ピレニアン・マスティフは、その堂々とした体躯と、まるでぬいぐるみのような愛らしい顔立ちが魅力の大型犬です。
その歴史は古く、スペインとフランスの国境に位置するピレネー山脈で家畜を守る牧羊犬として活躍してきました。
一見すると近寄りがたい印象を受けるかもしれませんが、実は非常に穏やかで愛情深く、家族に対しては深い忠誠心を示す素晴らしいパートナーとなります。
しかし、大型犬ゆえに飼育には知識と準備が必要です。この記事では、ピレニアン・マスティフの性格、特徴、適切な飼い方、しつけ、健康管理、そして寿命に至るまで、飼い主さんが知っておくべき情報を網羅的に解説します。
これからピレニアン・マスティフを家族に迎えたいと考えている方も、すでに一緒に暮らしている方も、ぜひこの記事を参考に、より充実した愛犬ライフを送ってください。
この記事の結論
- スペイン原産の大型犬で、 牧羊犬として家畜を守り、家族には忠実で穏やかな性格
- 適切な飼育には広い環境と運動が必要で、日本の夏は暑さに弱いため、温度管理が重要
- 大型犬ゆえに、問題行動を予防するため、子犬期からの社会化としつけが不可欠
- 股関節形成不全や胃捻転など、大型犬特有の病気に注意が必要
目次
ピレニアン・マスティフとは?基本情報と歴史

ピレニアン・マスティフは、スペインのピレネー山脈が原産の非常に大型で雄大な犬種です。
その名は「ピレネー山脈のマスティフ犬」を意味し、古くからその地で家畜、特に羊や牛を捕食者から守る牧羊犬、番犬として活躍してきました。
力強く忠実な性格と、見慣れないものに対しては警戒心を持つ一方で、家族には非常に愛情深いという二面性を持っています。
近年では、その穏やかな気質から家庭犬としても注目されており、日本でも愛好家が増えつつあります。
この犬種を理解するには、その歴史的背景と、大型犬ならではの特性を知ることが非常に重要になります。
知的で優しく飼い主さんに従順
家族に対して愛情深い
吠える声が大きく吠えやすい
運動量は多くないが、スタミナは豊富
その他情報
原産地 | スペイン |
犬種グループ | 2G:使役犬 |
大きさ | 大型 |
平均寿命 | 10歳~12歳 |
なりやすい病気 | 股関節形成不全,肘関節形成不全,胃拡張捻転症候群,外耳炎 |
参考価格 | 30万円~60万円 |
被毛
抜け毛 | 多い |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | ホワイト&ブラック,ホワイト&ゴールド,ホワイト&ブラウン,ホワイト&セーブル,アグーチ&ホワイト,ホワイト&ゴールド,ホワイト |
原産国とルーツ
ピレニアン・マスティフの原産国はスペインです。特に、スペインとフランスの国境に位置するピレネー山脈のアラゴン地方がそのルーツとされています。
この地域は、厳しい自然環境と、オオカミやクマといった肉食動物が生息する場所であり、家畜を守るための大きく力強い犬が求められていました。
古代ローマ時代にイベリア半島にもたらされたモロシア犬の子孫であるという説が有力で、何世紀にもわたって地域の環境に適応し、牧羊犬としての能力を高めてきました。
その血統は、まさにピレネーの厳しい自然と人々の生活に深く根ざしています。
ピレニアン・マスティフの歴史的役割
ピレニアン・マスティフの最も重要な歴史的役割は、移動する家畜の群れを護衛することでした。
彼らは単に家畜を追い立てるだけでなく、オオカミやクマといった捕食動物から羊や牛を文字通り命がけで守る「保護者」としての役割を担っていました。
夜間は家畜の群れとともに眠り、危険が迫れば自らの体で盾となり、時には捕食者と勇敢に戦いました。
その強靭な体格と、見知らぬ者には警戒心を持つ一方で、自分の守るべきものには献身的な忠誠心を示す性格は、この過酷な役割を果たすために培われたものです。
FCI(国際畜犬連盟)による分類
ピレニアン・マスティフは、FCI(国際畜犬連盟)によって「第2グループ:ピンシャー・シュナウザー・モロシアン・スイス・マウンテン・アンド・レーク・ドッグ」に分類されています。
このグループは、強靭な体格を持ち、番犬や護衛犬、作業犬として用いられる犬種が多く含まれています。
特に、ピレニアン・マスティフは「モロシアン・タイプ」の犬種として認識されており、その歴史的な役割と体格的な特徴がFCIの分類にも明確に反映されています。
この分類は、犬種の特性を理解する上で重要な指標となります。
参考:MASTÍN DEL PIRINEO - FCI breeds nomenclature
ピレニアン・マスティフの身体的特徴

ピレニアン・マスティフは、その圧倒的な体格と堂々とした容姿が最大の特徴です。
成犬の男の子では体高が77cm以上、体重は50kgを超えることも珍しくなく、非常に力強い印象を与えます。
厚く豊かな被毛は、ピレネー山脈の厳しい気候から身を守るために発達しました。
全体的に骨太で筋肉質、四肢はがっしりとしており、牧羊犬としての耐久性とパワーを兼ね備えています。
その雄大さは、見る者を魅了し、一度見たら忘れられないほどの存在感を放ちます。
雄大な体格と体重
ピレニアン・マスティフは、世界でも有数の超大型犬に分類されます。
体高:男の子で77cm以上、女の子で72cm以上が標準とされていますが、中には80cmを超える個体も存在します。
体重:男の子で50kg以上、女の子で40kg以上が一般的ですが、健康的な個体であれば70kgを超えることも稀ではありません。
この雄大な体格は、彼らが家畜を守るという役割を果たす上で非常に重要でした。その重厚な体は、力強い捕食者に対してもひるむことなく立ち向かえる威厳とパワーを与えています。
被毛の色と種類
ピレニアン・マスティフの被毛は、厚く密度の高いダブルコートが特徴です。これは、ピレネー山脈の厳しい寒さや気候変動から体を保護するために不可欠です。
ベースカラー:純粋な白が基本となります。
マーキング:白い被毛の上に、グレー、ブラック、ブラウン、サンド、ブリンドルなどの濃い色の斑(パッチ)が入るのが一般的です。耳は常に濃い色でなければならないとされています。
種類:外側の被毛は粗く、内側のアンダーコートは柔らかく密生しています。
この被毛は、定期的なブラッシングによる手入れが重要です。特に換毛期には、抜け毛が多くなるため、こまめなケアが欠かせません。
特徴的な顔つきと表情
ピレニアン・マスティフの顔つきは、その穏やかで知的な性格をよく表しています。
比較的大きな頭部に、中くらいの垂れ耳、そしてアーモンド型の目は、思慮深く優しい印象を与えます。
特に特徴的なのは、その豊かな口周りの皮膚がたるみ、独特の「だらしない」とも言える表情を作り出す点です。
このたるみは、彼らが吠える際に、首の血管を保護する役割も持っていたと考えられています。
また、眠っているときやリラックスしているときに見せる、どこかユーモラスで愛らしい表情は、多くの愛好家を魅了してやみません。
ピレニアン・マスティフの性格と気質

ピレニアン・マスティフは、その大きな体からは想像できないほど穏やかで優しい性格をしています。
家族に対しては深い愛情と忠誠心を示し、子供や他のペットとも良好な関係を築くことができます。
しかし、見知らぬ者に対しては警戒心を抱き、番犬としての本能を発揮することもあります。この「穏やかさと警戒心」のバランスが、ピレニアン・マスティフの魅力であり、飼育する上で理解すべき重要な点です。
彼らの独立心や、自らの判断で行動する牧羊犬としての気質も持ち合わせています。
穏やかで忠実な性格
ピレニアン・マスティフは、一般的に非常に穏やかで落ち着いた性格をしています。家族の一員として迎えられると、深い愛情と献身的な忠誠心を示します。
攻撃的な面はほとんどなく、普段は非常に友好的で優しい振る舞いをします。しかし、これは「臆病」とは異なり、彼らの自信の表れでもあります。
信頼する家族のそばでは安心してリラックスし、その大きな体で甘える姿は、飼い主にとって何よりも癒しとなるでしょう。
家族への愛情と番犬としての資質
この犬種は、自分の家族を「群れ」と認識し、その安全を守ることに強い責任感を持っています。
そのため、家族に対しては限りない愛情を注ぎ、子供に対しても非常に忍耐強く接することができます。
一方で、番犬としての資質も非常に高く、見慣れない人や物音に対しては警戒心を抱き、時に低い唸り声や威厳のある吠え声で侵入者を威嚇します。
これは、彼らが牧羊犬として培ってきた本能的な防衛本能であり、信頼できる番犬としての役割を十分に果たすことができます。しかし、適切な社会化と訓練が不可欠です。
他の犬や動物との関係
ピレニアン・マスティフは、適切な社会化がなされていれば、他の犬や猫などの動物とも比較的良好な関係を築くことができます。
特に子犬の頃から他の動物と触れ合わせる機会を多く持つことで、友好的な態度を学ぶことができます。しかし、大型犬としての力強さがあるため、遊びの際には注意が必要です。
また、彼らは牧羊犬として「群れを守る」という本能を持っているため、見知らぬ小動物や、逃げ出すものに対しては、追いかける本能が働くことがあります。
そのため、散歩時や他の動物との接触時には常にリードでコントロールすることが重要です。
ピレネー犬(グレート・ピレニーズ)との性格の違い
ピレニアン・マスティフとよく比較されるのが、同じくピレネー山脈原産のグレート・ピレニーズ(ピレニーズ)です。両犬種は見た目が似ていますが、性格には微妙な違いがあります。
特徴 | ピレニアン・マスティフ | グレート・ピレニーズ |
気質 | 比較的穏やかで落ち着いている。 より独立心が強く、自らの判断で行動する傾向。 見知らぬ者には警戒心が強いが、攻撃的ではない。 | 穏やかで優しく、感受性が豊か。 より家族に密着し、甘えん坊な一面も。 警戒心はあるが、フレンドリーな一面も持ち合わせる。 |
番犬性 | 非常に高い。威厳のある態度と低い声で侵入者を威嚇。 | 高い。吠えて警告することが多い。 |
自立性 | 高い。 | 中程度。 |
どちらも素晴らしい番犬であり家庭犬ですが、ピレニアン・マスティフはより自律的で、自身の判断で行動する傾向が強いと言えます。
ピレニアン・マスティフの飼い方と環境

ピレニアン・マスティフは大型犬であるため、飼育にはそれなりのスペースと、犬の特性を理解した飼い主の配慮が必要です。
十分な運動と適切な環境を整えることが、彼らが健康で幸せに暮らすために不可欠です。
室内飼いの場合でも、彼らが体を伸ばせる十分な広さのスペースを確保し、安全で快適な生活を送れるように工夫することが大切です。
また、彼らは寒さに強い一方で、暑さには弱いため、特に日本の夏は注意が必要です。
必要な運動量と散歩のポイント
ピレニアン・マスティフは大型犬ですが、非常に活発で動き回るタイプではありません。しかし、健康維持とストレス解消のためには適度な運動が不可欠です。
運動量
1日2回、各30分~1時間程度の散歩が目安です。ゆっくりと長距離を歩くことを好みます。
時間帯
暑い時間帯は避け、早朝や夕方の涼しい時間帯を選びましょう。
場所
公園や広い場所で、安全にリードを外して自由に歩かせる時間も設けると良いでしょう(ただし、安全が確保され、許可された場所で)。
注意点
大型犬ゆえに、成長期に過度な運動は骨や関節に負担をかける可能性があります。無理のない範囲で、成長に合わせて運動量を調整してください。
適切な飼育スペースと環境づくり
ピレニアン・マスティフはその大きな体格から、広々とした飼育スペースが必要です。
室内飼いの場合
犬が体を伸ばして快適に過ごせる十分な広さのリビングや寝室を確保しましょう。
滑りにくい床材を使用し、関節への負担を軽減します。フローリングにはカーペットを敷いたり、階段にはステップを用意するなどの工夫が効果的です。
落ち着いて休める場所(クレートや犬用ベッド)を用意しましょう。専用スペースは確保してあげてください。
屋外飼いの場合
頑丈で高さのあるフェンスで囲まれた広い庭が必要です。脱走防止のため、フェンスの設置には十分な配慮が必要です。
雨風をしのげる、大型犬用の頑丈な犬小屋を用意しましょう。
日中の日差しを避けられる日陰の場所を確保し、冬場は寒さ対策も重要です。
どちらの飼育方法を選ぶにしても、彼らが快適に過ごせる環境を整えることが、ストレス軽減と健康維持に繋がります。
暑さ・寒さ対策
ピレニアン・マスティフは厚い被毛を持つため、寒さには比較的強いですが、日本の高温多湿な夏は非常に苦手です。熱中症予防のため、以下の対策が必要です。
暑さ対策
室内:エアコンや扇風機を適切に使用し、室温を25℃以下に保ちましょう。
屋外:日中の外出は避け、涼しい時間帯に散歩しましょう。日陰の場所を確保し、いつでも新鮮な水が飲めるように準備してください。クールマットや冷却ベストなども有効です。
体調管理:呼吸が荒い、よだれが多い、ぐったりしているなどのサインが見られたら、すぐに涼しい場所に移動させ、獣医に相談してください。
寒さ対策
室内:極端な寒さは避け、快適な室温を保ちましょう。
屋外:頑丈な犬小屋に毛布やヒーターなどを活用し、寒さから保護しましょう。
季節に応じた適切な環境管理は、彼らの健康を守る上で非常に重要です。
ピレニアン・マスティフのしつけと社会化

ピレニアン・マスティフは賢く学習能力が高い犬種ですが、その大きな体と牧羊犬としての独立心から、子犬期からの適切かつ一貫したしつけと社会化が非常に重要です。
特に社会化は、彼らが穏やかで友好的な成犬に成長するために不可欠なプロセスです。大型犬であるがゆえに、問題行動が起こると飼い主の手に負えなくなる可能性もあるため、早めのトレーニング開始が望ましいです。
ポジティブ・リンフォースメント(褒めて伸ばす)を基本とし、根気強く取り組むことが成功の鍵となります。
子犬期の社会化の重要性
ピレニアン・マスティフの子犬期は、社会化を行う上で最も重要な時期です。
この時期にさまざまな経験をさせることで、成犬になってからの問題行動を予防し、穏やかで自信のある犬に成長させることができます。
人との触れ合い
子犬の頃からさまざまな年齢やタイプの人間(子供、高齢者、帽子をかぶった人など)に優しく触れ合わせ、肯定的な経験をさせましょう。
他の犬との交流
ワクチン接種後には、安全な場所で他の犬と交流させ、犬同士のコミュニケーションスキルを学ばせることが大切です。
さまざまな音や環境
日常生活の中で聞こえる音(掃除機、車の音など)や、さまざまな場所(公園、動物病院など)に慣れさせましょう。
これらの経験は、彼らが新しい状況に落ち着いて対処できるようになるために不可欠です。
基本的なしつけとコマンド
ピレニアン・マスティフのしつけは、子犬の頃から一貫して行うことが重要です。基本的なコマンドを教えることで、飼い主との信頼関係を築き、安全な共同生活を送ることができます。
「おすわり」「伏せ」「待て」
これらのコマンドは、興奮を抑えたり、安全を確保したりするために不可欠です。
「来い」
呼び戻しのコマンドは、万が一リードが外れた際などに犬の命を守るために非常に重要です。
「ヒール(横につけ)」
散歩中にリードを引っ張らないようにするための基本的なしつけです。
これらのしつけは、ポジティブ・リンフォースメント(ご褒美や褒め言葉)を使い、短時間で楽しく繰り返すことが効果的です。
大型犬特有のしつけの注意点
大型犬であるピレニアン・マスティフのしつけには、小型犬とは異なる注意点があります。
力への配慮
成犬になると非常に強力になるため、子犬のうちからリードコントロールや基本的な服従訓練を徹底することが重要です。
体格の理解
他の犬や人、物との接触時に、意図せずとも大きな力で相手に影響を与えてしまう可能性があることを常に意識し、細心の注意を払いましょう。
一貫性
飼い主全員が同じルールとコマンドを使用し、一貫した態度で接することが重要です。
忍耐
大型犬は精神的に成熟するまでに時間がかかることがあります。焦らず、根気強くしつけを続けることが大切です。
無駄吠えや噛みつきへの対処法
ピレニアン・マスティフは番犬としての本能を持つため、無駄吠えをすることもあります。また、子犬期には甘噛みなどが見られることも。
無駄吠え
吠える原因を特定し、それを取り除くことが第一歩です。吠える前に「静かに」などのコマンドを教え、成功したら褒めてご褒美を与えます。
過度な警戒心からくる吠えには、社会化をさらに進めることが有効です。
噛みつき
子犬の甘噛みには、噛んでも良いおもちゃを与え、人の手を噛んだら遊びを中断するなど、明確なルールを教えます。
成長してからも噛みつきが見られる場合は、専門家(ドッグトレーナーなど)に相談することを強くおすすめします。
噛みつきは、恐怖や不安、過度な興奮から来る場合もあるため、犬の気持ちを理解しようと努めることが大切です。
ピレニアン・マスティフの食事と健康管理

ピレニアン・マスティフは大型犬であるため、適切な栄養バランスとカロリー管理が非常に重要です。
特に成長期には、骨や関節の健康な発達をサポートするための質の高い食事が求められます。
また、大型犬に特有の病気のリスクもあるため、日々の健康チェックと定期的な獣医による診察が不可欠です。
健康的な体重を維持し、適切なケアを行うことで、彼らの寿命を延ばし、質の高い生活を送ることができます。
成長段階に合わせた食事の選び方
ピレニアン・マスティフの食事は、その成長段階に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。
子犬期(~1歳半頃まで)
大型犬の子犬用フードを選びましょう。急激な成長は骨や関節に負担をかけるため、高タンパク質・低カロリーで、カルシウムとリンのバランスが調整されたものが推奨されます。
少量ずつ数回に分けて与え、胃捻転のリスクを減らしましょう。
成犬期(1歳半頃~7歳頃まで)
成犬用の大型犬向けフードを選びます。活動量に合わせて給与量を調整し、過体重にならないよう注意しましょう。
関節の健康をサポートするグルコサミンやコンドロイチンが含まれたフードも良い選択肢です。
シニア犬期(7歳頃~)
消化しやすく、関節や腎臓の負担を軽減するシニア犬用フードに切り替えます。
食欲や活動量の変化に合わせて、獣医と相談しながら食事内容を調整しましょう。
注意すべき病気と症状(股関節形成不全、胃捻転など)
ピレニアン・マスティフは、大型犬に共通する特定の健康問題に注意が必要です。
股関節形成不全
遺伝的な要因と環境要因が絡み合い、股関節の発育に異常が生じる病気です。歩行の異常、痛み、運動したがらないなどの症状が見られます。早期発見と適切な管理が重要です。
胃拡張捻転症候群
大型犬に多く見られる緊急性の高い病気です。食後に大量のガスが胃にたまり、胃がねじれることで血液供給が遮断され、命にかかわります。食後の激しい運動を避け、食事を少量ずつ与えることでリスクを軽減できます。
肘関節形成不全
股関節形成不全と同様に、肘関節の発育異常です。
拡張型心筋症
心臓の筋肉が薄くなり、血液を全身に十分に送り出せなくなる病気です。
骨肉腫
大型犬に発生しやすい悪性の骨腫瘍です。
これらの病気の兆候が見られた場合は、速やかに獣医の診察を受けることが重要です。
日常の健康チェックとケア
日々の健康チェックは、病気の早期発見と予防に繋がります。
全身のチェック
目:目ヤニや充血がないか。
耳:汚れや匂い、炎症がないか。
鼻:湿っていて、異常な分泌物がないか。
口:歯周病や口臭がないか、歯茎の色は正常か。
被毛と皮膚:抜け毛、フケ、皮膚の赤み、かゆみ、しこりなどがないか。ノミやダニのチェックも忘れずに。
足:肉球の異常や爪の伸びすぎがないか。
排泄物:便や尿の状態(色、硬さ、回数)に異常がないか。
体重管理:定期的に体重を測定し、急激な増減がないか確認しましょう。
ブラッシング:抜け毛対策と皮膚の健康のために、週に数回はブラッシングを行いましょう。
シャンプー:必要に応じて行いますが、頻繁すぎると皮膚の油分を取りすぎてしまうため注意が必要です。
適切な体重管理
ピレニアン・マスティフにとって、適切な体重を維持することは関節の健康を保ち、さまざまな病気のリスクを軽減するために非常に重要です。
肥満のリスク:過体重は股関節形成不全などの関節疾患を悪化させ、心臓病や糖尿病のリスクも高めます。
痩せすぎのリスク:栄養不足は免疫力の低下や骨格の発育不良に繋がります。
管理方法
食事量の調整:与えるフードのパッケージに記載されている給与量を参考にしつつ、犬の活動量や体格に合わせて調整します。
おやつの制限:おやつは少量にとどめ、総カロリーの摂取量を意識しましょう。
定期的な体重測定:獣医と相談しながら、目標体重を設定し、定期的に測定することで、適正体重を維持できます。
運動の継続:適度な運動は、カロリー消費と筋肉維持に役立ちます。
ピレニアン・マスティフの平均寿命と長寿の秘訣

ピレニアン・マスティフの平均寿命は、大型犬としては比較的短い傾向にありますが、適切な飼育環境と健康管理によって、より長く健康な生活を送ることができます。
遺伝的な要因だけでなく、日々の食事、運動、そして愛情深いケアが、彼らの寿命と生活の質に大きく影響します。
シニア期に入ると、若い頃とは異なるケアが必要となるため、愛犬の変化に気づき、寄り添うことが大切です。
平均寿命と寿命を延ばすためのポイント
ピレニアン・マスティフの平均寿命は、一般的に10~12歳とされています。大型犬の中では標準的ですが、より長く健康に過ごしてもらうためには、以下のポイントが重要です。
質の高い食事
成長段階に合わせたバランスの取れた食事を与え、過剰な栄養摂取による肥満を避けましょう。
適度な運動
関節に負担をかけすぎない程度の適度な運動を継続し、筋肉量を維持しましょう。
定期的な健康チェック
少なくとも年に一度は獣医による健康診断を受け、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。
ストレスの少ない生活
安定した環境と愛情深い家族との触れ合いは、犬の精神的な健康に大きく寄与します。
適切な体重管理
肥満は関節疾患や心臓病のリスクを高めるため、常に適正体重を維持することが大切です。
口腔ケア
歯周病は全身の健康に影響を与えるため、日々の歯磨きや定期的な歯科検診も重要です。
シニア犬のケア
ピレニアン・マスティフがシニア期(7歳頃~)に入ると、体の変化に合わせたケアが必要になります。
食事の変更
消化吸収能力の低下や活動量の減少に合わせて、シニア犬用の消化しやすく、低カロリー・高タンパクなフードに切り替えましょう。
運動量の調整
関節への負担を考慮し、散歩の時間や内容を調整します。無理のない範囲で、短い散歩を複数回行うなど工夫しましょう。
関節のケア
グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントを獣医と相談して取り入れることも検討しましょう。
定期的な健康診断
シニア犬は病気のリスクが高まるため、半年に一度など、より頻繁な健康診断を受けることが推奨されます。
快適な環境
寝る場所を柔らかくしたり、滑りにくい床材に変えたりするなど、体の負担を軽減する工夫をしましょう。
認知症のサイン
徘徊、夜鳴き、反応の鈍化などが見られた場合は、獣医に相談しましょう。
ピレニアン・マスティフを迎え入れるには?

ピレニアン・マスティフを家族に迎え入れることは、素晴らしい経験となる一方で、その大型犬ゆえの責任も伴います。
信頼できるブリーダーを選ぶこと、子犬の健康状態をしっかり確認すること、そして何よりも生涯にわたって彼らを大切に育てる覚悟が必要です。
安易な気持ちで迎え入れるのではなく、十分な情報収集と準備をしてから決断することが、犬と飼い主双方にとっての幸せな共生に繋がります。
ブリーダー選びのポイント
ピレニアン・マスティフを迎え入れる際、信頼できるブリーダーを選ぶことは非常に重要です。
- 健康管理:親犬や子犬の健康状態が適切に管理されているか。
- 飼育環境:清潔で十分な広さのある環境で飼育されているか。
- 社会化:子犬たちが適切に社会化されているか(人や他の犬との触れ合いなど)。
- 情報提供:犬種に関する知識が豊富で、飼育に関するアドバイスや情報提供を惜しまないか。
- 見学の許可:親犬や子犬を直接見学できるか。
- 質疑応答:質問に対して誠実に答えてくれるか。
- アフターフォロー:迎え入れ後も困った時に相談に乗ってくれるか。
安易な衝動買いは避け、複数のブリーダーと比較検討し、信頼できるブリーダーから迎え入れるようにしましょう。
里親になるという選択肢
血統にこだわらないのであれば、保護施設や動物愛護団体を通じて里親になるという選択肢もあります。
メリット
- 多くの犬が新しい家族を必要としています。
- 成犬の場合、ある程度の性格やしつけの状況が分かっていることがあります。
- 避妊・去勢手術やワクチン接種が済んでいることが多いです。
注意点
- 過去の経験から、特定のトラウマを持っている場合もあります。
- 犬との相性を慎重に見極める必要があります。
- 時間をかけて犬と信頼関係を築く努力が必要です。
- 里親になることも、犬と飼い主双方にとって幸せな出会いとなる可能性があります。
子犬を選ぶ際の注意点
子犬を選ぶ際には、見た目だけでなく、健康状態や性格をしっかり確認することが重要です。
健康状態
- 目が澄んでいて、目ヤニや涙がないか。
- 鼻は湿っていて、鼻水が出ていないか。
- 耳の中は清潔で、匂いや汚れがないか。
- 被毛は艶があり、皮膚に異常がないか。
- 呼吸が正常で、咳やくしゃみをしていないか。
- 足を引きずっていないか、歩き方に異常がないか。
- 性格:
- 過度に臆病すぎたり、攻撃的すぎたりしないか。
- 兄弟犬や人に対して友好的か、好奇心があるか。
- 抱っこした際に、落ち着いているか。
可能であれば、複数回訪問して子犬の様子を観察し、ブリーダーから親犬の性格や健康状態についても詳しく話を聞きましょう。
ピレニアン・マスティフとグレート・ピレニーズの違い

ピレニアン・マスティフとグレート・ピレニーズは、ともにピレネー山脈をルーツとする大型犬であり、その外見から混同されることも少なくありません。
しかし、両者には明確な違いがあり、それぞれが異なる歴史的背景と性格特性を持っています。
これらの違いを理解することは、どちらの犬種が自分のライフスタイルに合うかを見極める上で非常に役立ちます。
防衛能力が高く、独立心が強い
家族のみ懐きやすい
警戒心が強く、吠えやすい
運動能力がとても高い
その他情報
原産地 | フランス |
犬種グループ | 2G:使役犬 |
大きさ | 大型 |
平均寿命 | 10歳~12歳 |
なりやすい病気 | 股関節形成不全,骨肉腫,胃拡張捻転症候群,熱中症 |
参考価格 | 30万円~40万円 |
被毛
抜け毛 | 多い |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | ホワイト,グレー,イエロー,ウルフカラー |
外見上の違い
ピレニアン・マスティフとグレート・ピレニーズは似ていますが、注意深く見るといくつかの外見上の違いがあります。
体格
ピレニアン・マスティフ:全体的に骨太で筋肉質、より重厚でがっしりとした印象。体高・体重ともにグレート・ピレニーズより大きい傾向があります。
グレート・ピレニーズ:ピレニアン・マスティフよりはやや細身で、優雅な印象。
被毛
ピレニアン・マスティフ:白を基調とし、濃い色の斑(マーキング)が入るのが一般的。被毛はより粗い。
グレート・ピレニーズ:純粋な白、またはクリーム色やグレーなどのパッチが入ることもあるが、白が主流。被毛はより柔らかく、ふわふわとした印象。
顔つき
ピレニアン・マスティフ:口周りの皮膚がたるみ、独特の「だらしない」表情が特徴。
グレート・ピレニーズ:口周りのたるみは少なく、よりすっきりとした顔つき。
性格と気質の違い
外見だけでなく、性格や気質にも違いが見られます。
独立性
ピレニアン・マスティフ:牧羊犬として自らの判断で行動してきた歴史から、より独立心が強く、自律的な傾向があります。
グレート・ピレニーズ:家族への依存度が高く、より甘えん坊で密着することを好みます。
警戒心と番犬性
ピレニアン・マスティフ:見知らぬものに対しては非常に強い警戒心を示し、威厳のある低い声で威嚇する番犬としての本能が高いです。
グレート・ピレニーズ:警戒心はありますが、友好的な一面も持ち合わせ、吠えて警告することが多いです。
両犬種ともに頑固な一面を持つことがありますが、ピレニアン・マスティフの方がより自分の意志を通そうとする傾向が見られることがあります。
歴史的背景と用途の違い
両犬種は同じピレネー山脈で生まれたものの、その歴史的背景と主な用途には違いがあります。
ピレニアン・マスティフ
主にスペイン側(アラゴン地方)で発展。家畜(羊、牛)をオオカミやクマなどの捕食者から「保護」する番犬・護衛犬としての役割がメイン。より攻撃的な捕食者に対抗するための、強靭な体格と強い警戒心が培われました。
グレート・ピレニーズ
主にフランス側で発展。家畜の「群れを誘導し、管理する」牧羊犬としての役割が強く、後に貴族の愛玩犬としても人気を博しました。より穏やかで従順な性格が求められました。
この歴史的背景の違いが、現在の両犬種の性格や気質に大きな影響を与えています。
まとめ:ピレニアン・マスティフとの幸せな共生のために
ピレニアン・マスティフは、その雄大な姿と穏やかで愛情深い性格が魅力の素晴らしい犬種です。
しかし、大型犬ゆえに飼育には広々としたスペース、十分な運動、そして何よりも子犬期からの適切な社会化としつけが不可欠となります。
彼らの歴史的背景や犬種特有の気質を理解し、愛情を持って接することで、生涯にわたる最高のパートナーとなるでしょう。
食事管理や健康チェックも怠らず、定期的な獣医の診察を受けることで、長く健康な日々を共に過ごすことができます。
ピレニアン・マスティフとの生活は、確かに大きな責任を伴いますが、それ以上の喜びと感動を与えてくれるはずです。
この記事が、ピレニアン・マスティフとの幸せな共生の一助となれば幸いです。
この記事の執筆者
nademo編集部
編集部
「いつまでも どこまでも」必要な情報を理解するだけではなく、心もお腹も満たされるような日々のために。
&nademo(アンドナデモ)のコンセプトをもとに、飼い主さんとペットが安堵できる時間を演出します。
※ 当コンテンツで紹介する商品は、実際に社内で利用した経験と、ECサイトにおける売れ筋商品・口コミ・商品情報等を基にして、nademo編集部が独自にまとめています。
※ 本記事はnademoが独自に制作しており、メーカー等から商品提供を受けることもありますが、記事内容や紹介する商品の意思決定には一切関与していません。
※ 記事内で紹介した商品を購入すると、売上の一部がnademoに還元されることがあります。
※ 監修者は掲載情報についての監修のみを行っており、掲載している商品の選定はnademo編集部で行っております。
※ 掲載している商品の順番に意図はなく、掲載の順番によってランク付けしているものではありません。