尿を始めとした排泄物はさまざまな情報を持っており、健康状態を判断するひとつの方法になっています。
尿量が少ないよりは多い方が良いというイメージがあるものの、多すぎるとそれはそれで問題です。
もし愛犬に多尿が見られるようであれば、それなりの理由があり、改善しなければいけない状況だとも考えられます。
尿量が多くなる理由に加えて、多すぎると危険な理由なども知り、愛犬の長寿につなげていきましょう。
この記事の結論
- 一般的に犬の正常な尿量は、体重1kgあたり20~40mlとされている
- 多尿は大量の水を飲んだというケースを除き、腎機能の低下が疑われる
- 適切な飲水量や栄養バランスの整った食事が、日常的にできる健康管理
- 特に高齢になると腎機能が低下しがちなので、早期発見が重要になる
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犬の多尿を判断する基準

犬の正常な尿量は、一般的に体重1kgあたり1日20~40mlとされています。これを超える場合、多尿と判断されることがあります。
たとえば体重が5kgの子であれば100~200mlが正常な尿量であり、体重が10kgの子であれば200~400mlが正常な尿量にあたります。
少なすぎるともちろん水分不足であることがわかりますが、反対に尿量が多すぎることも健康上、良くはありません。
また、多尿とともに水を大量に飲む多飲の症状が見られることも多いため、尿量と飲水量の変化に注意が必要です。
犬の多尿が起こる仕組み

多尿は、腎臓が体内の水分バランスを調整できなくなった結果として起こります。
通常、腎臓は血液をろ過し、不要な物質とともに適切な量の水分を尿として排出します。
しかし、何らかの原因で腎機能が低下したり、ホルモンの異常が生じたりすると、尿の濃縮がうまくできず、排出量が増えることがあります。
飲水量が多くなれば尿量も多くなりますが、飲水量が多くなっている原因も考えなければいけません。
犬の多尿の原因

多尿の原因には複数ありますが、一時的なものと継続してしまうものとがあります。
一時的なものは生理現象としてあり得る、ただ単純に多くの水を飲んだというケースです。
ですが、これ以外の場合には体の不調も考えられるため、様子見をするわけにもいきません。
大量の水を飲んだ場合:一時的な生理的要因によるもの
犬が一時的に大量の水を飲むことは、多尿の原因になります。
特に暑い日や運動後など、体温調節のために自然と飲水量が増えることがあります。
また、乾燥した環境にいる場合も喉が渇きやすくなり、水を多く摂取することが一般的です。
このような生理的な要因での多尿は一時的なものであり、体調が整うと通常の尿量に戻ります。
しかし、過度に水を飲み続ける場合は、ストレスや心理的な要因、あるいは潜在的な健康問題の可能性があるため、注意が必要です。
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加齢:高齢になると腎機能が低下しやすい
犬が高齢になると、腎臓の機能が徐々に低下し、尿を濃縮する能力が衰えます。
その結果、体が必要以上に水分を排出しようとし、多尿の症状が現れることがあります。
慢性腎不全は高齢犬によく見られる疾患のひとつで、初期段階では特に目立った症状がないため、飼い主が気づきにくいこともあります。
高齢犬の多尿を放置すると、脱水や体力の低下につながる可能性があるため、定期的な健康診断を受けることが重要です。
適切な食事管理や水分補給を心がけることで、腎機能の低下を遅らせることができます。
食事の影響:塩分や水分の多い食事を摂取した場合
食事内容も犬の多尿に影響を与えることがあり、特に塩分を多く含む食事を摂取すると、体内のナトリウム濃度が上昇し、犬はそれを薄めるために水を多く飲むようになります。
その結果、尿量が増加することになります。
また、水分を多く含むウェットフードやスープ状の食事を頻繁に与えると、尿の排出量が一時的に増えることがあります。
健康な犬であれば一時的なものですが、腎臓に負担をかける可能性があるため、適切な食事バランスを保つことが重要です。
ホルモン異常:副腎皮質機能亢進症や糖尿病など
ホルモンの異常も多尿の原因となります。
糖尿病の犬は血液中の糖が過剰になり、それが尿とともに排出されることで水分の損失が増えます。
そのため、犬は喉の渇きを感じて大量の水を飲み、結果的に多尿となります。
また、副腎皮質機能亢進症(別名:クッシング症候群)の場合、副腎から過剰にコルチゾールが分泌され、腎臓の働きに影響を及ぼすことで多尿を引き起こします。
これらのホルモン異常は、適切な治療を受けないと進行するため、早期発見が重要です。
腎疾患:慢性腎不全や尿崩症など
腎疾患は犬の多尿の最も深刻な原因のひとつです。
慢性腎不全では腎臓の機能が低下し、尿を濃縮する能力が失われるため、薄い尿を大量に排出するようになります。
一方、尿崩症は抗利尿ホルモンの分泌や作用に異常が生じることで発症し、水分の再吸収がうまくいかなくなり、大量の尿が出る病気です。
これらの疾患は進行すると命に関わる可能性があるため、早期の診断と治療が不可欠です。
薬の副作用:ステロイドや利尿剤の影響
一部の薬剤も犬の多尿を引き起こすことがあり、特にステロイド剤は副腎ホルモンに影響を与え、多尿や多渇を引き起こすことが知られています。
利尿剤は尿の排出を促進する作用があるため、使用中は尿量が増えることが一般的です。
これらの薬剤を投与する際は獣医師の指示に従い、必要な場合には適切な調整を行うことが重要です。
薬の影響で異常な多尿が続く場合は、早めに獣医師に相談することをおすすめします。
犬の多尿時に考えられる病気

犬の多尿の原因が、仮に病気だったとしたときに考えられるものがいくつかあります。
どんな病気であるのかは獣医師の診断が必要ですが、覚えておくと予防する方法としても把握しておけるでしょう。
糖尿病
糖尿病は、インスリンの分泌不足や作用低下により血糖値が上昇し、尿中に糖が排出されることで多尿を引き起こします。
犬は喉の渇きを感じ、大量の水を飲むようになります。
多飲多尿に加えて食欲の増加や体重減少、白内障などを引き起こすこともあります。
放置すると体重減少や全身の衰弱を引き起こすため、血糖値の管理が重要です。
副腎皮質機能亢進症
副腎皮質機能亢進症(別名:クッシング症候群)は、副腎から過剰にコルチゾールが分泌されることで発症する病気です。
このホルモンの影響で腎臓の働きが変化し、代表的な症状として多尿や多渇、皮膚が薄くなったり呼吸が早くなるなどの症状が見られます。
進行すると筋力低下や皮膚の異常も発生するため、ホルモン調整が必要です。
慢性腎不全
慢性腎不全とは、腎臓の機能が徐々に低下し、尿を濃縮できなくなる病気です。
尿量が増加する一方で体内の老廃物が排出されにくくなり、全身状態が悪化します。
多飲多尿の他にも毛並みが悪化したり、体重減少やふらつきなども見られるようなことがあります。
一度発症すると完治することはないため、特に多く見られる高齢犬は注意しながら早期診断と食事療法が重要です。
尿崩症
尿崩症は抗利尿ホルモンの異常により、腎臓が水分を十分に再吸収できなくなる病気です。
薄い尿が出てしまったり、多尿や脱水、場合によっては痙攣や意識障害につながることもあります。
そのため、大量の尿が排出され、犬は頻繁に水を飲みます。適切なホルモン補充療法が必要です。
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は犬の中でも女の子にのみ発生する病気で、子宮内に膿が溜まり、多尿・多渇の症状が現れます。
初期症状は無症状であることが多い病気でもあり、症状が進行すると食欲の低下や多飲多尿などが見られるようになります。
放置すると命に関わる病気であるため、日頃からの健康診断と症状が見られた際には早急な治療が必要です。
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犬の多尿の予防法

生理現象である多尿を止める必要はありませんが、病気の予防は長寿のために必要不可欠です。
普段から自宅でできる予防法もいくつかありますので、愛犬の健康のために確認しておきましょう。
適切な飲水管理
犬の多尿を防ぐためには、適切な飲水管理が重要です。水分摂取量が多すぎると腎臓に負担をかけ、多尿の原因となる可能性があります。
ただし、過度に水を制限するのは逆効果で、脱水や尿路結石のリスクを高めるため、適量の水を確保することが大切です。
一般的に犬の1日の適正な水分摂取量は体重1kgあたり50~100mlとされています。
異常に水を飲む場合は、糖尿病や腎疾患などの病気の可能性も考えられるため、早めに動物病院で診てもらいましょう。
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バランスの取れた健康的な食事
犬の健康を維持し、多尿を防ぐためには、栄養バランスの取れた食事が不可欠です。
特に腎臓や膀胱の健康を考慮した食事を選ぶことで、尿の生成量を適正に保つことができます。
塩分の多い食事は過剰な水分摂取を引き起こし、多尿の原因となるため注意が必要です。
また、適度なタンパク質やミネラルを含むフードを選び、添加物が少ないものを与えることが理想的です。
食事の質を見直すだけでも日常的な健康維持が可能になるため、適切な食事選びで愛犬の健康をサポートしましょう。
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定期的な健康診断
多尿の原因には腎臓病、糖尿病、ホルモン異常などの病気が隠れていることがあります。そのため、定期的に健康診断を受けることが大切です。
特に高齢の犬は腎機能が低下しやすいため、血液検査や尿検査を定期的に行うことで早期発見・治療につながります。
異常な飲水量や頻尿が見られた場合は、すぐに獣医師に相談し、病気の有無を確認しましょう。
健康診断を習慣化することで、愛犬の健康を守ることができます。
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運動と適切な体重管理
適度な運動を行い、健康的な体重を維持することも、多尿の予防につながります。
肥満になると糖尿病や腎臓病のリスクが高まり、多尿の症状が現れることがあります。日常的に散歩や遊びを取り入れ、運動不足を防ぎましょう。
また、適切なカロリー管理を行い、体重が増えすぎないよう注意することも重要です。
健康的な生活習慣を維持することで、内臓機能を正常に保ち、多尿を防ぐことができます。
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犬の多尿の治療法

多尿の治療は、多尿になっている原因によって治療法が変わります。
どのような治療法が選択されるかは、獣医師の判断によるものなので、参考として覚えておくと良いでしょう。
糖尿病の場合:インスリン治療と食事療法
犬の糖尿病による多尿の治療では、インスリン治療と適切な食事療法が不可欠です。
糖尿病はインスリンの不足や機能低下によって血糖値が異常に高くなり、腎臓が余分な糖を尿として排出するため、多尿が起こります。
治療の中心となるのはインスリン注射で、獣医師の指導のもと、適切な量を毎日投与することが重要です。
また、血糖値を安定させるために、食事管理も徹底する必要があります。
高繊維・低炭水化物のフードを選び、食事の時間や量を一定にすることで、血糖値の急激な変動を防ぎます。
定期的な血糖値測定と健康診断を行いながら、適切な治療を続けることが大切です。
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副腎皮質機能亢進症の場合:ホルモンバランスを整える薬物療法
副腎皮質機能亢進症は、副腎から過剰なコルチゾールが分泌される病気で、多尿や多飲が主な症状として現れます。
治療の基本は、ホルモンバランスを整える薬物療法です。一般的に用いられるのは「トリロスタン」などの副腎のコルチゾール産生を抑制する薬で、適切な投与量を見極めながら治療を進めます。
場合によっては、副腎や脳下垂体に腫瘍があることが原因となるため、腫瘍の外科手術や放射線治療が必要になることもあります。
また、副腎皮質機能亢進症は慢性疾患のため、治療後も定期的な血液検査やホルモン値のチェックを行い、薬の効果や副作用を管理することが求められます。
腎不全の場合:食事療法や薬物療法による症状管理
腎不全は、腎臓の機能が低下して老廃物を適切に排出できなくなる病気で、多尿のほかに食欲不振や体重減少などの症状が見られます。
治療の中心は食事療法と薬物療法による症状管理です。腎臓に負担をかけないよう、低タンパク・低リン・適度なナトリウムを含む腎臓用療法食を与えることが推奨されます。
脱水を防ぐためには、皮下点滴や静脈点滴を行うこともあります。
腎不全は進行性の病気のため、定期的な血液検査と尿検査を行いながら、症状の悪化を防ぐための適切なケアを継続することが重要です。
尿崩症の場合:適切なホルモン補充療法
尿崩症は、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌不足や腎臓のADH反応異常によって引き起こされ、多尿や過度な喉の渇きを引き起こします。
治療法は、尿崩症のタイプによって異なります。中枢性尿崩症の場合は、「デスモプレシン」という合成ADHを投与することで症状を管理できます。
一方、腎性尿崩症の場合は、利尿薬を使用して尿の生成量を調整します。
どちらのタイプも定期的な尿量測定や血液検査を行いながら、適切な薬の投与量を維持することが重要です。
また、水分補給を適切に行い、脱水を防ぐことも大切です。
多尿になりやすい犬種

実は多尿になりやすい犬種というのも存在し、多尿になる原因を知ることがとても重要です。
犬種ごとにこうした特徴があるから多尿になる可能性がある、と理解しておけば予防することも可能だからです。
多尿は必ずしも特定の犬種だけで見られるということではありませんが、予防意識を持ってケアするためにも確認しておくことをおすすめします。
糖尿病になりやすい犬種
糖尿病は特定の犬種で発症しやすい傾向があります。
特にミニチュア・シュナウザー、トイ・プードル、ダックスフンド、ビーグル、サモエドなどはリスクが高いとされています。
これらの犬種は遺伝的にインスリンの分泌異常を起こしやすく、また肥満になりやすいことも糖尿病の発症を助長します。
特に中高齢(7歳以上)の犬で発症しやすく、初期症状として多飲多尿、食欲亢進、体重減少などが見られます。
糖尿病は早期発見と適切な治療が重要であり、リスクの高い犬種では定期的な血糖値測定や健康診断を受けることが推奨されます。
副腎皮質機能亢進症になりやすい犬種
副腎皮質機能亢進症は、特にプードル(トイ・ミニチュア)、ミニチュア・シュナウザー、ビーグル、ボクサー、ダックスフンドなどで発症しやすいとされています。
この病気は副腎または脳下垂体に腫瘍ができることによって発症し、過剰なコルチゾールが分泌されることで多尿多飲、腹部膨満、皮膚の薄化、脱毛、筋力低下などの症状を引き起こします。
特に8歳以上のシニア犬での発症が多いため、高齢期には年に2~3回の健康診断が欠かせません。
また、この病気は進行がゆっくりで見逃されやすいため、早期診断のためにホルモン検査や画像診断を行うことが重要です。
腎疾患になりやすい犬種
腎疾患はキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、シー・ズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ミニチュア・シュナウザー、ゴールデン・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグなどで発症しやすいとされています。
これらの犬種は慢性腎不全や遺伝性の腎疾患にかかりやすい傾向があります。
特に高齢になると腎機能が徐々に低下し、多飲多尿や食欲不振、嘔吐や体重減少などの症状が現れます。
腎疾患は早期発見が難しいため、定期的な血液検査と尿検査を行い、腎機能のチェックをすることが重要。
また、低タンパク・低リンの食事管理を行い、腎臓への負担を減らすことも予防に役立ちます。
まとめ
犬の多尿は、単なる生理的現象である場合もありますが、重大な病気のサインである可能性もあります。
愛犬の尿量や飲水量に異常を感じた場合は、様子見をするような余裕はありません。
早期発見・早期治療が早期回復につながるため、早めに動物病院を受診することが大切です。
この記事の執筆者
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