犬の失明は、飼い主さんにとっても愛犬にとっても非常にショックな出来事です。
加齢が原因だと思われがちな失明ですが、若い年齢の犬にもリスクはあります。
本記事では、犬が失明してしまう原因や気を付けたい病気をご紹介しています。
失明したときのサポート方法にも触れているので、愛犬の視力低下が気になる人は参考にしてみてください。
この記事の結論
- 犬の失明は年齢に関係なくリスクがあるため、幅広い年代で注意すべき
- 目、視神経、脳のいずれかの機能に問題が生じると、失明に繋がりやすい
- 失明後に安全に暮らしていくには、飼い主さんの日常的なサポートが必要
- 目とその周辺のケアと定期健診が、失明に至るリスクを下げる
ライター
牛の魅力にハマり、卒業後は酪農スタッフとして牧場で乳牛と過ごし、居住地が変わることをきっかけに、動物看護士に転職。
現在はこれまでのペットに関する経験を活かしながらライターとして活動中。
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目次
犬の失明はどの年齢でも起こり得る
犬の失明は加齢が原因という印象が強いですが、実際は年齢に関係なく起こり得ます。
「高齢=視えにくくなる」というイメージは、加齢にともなう免疫や機能の低下により、病気になりやすい状態であるためだと考えられるでしょう。
ですが、若い年齢であっても、発症すると失明する可能性がある病気はいくつかあります。
もし失明してしまった場合には、その後の飼い主さんによるサポートがとても重要です。
失明に繋がりやすい病気と、若い年齢でも失明リスクが高い病気について理解しておきましょう。
失明に繋がりやすい病気
失明のリスクがある病気
- 網膜剥離(もうまくはくり)
- 緑内障
- 白内障
- マイボーム腺機能不全
- 突発性後天性網膜変性症(SARD)
- 脈絡網膜炎(みゃくらくもうまくえん)
眼圧が高くなって視神経が傷つく「緑内障」と、水晶体が白く濁り視界にモヤがかかる「白内障」は、犬の目の病気の中でも発症率が高いです。
網膜に栄養を運ぶ脈絡膜や、網膜自体に炎症が生じる「脈絡網膜炎」と、網膜がはがれてしまう「網膜剥離」にも注意が必要です。
脳に視覚情報を伝達する網膜での異変は、視力低下に直結してしまいます。
油分を分泌して涙の蒸発を防ぐマイボーム腺に障害が起こる「マイボーム腺機能不全」は、失明には至らないものの、進行すると視力低下を招くことも。
こうした目の病気は、わずか数日で突然視力が低下する「突発性後天性網膜変性症」を除き、進行と共に視えなくなっていきます。
若年で発症することもある病気
全年齢で発症する病気
- 若年性白内障
- 緑内障
- 進行性網膜萎縮症(PRA)
- 角膜炎
- 網膜剥離
若年で発症するケースがある上記の眼疾患は、どれも失明に至る危険性があります。
「老齢性白内障」とは6歳以降での発症を指しており、6歳未満では「若年性白内障」と呼ばれます。
眼圧が上昇する緑内障はどの年齢にも発症リスクはありますが、基本的には3~7歳頃でみられることが多いです。
遺伝性疾患である進行性網膜萎縮症は、徐々に網膜が薄くなり最終的に失明してしまう病気です。
平均して6歳までに発症するとされていますが、中には1歳未満のうちに症状があらわれることも。
角膜炎と網膜剥離は外傷が原因で発症することもあるので、高齢犬に限らず気を付ける必要があります。
たとえ犬の年齢が若くても、失明する可能性のある病気を発症することは珍しくありません。
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犬が失明する原因
犬が目で見た映像は、視神経を通じて脳に映像が伝達される仕組みです。
失明は、病気やケガなどをきっかけに目、神経、脳のいずれかに異常が起きることで発生します。
どんな異常が原因で失明してしまうのか、目、神経、脳の3つに分けて解説していきます。
目の異常
目の異常
- 角膜や水晶体の濁り
- 水晶体の脱臼
- 網膜が縮む、剥がれる
目の異常では、主に光を通す角膜や水晶体、視た情報を脳に伝える網膜が正常に機能しなくなると視力に影響します。
外部から光を取り込む角膜や、ピントを合わせる役割をもつ水晶体が濁ると、視界はモヤがかかった状態に陥ります。
また、水晶体が脱臼して位置がずれれば、網膜にピントを合わせることができなくなってしまい、目から得た情報を認識できません。
さらに、視神経と繋がっている網膜に異常が起きた場合は、視覚情報を正確に脳に送ることができなくなってしまいます。
こうした目の異常は「角膜炎」や、水晶体が白く濁る「白内障」、網膜が本来の位置からはがれる「網膜剥離」などが代表的な病気です。
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神経の異常
神経の異常
- 視神経の損傷
- 視神経が動作しない
網膜の奥にある視神経は、目から入ってきた視覚情報を脳に伝える役割を果たしています。
視神経が損傷して正常に働かなくなると、目で光や画像を捉えることができても、脳にその情報が伝わりません。
視神経が傷つく病気として代表的なのが「緑内障」です。
角膜と水晶体の間にある眼房水という水分が溜まりすぎることで、眼球に圧力がかかり視神経を圧迫します。
若い年齢でも発症リスクがあり、数多くある目の病気の中でも発症率が高いことで知られています。
また、生まれつき視神経が未発達な状態である「視神経低形成」や神経に炎症が起こる「視神経炎」なども、目の神経に異常をもたらす病気です。
脳の異常
脳の異常
- 視覚情報を認識できていない
- 視覚情報を正しく伝えられていない
通常、目で視た情報は視神経から大脳に伝わります。しかし、脳に異常が発生すると視覚情報を上手く処理することができません。
直接的な目の病気だけでなく、脳の病気は視力に悪影響を及ぼすことが多いです。
よく挙げられる「脳炎」や「脳腫瘍」に限らず、脳の病気全般に失明や視覚障害を招く恐れがあるといえます。
脳の病気によって、視界がぐるぐる回転する、視野が狭い、全く視えないなど視覚障害の程度はさまざまです。
犬の失明の症状と行動の変化
犬が失明すると、これまで通りの生活を送ることは困難になります。
視えていた状態から視えなくなってしまう不安感は、計り知れないでしょう。
犬の失明や視力低下が疑われる場合、必ず日常生活における行動に変化があらわれます。
具体的に犬が失明するとどんな症状がみられるのかご紹介します。
増加傾向にある行動
失明の症状
- モノや人にぶつかる、つまづく
- ニオイを嗅ぐことが多くなる
- 物音に敏感になる
- 人や物を噛む
- 吠える
- 常に飼い主さんの近くにいる
失明すると何かにぶつかったりつまずいたりすることが増え、犬は嗅覚と聴覚を頼りにします。
そのため、以前よりもニオイを嗅いだり物音に敏感に反応したりする行動が目立ちます。
見知った場所であれば嗅覚と聴覚のみでもある程度の行動はできますが、これまで通りスムーズに動くことは難しいです。
視えなくなることで警戒心が強まり、飼い主さん相手であっても急に触れると噛みつかれることも。
失明は犬の心理的負担も大きく、不安感から吠えたり飼い主さんから離れなかったりするケースも少なくありません。
個体差があるため、こうした行動のすべてみられるわけではありませんが、どれも犬の視力低下を示す重要なサインです。
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減少傾向にある行動
行動の変化
- 散歩への意欲がなくなる
- 睡眠時間が長くなり、行動時間が短くなる
犬は失明すると寝て過ごす時間が増え、活動が消極的になることがあります。
嗅覚と聴覚でカバーしながら行動することはできますが、視えない不安から動くことをやめてしまうのです。
特に散歩は家の中と違って刺激が多いため、視えない状態で外に出ることにストレスを感じる場合もあります。
散歩を嫌がる、ほとんど同じ場所で過ごしているという状況が続いていたら、視覚障害を疑いましょう。
これに加えて、物や人にぶつかるような行動があれば、視力が落ちている可能性が非常に高いです。
今までは活動的で元気だったのに最近妙に大人しい、という場合は注意が必要です。
犬の失明後のケア
犬が失明した場合、飼い主さんのサポートは必要不可欠です。
目が不自由でもケガなく安全に生活させるためには、以下のような配慮をしてあげましょう。
飼い主さんのサポート
- 安全な歩行経路の確保
- 家のレイアウトは変更しない
- 食事、ベッド、トイレの位置は分かりやすくする
- 声かけを増やす
- 失明したことを周囲に伝えておく
失明後の犬のケアについて、それぞれ詳しく解説していきます。
ケガしやすい場所は保護し、歩行経路を安全に確保する
たとえ室内であっても、視えない状態で生活するのはケガを負うリスクがあるほか、ちょっとした段差でも怖がるようになります。
よくぶつかる箇所はクッション材で保護する、段差や階段には侵入できないようにする、といった工夫が必要です。
また、ヒーターなど危険がともなう家具家電は、置き場所に注意してください。
ぶつかったり転倒したりするような可能性がある場所を確認し、犬の生活スペースの安全を確保しましょう。
家具の配置はなるべく変えない
犬は失明しても、室内のどこに何があるかを大雑把に把握しています。
そのため、失明後に家具の配置を変更すると、室内の状況が分からなくなってしまいます。
混乱してストレスを感じる原因となるので、失明後の模様替えは避けてください。
これまでと変わらない室内で過ごさせるほうが、失明して心理的な不安を抱えている愛犬に安心感を与えられます。
誘導時には声をかけてサポートする
食事やトイレなどに犬を誘導する際は、声をかけてサポートしてあげましょう。
失明しても嗅覚と聴覚を頼りにある程度の行動はできますが、声かけがあると安心して動けます。
声かけは誘導時だけでなく、近くを通るときや触れるとき、掃除機のような大きな音を出す前などさまざまな場面で役立ちます。
こまめに声をかけてあげることで、意図せず驚かせてしまうことが少なくなるでしょう。
食事場所やトイレの場所を固定して、迷わないようにする
生活するうえで欠かせない食事やトイレは、場所を固定することを徹底してください。
ニオイを嗅いで大体の位置は把握できるので、いつも同じ場所であれば迷わなくなります。
食事やトイレの場所が定まっていないと混乱してしまうので、定位置を決めて動かさないようにしましょう。
周りの人には失明していることをきちんと伝える
失明は飼い主さんにとってもショックな出来事ですが、周囲の人には事実をきちんと伝えておくことが大切です。
失明後の犬は神経質になる傾向があり、慣れている人でも急に触られると驚いて噛みつくことがあります。
こうしたトラブルを防ぐためにも、周囲には「失明しているので配慮してほしい」ということを説明しておきましょう。
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愛犬の失明リスクを軽減する対策
愛犬が視力を失わないように、ひとりの飼い主としてできることはあるのでしょうか。
実際のところは、完全に失明を避けられるような予防方法はありません。
たとえ健康であっても、年齢を重ねると失明をともなう目の病気を発症する可能性は高くなります。
ただし、失明に至るリスクを軽減することなら可能です。
愛犬の視力を生涯守るためにも、以下2つの対策を心掛けてみてください。
目や目の周りのケアを徹底する
目やになどの汚れを放置すると雑菌が繁殖し、目の病気に繋がります。
また、顔周りの毛が長い犬種では、毛が目に当たって傷が付いてしまうことも。
愛犬の目の健康を維持するためにも、以下のようなケアを定期的に行うことが大切です。
目や目の周りのケア
- 目やになどの汚れは水に濡らしたコットンで優しく拭き取る
- 目に入る毛はこまめにカットする
- ゴミが入ったら取り除いてあげる
目は非常に繊細な部位なので、小さなきっかけがトラブルに繋がりやすいです。
こまめなケアを徹底し、病気になるリスクを軽減しましょう。
紫外線対策
犬の目は紫外線に弱いと言われており、特に日差しの強い時間帯には目を保護することが大切です。
日中は緑地や公園など木陰の多い場所を選んだり、日差しが強くない早朝や夕方以降の時間帯にお散歩をするのが良いでしょう。
また、ファッションの一部と思われがちな、犬用のサングラスを使用することも一つの対策です。
愛犬の目を守るために、紫外線対策はしっかり行いましょう。
健康診断を定期的に受ける
目の健康診断を定期的に受けることで、病気の早期発見・治療につながります。
失った視力を回復することは困難なので、いかに病気に早く気が付き、素早く治療をしていくかが重要です。
病気によっては視力低下の進行が早いこともあり、気が付いたときには手遅れだったというケースも珍しくありません。
年齢が若い6歳以下では1年に1回、シニア期以降は1年に1~2回のペースで診てもらい、目の病気の早期発見に繋げましょう。
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この記事の執筆者
ライター
動物に携わる職を目指し、飼育について学ぶ専門学校へ入学。
牛の魅力にハマり、卒業後は酪農スタッフとして牧場で乳牛と過ごし、居住地が変わることをきっかけに、人とペットを繋ぐ仕事がしてみたいと思い動物看護士に転職。
現在はこれまでのペットに関する経験を活かしながらライターとして活動中。
nademo編集部
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