犬と猫は、体に必要な栄養素が異なる動物です。そのためドッグフードは犬に、キャットフードは猫にというのが必然です。
しかし、意外にも猫のご飯をほしがる犬は多いもの。使われている素材の大半は似ているため、同じにしても良いのでは?という考えもあるでしょう。
ですが実際には、それぞれに必要な食事を見極めて与える必要があります。その理由をご紹介します。
また、犬がキャットフードを食べてしまったらどうすればいいか、起こりうるリスクなども知っておきましょう。
愛犬・愛猫との生活で気をつけたいこと、人間の食べもので犬にとって危険なものなどについてまとめました。
この記事の結論
- キャットフードは嗜好性の高い設計であるため、犬は興味を持ちやすい
- 犬と猫では必要とする成分が違い、それぞれのフードの配合成分も異なる
- キャットフードは犬に害のある食べ物ではないが、食べ続けると病気になるリスクがある
- キャットフードを食べないように、犬と猫で与える場所を分けるなどの工夫が必要
犬の管理栄養士/動物ケアスタッフ/動物医療技術師/犬の美容師
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目次
犬がキャットフードを食べるのはダメ
犬と猫、両方を飼っているおうちでよく起こりがちな、犬がキャットフードを食べてしまう問題。
いつもと違う食事で一時的にお腹が緩くなる可能性はありますが、キャットフードには犬にとって有害な食べ物は含まれていません。
そのため、一度食べたからといって中毒を起こしたり、病気になったりすることはありません。
しかし、愛犬がキャットフードを食べ慣れてしまうことは危険です。
雑食である犬に対して、猫は基本的に肉食。ドッグフードとキャットフードは彼らの食の傾向や体への作用をふまえて、それぞれに合った作りになっています。
犬と猫では体に必要な栄養素が異なっているため、愛犬にキャットフードをあげたり愛猫にドッグフードをあげる、ということはしないようにしましょう。
うっかり食べてしまったときは叱って、次は食べないようにしつけをしましょう。
少量を食べても問題ないが、継続的に食べるのはNG
もし愛犬がキャットフードを食べてしまったとしても、初めの少量程度であれば問題ありません。
新鮮なキャットフードであればすぐになにか異変が起こるということも考えづらく、影響もほとんどないでしょう。
しかし継続的に食べてしまうようであれば、さまざまな異変が見られるようになるため、避けるようにする必要があります。
後述していますが、ドッグフードよりもキャットフードの方が嗜好性が高く作られているので、一度食べてしまうと好んで求めるようになってしまう可能性もあるため注意が必要です。
猫がドッグフードを食べるのもダメ
犬がキャットフードを食べ続けることはNGであり、猫がドッグフードを食べ続けるのもNGです。
どちらも少量であれば問題ないものの、猫にとってドッグフードは嗜好性が低く、必要な栄養素も足りていません。
嗜好性が低いためそもそも食いつくということ自体ほとんどありませんが、稀に食べてしまうこともあるでしょう。
少量食べたからといって急ぎで動物病院に行く必要はありませんが、犬にはドッグフードを、猫にはキャットフードを徹底しましょう。
犬がキャットフードを好む理由
犬は多少のタブー食材や好き嫌いがあるにせよ基本的には雑食で、キャットフードにも興味を持ちがちです。
犬より選り好みが激しい猫に食べさせるため、嗜好性をもたせて作られたのがキャットフードです。
塩分を多くしたり、旨み成分を添加しているものも多く、犬も美味しいと感じてしまう可能性は高いでしょう。
動物性タンパク質が豊富に含まれている
犬と猫の身体機能の違いのひとつに、体内でのタウリン生成機能があります。
また、雑食の犬に比べて肉食である猫には、より多くのタンパク質が必要です。
犬の平均的な栄養基準
猫の平均的な栄養基準
また、全米飼料検査官協会が定めるAAFCOの栄養基準によると、成猫に必要なタンパク質は26%以上。対して成犬は18%以上と大きな差があります。
一般的に、動物性タンパク質が多いフードは香りが良く肉々しい味がするため、思わず食べたいと思う犬も多いでしょう。
犬の体には人の何倍ものタンパク質が必要で、嗜好性の高さも相まって動物性タンパク質を自ずと欲してしまいます。
結果、ドッグフードよりも動物性タンパク質が多く含まれているキャットフードを好んでしまう、ということです。
味付けが濃いものが多い
猫にとって美味しい味付けがされたキャットフードを犬が食べると、塩分などを過剰摂取してしまうことになります。
猫は犬に比べて、タンパク質や脂質の必要量が多くなっているというのは前述の通り。
動物性タンパク質を主とするこれらの栄養素は、必然と嗜好性が高くなる傾向にあるということです。
言葉や文字が分からない海外などで、間違えて食べてしまう人もいるというキャットフード。
人間が食べるものではありませんが、私たちも普通に食べられるくらいのクオリティで作られているといえるでしょう。
ドッグフードとキャットフードでは栄養バランスが異なる
ドッグフードよりもキャットフードに多く含まれている主な栄養素は以下のとおりです。
- タウリン
- 脂肪酸(アラキドン酸)
- ビタミンA(ナイアシン、ビタミンAなど)
- ミネラル
タウリンは活性酸素の影響を抑える、強い抗酸化作用を持っているアミノ酸の仲間のひとつです。
視力や聴力をはじめ、心臓や肝臓を正常に保ったり、血糖値や血圧をコントロールしたりするために欠かせない栄養素としても知られています。
犬は体内でタウリンを合成することができますが、猫は合成能力が低いうえ必要量も多いため、キャットフードにはドッグフードより多くのタウリンが含まれています。
犬・猫に限らず、栄養不足になってしまう面と、過剰摂取になってしまう面の両方があることに注意しましょう。
人と犬猫の違いはもちろんのこと、犬と猫でも必要な栄養量・栄養素が異なることを覚えておきましょう。
犬がキャットフードを食べ続けることで起こる体への影響
犬がキャットフードをうっかり食べてしまったとしても、一度や二度なら慌てることはありません。
ただそのとき「これはあなたの食べ物ではない」ということをしっかり理解してもらうことが重要。
キャットフードを犬が常食すると、以下のようなことが起こってしまう可能性があるからです。
普段与えているドッグフードを食べなくなる
犬に人間の食べ物を与えたときと同じように、キャットフードを食べ慣れてしまうとドッグフードを食べてくれにくくなります。
キャットフードはドッグフードよりも味付けが濃いめに作られているため、犬も美味しいと感じてしまうのです。
嗜好性の高いおやつばかりを与えていると、栄養バランスの良い総合栄養食をあまり食べてくれなくなった、というようなもの。
一度、味を覚えてしまうと元のドッグフードに戻すのに時間がかかってしまうでしょう。
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栄養バランスが崩れて体調を崩す場合がある
犬と猫では必要な栄養が異なるため、犬にキャットフードを与えると栄養バランスが崩れる原因になります。
一般的にキャットフードにはドッグフードより多くのタンパク質や塩分が含まれますが、これらの栄養素を必要以上に摂取すると腎臓に負担がかかります。
その結果、腎臓病や心臓病などを引き起こしやすくなるため、注意が必要です。
また、ドッグフードは肉や魚などに加えて野菜や果物、穀類のほかコラーゲンやコンドロイチン等、犬に有益な成分を何種類も混ぜ合わせてできています。
雑食である犬の健康をサポートする作りになっているのが特徴です。
キャットフードを犬が食べても、彼らに必要な栄養素を取りきれないというわけです。
塩分過多により腎臓に負担がかかる
犬と猫の1日に摂取可能な塩分量には差があり、これが大体倍ほども違います。
猫に比べて、犬の塩分摂取量目安は低めに設定されており、ドッグフードはキャットフードに比べて塩分含有量が少なめです。
対象動物 | 1日の塩分摂取量目安 |
---|---|
犬 | 0.18g |
猫 | 0.33g |
体重5kgの成犬(避妊去勢済)は1日の塩分摂取量目安が0.18g。対して成猫(避妊去勢済)が1日の塩分摂取量目安が0.33g。
ペットフードは種類が多いので一概には言えませんが、どちらかというとキャットフードの方が塩辛い味付けになっているといえます。
大前提として、人間の食事に使われる塩分量では、犬でも猫でも過剰摂取となってしまいます。
塩分を過剰摂取してしまうと、心臓や腎臓に負担をかけてしまいますので注意しましょう。
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塩分含有量が多い食べ物
食べ物 | 10gあたりの食塩量 |
---|---|
食パン | 0.13g |
ロースハム | 0.25g |
ウインナー | 0.19g |
ベーコン | 0.2g |
プロセスチーズ | 0.28g |
さつま揚げ | 0.17g |
かつお節 | 0.24g |
しらす干し | 0.54g |
ハンペン | 0.15g |
塩鮭 | 0.18g |
食べ物によってはそれだけで1日の塩分摂取量目安を超えてしまうこともあります。十分注意しましょう。
ドッグフードやキャットフードと比べて、人間の食べる食材は塩分含有量が多い、ということは覚えておくと良いです。
そのため、人間用の加工食品などは犬にも猫にもあげてはいけない、ということです。
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肥満になる可能性が高まる
肉や魚、果物などがバランスよく配合されている点はドッグフードもキャットフードも同じですが、キャットフードのほうがより高栄養。
そのため、犬にキャットフードを日常的に与えた場合、栄養過多で肥満になる可能性が高いといえるでしょう。
そもそもペットフードのパッケージに記載されている量も、犬用・猫用とそれぞれわかれているため、適切な量というもの自体がありません。
肥満は関節炎や糖尿病などさまざまな病気の原因になるため、普段から注意が必要です。
犬と猫を多頭飼いしているときのフードの与え方
愛犬と愛猫が同居しているご家庭も多いでしょう。
あるいはどちらかをすでに飼っていて、新たに愛犬・愛猫を迎えたいと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
彼らが仲良く遊んだり、寄り添って休んだりしている様子には癒されますよね。
愛犬や愛猫に囲まれて暮らすのは楽しいですし、彼らにとっても遊び相手が多いのは喜ばしいことでしょう。
では、愛犬と愛猫が同居するとき、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。
食事の時間をずらす
愛犬と愛猫の食事時間をずらすのは、実行しやすく、愛犬がキャットフードを食べるのを防ぐ簡単な方法です。
食事時間をずらすことで愛犬の行動を管理しやすくなり、愛猫もストレスを感じにくくなります。
時間になると「これは自分のご飯で、食べていいものだ」と認識できるでしょう。
愛犬にとっても、キャットフードの存在を気にすることがなくなるため、余計なストレスもかかりません。
別々の場所で食事を与える
ご自宅にある程度の広さや部屋数があるなら、別々の場所で食事をしてもらうのもひとつの手です。
その部屋に誘導されたらご飯の時間、と覚えてくれればしめたもの。
食事場所を分け、物理的に犬が猫の食事を食べられないようにすることが大切です。
食事ができるからと喜んで、自ら移動してくれるようになるといいですね。
愛犬の手が届かない高さの場所にフードを置く
多くの犬は、猫のように高いところに飛び上がることができません。猫のご飯を犬の手の届かないところに置くのも一策です。
ただこの方法だと、猫がご飯をこぼしたとき下に落ちてしまい、掃除するのが大変かもしれません。
飼い主さんの不在時にこぼされると、愛犬が食べてしまうリスクも考えられます。
時間になると一定量が出てくる自動給餌器をある程度の高さに置けるようなら、検討の余地があるでしょう。
自動給餌器自体の落下を防ぐため、設置場所は安定したところを選びましょう。
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人間の食べ物の中にも犬に与えてはいけないものがある
キャットフードに加えて、人間が食べている食材のなかにも犬に与えてはいけないものは割とたくさんあります。
人が食べる食材はヒューマングレードとしてドッグフードやキャットフードに多く使われ始めていますが、絶対に避けなければいけない食材も存在します。
こちらに、主なものをご紹介しましょう。
ネギ類(タマネギ、ネギ、にら、にんにく など)
一般的な野菜の多くは栄養を豊富に含んでおり、犬に食べさせたいものも多くあります。
ただ一部の野菜に、犬に悪影響を与える成分を含むものがあります。
アリルプロピルジスルフィドという有機硫黄化合物で、強い臭気があり、タマネギをはじめとした「ネギ、ニラ、ニンニク」などに多く含まれます。
アリルプロピルジスルフィドには犬の赤血球を破壊する作用があり、摂取すると溶血性貧血による下痢、嘔吐、発熱、血尿などの症状が現れるほか、場合によっては命を落とすこともあります。
なお、アリルプロピルジスルフィドは加熱してもなくならず、毒性がそのまま残ります。
水に溶けだした成分を誤って摂取しないよう、すき焼きの残り汁やねぎのかけらが入った味噌汁、カレーや肉じゃがなどは与えないようにしましょう。
生肉、魚介(イカ、エビ、タコ、カニ など)
生肉は犬が食べられるイメージを持っている人もいるかもしれませんが、危険なのでやめましょう。
イカ、タコなどに代表される頭足類、エビやカニをはじめとした甲殻類なども犬には与えないでください。
火を通したものなら多少は問題ありませんが、消化しにくいので避けたほうがいいでしょう。
肉類はしっかりと火を通し、骨などを含まないもので調味料を使わなければ、手軽なおやつとして使えることもあります。
果物(ぶどう、アボカド、いちじく など)
果物のなかでもぶどうは、犬にとって禁忌。中毒を引き起こす原因は特定されていませんが、急性腎不全を引き起こす可能性があり、非常に危険です。
森のバターと呼ばれるアボカドは人間にとってみれば積極的に食べたいところ。
しかしこのアボカドも、下痢や嘔吐などを引き起こしてしまう可能性があるため、食べさせないようにしましょう。
ほか、果物の種やいちじくの実なども犬にとって有害な物質を含んでいます。
お菓子(キシリトールを含むもの、チョコレート、レーズンなど)
キシリトールを含んでいるガムや人間用の歯磨き粉、チョコレートも犬には絶対に与えないでください。
ナッツ類は摂取しすぎると肥満や高脂血症の原因になる可能性もあるため、注意が必要です。
特にマカダミアナッツは犬が中毒症状を引き起こすことがあるといわれており、嘔吐や下痢、後肢麻痺、呼吸困難などの症状が出る可能性があります。
それぞれの原材料に含まれる成分が犬の体に悪影響を及ぼします。
下痢や嘔吐などの原因になるだけでなく、最悪の場合は死亡してしまうリスクも。
室内に置いてあったこれらの食品を誤って犬が食べてしまったときは、速やかに医療機関を受診してください。
飲み物(緑茶、紅茶、コーヒー、お酒 など)
お茶やコーヒー、お酒などの嗜好品を犬に与える人はいないと思いますが、子どもが誤ってあげてしまったり、犬が誤飲するリスクはあります。
カフェインやアルコールは犬にとって中毒を引き起こす危険なものです。
飼い主さんがおいしそうに飲んでいるとほしがる犬も多いかもしれません。注意してください。
誤って飲んでしまった場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
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愛犬の健康を守るためにもライフステージに合ったドッグフードを
今回は、愛犬がキャットフードを食べてしまったときのことを中心にお話しました。
一緒に暮らしているとかわいくて、食べているものをほしがると与えてしまいがちですし、猫を一緒に飼っている場合は彼らのご飯に興味を持つこともあるかもしれません。
でも愛犬にはやはり、ドッグフードを食べてもらいましょう。
人間の食べ物のなかにも犬に適したものや影響を与えないものはたくさんありますが、犬の栄養補給・健康サポートを前提に作られたドッグフードが犬には最適でしょう。
またドッグフードも、月齢・年齢によって愛犬にふさわしいものは異なります。
ライフステージによって今どんなフードがいちばんいいかを見極めて愛犬の健康をずっと、守っていきましょう。
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この記事の執筆者・監修者
犬の管理栄養士/動物ケアスタッフ/動物医療技術師/犬の美容師
犬の管理栄養士、動物ケアスタッフ、動物医療技術師、犬の美容師(トリマー)の経験と知識を活かし、現在はwebライターとして主にペット関連記事の執筆、ペット用品・記事の監修などを行う。
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