食事は体を作り上げる基本となるため、犬の場合にも適切な食事や栄養素はとても重要なポイント。
そのため、体の状態に合わせて適切なドッグフードを選ぶことが、愛犬の健康をサポートする上でとても大事になってきます。
総合栄養食と言われる一般的なドッグフードとは異なり、獣医師の指示の下で処方される療法食。
若いうちからも選択することがある「犬の療法食」について、この記事ではご紹介しています。
この記事の結論
- 療法食は特定の病気や健康上の問題を抱える子に対して処方される、獣医師の指示の下で選択する食事
- 療法食を個人の判断で与えることは、思わぬ病気やケガに繋がる原因になり得る
- 愛犬の療法食を始めるタイミングは、獣医師の指示があったときのみ
- 療法食を与えている間は、おやつや他のフードを与えないようにする
獣医師/ペット管理栄養士/ペット用品取扱士
現在ではオンラインペットショップを運営する25Holdings Japanにてグローバル全体の自社ブランドの商品開発をする傍ら、”現役の臨床医”であり続けることにこだわり非常勤獣医師として動物病院に勤務も続ける。
目次
犬の療法食と他のフードの違い

ドッグフードはその目的ごとに大きく「総合栄養食」「間食」「療法食」「その他目的食」に分類されます。
ドッグフードを選ぶ際にはまずこの目的を知っておかないと、正しいドッグフード選びはできません。
また、間違ったドッグフード選びをしていると栄養バランスが偏ってしまったり、病気がちになってしまう可能性も考えられます。
まずはそれぞれどういった目的で与えられるドッグフードなのか、その違いを確認してみましょう。
総合栄養食

総合栄養食とは、健康な犬に水とこのフードだけで栄養バランス良く栄養が取れるように設計されている、一般的なドッグフードのことを指します。
毎日の主食として与えることを目的とし、もっともスタンダードなドッグフードとして知られています。
健康的な犬に対してはこの総合栄養食と水だけで良く、必要に応じて他のフードを検討していくことになります。
総合栄養食と明記するには分析試験と給与試験をクリアしたもののみとされており、2つの試験のクリアによって総合栄養食との明記が可能になっています。
また、総合栄養食はアメリカのAAFCOが制定した栄養基準に沿って試験が行われており、いわば日本ではアメリカの栄養基準を採用していることになっています。
おやつ・間食

おやつや間食は、主におやつや特定の栄養素の補給、もしくはトッピングなどで使われることを目的としたフードになります。
「おやつ、スナック、トリーツ」といった表記がされることがあり、主食にはなりません。
しつけ時のご褒美としては最適ですし、中にはデンタルケアおやつや毛玉ケア用のおやつなども存在しています。
副食・一般食

副食や一般食と言われるものの中には、総合栄養食ではないものの主食として扱えるものも増えてきています。
基本的には主食にならないものという扱いですが、ヨーロッパの基準であるFEDIAF基準で作られていれば栄養バランスの整った主食になります。
FEDIAF基準で作られている一般食というのは、主食として扱える栄養バランスではありますが、日本において「総合栄養食」と表記することはできない、といったものです。
療法食

療法食は、特定の病気や健康上の問題を抱える犬に対して、獣医師の指示に基づいて処方される食事療法のための特別なフードのことを指します。
犬の病気や健康上の問題に合わせて栄養バランスや成分が調整されており、病気の進行を抑えたり、症状を緩和する効果があります。
療法食は一般的なペットフードと比べて価格が比較的高めであることもしばしばですが、これは高品質の原材料を使用して作られているだけでなく、厳格な品質管理が行われているためです。
こういったペットフードメーカーの技術やこだわりによって、療法食として病気になってしまった犬が必要とする栄養素を適切な量で摂取できるというわけですね。
また、特殊な栄養バランス以外にも、添加物や人工の香料・着色料を使用しないようにしているなど、安全性にも配慮されていることが多いです。
愛犬のドッグフードはどの種類?

今、愛犬が食べている、もしくは気になっているフードが先ほど挙げた4つの分類のうち、どの区分に当てはまっているのかを確認したい場合は、ドッグフードのパッケージをよく確認するようにしましょう。
日本で出回っているほとんどのドッグフードには、そのパッケージの中に「目的」としてこのフードがどの区分にあたるものなのか記載されています。
加えて療法食の場合ですと、一般的なペットフードとは異なりパッケージに独自の"療法食"や"Prescription Diet"などの表示、あるいはロゴやマークが付いていることもあり、他のフードと比べても見分けやすいデザインになっていることが多いです。
パッケージの表面に記載されていることもありますし、裏面に記載されていることもあります。
横側に情報が記載されている場合には、横側にこうした記載があることもあるため、よく確認してみてください。
総合栄養食基準で作られているドッグフードも主食になる
総合栄養食との記載があればわかりやすいですが、中には総合栄養食基準で作られているドッグフードもあります。
先ほど、主食として扱えるのは総合栄養食だと言いましたが、実際には総合栄養食基準で作られているのであれば同様に主食にできます。
総合栄養食の基準はAAFCOによって公開されているため、この基準に沿って作られているものが該当します。
明確に総合栄養食との記載ができないまでも、総合栄養食と同等の栄養バランスで作られていることには変わりありません。
一般食でもFEDIAF基準で作られているドッグフードは主食になる
総合栄養食や総合栄養食基準のドッグフードとは異なり、一般食ですが主食になるものもあります。
日本ではアメリカのAAFCOを基準としていますが、ヨーロッパではFEDIAFという団体の基準に沿って作られています。
この基準には多少のが誤差があるものの、AAFCOやFEDIAFの基準に沿って作られているならば、主食として与えられるものになっているのです。
そのため一般食との記載であっても、FEDIAFの基準に沿って作られているドッグフードならば、主食として扱って問題ありません。
愛犬の療法食を始めるタイミング

いずれは療法食が必要になることもあるでしょう。では「療法食を始めるとしたら、いつからにすべきなのか?」という疑問。
この答えは「愛犬を診察した獣医師から指示があったとき」ということになります。
獣医師は、愛犬の健康状態や病歴、検査結果を総合的に評価し、必要に応じて療法食を処方しています。
療法食を始めるタイミングは、病気の種類や進行度によって異なります。あまりに早期から始めてしまうことで、本来必要な栄養を十分に摂取できなくなってしまうこともあります。
そのため獣医師の指示に従って、正確なタイミングから食事療法の開始することが重要です。自己判断での使用開始などは避けるようにしましょう。
主要な病態に対応する犬の療法食の種類と栄養調整のポイント

療法食(処方食)は、特定の病気の管理や症状の緩和を目的として、獣医師の指示のもとで与えられる特別な栄養調整フードです。病態に応じて、以下の通り栄養素が厳密に調整されています。
療法食にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる病気や健康上の問題に対応しています。参考に代表的な療法食の種類をいくつか挙げます。
腎臓病用の療法食
腎臓は、体内の老廃物をろ過し排出する重要な臓器です。機能が低下すると老廃物が蓄積し、さまざまな症状(尿毒症など)を引き起こします。
調整のポイント | 目的 | 具体的な栄養調整 |
---|---|---|
タンパク質の制限 | 老廃物(尿素窒素)の元となるタンパク質の量を制限し、腎臓のろ過負担を軽減します。 | 高品質で消化しやすいタンパク質を、必要最低限の量に調整。 |
リンの制限 | 腎臓の機能低下により排泄しにくくなるリンを制限し、腎性骨異栄養症や腎臓のさらなる損傷を防ぎます。 | リンを極端に少なく調整。 |
ナトリウムの制限 | 高血圧や体液の貯留(浮腫)を防ぎ、心臓への負担も軽減します。 | ナトリウム含有量を少なく調整。 |
オメガ3脂肪酸 | 腎臓内の炎症を抑制し、血流を改善する目的で強化されます。 | EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸を強化。 |
消化器疾患用の療法食
急性の下痢や嘔吐、あるいは炎症性腸疾患など、胃腸の調子が悪い犬の消化器官を休ませ、栄養吸収をサポートします。
調整のポイント | 目的 | 具体的な栄養調整 |
---|---|---|
高消化性 | 消化器官の負担を最小限に抑え、栄養素が効率良く吸収されるようにします。 | 厳選された消化性の高いタンパク質や脂肪を使用。 |
脂肪の調整 | 膵炎など脂肪の消化が苦手な場合は低脂肪に、炎症性疾患などエネルギーを必要とする場合は適度な脂肪に調整されます。 | 病態に応じて脂肪の量と種類を調整。 |
食物繊維の調整 | 炎症性疾患や便秘の場合は可溶性繊維を強化し、腸内環境を整えます。 | 腸内細菌の栄養となるプレバイオティクス(可溶性繊維)を配合。 |
アレルギー対応の療法食
食物アレルギーや食物不耐性の原因となる特定のタンパク質を避けることで、皮膚炎や消化器症状の発生を防ぎます。
調整のポイント | 目的 | 具体的な栄養調整 |
---|---|---|
アレルゲン回避 | 一般的なアレルゲン(牛肉、鶏肉、乳製品、小麦など)を含まないようにします。 | 加水分解食や、これまで食べたことのない新しいタンパク質(ノベルプロテイン食)を使用。 |
脂肪酸の強化 | 皮膚のバリア機能をサポートし、皮膚の炎症を抑えます。 | オメガ3およびオメガ6脂肪酸(特にEPA・DHA)を強化。 |
体重管理用の療法食
肥満による関節や心臓への負担を減らし、糖尿病などのリスクを軽減するために、安全かつ効果的に減量を進めるための食事です。
調整のポイント | 目的 | 具体的な栄養調整 |
---|---|---|
カロリーの制限 | 摂取カロリーを大幅に減らし、体脂肪を燃焼させます。 | 低脂肪・低カロリーに調整。 |
食物繊維の強化 | 少量でも満腹感を得やすくし、空腹によるストレスを軽減します。 | 食物繊維を多く配合し、満腹感をサポート。 |
タンパク質の維持 | 減量中に筋肉量(除脂肪体重)が減るのを防ぎ、健康的な体組成を維持します。 | カロリーは制限しつつ、タンパク質は高めに維持。 |
肝臓病用の療法食
肝臓の機能低下(肝不全など)により、タンパク質の代謝や解毒がうまくいかない場合に、肝臓の再生と負担軽減を目的とします。
調整のポイント | 目的 | 具体的な栄養調整 |
---|---|---|
タンパク質の調整 | 肝性脳症の原因となるアンモニアの発生を抑えるため、過剰なタンパク質を制限します。 | 消化性の高い良質なタンパク質を、適度に制限して使用。 |
銅の制限 | 銅蓄積性肝炎など、特定の肝疾患では銅の蓄積が問題となるため厳しく制限します。 | 銅の含有量を最小限に抑えます。 |
エネルギー源の調整 | 肝臓が処理しやすいエネルギー源を中心に供給します。 | 消化しやすい炭水化物や、中鎖脂肪酸(MCT)などの良質な脂肪を利用。 |
心臓病用の療法食
心臓病の進行に伴う心臓の負担軽減、体液貯留(浮腫)の管理、および心機能の維持を目的とします。
調整のポイント | 目的 | 具体的な栄養調整 |
---|---|---|
ナトリウムの制限 | 体内の水分貯留(浮腫、腹水)を防ぎ、心臓への負荷を軽減します。 | ナトリウム含有量を厳しく制限。 |
オメガ3脂肪酸 | 心臓の炎症を抑制し、るい痩の進行を遅らせます。 | EPAやDHAを強化。 |
タウリン・L-カルニチン | 心筋の働きをサポートし、心機能の維持を助けます。 | 心筋保護に役立つ栄養素を強化。 |
療法食は、犬の病状や進行度に応じて獣医師が処方するものであり、飼い主の自己判断で一般的なフードに切り替えたり、他犬の療法食を与えたりすることは大変危険です。
必ず獣医師の指導のもとで、適切な種類のフードを選び、給与量を守って与えるようにしてください。
愛犬に療法食を与える際に注意すること

療法食は基本的に、その食事のみを日常で食べさせることを前提として作られています。
他の食事も合わせながら与えてしまうと、療法食の効果がうまく出せないこともあります。
獣医師から療法食の指示があった場合は、おやつや他のフードなどの使用は極力避けるようにしましょう。
また、同じ病気を対象としていても、病気の段階や細かい診断内容によって選ぶべき療法食が微妙に変わることもあります。
それらのパッケージも非常に似ていることが多いので、必ず獣医師に相談しましょう。
最後に

療法食は犬の健康をサポートし、病気や健康上の問題の管理や治療を助ける重要なツールです。
そのため療法食は一般的なフードとは異なり、栄養バランスや成分が病気の進行を抑えたり、改善させるために設計されています。
やみくもに与えてしまうと、かえって愛犬の体調を損なってしまう恐れがあります。
獣医師の診断に従い、正確な食事療法の開始タイミングを守り、獣医師としっかりと話し合いながら愛犬の様子に合わせて与えるようにしましょう。
この記事の執筆者・監修者
獣医師/ペット管理栄養士/ペット用品取扱士
現在ではオンラインペットショップを運営する25Holdings Japanにてグローバル全体の自社ブランドの商品開発をする傍ら、”現役の臨床医”であり続けることにこだわり非常勤獣医師として動物病院に勤務も続ける。
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