ペットコラム

【医師執筆】人の動物アレルギーとは?原因や症状、対処策について

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人の動物アレルギーとは?原因や症状、対処策について

現在、日本では2人に1人が何らかの物質(アレルゲンと呼ぶ)に対してアレルギーを持つと言われており、年々アレルギー患者数が増加傾向にあることが注目されています。

アレルギーとは、「食べ物、薬剤、花粉、ハウスダスト、動物」など、通常であれば体に甚大な害を与えない物質に対して、過剰な免疫反応が出現する状態を指していて、アレルギーに伴う症状も多彩です。

特に、ヒトの動物アレルギーとは、動物の毛やフケ、糞尿などの成分がアレルゲンとなってヒトに皮膚炎や鼻汁、呼吸困難などの症状が引き起こされるアレルギー疾患です。

動物アレルギーが軽症な場合、自然に軽快することがほとんどです。

しかし、重度な場合は呼吸困難が悪化して窒息を引き起こす、血圧が急低下して意識を失うなどアナフィラキシー症状が出現することもありますので、適切に対処する必要があります。

今回は、ヒトの動物アレルギーの発症原因や代表的な症状、動物アレルギーの対処策などについて詳細に解説していきます。

この記事の結論

  • 動物アレルギーは動物の体毛やフケ、糞尿などが原因で引き起こる
  • アレルギーの症状の重さは軽度なものから生命を脅かすケースもある
  • 動物アレルギーを避ける対処法は、動物との接触を避けることが有効
  • ペットを飼っている場合は部屋の換気や掃除、ペットのお手入れが重要

甲斐沼 孟

執筆・監修

甲斐沼 孟

国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長

これまでに臨床医師として15年以上キャリアを積み重ねて、主に消化器外科や心臓血管外科、救急診療を中心に実践して参りました。

nademo編集部

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動物アレルギーが起こる原因について

そもそも免疫とは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体などを含む異物に対して、自分たちの体を自然に守る防衛反応のことです。

通常であれば、体に害を与える異物のみを攻撃する仕組みになっています。

動物アレルギーを含むアレルギー反応は、免疫系と呼ばれる体の防御反応が異常に働くことで発症します。

アレルゲンによってさまざまな障害が出る

アレルギーは特定の物質(アレルゲン)に対して、白血球など血液中の細胞が担っている免疫反応が過剰に働くことによってさまざまな障害をもたらします。

「犬、猫、鳥、ウサギ、ハムスター」など動物の体毛やフケ、糞尿などの排泄物は、アレルギー症状を悪化させる原因物質(アレルゲン)となることが知られています。

これらのアレルゲンとなる動物の名前を指して犬アレルギー猫アレルギー、鳥アレルギーなどと呼称します。

アレルギーは遺伝と環境といった要因が関与している

動物アレルギーを発症する要因は、遺伝的な要因と環境的な要因が主に関与しています。

家族や親戚に何らかのアレルギー疾患がある場合には、動物アレルギーに罹患しやすくなります。

また、アレルゲン成分に触れる機会が多くなる外的環境下では、動物アレルギーを発症する可能性が高くなると考えられています。

動物アレルギーの代表的な症状

一般的に動物アレルギーでは、動物の毛など本来であればヒトの体に特殊な害を及ぼさないものが、免疫のシステムによって異物とみなされます。

そして人体の敵として体外に異物を追い出そうとする過剰な反応が働くことで、くしゃみや鼻水、咳などアレルギー症状を引き起こします。

動物アレルギーの症状はそれぞれのケースによって異なり、軽症である場合には自然と症状が軽快していくことが多いです。

しかし重症なケースでは気管粘膜が肥厚して呼吸困難に陥る、あるいは血管が過度に拡張して血圧が急激に低下して生命に直結することもあります。

アナフィラキシー

アレルギーが原因となって発症する疾患のひとつとして、「アナフィラキシー」と呼ばれる病気があります。

特にハムスターは、アナフィラキシーと呼ばれる大変深刻なアレルギー反応を起こす可能性があると伝えられています。

アナフィラキシーの原因となった物質を特定するためには、アレルギー専門外来で血液検査や皮膚プリックテストといった検査が行われます。

アナフィラキシーの場合には、抗原やアレルゲンに曝露されてから通常30分以内に目のかゆみを伴う眼球充血、鼻閉感などを自覚。

その後、顔面が蒼白になり、口唇および舌の粘膜が腫脹して浮腫反応が起こります。

また、胸部や腹部を中心とする皮膚の発赤症状や全身に葦麻疹が形成されて気分不良や悪心、嘔吐などの消化器症状が認められる場合も存在します。

アレルギーの症状が複数の臓器にわたり、全身に急速にあらわれるのがアナフィラキシーの特徴です。

アナフィラキシーショック

アナフィラキシー反応の中でも、特に著明に血圧が低下してショック状態に移行するものを「アナフィラキシーショック」と呼んでいます。

急激な血圧低下で意識を失うなどとても危険な状態とされる「ショック症状」は全体の1割程度の確率で認められます。

アナフィラキシーショックを起こすと、全身に蕁麻疹が生じるのみならず、咳や喘鳴が生じます。

また喉頭粘膜が腫れあがって浮腫を起こし、物理的に空気の通り道が極端に狭くなることによって呼吸困難、ひいては最悪のケースでは窒息することもあります。

さらに、全身の血圧値や意識レベルも著明に低下して、循環虚脱状態となり呼吸停止から心停止に至って短時間のうちに死亡することもありますので注意が必要です。

動物アレルギーの対処策

最悪のケースでは命を落とすことも考えられる動物アレルギー。

犬や猫でも起こり得るものであるため、実際にペットオーナーさまだと悩んでしまうことも多いでしょう。

とはいえ一緒に生きていかなければいけない。ではどうすれば対処できるのか、いくつかの方法をご紹介します。

アレルゲンの回避

動物アレルギーと診断された場合には、原因となっている動物に関連するアレルゲンを回避することが、もっとも優先的に実施される治療対処策となります。

基本的には、アレルゲンとなっている動物との接触を控えることが重要。

動物の体毛やフケなどの成分が床や壁などに付着するため、空気清浄機で換気する、あるいは定期的に家を掃除することでアレルゲンを減少できます。

ペットとして動物を家庭で飼育している際には、家庭で飼っているペットとの接触を完全に回避することは困難です。

現実的なアレルギー症状の程度に応じて、飼育方法を工夫するように努めましょう。

薬物治療

動物の成分にヒトの体を徐々に慣れさせる"減感作療法"は基本的に実施されておらず、実際のアレルギー症状に応じて、鼻汁や鼻閉感などを認める際には、抗ヒスタミン薬の内服や点鼻薬を使用しましょう。

全身に掻痒感を伴う蕁麻疹を認める際には、ステロイド外用薬を活用する、あるいはゼーゼーと息苦しくなって呼吸困難を伴う場合には吸入ステロイド薬などの薬物が使用されることも見受けられます。

病歴や症状からアナフィラキシーショックが強く疑われる場合には、1分1秒を争う事態でもあります。

その場合、診断が確定する前にアレルギー反応を疑った段階で、迅速かつ確実にアドレナリンの筋肉注射などの治療を開始することも重要な観点となります。

重度のアレルギー反応が出現した際に、適切な対処を実施せずに治療が遅れると命にかかわることもあります。

アレルギーが疑われる症状を認める際には、できるだけ速やかに専門医療機関を受診することをおすすめします。

動物のお手入れ

どうしても動物アレルギーの方がペットを飼いたい場合や、既に動物を家庭内で飼っていて手放せない場合は、さまざまな注意点を守りながら日常生活を工夫することが重要です。

例えば、犬は室内で飼うより屋外で飼う方が、アレルギーの原因となる物質を吸い込む量を減らすことができます。

鳥の場合には、日中はケージをベランダなどの屋外に出すことで、アレルゲンが室内に舞うのを出来る限り防ぐことが期待できます。

ただしこれは現実的ではないため、生活空間を分けたりペット自体を常に清潔に保つことが理想的。

日常的に部屋の換気をこまめに行うとともに、ケージの掃除をする際にはマスクや手袋を装着して、アレルギーの原因となる物質をできるだけ体内に取りこまないように注意しましょう。

ペットは清潔にしましょう

ペットの毛やフケが飛散するのを可能な限り減少させるためにも、動物の体を定期的にケアして清潔感を保つように意識しておきましょう。

犬の場合、体を清拭するだけでは、体の汚れやアレルゲンを効果的に落とすには不十分です。

空中に浮遊しているアレルゲン量を減らす、あるいは犬の皮膚疾患を予防するためにも、できれば月2回程度を目安にシャンプーを用いて入念にケアしてあげましょう。

ブラッシングで抜け毛を防ぐことも忘れずに実施すると同時に、ペットに接触した後には必ず手を洗うように習慣づけます。

また布製の家具やカーペットは、動物の毛やフケなどのアレルゲンがいったん付着すると取り除くことが難しいです。

そのため、ペットと一緒に過ごす空間には置かない方が安全ですし、カーテンは定期的に洗濯しやすい薄手のものにするといいです。

事前に動物アレルギーであるかどうかを検査しておく

また、動物アレルギーの方がいる家庭で、どうしてもペットや動物を飼いたいと考えている場合には、まずは家族の人々に動物アレルギーがないかどうかを専門医療機関で調べてもらいましょう。

精査の結果、特定の動物に対するアレルギー反応が認められなければ、動物を飼っても大きな問題には繋がりません。

ただし、お風呂の入れ過ぎは犬や猫にとって負担になります。アレルギーのためとはいえ、ペットにとって負担になっては元も子もないでしょう。

皮膚・被毛が荒れてしまい、皮膚病の原因にもなりますので、ほかにできる部分で可能な限りの対応をするのが理想的です。

まとめ

これまで動物によるアレルギーがなかった人でも、突然動物アレルギーを発症することがあります。

動物アレルギーに関する代表的な症状としては、くしゃみや鼻水などの症状、皮膚の痒みや湿疹といった皮膚症状、咳や呼吸困難などの呼吸器症状などが知られています。

稀に血圧低下や意識消失など、アナフィラキシーと呼ばれる重篤なアレルギー症状が出現します。

アレルギー疾患に対する重要な治療は、まず原因となるアレルゲンを身のまわりから除去することです。

動物アレルギーの大部分は、適切な予防策や治療を講じることで大きな支障のない日常生活を送ることができます。

ペットや動物を飼育している場合には、たとえ動物アレルギーがなくても部屋の掃除と換気をこまめに実施して、アレルギーの原因物質となる動物の体毛やフケ、排泄物などを取り除いて清潔にしておきましょう。

動物と一緒に過ごしていて、万が一普段よりも咳がひどくなって息苦しさを自覚するなどの場合には、早めにアレルギー専門の医療機関を受診して相談する必要があります。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

この記事の執筆者・監修者

甲斐沼 孟

執筆者情報

甲斐沼 孟

国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長

これまでに臨床医師として15年以上キャリアを積み重ねて、主に消化器外科や心臓血管外科、救急診療を中心に実践して参りました。
2019年より2023年現在に至るまで大阪市内を中心に様々な業種の企業様や会社法人20社以上と産業医顧問契約を締結して職員の方々と保健衛生課題を共有して健康増進維持に寄与できるように精進しております。
様々な病気や健康の悩みに対して、培ってきた経験と専門的な医学知識を最大限に活用して周囲の方々の不安を払拭して、問題解決に導けるように医療記事を執筆・監修しています。

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