に水分補給ができておすすめです。
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トイレを清潔に保つ
猫はとてもキレイ好き。トイレが汚れたままでは、おしっこを我慢してしまうようになることもあります。
おしっこを我慢してしまわないようにするためには、常にトイレを清潔にしておき、いつでもトイレに行けるように環境を整えるということ。
通常のトイレだけでなくシステムトイレであれば、排尿時においては頻繁なトイレ掃除が必要なくなるので便利です。
水飲み場と同様に、トイレについても1匹あたり2個を用意してあげるとより安心です。
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定期的に健康診断を受ける
とにかくお水を飲んでもらうだけでなく、膀胱炎の予兆がないか、健康診断を受けることが大切です。
健康診断は成猫であれば1年に1回程度必要で、シニア猫になってくる半年に1回、さらに高齢猫になると2か月~3か月に1回というペースが大事。
どれだけ予防や対策ができていたとしても、体の内部のトラブルに関しては簡単に気づけるものではありません。
早めに病気の予兆を発見することができれば、早めに治療を開始することもできますよ。
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この記事の執筆者・監修者
獣医師/潜水士/株式会社Ani-vet代表取締役/犬猫生活財団評議員
獣医学生時代に保護猫を迎えたことから猫にどハマりして、今では3頭の元保護猫と暮らしています。
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