猫の病気・健康

【獣医師執筆】猫の認知症の症状は?認知症になる原因と予防方法

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猫の認知症の症状は?認知症になる原因と予防方法

猫も人と同じように認知症になることがあります。特に高齢になると、脳の認知機能の低下から、今までと異なった行動をするようになる猫もいるのです。

また、普段から一緒に暮らしている高齢の猫に認知症による症状が現れると、家族の生活に支障がでることも少なくありません。

そこで、この記事では、猫の認知症についてご紹介します。

この記事の結論

  • 猫の認知症の原因には、加齢や老化、ストレス、脳の病気がある
  • 認知症の猫で代表的な症状は、無駄鳴きや夜鳴き、トイレの失敗、徘徊などである
  • 猫の認知症の治療は未だ確立されていない
  • ストレスを溜めない生活、脳に適度な刺激を与える、サプリメントを摂取することで予防に繋がることがある

西岡 優子

執筆・監修

西岡 優子

ライター/獣医師

北里大学獣医学科を卒業後、出身の高知県近県である香川県の動物病院にて、小動物の診療に携わる。
結婚を機に、都内の獣医師専門書籍の出版社で編集者として数年勤務し、現在は動物病院で時短で獣医師として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動している。

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猫の認知症はどんな病気?

猫も人と同じように認知症になります。認知症とは、何らかの後天的な脳の障害が原因で認知機能が低下することで、日常生活に支障をきたす状態のことです。

猫では、10歳を過ぎる高齢期頃から認知機能の低下が見られる猫が増えてきて、15歳以上では半数程度の猫に何らかの認知症の症状が見られると言われています。

特に現代では猫の平均寿命が年々と伸びてきており、平均寿命は約16歳ほどになってきました。

平均寿命が伸びてくるのは飼い主さんとして嬉しいことである一方、認知症を始めとしたさまざまなケアが必要になってくるのもまた現実です。

猫が認知症になる原因

猫の認知症は人の認知症と大きく異なるわけではなく、主な原因は加齢や老化などが原因と言われています。

しかし、加齢や老化だけではなく、そこに繋がる原因となるものがいくつかあります。

愛猫の健康のためにも、認知症に繋がることがないのか、確認していきましょう。

加齢・老化

人の認知症と同じように、猫の認知症も加齢や老化が主な原因です。

脳細胞は一度死滅すると基本的に再生しない細胞であるため、加齢による脳の劣化が要因となり、認知症を発症します。

認知症になる原因としてもっとも考えられるものですが、ここに繋がる原因はほかにもあります。

過度なストレス

ストレスは脳の血流を悪くしたり、脳内で神経細胞にダメージを与える酸化物質の蓄積を増やすことにより、認知症を促進させると言われています。

猫は人間以上にストレスを抱えやすい動物なので、飼い主さんがなんとも思わないことでも猫にとってはストレスになることがあります。

そうしたストレスが蓄積していくことによって、認知症だけでなく、さまざまな体の不調にも繋がります。

脳の病気(アルツハイマー病)

猫の認知症の主な原因は老化であるものの、人と同じように脳に老廃物が蓄積していきます。

そして、神経細胞を傷害することにより、脳全体が萎縮するアルツハイマー病によるものもあります。

また、脳疾患や全身疾患に伴って発症する場合もあるのです。

人に比べると発生頻度は高くありませんが、脳血管障害により認知機能の低下が見られることもあります。

特に、高齢の猫で多い慢性腎臓不全や甲状腺機能亢進症という病気では二次的な高血圧を起こしやすく、脳血管障害を起こすリスクが高くなります。

猫が認知症になったときの症状

認知症によって見られるようになる猫の行動は、これまでとは違った変化が見られることもあります。

ここでは、認知症の猫で代表的と思われる症状をご紹介しますので、愛猫が認知症でないかどうか、確認のための参考にしてください。 

トイレに失敗する

認知症を発症することでトイレの場所がわからなくなったり、排泄の感覚がわからなくなってしまい、トイレを失敗することはよくあります。

ただ、高齢の猫では足腰が思うように動かなかったり、痛みが原因となって失敗することもあります。

トイレまでの移動や排泄姿勢が辛いと別の場所で排泄するようになったり、腎臓病や糖尿病などの多飲多尿を伴う病気になり、トイレを失敗してしまう場合もあるのです。

そのため、認知症以外の原因がないか、きちんと動物病院で診断を受けるようにしましょう。

室内で迷う(ウロウロする)

認知症の猫では、無意味にウロウロ歩き回ったり、自分のいる場所がわからなくなって立ちすくんでいたりという行動が見られることがあります。

また、何かの拍子で部屋の角にぶつかったり、物のすき間に入ったりしてしまうと、方向転換や後退することができないために、身動きが取れなくなることもあるのです。

大きな声で鳴く・夜鳴きをする

猫の認知症の症状として多く見られるのが、無駄鳴きや夜鳴きで、家族の生活に影響が出てしまうこともあります。

認知症の猫は特別な理由もなく、突然大きな声で鳴き始めたり、長時間鳴き続けたりする行動がみられるようになるのです。

また、昼夜逆転になり夜鳴きをしたり、食事をしたことを忘れてお腹が空いたと鳴く猫もいます。

ただ、このような無駄鳴きは、認知症以外でも老化に伴う節々の痛みや、聴覚や視覚の低下が原因のこともあるのです。

さらに、甲状腺機能亢進症、高血圧症、脳腫瘍といった病気でも無駄鳴きや夜鳴きといった症状が見られることがあるため、自己判断せずに動物病院を受診するようにしましょう。

食欲がない

認知症になると、それまで好きだった食べ物や、いつも使っていた場所など、いわゆる好みが変わってしまう猫もいます。

そのため、今まで食べていたご飯を食べなくなり、食欲不振になることもあるのです。

また逆に、嫌いだったはずの食べ物まで関係なく食べるようになり、あげたらあげただけご飯を食べるようになる猫もいます。

名前を呼んでも反応しない

認知機能の低下により、飼い主さんのことがわからなくなる場合も少なくはありません。そのため、名前を呼んでも反応しなくなる猫もいるのです。

ただ、老化による聴力の低下や、耳の病気の可能性もあるため、自己判断はせずに動物病院を受診するようにしましょう。

おもちゃや遊びの誘いに反応しない

高齢の猫では、運動量が低下したり、節々に痛みが出たりなどで、飼い主さんが遊びに誘っても反応しない場合があります。

さらに、認知症が加わることで、飼い主さんのことがわからなくなり、撫でたり遊びに誘っても反応しなくなることがあるのです。

症状が酷い場合には、飼い主さんを怖がったり、攻撃的になったりする猫もいます。

猫の認知症治療方法

高齢の猫の行動を観察しておかしいと思うことがあると「認知症かな?」と思い込み、大きな病気を見過ごしてしまうケースも多いです。

ですので、自己判断せずに、まずは動物病院に相談するようにしましょう。

猫の認知症に関する研究はまだ始まったばかりであり、人の認知症との違いなども含めてまだまだわからないことが多い領域です。

現在の獣医療では、認知症を直接診断するための検査や基準は確立されていません。

そのため、現れている症状から疑われる他の病気の可能性を全て検査で全て除外する、消去法によってのみ「認知症」という結論にたどりつきます。

ほかの病気の可能性を除外していく

例えば、無駄鳴きや夜鳴きの増加は甲状腺機能亢進症、高血圧症、脳腫瘍で、トイレの失敗は下部尿路疾患(膀胱炎など)、運動器疾患、関節疾患でも見られる場合もあります。

そのため、「認知症」と診断するには、これらの病気の可能性を検査で除外する必要があるのです。

動物病院での検査は、尿検査や血液検査などの麻酔の必要がない比較的手軽で安価な検査だけで診断されることがあります。

脳腫瘍を疑う状況などではCT検査やMRI検査が必要になり、獣医師から提案することもあります。

しかし、実施するかどうかの最終判断は費用や全身麻酔のリスクを伝えた上で飼い主さんに委ねられるため、慎重に検討しましょう。

治療薬はまだ開発されていない

猫の認知症の治療については、まだまだ研究が始まったばかりであり、現在のところ残念ながら治療薬は開発されていません。

人間のアルツハイマー病で使用される一部の薬が、猫の認知症の症状を緩和させる可能性が示唆されており、使用される場合もあります。

しかし、すべての認知症の猫に効果が期待できるわけではないようです。

夜鳴きなどの問題行動に対して対応しきれない場合には、鎮静剤などの投与を行うこともあります。

愛猫が認知症になったときのケア方法

動物病院で検査を行ったが病気は見つからず、認知症と診断された場合、飼い主はどのようなケアをすればいいのでしょうか。

それまでの生活とは変わってくるものなので、愛猫のことを理解してあげることがなによりも大切です。

夜鳴きの対策:鳴いている原因を特定する

無駄鳴きや夜鳴きは、高齢の猫では体の痛みや不快感、甲状腺機能亢進症や高血圧など、認知症以外の原因でも見られます。

鳴いている原因を特定すれば、治療によって改善することも期待できますので、動物病院で認知症以外の原因がないかをまず診てもらいましょう。

夜鳴きに関しては治療を行っても改善が難しく、さまざまな方法をひとつずつ試しながら、鳴いている原因を探していく必要があります。

例えば、食事をしたことを忘れたり夜間にお腹が空いて鳴くようであれば、自動給餌器を利用して食事の間隔を短くすれば解決することもあるのです。

また、とまらない夜鳴きする場合には、生活が昼夜逆転しているため、日中に構ってあげるようにし、夜寝るよう生活リズムを整えましょう。

ただ、夜鳴きは家族だけでの対応が難しいことがあり、家族の日常生活に支障が出ている場合には、鎮静剤や抗不安薬などの内服薬を処方してもらうよう獣医師に相談してみましょう。

トイレ失敗の対策:トイレ環境を変えてみる

トイレの失敗が多いようであれば、いつも寝ている場所のすぐ近くや通り道など、複数箇所にトイレを置くことが有効な場合があります。

認知症の猫は運動機能も同時に落ちていることが多いため、あまり縁が高くないトイレを用意し、またぎやすくしてあげることも対策のひとつです。

ただ、一般的に猫は環境が変わることを好まないため、トイレの場所やトイレ環境を変えること自体が大きなストレスに繋がる可能性もあります。

今まで使ってきたトイレの位置はそのままの場所で、別の場所にトイレを追加してあげるとよいでしょう。

食欲不振の対策:シニア猫向けの食事に変更する

食べ物の好みが変わってしまい、今まで食べていたご飯を食べなくなった場合には、食事を変更することで食べるようになる猫もいます。

また、猫は水分量の多い食事を好むため、ドライフードをウェットフードに変更してあげるのもひとつです。

さらに、猫の認知症には DHA・EPAやビタミンEなどの抗酸化成分抗酸化を含んだ食事を与えると、予防効果があるといわれているため、それらを含むシニア猫向けの食事に変更するのもよいでしょう。

コミュニケーション時間を増やす

脳に適度な刺激を与えるために、声をかけたり、撫でたり、一緒に遊んだりなどコミュニケーション時間を増やすようにしましょう。

それにより、認知症の進行を遅らせることができる可能性があります。また、中にフードを入れて転がすと少しずつ出てくる知育玩具を利用してみるのもよいでしょう。

ただ、コミュニケーションをとるときには、触られるのが好きではない猫や、体に痛みがあり触られるのを嫌がる猫には注意が必要。

ストレスになり逆効果につながるため、愛猫が喜んでいるかなど様子を確認しながら行うことがとても大切です。

ケガ・事故をしづらい環境に変える

認知症の猫がケガや事故を起こさないよう、以下のように生活環境を整えてあげましょう。

  • 猫はある程度家具や家の配置を記憶しているため家具の配置を変えない
  • 猫が移動をするスペースに物を置かない
  • 猫がぶつかる場所にクッション性のあるものを設置する
  • キャットタワーなどは段差の少ないものにする
  • フローリングなどの滑る床にはマットを敷く

子猫期からの徹底したいポイントも含まれますので、早い段階からケアできるとなお良いです。

猫の認知症予防方法

猫の認知症を完全に予防することは難しいですが、生活環境を整えたり、接し方を工夫することで、予防に繋がる可能性があります。

ここでは、そのためのポイントをご紹介しますので、参考にしてみてください。

ストレスを溜めない生活を心がける

認知症の予防や進行を防ぐためには、なるべくストレスなく生活できる環境を整えてあげるように心がけましょう。

高齢になると、体力の衰えや体調の問題から、今までできていたことができなくなったり、大好きだった場所に行けなくなったり。

好きだったものがそうではなくなることで、今までの生活ではストレスを溜めてしまうことがあります。

猫の今現在の体力や状態に合わせて、無理なく過ごせる環境を整えてあげましょう。

遊びや声掛けで脳に適度な刺激を与える

「セロトニン」は脳内の神経伝達物質のひとつで、不安を和らげ気持ちを安定させる働きがあり、猫でも認知症の症状を緩和するために使用されることもあります。

セロトニンは、運動をしたり日光を浴びることで分泌が促進されるため、日中に日向ぼっこをさせてあげたり、遊びに誘って適度に運動させてあげるとよいでしょう。

また、一緒に遊んだり、声掛けや撫でたりなど飼い主さんとのコミュニケーションを増やすことで、猫の脳に適度な刺激を与えることができます。

中にフードを入れて転がすと少しずつ出てくる、知育玩具を遊びに取り入れることもおすすめです。

バランスの良い食事やサプリメントの導入を検討する

少しでも症状が進むのを防ぐために、認知症の猫のためのサプリメントを試してみるのもよいでしょう。

DHA・EPAやビタミンEなどの抗酸化成分を積極的に摂取することで、認知症の予防や進行を遅らせる可能性があるとされています。

ただし、サプリメントの効果に関してもまだまだ研究途上なため、余裕があれば試してみる効果があると嬉しいくらいの心構えがいいかもしれません。

サプリメントを与える際には、獣医師に相談した上で試すようにしましょう。

この記事の執筆者

西岡 優子

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西岡 優子

ライター/獣医師

北里大学獣医学科を卒業後、出身の高知県近県である香川県の動物病院にて、小動物の診療に携わる。
結婚を機に、都内の獣医師専門書籍の出版社で編集者として数年勤務し、現在は動物病院で時短で獣医師として働く傍ら、犬・猫・小動物系のライターとして活動している。

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