犬の病気・健康

犬が震える6つの原因とは?痙攣との違いや考えられる病気を解説

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震えている愛犬を見てドキッとした経験がある方は多いのではないでしょうか。

犬はさまざまな原因により震えることがあります。

そのため震えているとは言っても、それが危険な状態であるのか、様子見をしても良い状態であるのかは判断が難しいところ。

そこでこの記事では、犬の震えの原因や震えが現れたときに考えられる病気、そして対処法について解説していきます。

この記事の結論

  • 犬の震えと痙攣の違いは、意識があるかどうかが特に重要になる
  • 寒さや恐怖心によって震えることもあれば、痛みやストレスで震えることもある
  • 中毒症状や脳障害によって震えることがあるため、病気を疑う必要もある
  • 一時的なものであれば様子見をしても良いが、繰り返すならすぐ病院へ

三浦 優子

担当執筆者

三浦 優子

第一種動物取扱業(訓練)/犬の栄養管理士アドバンス/JKC愛犬飼育管理士

自身の飼育するビーグル犬が噛み犬でしつけに大変苦労した経験から長年の憧れだったドッグトレーナーの許可を2022年に取得、ドッグトレーナーとして起業。
現在は出張訓練をメインとし、自身の犬、生徒さんの犬と訓練競技やノーズワークなどに取り組む。

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犬の震えと痙攣の違い

犬の震えと痙攣は、一見しただけでは区別がつきにくい場合があります。いざというときに慌てないように、その違いについて把握しておきましょう。

震えと痙攣の大きな違いは、意識です。

震えているときの愛犬は意識がはっきりしており、自身の意志で歩いたり、座ったりして体の動きをコントロールできる状態にあります。

対して痙攣している愛犬は意識がはっきりしておらず、周囲の状況や飼い主の声掛けなどもよく分からない状態です。

痙攣は筋肉がこわばることによって発生するので、身体を自由に動かすこともできません。

愛犬が震えているのか、痙攣しているのか判断しかねる場合にはおいでやお座りなどの声掛けをして、反応できるかどうかを確認してみましょう。

反応が見られた場合は震え、反応できない場合は痙攣している可能性が高くなります。

いずれの場合も動物病院で獣医師の診断を仰いだ方が症状が特定でき、安心できるでしょう。

犬が震える原因

犬はさまざまな原因により、震えることがあります。

寒さで震える犬を見かけたことがある方は多いかと思いますが、このような気候的な原因やストレス・恐怖心・警戒心など。

心理的要因によって起こる震え、加齢や学習経験なども震えの症状の原因となることがあります。

痛みが原因となっている震え場合は病気の兆候の可能性がありますので、注意深く観察して対処する必要があります。

寒さ

愛犬が震える原因として最も身近で多く見かけるのは寒さによるものです。

私たち人間も含め、生き物は極寒の環境にさらされると震えることによって血流を良くし、体温を上昇させて低体温症を防ごうとします。

これは「シバリング」と呼ばれる正常な生理現象で、寒さによって全身の筋肉が小刻みに震えます。

寒くて震えている場合、身体が温まると震えは治まるので、震えの要因が寒さなのかどうかを見極めるのは比較的容易です。

痛み

愛犬が病気や外傷によって強い痛みを感じると震えが生じることがあります。

胃のむかつきなど軽度の体調不良でも震えることもありますし、かなり強い痛みを感じて震えることもあります。

震え以外に、食欲がない、元気がないなどの症状が出ていないか詳しく観察してください。

痛みの要因には重篤な病が隠れていることもありますので、必要があれば通院して獣医師の診断を仰ぎましょう。

恐怖心・警戒心

恐怖心や警戒心を抱いた場合にも震えることがあります。

恐怖や警戒の対象は雷や地震、大雨などの自然現状、他の犬、人間の子供、バイクや車、自転車、動物病院への通院などさまざまで、愛犬の年齢や経験値によっても違いや変化があります。

愛犬が恐怖や警戒心を感じる対象物の多くは、持って生まれた遺伝的なものというより学習によって発生すると言われています。

恐怖心や警戒心が吠えや唸り、その他の問題行動に発展する場合もあります。

そのような場合はプロのドッグトレーナーに相談して対処すると良いでしょう。

ストレス

恐怖心や警戒心とのはっきりとした違いが明確ではありませんが、愛犬はストレスを感じたときも震えることがあります。

家族が増えたり減ったり、同居犬が増える、または自宅の引っ越しや犬自身の入院など、生活環境が大きく変化したときなどは自律神経のバランスが崩れ、ストレスを抱えやすくなります。

日頃の愛犬の様子をしっかりと観察し、恐怖心や警戒心同様、ストレスの要因を特定して取り除いたり、慣らしたりしてあげることが大切です。

高齢の筋力低下

愛犬も人間同様、高齢になると筋肉量が減少し、筋力の低下から立ち上がったり座ったりなどの動作時にその部位が震えるようになります。

筋力が低下するとなぜ震えに繋がるのかは、未だに解明できていないそうです。

犬は重い頭を支えるために前足に重心がかかり前足への意識が強いので、筋力の低下は後ろ足が顕著となるのが一般的です。

愛犬が若い頃から後ろ足の筋肉の維持・増強を意識して過ごすようにしましょう。

ゆるい下り坂の上り下りや、バランスボールなどを使った筋力トレーニングなども筋力維持に有効といわれています。

構ってもらえた経験

愛犬が震えるたびに駆けつけて声をかけ、なだめたり抱き上げたり過剰に心配したりすることを繰り返していると、人間に構って欲しいときに故意に震えるようになるといいます。

犬は賢いので自分にとって得になる経験はしっかりと覚えていて、再体験するためにその行動を繰り返すようになります。

このような行動に気付いたときは構ったりせず、無視するのが良いでしょう。

また、愛犬の震えや異変に気付いた時には過剰に反応することで、愛犬がより不安になってしまうこともあるため、落ち着いて寄り添うように心がけましょう。

犬の震えが見られる病気

特に注意しなければいけないのが、病気が原因で犬が震えている場合です。

病気の種類や状態によっては即刻動物病院で診断を受けたほうが良い場合もありますので、震えの症状が現れやすい病気について把握しておきましょう。

中毒症状・低血糖

中毒

誤飲などにより毒性のある物質が犬の体内に取り込まれると、腎臓や肝臓に障害が発生し尿毒症や肝性脳症、低血糖などの状態となり、震えなどの神経症状となって現れることがあります。

玉ねぎ、チョコレート、キシリトールなど犬が中毒を起こしやすい食品や人間用の薬などは管理を徹底し、愛犬の誤飲を防ぐようにしましょう。

室内の観葉植物なども犬にとって毒性のある種類が多くありますので、犬が届かない範囲に置くなど、注意するようにしてください。

低血糖

犬の血液は酸素やタンパク質、糖分といった、生きていくために必要不可欠な成分を運搬しています。

その中でも糖分は、脳神経系への大変重要なエネルギー源ですので、血液中の糖量が極端に減少すると低血糖状態となり、愛犬の活動性が急激に低下するだけでなく、生命の危険にさらされる可能性もあるのです。

低血糖症の初期症状としては元気が無くなるほか、食欲の低下、ふらつき、震え、消化器が機能しないことによる下痢や嘔吐です。

低血糖の状態がさらに深刻になると、後肢の麻痺や痙攣、脱力や昏睡などの神経症状が現れ、大変危険な状態となります。

身体が小さく消化器が未発達である子犬は低血糖症に罹りやすいので、食事回数をこまめに調整するなど慎重に管理してあげましょう。

そして、万が一愛犬が低血糖症になってしまったら、砂糖水やガムシロップ、ブドウ糖水などの糖分をまず補いますが、神経症状が出ている場合などは誤嚥性肺炎などに注意してください。

まずは動物病院に通院して獣医師の診断を仰ぎ、適切な治療を行いましょう。

脳障害

てんかん

犬において最もよく発生するのが突発性のてんかんです。

脳内での異常な電気活動によって発症するといわれており、症状としては、全身の痙攣、四肢ががくがくと震える、筋肉の硬直などの発作が、意識が無い状態で起こります。

発作を止めることはできませんので、慌てずにタオルなどで周囲を囲うなどして怪我をしないようにし、発作が治まったら早急に獣医師の診察を受けましょう。

動物病院で検査を行っても原因が特定できないことが多いのがてんかんです。

基本的に予防ができないといわれているてんかんですので、発作が続く場合には抗てんかん薬の内服によって発作の回数や頻度をおさえていく治療が行われます。

脳腫瘍

犬の脳腫瘍は10万頭に約14頭の発生率といわれている稀有な病気で、早期発見や治療が難しいとされています。

脳腫瘍の初期症状としては、元気がない、ずっと寝ている、ものにぶつかったりふらつく、震えなどの運動機能障害などです。

その他にも眼振や大量のよだれが出るなど、個体によってさまざまな神経症状があらわれます。

もっともよく見られる症状は痙攣発作ですが、痙攣は脳腫瘍だけでなく他の脳の異常であったり、認知症や前庭疾患などの別の病の可能性もあります。

脳腫瘍は外科的に治療できる可能性もありますので、自己判断せず、まずは動物病院で獣医師の診断を受けましょう。

水頭症

水頭症とは、脳脊髄液(脳内液)の流れが何らかの理由によって妨げられ、脳内に蓄積されることによって脳室の圧力が上昇し、さまざまな神経症状となってあらわれる病気です。

好発犬種は以下です。

小型犬、また短頭種などがあげられます。

脳障害により、ふらつきや震え、てんかんのような発作といった運動機能障害が現れます。

内臓疾患

腎不全

腎不全が進行し腎機能が著しく低下すると、本来尿として排泄されるばずの毒素が体内に停滞し、尿毒症となってしまいます。

すると、筋肉や神経が損害を受け、痙攣などの神経症状が起き、その前兆として震えることがあります。

腎不全は症状となって現れるまでに時間がかかる病気ですので、こまめに血液検査を行うなどの健康チェックが重要です。

肝不全

肝臓は体内のアンモニアなどの有害物質を解毒する臓器です。肝臓の機能が低下すると解毒されない有害物質が脳に達し神経症状を引き起こします。

これを肝性脳症といい、よだれを流す、ふらつき、痙攣の前兆である震えなどが症状としてあらわれます。

予防することは難しいので、定期的な健康診断で早期発見し、内科的治療または外科的治療で対処していきます。

椎間板ヘルニア

背骨と背骨の間でクッションの役割を担っているのが椎間板。この椎間板が何らかの衝撃などではみ出すと脊髄を圧迫して痛みが生じ、椎間板ヘルニアとなってしまいます。

好発犬種は以下です。

軽度の椎間板ヘルニアでは、歩きたがらない、痛みによる震えなどの症状が認められますので、重症化しないうちに獣医の診断を仰ぎましょう。

重度まで進行してしまうと、激しい痛みや後肢の麻痺で歩行や排泄ができなくなってしまうこともあります。

愛犬の震えが危険なものか判断する方法

愛犬の震えはさまざまな要因によりますが、様子を見ていて良いのか、動物病院に行くべきなのか迷うことも多いでしょう。

心配であればまずは動物病院に行くことをおすすめしますが、中には一時的な要因による震えで過度な心配は必要ない場合もあります。

寒さやストレスからくる一時的なものであれば様子見

心配な愛犬の震えですが、一時的なもので治まる場合は過度に心配せず様子を見てみましょう。

寒さや環境変化などに起因するストレス、期待的な感情によるものは一時的なものなので様子を見て治まれば心配しなくても良いでしょう。

また、高齢になったことによる筋力低下による震えも、様子を見て筋トレや室内環境を整えるなどの対処が求められます。

繰り返し見られたり、併発している症状が見られるなら動物病院へ

愛犬の震えが一定期間観察しても治まらず、断続的に震える、または震え以外の症状が併発している場合には様子見は危険です。

痙攣に発展するなどの症状が見られた場合には様子を見ることはせず、すぐに動物病院へ行きましょう。

重篤な内臓疾患などの場合、一刻を争う状態かもしれません。

安易に判断することはせずに獣医師の診断を仰ぐことをおすすめします。

震えているときにはその状態・時間を記録する(動画など)

愛犬の震えはさまざまな要因に起因して起こります。

病気による震えなのかそうでないのか、判断が難しい場合もありますので、愛犬に震えの症状が見られたらまず記録することをおすすめします。

スマートフォンなどが手元にあれば、震えている愛犬を状態がよく分かるように動画で撮影し、発生した時間や震えている状態の持続時間などを併せて記録しておきます。

動物病院で獣医師に状態を説明する際に、動画と記録があれば正確に状態を把握してもらえ、適切な治療が行われるでしょう。

この記事の執筆者

三浦 優子

執筆者情報

三浦 優子

ライター/第一種動物取扱業(訓練)/犬の栄養管理士アドバンス/JKC愛犬飼育管理士

現在はビーグル犬2頭を飼育。
犬好きが高じたことと、自身の飼育するビーグル犬が噛み犬でしつけに大変苦労した経験から長年の憧れだったドッグトレーナーの許可を2022年に取得、ドッグトレーナーとして起業。
現在は出張訓練をメインとし、自身の犬、生徒さんの犬と訓練競技やノーズワークなどに取り組む。
自身のビーグル犬は訓練に向いた犬種ではないが、訓練競技会において理事長賞などの賞歴多数。

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