犬によってその特徴はさまざまで、元気な子がいれば大人しい子もいて、それぞれに良さがあります。
だからこそ同じ犬種はもちろん、違った犬種とも一緒に暮らしたい、と思う人も多いのではないでしょうか。
そんなときに出てくる問題のひとつが、多頭飼いに適応できる犬種なのかどうか。
愛犬家にとっては魅力的な多頭飼いですが、向いていない犬種や特徴もあらかじめ理解しておきましょう。
この記事の結論
- 攻撃性のある子や独占欲が強い子、極端に臆病な子は多頭飼いに向かない
- 犬種では日本犬やミニチュア・ピンシャー、ペキニーズなどが該当する
- 多頭飼いのメリットは、社会性が育まれて寂しい時間が少なくなること
- 多頭飼いのデメリットは、相性が悪いと大変で使う時間や出費が増えること
目次
多頭飼いに向いていない犬種の特徴

たくさんの愛犬たちに囲まれて生活する、というのは愛犬家にとって夢見る理想的な生活のひとつではないでしょうか。
もちろん多頭飼いに成功しているご家庭もあれば、中には多頭飼いをしたことによって生活が苦しくなってしまうご家庭もあります。
まずは多頭飼いに向いていないとされる犬の特徴について、詳しく見ていきましょう。
- 興奮しやすく、攻撃性がある
- 独占欲が強い
- 依存度が高く甘えん坊
- 極端に臆病
- 年齢差が大きい
日本で人気の小型犬などは社交性が高く、多頭飼いに向いている犬種も多く存在します。
ですが、これらのような特徴を持っている犬種については、他の犬と一緒に暮らすことは難しいでしょう。
興奮しやすく、攻撃性がある
よく興奮状態になってしまう子や、攻撃性がとても高い子については、他の犬と一緒に暮らすことは難しいです。
トレーニングによって、必要に応じた抑制はできるかもしれませんが、本能的に攻撃性が高い犬種も存在します。
場合によっては他の犬を攻撃してしまい、病気やケガの原因になることも考えられます。
飼い主さん自身もケガをしないためにもそうした子は徹底したトレーニングが必要で、その上でどれだけコントロールできるかが重要になります。
独占欲が強い
独占欲は攻撃性にも繋がってくるところがあるため、飼い主さんを独占したい子は多頭飼いに向いていません。
もちろんこの独占欲は、食事のときや遊んでいるときにも出てくるもの。ドッグフードを独り占めしてしまう子や、遊んでいるおもちゃを無理やり他の子から奪ってしまうなど、注意すべきポイントがいくつか存在します。
喧嘩もじゃれ合い程度ならば問題ありませんが、横取りされた子は必要な食事を摂取できなかったりするので、ルールを覚えさせなければいけません。
依存度が高く甘えん坊
食事やおもちゃなどに対する依存度が低くても、飼い主さんに対する依存度が高すぎるのも問題。他の子に構いすぎてしまうと、寂しさから他の犬への敵意に変わることもあります。
仮に上手く分散してコミュニケーションを取っていたとしても、愛情が分散することに不満を感じる子はいます。
甘えん坊であることは飼い主さんにとって嬉しいものですが、依存度が高すぎるのも問題と言えるでしょう。
極端に臆病
そもそも臆病だという犬種は少なくありませんが、極端に臆病な場合は多頭飼いがストレスになります。
静かな場所で落ち着きたい性格の子や、他の犬との社交性が低い子は注意が必要。
お互いに臆病な性格であれば適度な距離感を保って生活することができますが、社交的な子だとどちらかのストレスにあってしまうこともあるのです。
多少の臆病なら良いですが、臆病すぎると自分の身を守る目的で攻撃に変わることもあります。
年齢差が大きい
犬は人間よりも早く歳を重ねていくため、なかなか気付きづらいポイントかも知れません。ですが、年齢差というのは犬たちにとっても重要な部分です。
子犬と老犬を一緒にお迎えするとなったら、元気すぎる子犬と穏やかに暮らしたい老犬が同じ空間に介在することになります。
10歳以上の歳が離れてしまうとお互いのストレスになりますので、年齢差は大きくても5歳ほどにしておくのがおすすめです。
多頭飼いに向いていない代表的な犬種

前述したような特徴のある子が先住犬としている場合、多頭飼いはおすすめできません。
多頭飼いに向かない可能性のある犬種がそのように言われるのには、それぞれの犬種が持つ固有の気質や歴史的背景が関係しています。
その上で、上記に該当するような特徴を持っていることが多い犬種についても、詳しくご紹介します。
日本犬
次のような日本犬は、古き良き時代の日本らしい性格を持った犬種が多いと言われています。
警戒心や自立心が高く、マイペースであることも多い犬種。パートナーとしては優秀ですが、多頭飼いとなるとまた別の話です。
全ての犬種がそうというわけではありませんので、多頭飼いができる子も存在します。
北海道犬

野生動物の猟犬として改良されてきた歴史があり、非常に勇敢で飼い主に対する忠誠心が強い一方で、独立心が高く、縄張り意識と警戒心が非常に強い犬種です。
特に自分や家族以外の犬や人に対しては強い警戒心を示し、攻撃的に出る傾向があるため、他の犬との共同生活には不向きな場合があります。
他の犬と群れて行動するよりも、信頼できるパートナー(飼い主)と行動することを好む気質が、多頭飼いにおける協調性の構築を難しくします。
飼い主に従順で忠実
飼い主さん以外には警戒心が強い
警戒心が強く吠えやすい
持久力がある
その他情報
原産地 | 日本 |
犬種グループ | 5G:原始的な犬・スピッツ |
大きさ | 中型 |
平均寿命 | 13歳~15歳 |
なりやすい病気 | 白内障,熱中症,コリーアイ症候群(コリー眼異常),皮膚疾患,変性性脊髄症 |
参考価格 | 20万円前後 |
被毛
抜け毛 | 多い |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | 胡麻,虎,赤,黒,黒褐色,白 |
秋田犬

忠実で勇敢な性格で知られますが、縄張り意識が非常に高く、見知らぬ犬に対しては強い警戒心を示す傾向があります。
自分のテリトリーに他の犬が入ってくることを嫌い、時に威嚇したり攻撃的な態度をとったりすることがあります。
また、頑固でプライドが高い一面があり、他の犬に対して支配的に振る舞うことも少なくありません。
元々闘犬としての一面も持っていたため、特に同性間での争いが起こりやすく、多頭飼いには犬同士の相性や慎重な管理が不可欠となります。
穏やかで賢く忠誠心が強い
飼い主に懐きやすい
警戒心が強く吠えやすい
多くの運動量を必要とする
その他情報
原産地 | 日本 |
犬種グループ | 5G:原始的な犬・スピッツ |
大きさ | 大型 |
平均寿命 | 10歳~12歳 |
なりやすい病気 | 股関節形成不全,鼓腸症,ブドウ膜皮膚症候群,眼瞼内反症 |
参考価格 | 10万円~40万円 |
被毛
抜け毛 | 多い |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | 赤,白,虎,胡麻 |
甲斐犬

山間部での猟犬として独自の進化を遂げた犬種で、飼い主に対しては非常に忠実で愛情深いですが、警戒心が強く縄張り意識が高いです。
見知らぬ人や他の犬に対しては容易に心を開かず、強い警戒心から攻撃的に出ることがあります。
特定の一人に深く懐く「一代一主」の気質を持つ個体が多く、他の犬との間に明確な上下関係や縄張り争いが生じやすい傾向があります。
他の犬との協調性を築くのが難しいため、多頭飼いには不向きとされることが多いです。
冷静沈着で勇敢な性格
飼い主さん以外には懐きづらい
警戒心が強く、吠えやすい
運動量がとても豊富
その他情報
原産地 | 日本 |
犬種グループ | 5G:原始的な犬・スピッツ |
大きさ | 中型 |
平均寿命 | 14歳~16歳 |
なりやすい病気 | アレルギー性皮膚炎,外耳炎,白内障 |
参考価格 | 20万円前後 |
被毛
抜け毛 | 多い |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | 黒虎,赤虎,虎 |
紀州犬

日本犬の中でも猟犬としての性質を強く残しており、非常に勇敢で気が強い犬種。縄張り意識と警戒心が非常に高く、自分のテリトリーを守ろうとする意識が強いです。
他の犬に対しては強い警戒心を示し、容易に受け入れない傾向があります。一度信頼した飼い主には非常に従順ですが、他の犬に対しては頑固で譲らない一面を見せることがあります。
単独で行動することを好む気質が強く、他の犬と群れて行動することにストレスを感じやすいため、多頭飼いには向かないとされる場合が多いです。
忍耐強く、従順な性格
飼い主さん以外には懐きづらい
警戒心が強く、吠えやすい
スタミナがとても豊富
その他情報
原産地 | 日本 |
犬種グループ | 5G:原始的な犬・スピッツ |
大きさ | 中型 |
平均寿命 | 12歳~15歳 |
なりやすい病気 | アトピー性皮膚炎,アレルギー性皮膚炎,甲状腺機能低下症,心室中隔欠損症 |
参考価格 | 12万円~16万円 |
被毛
抜け毛 | 多い |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | 白,赤,胡麻 |
柴犬

日本犬の中で最も飼育頭数が多いですが、独立心が強く、媚びないクールな性格で知られています。
縄張り意識が高く、自分のスペースや物に他の犬が近づくことを嫌がる傾向があります。
また、気が強く頑固な一面もあり、気に入らない相手にははっきりと拒絶反応を示し、威嚇したり攻撃的になったりすることがあります。
他の犬と積極的に交流することを好まない個体が多く、一頭で飼われることに満足する傾向が強いため、多頭飼いには向かないとされることが多いです。
主人に忠実で警戒心が強い
飼い主には忠実だが、独立心もある
警戒心から多くなることもある
元々猟犬であったため、運動能力は高い
その他情報
原産地 | 日本 |
犬種グループ | 5G:原始的な犬・スピッツ |
大きさ | 小型 |
平均寿命 | 12歳~15歳 |
なりやすい病気 | 食物アレルギー性皮膚炎,アトピー性皮膚炎,膿皮症 |
参考価格 | 10万円~40万円 |
被毛
抜け毛 | 多い |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | 胡麻,赤,赤胡麻,黒褐色,黒胡麻,白 |
四国犬

山地での猟犬として活躍してきた犬種で、野性味が強く非常に勇敢で忠実。警戒心が強く、縄張り意識も非常に高いです。
家族以外の人間や他の犬に対しては強い警戒心を示し、攻撃的に出る傾向があります。
非常に気が強く、一度決定した優劣を覆すのが難しいため、他の犬との関係構築が困難な場合が多いです。
単独で行動することを好む気質が、他の犬との協調性を難しくするため、多頭飼いには慎重な検討が必要となります。
飼い主に忠実で勇敢
飼い主さん以外には懐きづらい
警戒心が強く吠えやすい
運動能力は高い
その他情報
原産地 | 日本 |
犬種グループ | 5G:原始的な犬・スピッツ |
大きさ | 中型 |
平均寿命 | 10歳~12歳 |
なりやすい病気 | アレルギー性皮膚炎,副腎皮質機能低下症,認知症,角膜炎 |
参考価格 | 15万円~20万円 |
被毛
抜け毛 | 多い |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | 胡麻,赤,黒褐色 |
ミニチュア・シュナウザー

元気で遊び好きですが、同時に非常に気が強く、頑固で自己主張が強い一面を持っています。他の犬に対してマウンティングをしたり、自分の優位性を示そうとしたりする傾向が見られます。
また、聴覚が優れており、些細な物音にも敏感に反応して吠えやすく、これが他の犬のストレスとなることもあります。
食べ物や大好きなおもちゃに対する独占欲も強く出ることがあり、多頭飼いではそうしたものを巡って争いになるリスクがあります。
適切な社会化としつけを徹底しても、生まれ持った気質から他の犬との共同生活に不向きな個体も少なくありません。
勇敢であり警戒心も強い
愛情深く従順
無駄吠えをしてもしつけはしやすい
多くはないが、適度なお散歩が必要
その他情報
原産地 | ドイツ |
犬種グループ | 2G:使役犬 |
大きさ | 小型 |
平均寿命 | 12歳~14歳 |
なりやすい病気 | レッグ・カルベ・ペルテス病,進行性網膜萎縮症(PRA),若年性白内障,尿路結石症 |
参考価格 | 30万円~40万円 |
被毛
抜け毛 | 少ない |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | ブラック,ホワイト,ソルト&ペッパー,ブラック&シルバー,ウィートン |
ミニチュア・ピンシャー

小柄ながら非常に勇敢でエネルギッシュ、そして警戒心が非常に強い犬種です。見知らぬ人や他の犬に対して果敢に立ち向かおうとする気質があり、攻撃的な行動に出やすい傾向があります。
特に自分よりも大きな相手や弱い立場の相手に対して支配的に振る舞ったり、威嚇したりすることがあります。
この強い気性と縄張り意識の高さから、他の犬との穏やかな共同生活を送ることが難しく、常に緊張状態に置かれてしまう可能性があります。
多頭飼いをする場合は、犬同士の相性だけでなく、徹底したトレーニングと管理が不可欠となります。
自尊心が強く、気性も荒い
飼い主以外にはあまり懐かない
見知らぬ人や犬に吠えやすい
大型犬に近い運動能力と運動量
その他情報
原産地 | ドイツ |
犬種グループ | 2G:使役犬 |
大きさ | 小型 |
平均寿命 | 12歳~16歳 |
なりやすい病気 | 淡色被毛脱毛症,レッグ・カルベ・ペルテス病,パターン脱毛症 |
参考価格 | 30万円前後 |
被毛
抜け毛 | 少ない |
毛質 | シングルコート |
毛色 | ディアー・レッド,レディッシュ・ブラウン,ダーク・レッド・ブラウン,ブラック&タン,チョコレート&タン |
ペキニーズ

プライドが高く独立心が強い犬種で、特定の飼い主に深い愛情を示しますが、他の犬に対しては無関心か、時に威圧的な態度をとることがあります。
気が強く頑固な一面もあり、自分のペースを乱されることを嫌い、気に入らない相手には唸ったり噛みついたりすることがあります。
他の犬との積極的な交流を好まない傾向があり、自分の時間を大切にするため、多頭飼いにおいては他の犬との衝突やストレスの原因になりやすいです。
小型犬ですが、その気質から多頭飼いには不向きとされる場合があります。
温和でマイペースな性格
飼い主さん以外に懐きにくい
吠えることが少ない
活発ではないので、多くの運動量は必要ない
その他情報
原産地 | 中国 |
犬種グループ | 9G:愛玩犬 |
大きさ | 小型 |
平均寿命 | 12歳~15歳 |
なりやすい病気 | 膝蓋骨脱臼,白内障,短頭種気道症候群,椎間板ヘルニア,幽門狭窄 |
参考価格 | 20万円〜40万円 |
被毛
抜け毛 | 多い |
毛質 | ダブルコート |
毛色 | ホワイト,ブラック,フォーン,パーティー,クリーム,レッド |
多頭飼いに向かない犬を多頭飼いする際の事前準備

多頭飼いをするならば、いくつかの事前準備を行っておくようにしましょう。「多頭飼いができるスペース、金銭的な余裕、相性」に加えて、先住犬のケアも必要になります。
それぞれの子がストレスなく生活できるスペース
相性の良さはもちろんのこと、仮に上手くいかなかったとしたらそれぞれ異なる部屋で過ごすことになるかもしれません。
そんなときにストレスなく生活できるようなスペースがないと、喧嘩が絶えなくなってしまう…なんてことも。
先住犬にとっては新しい犬が来ることに対するストレスもありますし、新しく迎える子は新しい環境へのストレスもあります。
双方の細かなケアが必要になりますので、時間と空間を確保してから迎えるようにするのがおすすめです。
突然の出費にも耐えられる金銭的余裕と時間的余裕
多頭飼いをするということは、それだけ出費が増えるということでもあります。
単純な倍計算ではありませんが、それでも出費が倍以上になるという計算で、金銭的余裕を持っておきましょう。
「満足に食事を与えることができない、治療を受けさせてあげられない」ということがないように。
また、普段のお世話など、1匹ずつの性格に合わせてあげることも大切なため、実際には倍以上の時間を割く必要があります。
そのため、今まで以上に愛犬を優先できる体力や時間的余裕があるかも考えておきましょう。
多頭飼いに向かない犬の多頭飼いを成功に導くポイント

多頭飼いを成功させるためには事前準備がとても大事で、前述の通りのポイントを要チェックしておきましょう。
その上で、実際に愛犬同士の相性を確認する必要がありますし、迎え入れてからもケアが大切。成功させるために考えておきたいポイントをいくつかまとめてみました。
迎え入れ前に何度か顔を合わせてみる
事前準備ができてから迎え入れまでの間には、何度か顔を合わせてみるようにしておくと安心です。
先住犬と迎え入れる子の相性を確認するには、最終的には一緒に暮らしていく必要があります。しかし、最初の段階で相性が悪ければ楽しく暮らしていくのは難しくなります。
そのため、迎え入れの前にできれば何度か顔を合わせてみましょう。この時点で相性が悪ければ、再検討する必要もあります。
居住スペースを広く確保し、最悪の場合に個々の部屋を分けられる
基本的には一緒に生活することで相手のことを知り、多少の喧嘩も含めて仲良くなっていくものです。
しかし、どうしても相性が悪い場合、同じ空間で生活していくのは苦しいものがあります。
だからといって手放すことはできません。そのためにも、別々の部屋で生活ができる、という空間を作っておくのが良いでしょう。
寝床になるケージはそれぞれ別で確保しながら、最悪の場合には部屋ごと分けられるようにしておくと安心です。
体のサイズはできる限り近い子にしておく
じゃれあって喧嘩のように見えることもあるかと思いますが、体のサイズが違いすぎると一方的な攻撃になってしまう可能性もあります。
できる限りのリスクを排除するため、体のサイズは同じぐらいの子を新たに迎え入れるのが適切だと言えます。
大型犬と超小型犬では大型犬の力が勝ってしまうものなので、超小型犬にとってはリスクでしかありません。
愛情表現や使う時間は平等にする
新たに愛犬をお迎えすると、どうしてもその子に付きっきりになることがあるでしょう。
最初こそ仕方のないときもあるかもしれませんが、これが続くと先住犬にとってはストレスでしかありません。
必要なときには時間をかけてあげることも大切ですが、基本的には平等に愛してあげることがストレスを軽減する重要な方法です。
愛情表現はもちろんのこと、個々にかけてあげる時間を平等にし、同じだけ愛してあげてください。
多頭飼いに向かない犬と暮らす際の注意点

続いて多頭飼いをする際に注意しておきたいことをまとめました。多頭飼いにおいては飼い主さんのイメージ通りにいかないこともあるので、周りの失敗談なども聞いてみるといいですよ。
治療費は高額になりがち
ドッグフードやおもちゃ、ケージなどの生活必需品については、ある程度の計算ができます。
しかし、近年では価格が上昇傾向にある犬の治療費などは、想定できない金額になることも考えられます。
ペット保険に加入しておくことである程度の補償はあるかもしれませんが、全額が補償になるプランは多くありません。
大病でなければ数万円程度の治療で済むこともありますが、場合によっては数百万円という金額になることもあります。
コミュニケーションを平等にする
新しく迎えた愛犬は、家に慣れてもらうまで特に気をつけますよね。ですが先住犬にとって、自分に向けられていた愛情や気配りが突然少なくなると、ストレスや不満に繋がってしまいます。
一方への深すぎる愛情は多頭飼いの失敗に繋がるため、平等にコミュニケーションをとって生活しましょう。
また、犬同士が仲良くなることはとても良いことですが、依存しすぎてしまうと、一緒にいない時や、将来どちらかが先に亡くなったときに大きなストレスを抱えてしまいます。
そのため、犬同士を一緒にばかりせず、飼い主さんが1匹ずつと1対1で向き合う時間をとり、愛犬の絆を深めることも大切です。
先住犬はしつけを徹底しておく
犬をお迎えする上で、しつけは必要不可欠。自分自身を守るだけでなく、飼い主さんに降りかかるトラブルを防ぐこともできます。
先住犬のしつけができていない状態で新しくお迎えすると、一緒にしつけをしなければならず、より大変になるでしょう。
先住犬がしつけを覚えてくれていると、愛犬同士でコミュニケーションをとって、ルールを教えてくれます。
しかし、相性次第ではトイレの失敗やイタズラなど、問題行動が増えることもあるため注意が必要です。
また、愛犬同士のコミュニケーションは、明らかに喧嘩をしている場合を除き、基本は犬同士に任せて見守りましょう。
去勢・避妊手術を検討しておく
多頭飼いの崩壊を防ぐためにも、欠かせないのが去勢・避妊手術を終わらせておくということ。この手術を終えていないままでは、望まない妊娠・出産を迎えてしまうことにもなります。
犬の場合、妊娠期間は約60日~65日と非常に短く、気付いたときには出産間近だったということもあり得ます。
また、去勢・避妊手術をすることには以下のようなメリットもあります。
- 発情期のストレスを軽減できる
- マーキング行為を軽減できる
- 病気を予防することができる
これらのメリットと同時に、手術時の全身麻酔によるリスクや太りやすくなるなど、デメリットも存在します。最終的にはかかりつけの獣医師さんなどと相談し、判断するのが良いでしょう。
犬の多頭飼いにおける問題行動への対策

多頭飼いにおいて、犬同士の関係性がうまくいかない場合や、ストレスが溜まってしまうことは少なくありません。
そうした問題行動が見られた際には、適切な対策を講じることが重要です。以下に、具体的な対策をご紹介します。
犬同士の喧嘩やストレスが見られる場合の具体的な仲裁方法
犬同士が喧嘩を始めたり、強いストレスサイン(唸る、威嚇する、震えるなど)が見られたりした場合、飼い主は冷静に対応することが最も重要です。感情的に大声を出したり、慌てて犬の間に入ったりすると、かえって状況を悪化させる可能性があります。
軽度の緊張であれば、少し様子を見ることもありますが、エスカレートしそうな兆候が見られたら、速やかに介入が必要です。
仲裁する際は、直接手を使わず、大きな物音を立てて犬の注意をそらす、おもちゃやフードを投げて気を紛らわせる、リードを引いて距離をとるなどの方法を試みてください。
それでも収まらない場合は、毛布などで犬の間に物理的な遮蔽物を作ったり、安全を確保した上で一方の犬を別の部屋に移動させたりして、一時的に引き離します。
仲裁後もすぐに一緒にせず、それぞれの犬が落ち着く時間を与えることが肝心です。常に飼い主が冷静沈着に対応することで、犬たちは安心して指示に従うようになります。
それぞれの犬が安心して過ごせるスペース作りの工夫
多頭飼いでは、それぞれの犬が他の犬から邪魔されずにリラックスできる「自分だけの安全な場所」を確保することが非常に重要です。
リビングや各部屋に、個別のケージ、クレート、または快適なベッドを用意し、それぞれの犬にとって安心できる場所に設置しましょう。
これらの場所は、犬がいつでも自由に利用でき、そこで休んでいる間は他の犬や人間に干渉されないというルールを家族全員で共有し徹底します。
食事の時間をめぐる競争やストレスを防ぐために、食事場所も複数用意し、犬同士が顔を合わせずに落ち着いて食べられるように離れた場所に設置することが推奨されます。水飲み場も同様に複数箇所に設置すると良いでしょう。
このように個別の安心できるスペースがあることで、犬たちは他の犬との関係に疲れたり、ストレスを感じたりした際に、心穏やかに休息することができます。
飼い主の接し方
多頭飼いを円滑に進めるためには、飼い主の接し方が非常に重要です。すべての犬に対して平等に愛情を注ぎ、それぞれの犬の個性や要求に応じたスキンシップやコミュニケーションの時間を設けることが大切です。
特に新しい犬を迎えた際は、先住犬の気持ちに配慮し、ご飯をあげる順番や散歩に行く順番、声をかける順番などを常に先住犬優先にすることで、先住犬の安心感を保ちます。これにより、先住犬が新しい犬に対して不要なライバル心やストレスを感じるのを軽減できます。
また、犬同士が良い関係性を築いている場面では過度に介入せず、温かく見守る姿勢も必要です。
一方で、問題行動が見られた際には毅然とした態度で適切に対応し、飼い主が群れのリーダーであることを示すことが重要です。
飼い主が安定した態度で接し、犬たちが安心して頼れる存在であることで、犬たちは互いの存在を受け入れ、調和の取れた共同生活を送ることができるようになります。
新しい犬を迎える際の先住犬へのケア

多頭飼いを始めるにあたり、既に家族の一員である先住犬が新しい犬をスムーズに受け入れられるかは非常に重要なポイントです。
先住犬への適切なケア、新しい犬との対面方法、そしてその後の接し方について、具体的なステップと注意点を以下に示します。
新しい犬を迎える前に:先住犬のための事前準備
新しい犬を迎えることを決めたら、お迎えする数週間前から先住犬の生活環境やルーティンを大きく変えないように注意しましょう。
新しい犬が使う予定のベッドやケージ、食器などを事前に用意し、先住犬にそれらの存在や匂いに慣れてもらう機会を作ることは有効です。
また、新しい犬を迎えた後も先住犬が「自分の時間が減った」と感じないよう、普段から行っているスキンシップや散歩、遊びの時間をこれまで通り、あるいは少し増やして大切にしてください。
可能であれば、獣医師に相談し、先住犬の健康状態を確認したり、多頭飼いを始める上でのアドバイスをもらったりすることも安心に繋がります。
先住犬が精神的に安定した状態で新しい家族を迎えられるように、環境面と精神面の両方からしっかりとサポートを行うことが、スムーズな多頭飼い開始の鍵となります。
慎重な初対面を:安全な対面ステップと注意点
新しい犬と先住犬の初めての対面は、犬同士の関係性の始まりを左右する重要な瞬間です。お互いの縄張り意識が強く働かないよう、自宅ではなく、庭や公園などの中立の場所で行うのが最も推奨されます。
初めはリードをしっかりとつけ、お互いの姿が見える少し離れた場所から存在を認識させることから始めましょう。
犬たちが落ち着いていられるか、緊張や警戒、攻撃的なサインが出ていないかなどを注意深く観察し、問題がなければゆっくりと距離を縮めていきます。いきなり自由に触れ合わせるのではなく、最初は数分程度の短い時間から始め、徐々に一緒にいる時間を増やしていくことが大切です。
お互いに友好的なサイン(尻尾を振る、リラックスした表情など)が見られたら、優しく褒めてあげましょう。
決して焦らず、それぞれの犬のペースに合わせて慎重に進めることが、良好な関係を築くための秘訣です。少しでも問題行動が見られたらすぐに引き離し、無理強いは絶対にしないでください。
多頭飼育開始後:先住犬と新しい犬へのケアと接し方
新しい犬との共同生活が始まったら、先住犬への特別な配慮を決して怠らないようにしましょう。
ご飯、おやつ、大好きなおもちゃ、そして飼い主からの愛情表現など、あらゆる場面で常に先住犬を優先することで、先住犬が「自分は大切にされている一番の存在だ」という安心感を得られるようにします。
それぞれの犬と個別に触れ合う時間を作ることも非常に重要です。新しい犬だけでなく、先住犬とも一対一での散歩や遊びの時間を定期的に設けることで、それぞれの犬との信頼関係を維持・強化することができます。
犬同士の軽度のじゃれ合いや社会化のためのやり取りには過度に介入せず見守ることも必要ですが、エスカレートしそうな争いには冷静に、安全を確保した上で速やかに仲裁に入ります。
すべての犬に平等な愛情を注ぎつつも、先住犬の立場を尊重し、それぞれの犬の個性やその日の様子に応じた柔軟な対応を心がけることが、多頭飼いを成功させ、すべての犬が幸せに暮らせる環境を作る鍵となります。
多頭飼いに向いている犬かどうかを判断する方法

結局のところ、多頭飼いに向いているかどうかは、実際にその環境にならないと判断は難しいです。
そのため、犬友達などの愛犬同士を会わせてみて、どんな反応であるか確認するのが良いでしょう。
保護犬をお迎えする場合にはトライアル期間などもあるため、先住犬との相性を確認することもできます。
無理な多頭飼いは絶対に避けて、愛犬同士が仲良く健康的に過ごせる環境を作ってあげましょう。
犬の多頭飼いを断念した場合の選択肢

犬の多頭飼いは、適しているかどうかをしっかりと検討したうえで、どうすべきかを判断しなければいけません。そのため、場合によっては断念する、という決断をとることもあるでしょう。
それは先住犬のことを守るためでもあり、新しく来る予定であった子を守るためとも言えるため、きっと正しい判断なのでしょう。
そんなときにできる選択肢としては、多頭飼いではなく、単独飼育のメリットを再確認したり、愛犬との関わり方を再確認すると良いです。
単独飼育のメリットを再確認する
多頭飼いを断念することは、決してネガティブなことではありません。一頭の犬に集中して愛情を注ぎ、その子の個性やニーズに合わせたケアをすることで、より深く強い絆を築くことができます。
経済的な負担や時間的制約も少なく、ストレスなく愛犬との時間を満喫できるでしょう。改めて単独飼育がもたらす心のゆとりや、愛犬との密なコミュニケーションの機会を大切にしてください。
一頭との生活を豊かにするためのヒント
多頭飼いをしないと決めた場合でも、愛犬の生活をより豊かにする方法はたくさんあります。
例えば、さまざまな場所への散歩に連れて行く、ドッグランで他の犬と交流させる、アジリティやディスクドッグなどのドッグスポーツに挑戦する、高度なしつけや芸を教えるなど、愛犬との新しい楽しみを見つけることができます。
また、知育玩具を取り入れたり、家でできるマッサージを覚えたりすることで、愛犬との絆を深め、満足度を高めることが可能です。
多頭飼いに代わる犬との関わり方
もし「もっと犬と関わりたい」という気持ちがあるのなら、多頭飼い以外にも選択肢はあります。
例えば、保護犬や保護猫のボランティアに参加し、一時預かりやシェルターでの世話に携わることで、多くの動物たちを助けることができます。
また、ドッグカフェやイベントに足を運び、他の犬の飼い主と交流を深めるのも良いでしょう。犬関連の資格取得を目指して、犬の専門知識を学ぶことも、新たな喜びにつながります。
必要に応じた専門家への相談
もし多頭飼いを断念する過程で、先住犬との関係性や自身の気持ちの整理が難しいと感じた場合は、一人で抱え込まず専門家に相談することも大切です。
ドッグトレーナーや行動学の専門家、場合によってはカウンセラーが、状況に応じた具体的なアドバイスや心のサポートを提供してくれるでしょう。
専門家の意見を聞くことで、現状を客観的に把握し、より良い選択をするための手助けとなります。
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