犬の病気・健康

【獣医師監修】犬の去勢・不妊(避妊)手術の必要性と費用感

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犬を迎え入れるとき、もしくは迎え入れて数年経過後、去勢・避妊手術はいつ行えばいいのか、そもそも手術する必要があるのか悩んでいる方は多くいるでしょう。

結論をお伝えすると、去勢・避妊手術の最終判断は飼い主さんに委ねられ、手術を行うことは愛犬にとってプラス面もマイナス面もあります。

この記事では、犬の去勢・避妊手術とはどういったものなのか、どのようなメリットやデメリットがあるのか解説します。

また、手術にかかる費用や注意点についてもご紹介していきます。

この記事の結論

  • 去勢・不妊(避妊)手術は必ずしも必要ではないが、健康面を考慮するなら施術が望ましい
  • 手術をしておくことの最大のメリットは、特有の病気を予防できること
  • デメリットは麻酔のリスクや肥満になりやすいこと
  • 去勢・不妊(避妊)手術をするのは生後6か月~8か月頃が望ましい

石村 拓也

監修者

石村 拓也

シリウス犬猫病院院長

東京農工大学農学部獣医学科を卒業後、横浜市内動物病院にて2年、赤塚犬猫病院にて6年勤務。
2017年3月、東急東横線元住吉駅から徒歩2分の場所にシリウス犬猫病を開業。

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目次

犬の去勢・不妊(避妊)手術とは

男の子の場合、成長とともにお腹の中の睾丸(こうがん)が陰嚢(いんのう)という袋におりていきます。

陰嚢の頭側(少し上の皮膚)を切開します。陰嚢を切ることはほぼありません。

女の子の場合、一般的には卵巣と子宮を摘出することによって生殖能力をなくします。

これによって妊娠しないようにしますが、卵巣のみを摘出する獣医師もいます。

手術時間は麻酔時間込みで以下が目安です。

手術内容手術時間入院状況
去勢手術約30分~40分半日入院
避妊手術約1時間~1時間半1~2泊入院
※翌日の診察が可能な場合には半日入院可となるケースもある

異常がなければ男の子の場合は当日、女の子の場合は1泊入院後に退院するのが一般的です。

去勢・不妊(避妊)手術をしないとさまざまな病気になるリスクがある

男の子も女の子も去勢・避妊手術をしないことで、さまざまな病気になるリスクが潜んでいます。

ただしこれは可能性の話であって、去勢・避妊手術をしないと必ず病気になるということではありません。

病気の種類については後述しますが、中には生命に関わる病気になることも。

病気になるかならないかは、普段の生活や食生活も大きく影響してきます。

愛犬の健康を第一に考えるなら手術を検討するのが望ましい

去勢・避妊は狂犬病の予防接種のように義務付けられていないため、必ず手術が必要というわけではありません。

そのため手術をするかしないかは、飼い主さんの判断次第ということになります。

大切な愛犬に麻酔をしたりメスをいれることは非常に心苦しいもの。

しかし、去勢・避妊をすることで得られるメリットは多くあり、特に男の子や女の子特有の病気を予防できる効果は大きいと言えるでしょう。

人間にも同じことが言えますが、健康に生きていくためには病気にかからないことが重要です。

愛犬に健康なまま長生きしてもらうためにも、去勢・避妊手術を検討することをおすすめします。

犬の去勢手術のメリット

ここからは、男の子が去勢手術をするメリットについてお伝えしていきます。

手術を検討する際の判断材料としてお役立てください。

病気を予防できる

去勢手術で最も大きなメリットが男の子特有の病気を予防できること。具体的には以下の病気です。

精巣腫瘍(せいそうしゅよう)精巣が腫瘍化すること。
前立腺肥大 (ぜんりつせんひだい)前立腺が肥大することにより、さまざまな症状を引き起こす。
肛門周囲腺腫(こうもんしゅういせんしゅ)ホルモン依存性の腫瘍で、出血や悪臭に繋がることがある。
会陰(えいん)ヘルニア肛門周囲の筋肉の隙間から、臓器が飛び出す病気。

これらの病気は主に高齢で引き起こされる症状と言われており、悪化すると命に関わることもあります。

去勢手術をすることにより、愛犬を病気のリスクから守ることが期待できます。

望まない繁殖を防げる

昔は外で犬を飼う家庭がほとんどだったため、気がついたら愛犬が妊娠していたということが普通にありました。

現在は室内で飼うことが増えたことから、昔ほど望まない妊娠は減ったと言えます。

しかし多頭飼いの場合は、気づかないうちに妊娠していたというケースは珍しくはありません。

また、ドッグランでよその飼い主さんと話が盛り上がってしまい、知らぬ間に避妊手術をしていない女の子と交尾をして迷惑をかけてしまうことも考えられます。

去勢手術をすることで、あらゆる場面での望まない繁殖を防ぐことができます。

ストレス軽減が期待できる

去勢していない男の子は発情期の異性に対して交尾欲求が強くなったり、気持ちが不安定になることがあります。

室内飼いが基本的な飼い方となっている以上、簡単に異性に出会えないというのもストレスの原因になってしまいます。

去勢手術をしてあげることで、「発情期でも交配できない、気持ちが落ち着かずイライラする」といったストレスを軽減できます。

マーキング行為の減少が期待できる

男の子が電柱や壁などに足をあげておしっこをする行為のマーキング。「この場所は自分の縄張りだ」ということを、ほかの犬にアピールするための行動です。

マーキングは外に限らず、室内や車内でしてしまうことがあるため、愛犬を連れてお出かけしづらい状況になるかもしれません。

去勢手術をすることによって、マーキング行為の減少が期待できます。

しかし、すでにマーキング癖がついている場合や、ストレスが原因でマーキングをする場合は去勢手術での改善は難しいでしょう。

マウンティング行為の緩和が期待できる

マウンティング行為はほかの犬や人、物に対して前足でしがみついて自分の腰を振る行為のことを指します。

遊んでほしいという気持ちの現れであることもありますが、上下関係の確認、ストレスを発散していることもあり、女の子の場合でも見受けられる行為です。

去勢手術をすることで、マウンティング行為の緩和が期待できますが、必ずしもしなくなるということではありません。

去勢後もドッグランなどでほかの犬に対してマウンティングすることは考えられるので、飼い主さんがしっかりとしつけてあげることが大切です。

犬の去勢手術のデメリット

続いて、去勢手術のデメリットを見ていきましょう。

去勢手術は必ずやるべき手術ではありません。義務でもありません。

しかし、メリットとデメリットを比較することで、愛犬にとってベストな選択が見えてくるでしょう。

全身麻酔によるリスクがある

去勢手術では愛犬に全身麻酔をすることになるため、不安になる飼い主さんは多くいるでしょう。

当然、動物病院ではきちんと術前検査を行ったうえで安全に配慮して手術は行われますが、それでも全身麻酔によるリスクはゼロと断定するのは厳しいもの。

これについては、人間の場合でも同様のことが言えます。

現代の麻酔は安全性が高いですが、わずかながらリスクがあることを認識して去勢手術をするか判断する必要があるでしょう。

太りやすくなる

去勢手術をした後は、性ホルモンが減少することにより1日に必要なカロリーも減少します。

そのため手術前と同じ食事量を与えると、食事で摂取したエネルギーが消費エネルギーを上回って太ってしまうことも。

手術後は、飼い主さんがフードのコントロールをしてあげることが必須になります。

今では去勢後の犬に適したフードも販売されているので、術後に獣医師に相談してフードの切り替えを検討するのもおすすめです。

また、おやつを与える回数を減らしたり、散歩や遊びなど十分な運動をする時間を確保して、愛犬が健康的な毎日を送れるように心がけてください。

毛質や毛色が変わることがある

去勢手術後に、ホルモンバランスの変化が原因で毛質や毛色が変わることがあります。

ミニチュア・ダックスフンドによく起こりやすいと言われており、毛づやが悪くなったり毛がフワフワになることがあるようです。

まれなケースではありますが、心配であれば獣医師に相談してみるといいでしょう。

子孫を残すことが望めなくなる

去勢手術は精巣が入っている睾丸を摘出するため、異性を妊娠させることはできません。つまり愛犬の子孫を残してあげることはできなくなるということです。

摘出した睾丸は二度と戻すことはできませんので、もし仮に将来、愛犬の子が欲しいと考えたときにも実現しません。

将来的に愛犬の子供を望むのであれば、子供ができた後に去勢手術を行えるよう犬の年齢や体力を考え、計画を立ててあげることが大切です。

犬の不妊(避妊)手術のメリット

次に女の子の不妊(避妊)手術におけるメリットをお伝えします。

去勢手術と同様に、病気の予防に役立つことが大きなメリットです。

病気を予防できる

避妊手術で最大のメリットは、女の子特有の病気を予防できることです。具体的には以下の病気です。

乳腺腫瘍(にゅうせんしゅよう)乳腺にできる腫瘍でしこりができる。
子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)子宮内部に膿が溜まる病気。
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)卵巣内に液体が溜まる状態。

いずれも成長に伴って発症率が高くなり、症状が進行すると命に関わる危険な病気です。

避妊手術をすることによって予防に繋げることが期待できます。

発情期のストレスを軽減できる

発情期は「食欲低下、落ち着きがなくなる、元気がなくなる」といった不安定な様子が見られ、普段よりストレスを感じやすくなります。

また、大声で吠えることもあり、しつけでコントロールできなければ近所トラブルに発展することもあるでしょう。

避妊手術をすることで愛犬のストレスを軽減でき、穏やかな状態でお世話できるようになることが期待できます。

望まない妊娠を防げる

多頭飼いの家庭で去勢・妊娠手術をしていない犬がいる場合、妊娠する確率は非常に高くなります。

また発情期にお散歩をさせると、去勢していない男の子が興味を示して近づいてくることが増え、妊娠やケガをしてしまうこともあり得ます。

また、発情期はドッグランの使用を禁止しているところがほとんどで、公共の場に連れて行くこともマナー違反になります。

愛犬や日々の生活の事を考えて避妊手術を検討することが大切です。

偽妊娠を防げる

偽妊娠は、妊娠していないのに巣作り行動をしたり乳腺や腹部が腫れたりして、妊娠しているような状態になること。

食欲低下を起こすなど、体調不良に繋がるケースも珍しくありません。

偽妊娠で愛犬につらい思いをさせないためにも、避妊手術は効果的と言えます。

犬の不妊(避妊)手術のデメリット

ポメラニアン

不妊(避妊)手術には以下のようなデメリットが考えられます。

メリットと併せて考慮したうえで判断するようにしましょう。

全身麻酔によるリスクがある

手術をする前は術前検査で問題ないことを確認したうえで安全性の高い麻酔を使用し、術中は麻酔のコントロールをしながらできるだけ負担がかからないように管理されます。

動物病院でも細心の注意を払って手術が行われますが、犬によっては副作用が起こることも考えられます。

完全にリスクを回避することは難しいため、医師に避妊手術の説明をしっかりと聞いてから決めるようにしましょう。

太りやすくなる

避妊手術をすると太りやすくなる傾向があります。

性ホルモンが減少して基礎代謝が下がる一方で、食欲を抑える作用があるエストロゲンが減少して食欲が増すからです。

そのため、飼い主さんが愛犬の体重をコントロールしてあげることが必須になります。

状況を見ながらフードを見直すようにしましょう。

尿失禁になる可能性がある

尿失禁は尿道括約筋の緊張が緩んでおしっこを漏らしてしまう症状のこと。

避妊手術をすると、性ホルモンの減少の影響で尿失禁を引き起こす可能性があります。

手術後ではなく数年経ってから発症し、特に大型犬に多く見られると言われています。

尿失禁を引き起こす割合は低いとされていますが、症状が疑われる場合は獣医師に相談しましょう。

妊娠・出産が望めなくなる

避妊手術は生殖器を摘出するため、妊娠することはできなくなります。

手術後に再度妊娠できるようにすることは不可能で、愛犬の子供が欲しいと思ってもその願いは叶いません。

将来的に愛犬の妊娠・出産を希望するのであれば、飼い主が計画を立て避妊手術をする時期なども考えましょう。

犬の去勢・不妊(避妊)手術の推奨タイミング

去勢・不妊(避妊)手術は、いつ行わなければいけないという明確な決まりはありません。

ここでは、一般的に推奨されている時期や成犬後に手術するリスクについて解説します。

去勢・不妊(避妊)手術は生後6か月前後が望ましい

去勢・不妊(避妊)手術は性成熟する前が良いとされています。

個体差があるものの生後1年以内には性成熟を迎えるので、一般的には生後6~8か月頃に手術を行うことが多いようです。獣医師によっては、もっと早い段階で手術をすすめることも。

女の子の場合、生後初めての発情期前に避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発症率を飛躍的に下げることが期待できます。

ただし、最近発表された海外の論文によると、11か月未満の避妊において「関節炎のリスクが上がる」ことや「尿失禁も2~3%起こる」という報告もあります。

このことから、生後12か月以上の避妊を推奨する、という判断も出てきています。

海外の場合は大型犬が多く日本の場合は小型犬が多いため、データをそのまま信用すべきか、という点についてもまだまだ議論が深まるところ。

愛犬にとっての最良の時期は実際にかかりつけの獣医師に診てもらって、相談しながら決めるのがいいでしょう。

成犬後でも手術できるけどリスクを伴うことも

去勢・避妊は生涯するつもりはなかったけど、病気などによって手術せざるを得なくなることは往々にしてあります。

去勢・避妊手術は愛犬が何歳になっても受けさせられるので、成犬後でも手術することは可能です。

しかし、高齢犬の場合は若い犬に比べて麻酔による体への負担が非常に大きく、その分リスクも高くなる傾向に。

場合によっては麻酔から覚めるのに時間がかかったり、持病が悪化することも十分に考えられます。

成犬でもできるだけ早く手術するのが望ましいですが、特に高齢犬で去勢・避妊手術をする場合は、かかりつけの獣医師としっかり相談してから検討するようにしましょう。

犬の去勢・不妊(避妊)手術をする動物病院の探し方

去勢・避妊手術はかかりつけの動物病院で施術してもらうケースが多いですが、中には病院に行ったことがなく、どこの病院に行ったらいいのかわからないという方もいるでしょう。

まずは、足を運べる近隣の動物病院をいくつかピックアップして以下の情報収集してみてください。

  • 自宅からの距離(緊急時を考慮して車で10~20分が理想)
  • 獣医師やスタッフはどんな人が在籍しているのか
  • 病院の規模や設備の充実さ
  • 利用者の口コミや評判

犬を飼っている知人がいるのであれば、どこの動物病院に通っているのか聞いてみるのもいいでしょう。

去勢・避妊はほかの病気と比べると比較的容易と言われている手術ですが、それでも大切な愛犬の体にメスを入れる以上、病院選びは慎重に行いたいところ。

飼い主さんとしっかりコミュニケーションが取れる、相性のいい動物病院を見つけましょう!

犬の去勢・不妊(避妊)手術にかかる費用

去勢手術と不妊(避妊)手術では、必要な工程が異なるため、費用も異なります。

去勢手術費用
小型犬約15,000~30,000円
中型犬約15,000~30,000円
大型犬約30,000円~40,000円
不妊(避妊)手術費用
小型犬約30,000円〜60,000円
中型犬約30,000円〜60,000円
大型犬約60,000円〜80,000円

一般的には犬の去勢・不妊(避妊)手術費用は上記のようになり、体の大きさによって料金の幅が見られ、大型犬は小型犬よりも2倍前後の費用が必要になります。

  • 麻酔
  • 処置
  • 抜糸
  • 診察

また、基本的には上記の内容が手術費用に含まれていることがほとんどですが、動物病院によって料金は異なるため目安として把握しておくといいでしょう。

手術費のほかにもプラスで料金が必要

動物病院によっては去勢・避妊手術費のほかに、以下の料金が必要になることもあります。

  • 事前検査
  • 潜在精巣の摘出
  • 縫合方法の変更
  • エリザベスカラー、術後服
  • 追加入院
  • 乳歯抜歯 など

それぞれ動物病院ごとに料金は異なりますので事前に確認しておきましょう。

あらかじめ、動物病院で去勢・避妊手術にかかる総額はいくらなのかを聞いておけば、後に「追加で料金が必要なんて知らなかった」といったことを防げますよ。

ペット保険は対象外で基本は全額自己負担

今では多くの人がペット保険に加入していますが、去勢・避妊手術に保険は適用されないことがほとんどです。

ペット保険は、病気やケガで病院にかかった場合、治療費の一部を補償してくれる保険のこと。

去勢・不妊(避妊)手術は飼い主さんが任意で行うもので、病気による治療ではないことからペット保険対象外なのです。

ただし、病気が原因で去勢・避妊手術をしなければいけなくなった場合は、保険が適用されることもあります。

基本的に全額自己負担となるので、事前に費用を準備しておくようにしましょう。

自治体によっては助成金が出ることも

地域によっては去勢・不妊(避妊)手術の補助金制度を実施している自治体があります。

費用の一部、または全額を負担してくれる制度で、捨て犬や捨て猫問題の対策として導入されています。

自治体によって条件や補助金額は変わってきますが、お住いの地域に補助金制度があるか確認してみるといいでしょう。

千葉県香取市

対象狂犬病予防接種が済んでいる香取市在住の方、市税等の滞納が無い飼い主
去勢手術の助成額5,000円
不妊(避妊)手術の助成額5,000円
出典:犬猫の不妊及び去勢手術補助金

茨城県つくば市

対象つくば市内に居住し、つくば市に住民票を登録されている方
去勢手術の助成額3,000円
不妊(避妊)手術の助成額4,000円
出典:犬・猫の補助事業

愛知県名古屋市

対象狂犬病予防接種が済んでいる名古屋市在住の方で、名古屋市内で犬を所有している方
去勢手術の助成額名古屋市から1,600円+公益社団法人名古屋市獣医師会から3,200円
不妊(避妊)手術の助成額名古屋市から3,200円+公益社団法人名古屋市獣医師会から6,400円
出典:犬・猫の避妊・去勢手術の補助について

犬の去勢・不妊(避妊)手術の流れ

去勢・不妊(避妊)は安全に手術を進めるために、事前に身体検査を行って問題なければ手術を施します。

基本的には当日から絶食絶飲となりますが、病院によっては指定された食事のみ与えていい場合があります。

術前検査

去勢・不妊(避妊)手術は、ほとんどの場合で全身麻酔を行うことから術前検査を実施します。

麻酔は各犬によって処置が異なってくるため、細かくチェックが行われるのです。

身体検査や血液検査、レントゲン検査などを行い、「犬に危険がないか、麻酔に耐えられるか」を総合的に判断します。

万が一、病気が見つかった場合は手術が延期されたり中止になることもあります。

手術

術前検査で問題なければ手術を行います。

まず足の毛を少し剃毛後、血管に柔らかい針を入れて点滴や抗菌薬、鎮痛剤などを先行投与します。

麻酔導入薬を投与して完全に効いたら、呼吸を確保するために挿管して気道を確保。吸入麻酔薬で麻酔を維持します。

去勢手術は施術範囲を剃毛・消毒後、包皮と陰嚢の間を約1~1.5cm切開して、精巣がおさまっている睾丸2つを摘出。皮膚を縫合して終了です。

不妊(避妊)手術は施術範囲を剃毛・消毒後、おへその下辺り約2~3cmほど切開し、お腹の筋肉も切開して卵巣のみ、または卵巣と子宮を摘出。筋肉と皮膚を縫合して終了です。

目安時間は、去勢手術は約30分~40分、避妊手術は約1時間~1時間半ほどかかります。

手術後

麻酔から目覚めたら、自立歩行できるようになるまで手術部位の確認や体調管理を行います。

一般的には、去勢の場合は当日にお迎えでき、避妊手術の場合は動物病院で1泊することが多いです。

退院後は傷口を舐めないように、エリザベスカラーや術後服を着せて自宅で過ごすことをすすめられます。

犬の去勢・不妊(避妊)手術後に注意するべきこと

去勢・避妊手術が終わったら、数日間は飼い主さんが経過を見てあげる必要があります。

管理を怠ると思わぬ事故に繋がる恐れもあるので、しっかりと様子を確認しながらケアしてあげましょう。

術後に獣医師さんから連絡が来たら、なるべく早く迎えに行く

手術が終わったら、もう大丈夫なので迎えに来てくだい。と獣医師さんから連絡が来ると思います。

去勢・不妊(避妊)手術は子犬期のころに行うことが多いかと思います。

特に女の子の場合は一泊するのが通常ですので、慣れない場所でストレスや不安を抱えていることも多いです。

そのため連絡が来たらなるべく早く迎えに行ってあげて、愛犬を安心させてあげてください。

傷口を舐めないように保護具を着用させる

去勢・避妊手術後は、傷口による痛みや違和感が気になって舐めようとします。

舐めると傷口が広がったり化膿して、回復が遅くなる原因になります。

エリザベスカラーや体をすっぽり覆う術後服を着せるなどして、愛犬が傷口を舐めないように飼い主さんが対策してあげましょう。

犬用の術後ウェア(エリザベスウェア)

最近では男の子でも女の子でも術後ウェア(エリザベスウェア)を着ることが多くなっています。

おしっこやうんちもできるようになっていて機能的ですし、行動が制限されづらいので安心。日頃から服を着ることに慣れている子なら、嫌がらずに着てくれるでしょう。

エリザベスカラーを怖がる子もいるので、服を着るのに抵抗がない子は、術後ウェアの方が普段の生活がしやすくおすすめです。

術後にウェアやエリザベスカラーを着せてくれる病院もありますが、もしそうでない場合は用意しておくといいですよ。

過度な散歩や運動は控えて安静にし、体調を管理する

退院後は静かに休ませてあげましょう。

特に男の子の場合は、手術後当日に退院することが多いため当日はとても痛がります。

男の子も女の子も退院から2日ほどで回復し始め元気になりますが、運動をさせる目的で散歩したり、室内でおもちゃを使って激しく体を動かすことは、傷口が広がる原因になるので避けましょう。

ドッグランも走ったり、ほかの犬がいることで興奮して動きが激しくなることがあるのでNGです。

抜糸が終わるまではできるだけ安静に過ごして、愛犬の体調を観察してあげてください。

食事やトイレで保護具が邪魔なら一旦外す

先ほど、傷口を舐めないようにエリザベスカラーや体を覆う保護具を着用するようお伝えしました。

しかしエリザベスカラーの場合は、食事やトイレのときにカラーが壁や地面に当たって邪魔になることがあり、それがストレスになることもあります。

うまく食事やトイレができないようであれば、そのときだけ外し構いません

ただし、外しているときに傷口を舐めてしまう恐れがあるので、絶対に目を離さないようにしてください。

抜糸まで飼い主さんは愛犬の傷口に触れないようにする

飼い主さんが愛犬を抱っこする際に、誤って傷口を触ってしまうことで痛みや炎症を起こすこともあります。

触れないようにすることはもちろんのこと、強く擦ったりしないように注意しましょう。

また、傷口を水で濡らすことも負担を与えることになるので、自宅やトリミングサロンでシャンプーすることも避けてください。

愛犬の様子がおかしければすぐ動物病院に相談を

愛犬が必要以上に傷口を気にしていたり、痛がっている様子があると飼い主さんも不安になると思います。

数日経っても痛みが引かない場合や、少しでも様子がおかしいと感じたら、すぐ動物病院に行って相談してください。

万が一のことがあってからでは遅いので、自己判断ではなく獣医師の判断を仰ぎましょう。

犬の去勢・不妊(避妊)手術は愛犬の将来を考えて検討しよう

去勢・不妊(避妊)手術をすることは可愛そうに感じたり、不安に思うこともあるかと思います。

しかし、手術は愛犬が将来発症する可能性のある病気を予防できたり、ストレス軽減や問題行動の改善に大きく役立ちます。

愛犬が幸せに生きていくために手術は必要かどうか、飼い主さんがお世話をしていく環境を含めて判断してあげましょう。

この記事の執筆者・監修者

石村 拓也

監修者情報

石村 拓也

シリウス犬猫病院院長

東京農工大学農学部獣医学科を卒業後、横浜市内動物病院にて2年、赤塚犬猫病院にて6年勤務。
2017年3月、東急東横線元住吉駅から徒歩2分の場所にシリウス犬猫病院を開業。
皮膚科や耳科の症例に精通している為、難治性の疾患を抱える患者さんが遠方からでも来院するほど。

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