人間ですら油断するとすぐになってしまう熱中症ですが、実は犬も人と同様に熱中症になります。
犬の熱中症は、高温多湿な環境に長時間晒されることにより体温が上昇し、高体温及び脱水によって起こります。
特に犬は、毛で全身を覆われている上に、人のように汗をかくといった体温調整ができないため、熱中症になりやすいのです。
人の熱中症は注意しやすいですが、愛犬の熱中症についても同様に注意しなければいけません。
この記事では、愛犬が熱中症にならないよう、事前の対策を含めて犬の熱中症について解説します。
この記事の結論
- 熱中症では高温多湿な環境に長時間晒されることで、高体温・脱水症状になる
- 熱中症は時間が経つごとに悪化していき、最悪の場合は死亡するリスクがある
- 一度熱中症になると、そのダメージはいつまでも残り続ける
- 犬は体温調節が上手くできないため、人間以上に熱中症リスクがある
- 荒い呼吸や目の充血、多量のよだれや食欲不振は、熱中症の症状のひとつ
ライター/獣医師
結婚を機に、都内の獣医師専門書籍の出版社で編集者として数年勤務し、現在は動物病院で時短で獣医師として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動している。
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目次
犬の熱中症の危険性
熱中症は、高温多湿な環境に長時間晒されることで体温が上昇し、高体温及び脱水することによって起こります。
人の場合にも夏場は頻発しているため、ニュースにもなっているほどで広く知られているでしょう。
この熱中症は人だけではなく、犬の場合にも起こるため、自分だけではなく愛犬の熱中症にも気を使う必要があります。
熱中症は軽い病気ではなく、命にかかわる病気でもあるため、事前にしっかりと理解しておきましょう。
熱中症は死亡リスクがある
体温が高い状態が続くと、脱水により体内の水分量や塩分量のバランスが崩れ、多数の臓器に障害が生じ、さまざまな症状が現れます。
熱中症の恐ろしいところは、時間が経つほど悪化していき、最悪の場合は死亡するリスクがあるところです。
ただ、暑いから少しへばっている…というだけではなく、そこから徐々に悪化していく可能性があるというところが危険なのです。
軽い熱中症であればすぐに対策することでリスクを軽減できるものの、時間が経過すると命にかかわるのです。
熱中症のダメージは残り続ける
熱中症は時間が経つほど悪化するため、対処が遅れると内臓や脳の機能障害などの後遺症につながります。
また、回復したとしても、熱中症で体に受けたダメージにより、数日後に体の機能障害が出ることもあります。
熱中症を例えるときにはよく「ゆで卵」で表現されますが、人の場合、体温が42℃を超えると体の細胞が壊れていきます。
こうして壊れた細胞は元に戻らないため、ゆで卵が生卵に戻らないのと同じように、一度ダメージを受けると残り続けるということです。
犬は体温調節が上手くできない
人は全身に汗をかくことで体温調整をすることができますが、犬は体のごく一部にしか汗をかけません。
そのため、体温調節が上手くできず、人間以上に熱中症になりやすいのです。
特に犬の場合は人よりも頭の位置が低く、アスファルトなどからの照り返しを受けやすいです。
人にとっては「暑いな…」という程度であっても、犬にとってみればサウナ状態になっている可能性もあるのです。
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犬の熱中症の症状
熱中症では高体温と脱水から体内の水分量や塩分量のバランスが崩れることにより、多数の臓器に障害が生じ、さまざまな症状がみられます。
初期症状から重症化したケースの症状について、それぞれ詳しく見てみましょう。
熱中症のサイン
熱中症は簡単には気づきにくいかもしれませんが、いくつかのサインが見られるのでそれを見逃さないことが重要です。
犬が熱中症になると以下のようなサインが現れますので、よく確認しておきましょう。
- いつもより荒い呼吸
- 目の充血
- 耳の内側や口の粘膜が赤くなる
- 多量のよだれ
- 食欲不振
呼吸の違いなどは少し気付きづらいかもしれませんが、その他のポイントについては観察していればすぐに気付けます。
大事なことは、熱中症の疑いがあるときだけ注視するのではなく、日頃から愛犬の体調を観察しておく、ということです。
熱中症の初期症状
熱中症の初期には上記のサインに加えて、ふらつく、元気がない、ぐったりした状態になり、血液の混じった嘔吐や下痢、痙攣を起こすことがあります。
特にパンティング(激しく口呼吸)している、というのが印象的でしょう。
基本的に口呼吸は運動後などにしかすることはなく、またその場合でも一時的ですぐに治まるので、パンティングが続くなら注意が必要です。
その他にも体に触れてみればわかることもたくさんありますので、「心拍数が早くないか」「体自体が熱くないか」「よだれが多くないか」といったポイントを確認してみてください。
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熱中症が重症化すると最悪の場合には死にいたる
症状が進んで重症化すると、脱水から血液がドロドロと濃くなり、全身の血液循環が悪くなります。
そのため、血液によって運ばれるはずの酸素が全身に十分に行き渡らなくなり、酸欠状態からチアノーゼ(皮膚、口の中などが青紫っぽくなること)や意識が朦朧とするなどのショック状態を引き起こします。
適切に迅速な処置をしないと、最悪の場合には死にいたります。
熱中症は人間の場合でも軽く見られがちである一方、多くの死亡事例もあるため十分に注意してあげましょう。
犬の熱中症が起こりやすい時期や環境
室内であっても熱中症になるということは、すでに広く知られてきているでしょう。
もちろん室内でも注意する必要はありますが、どんなシーンでより注意すべきなのか、まとめました。
犬が熱中症を起こしやすい時期や環境としては、以下のようなものがあります。
真夏の炎天下での散歩
暑い日中に外にずっと出ていたり、室内でもエアコンのきいてない高温多湿の環境下にずっといたりすると、熱中症を起こしやすくなります。
また、地面から近いところを歩く犬、特に小型犬はアスファルトからの反射熱(放射熱)も受けやすいため、真夏の炎天下での散歩はとても危険です。
例えば大人の体感温度が頭の位置で30℃だった場合、アスファルトから近い犬の体感温度は40℃ほどです。
激しい暑さの日には、アスファルトの温度が50℃~60℃になることもありますので、注意が必要です。
車内への放置
締め切った車内は急に温度が上昇しやすいため、数分で熱中症になってしまう危険があります。
また、窓を開けるなどの対策をしても、さほど車内の温度は下がりません。ですので、愛犬を車内に放置することは絶対に避けてください。
人間の赤ちゃんが車内に放置された状態で亡くなる事件も多いですが、これは愛犬の場合でも同様です。
「冷房をつけていれば安全」とは限らないので、常に飼い主さんの目が届く場所で愛犬を帯同させましょう。
水分の不足
こちらも人間同様に注意すべきですが、犬の体が脱水状態になると、熱中症になりやすくなります。
いつでも水が飲める状態にあれば良いですが、給水器の水がなくなってしまっていたり、外出先では特に注意が必要。
また、熱中症になった場合も、脱水がひどいと重症化しやすくなり危険です。
すぐに水分補給できるような環境を常に整えておくことが、重症化させないためのポイントのひとつになります。
過度な運動
運動をすることで体温が上がりますが、犬は体温調節が上手くできないため、熱中症を引き起こしやすくなります。
気温や湿度が高いときにはたとえ短時間でも、過度な運動は控えましょう。
暑い日に激しい運動をすることはもちろん危険ですが、散歩程度でも注意が必要なケースもあります。
特に気温が高くなりやすい日中の散歩は避けて、朝晩などの気温が落ちてきたタイミングで散歩する必要があります。
愛犬が熱中症になったときの応急処置
愛犬が熱中症になってしまっても、迅速に適切な処置を行えば重症化を防げることがあるため、初期症状であれば応急処置をしましょう。
熱中症の応急処置は『体を冷やして、体温を下げる』ことが重要で、以下の手順で行います。
①涼しい場所に移す
まず、愛犬が熱中症になった場合、もしくは近い症状が見られた場合は、室内など涼しい場所にすぐ移動させましょう。
木陰や少しでも直射日光を避けられる場所、できれば冷房の効いた場所が望ましいです。
②全身を冷やす
次に、頚部から体幹にシャワーで水道水をかけたり、水道水を濡らしたタオルなどで全身を包んであげてください。
太い血管が走っている、首周りや脇下、股関節に氷のうや保冷剤などを当てて、全身を冷やします。
優先的に冷やしたい部位は人間と同じなので、覚えやすいポイントです。
③風を当てる
さらに、扇風機やクーラーで風を当てることにより体幹の冷却に努めます。
冷やすとは言っても、冷やし方によっては後述の通り、逆効果になることもあります。
扇風機などを使い、できる限り涼しい風を当てるというのが理想的です。
④水を飲ませる
そして、脱水がひどくなると重症化しやすいため、できる限り水を飲ませるようにしましょう。
飲まない場合には無理に飲ませる必要もありません。必要なときにすぐ飲んでもらえるように、準備しておいてください。
⑤すぐに動物病院へ
これらの応急処置により、愛犬の状態が安定したら、すぐ動物病院を受診することが大切です。
「自分で起き上がれるようになった」「元気があるように見える」としても、体には深刻なダメージが残っていることもあります。
必ず動物病院を受診し、熱中症の疑いがあることを伝えましょう。
体温の下げすぎにも注意が必要
応急処置を行う上での注意点として、体温を早く下げようと冷水や氷、アイスバッグを用いて全身を急激に冷却すると、各臓器への障害が促進されて逆効果となります。
愛犬に熱中症の症状が見られると焦る気持ちもわかりますが、やりすぎは逆効果であることも覚えておかなければいけません。
ですので、必ず水道水など常温の水を用い、体温の下げすぎにも注意するようにしましょう。
犬の熱中症の予防・対策
最大の熱中症の予防は、『愛犬を高温の環境に置かないこと』です。
これは犬だけではなく、人間であっても同様なので熱中症対策の方法として覚えておくとよいです。
ここでは、具体的な熱中症の予防・対策についてご紹介していきます。
屋外でできる予防・対策
外出をする際には、天気予報で気温の推移を事前に把握し、気温が高くない時間帯に出来るだけ出かけるように心がけてください。
また、散歩はアスファルトの熱が冷めた時間帯に行くようにしましょう。
夏場の屋外では、水分補給をこまめにとり、日陰や風通しのよい場所を選んで、激しい運動は控えるようにしてください。
基本的な人間が行う熱中症対策と同じなので、愛犬の対策も同様に準備してから外出するようにしましょう。
室内でできる予防・対策
犬の熱中症は、高温になりやすい室外だけではなく、室内での発症も多くみられます。
ですので、夏場は室内であっても風通しをよくしたり、扇風機やエアコンで室内を25℃前後を維持し、犬にとって涼しく快適な温度を保つようにしましょう。
また、カーテンなどで日陰を作り、犬が直射日光から逃げられる場所を用意することも大切です。
「室内にいれば安全だ」という認識は未だに残っていますが、室内であっても熱中症になることはあります。
留守番時にできる予防・対策
飼い主さんが不在の場合でも、扇風機やエアコンのタイマー機能などを使用し、必ず室内が涼しくなるように設定しておきましょう。
さらに、ペット用の冷感バンダナやドッグウェア、冷感マットなどの暑さ対策グッズを活用することで、より快適に過ごすことができます。
適度に日差しを避けられるようなモノや場所が必要になるので、特に猛暑日などには用意しておいてあげると安心です。
車内でできる予防・対策
夏場の車内は急に温度が上昇しやすく、窓を開けても大した温度の低下は期待できません。
そのため、車内ではエアコンを必ず使用するようにしましょう。設定温度は車内が25℃以下にはなるように設定してあげてください。
エアコンなしの状態では熱中症のリスクが非常に高く、また室内と違って逃げることもできません。
いずれにしても、夏場はエアコンをかけていたとしても、愛犬を車内に放置することは絶対に避けましょう。
犬の熱中症の治療方法
犬の熱中症では、脱水やショック状態の改善のため、主に点滴治療を行います。
また、意識レベルが低いケースや呼吸状態が悪いケースでは、酸素室などでの酸素投与も必要となります。
検査費用や診察費用は大体2万円~3万円程度ですが、仮に重症化して入院ともなれば10万円を超える治療費になることもあります。
迅速な対応が愛犬のためにもなり、経済的な負担を軽減するポイントにもなってきます。
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犬の熱中症に関する注意点
熱中症になった際、間違った行動をとることで、愛犬が苦しんでしまうことがあるため、次の点に注意しましょう。
まず、愛犬の熱中症の症状をみて、大丈夫そうだと勝手に判断してそのまま放置しないことです。
一見大丈夫そうにみえても、体内で熱中症による損傷を受けていると自然に改善されることはなく、どんどん悪化してしまう場合があります。
ですので、愛犬が熱中症かもと少しでも思ったら、自己判断はせずに、まずは動物病院に連絡するようにしましょう。
次に、応急処置により症状が緩和されても速やかに動物病院を受診しましょう。なぜなら、少し回復したとしても、また悪化する可能性があるからです。
また、熱中症により内臓に障害を負っていたり、回復後に慢性的な腎不全を発症したりすることもあります。
応急処置を行なったら、必ず動物病院を受診して適切な治療を受けてください。
熱中症に特に注意したい犬種や特徴
どんな犬種であっても、熱中症にならない犬種は存在しません。
ですが、特に注意したい犬種については、その特徴を愛犬と照らし合わせて確認しておくと良いでしょう。
短頭種
お伝えしたように、人は全身に汗をかくことで体温調整をしていますが、犬は体のごく一部にしか汗をかきません。
そのため、犬はパンティング呼吸をすることで熱を放散しています。
しかし、この呼吸によって体から放散できる熱の量には限界があります。気温が高かったり、気道に問題があったりすると、体温が下がらなくなるのです。
特に、パグやフレンチ・ブルドッグ、イングリッシュ・ブルドッグなどの短頭種は上部気道が狭く、他の犬種に比べ体温調整が苦手で、暑さに弱いため注意が必要です。
肥満気味
肥満気味の犬は、厚い皮下脂肪により熱が放散しにくく熱中症になりやすい傾向があります。
また、喉にも脂肪が付着することで、気道が狭くなり体温調節が上手くできなくなることもあります。
肥満は熱中症だけでなく、その他の病気リスクも高まりますので、日常的なダイエットも必要です。
子犬や高齢犬
子犬や高齢犬は体力が少なく体温調節が苦手なため、熱中症にならないよう注意が必要です。
成犬と違って体への影響が出やすいため、熱中症の初期症状だったとしても急変することがあります。
熱中症に限らずさまざまな病気や怪我の影響を受けやすいので、特に注意したい時期です。
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持病がある
犬はパンティング呼吸をすることで熱を放散しますが、呼吸器などに問題があると熱の放散が上手くいかず、体温が下がらないのです。
そのため、呼吸器や呼吸器と関連する心臓に持病がある犬は、熱中症になりやすい傾向があります。
子犬や高齢犬とあわせて熱中症に注意したい特徴と言えるので、十分に注意してあげてください。
毛が黒い
毛が黒い犬は、夏場の強い直射日光の熱を吸収してしまうことから、他の犬より体温が上昇しやすいため注意が必要です。
黒い服を着ていると熱を吸収しすぎて暑い、というのと同じような考え方です。
熱中症のほか、紫外線や防虫対策にもなるため、日差しが強い日の外出時にはクールベストなどの薄手の服を着せてあげることもおすすめです。
意識しづらい部分かもしれませんが、黒い毛を持つ愛犬であれば注意しておきましょう。
被毛が多い、厚い
ダブルコートの犬種など、被毛が多かったり厚い場合は熱がこもるため、熱中症になりやすい傾向があります。
夏場にはアンダーコートをしっかりと処理してあげて、熱がこもらないようにしてあげましょう。
換毛期には抜け毛もありますので、抜け毛対策としても同時にお手入れしてあげるのが良いですね。
寒い地域が原産の犬種
寒い地域が原産の犬種はもともとは涼しい地域に生息していたため暑さに弱く、防寒対策のため毛が密になっています。その結果、熱中症になりやすいのです。
被毛の濃さや厚みは触って見てみればわかりやすいですし、調べればどんな国を出身としているかがわかります。
どんな地域で生まれた子なのか、というのは気付きづらいポイントですが、原産地をチェックしておくことが大切です。
この記事の執筆者・監修者
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結婚を機に、都内の獣医師専門書籍の出版社で編集者として数年勤務し、現在は動物病院で時短で獣医師として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動している。
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