犬は人間と違って話すことができません。だからこそ、愛犬が咳をしていると、その咳が生理現象で心配のないものなのか、何かの病気が隠れているのか…心配になりますよね。
様子を見ていいものもあれば、緊急を要する咳をしている場合もありますので、事前に把握しておくと安心です。
最終判断は専門家である獣医師の指示を仰ぐ必要はあるものの、まずは動物病院に連れて行くべきかどうか、適切な判断が必要。
今回は犬の咳の原因やその対処法、病院への受診の目安などをわかりやすく解説しています。
この記事の結論
- 犬が咳をする原因は生理現象のほかに、病気の症状である場合もある
- 生理現象による犬の咳は、生活環境を整えることで予防できる
- 病気やケガによる咳は、定期的なワクチン接種や投薬で予防できる
- 愛犬が少しでも異常な咳をしていると感じたら、迷わず動物病院へ
獣医師
ライター
学生時代には、ブリーダーさんのもとでアルバイトの経験し、3年前に17歳の愛犬を見送り、現在は5ヶ月のチワワと暮らしています。
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目次
犬が咳をする原因とは?
犬が咳をする原因は、主に生理的な現象で咳をしている場合と、何らかの疾患が潜んでいる場合があります。
咳の種類にもいくつかありますが、どちらの場合でもわかりやすい咳をしていることが多いです。
人間の場合、咳ぐらいではそこまで深く考えることもありませんが、犬の場合には危険なケースも多くあります。
適切に判断して動物病院を受診する、というのが大切なので、愛犬の健康のためにもぜひ知っておいてください。
また、咳ではなく”くしゃみ”である場合もあるので、その見分け方もみていきましょう。
生理現象による咳
「ケホッ」「カハッ」という乾いた咳の場合、生理現象による咳であることが多いです。
ほこりや冷たい空気を急に吸い込んでしまったときや、興奮しているとき、リードを引っ張った時、ご飯やお水を飲んでいるときなどに出る咳は生理現象によるものがほとんどです。
お散歩のときはリードを引っ張りすぎないように、なるべく自分の横を歩かせるようにしましょう。
また、ご飯やお水を急いで食べたり飲んだりすると気管に入りやすくなります。
急いで食べる癖がついている場合は、少しずつ回数をわけてあげるなどの工夫をしましょう。
上向きに水を飲むことも気管に入りやすい原因になるので、給水ボトルではなくお水用の器を床に置いて上げるのも対処法のひとつです。
ただし、咳がすぐに治まらない場合や頻繁である場合は病気の症状である可能性も考えられるので注意が必要です。
病気やケガによる咳
犬の咳には人間同様、病気やケガが原因となっている場合もあります。
胸部や首のケガが咳を引き起こすこともあるので、ただの咳だからといって安易に判断してしまうのは危険なのです。
病気が原因の咳の場合、生理現象などの一過性とは違い、すぐに治まらないのが一般的。
寝ているときなどの安静時に急に咳をしだしたりする場合は、特に注意が必要です。
1日を通して頻繁に咳をしている場合も病気が原因の可能性があります。
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咳とくしゃみの見分け方
咳と似ている症状にくしゃみがあります。咳もくしゃみもどちらも、気道内に入った異物や分泌液を外に出そうとする反射行動です。
咳には色々な原因があり、中には疾患の症状として出ていることもあります。
しかし、咳とくしゃみはよく似ているので、なかなか見分けるのが難しいですよね。とても似ていますが、わかりやすい見分け方があります。それは口を開けているかどうかです。
口を閉じていればくしゃみ、口が開いていれば咳になります。
愛犬にこのような症状が出ている場合は口を開けているかどうか、注意して観察しましょう。
犬の咳から考えられる病気
病気の症状のひとつとして咳がでることがあります。
犬の咳から考えられる病気には、ケンネルコフ、気管虚脱、肺炎、喘息、僧帽弁閉鎖不全症やフィラリア症、異物誤飲などがあります。
人間の咳なら「風邪薬を飲んでおけばいいか」と思うかもしれませんが、犬の場合は危険なケースもあり得ます。
ケンネルコフ
ケンネルコフは、マイコプラズマなどのウイルスや細菌が原因の犬の呼吸器感染症です。犬伝染性気管気管支炎とも言われています。
犬が密集した場所や他の犬と接触する環境で感染しやすい病気です。
特に子犬は感染しやすく、乾いた咳や発熱、鼻水など風邪のような症状が特徴です。免疫力の低い子犬や高齢犬では重症化して肺炎に進展することも。
直接的な原因はウィルスによる感染ですが、環境の変化などによるストレスが引き金になる場合も多く、新しく家族に迎えたばかりの子犬がなりやすい病気だと言われています。
ワクチン接種などで完全な予防対策をすることが難しいため、症状がみられたら早めに動物病院を受診しましょう。
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気管虚脱
ポメラニアン、トイ・プードル、チワワなどの小型犬や、鼻の低いパグやシー・ズー、ペキニーズなどの短頭種に多い病気のひとつが気管虚脱です。
気管がつぶれ、粘膜が擦れることで乾いた咳が続き、「ガーガー」とアヒルの鳴き声のような呼吸が出ます。
気管虚脱の咳は発作的で、繰り返し起こります。喘息のような咳で、発情期や興奮したり、アレルギーによって悪化することも。
犬がリードを引っ張られると悪化することがあるので、ハーネスに変えるなどの対策をとりましょう。
ハーネスも紐だけのタイプではなく、食い込みにくく脱げにくいベスト型が望ましいです。
また肥満であることが発症する確率をあげてしまうので、体重管理はしっかりとすることが求められます。
自己判断でご飯を減らしてしまうと、栄養が足りなくなることもあるので獣医師の判断に従いましょう。
気管虚脱を起こしている場合は、気管支炎や心臓病も併発していることが統計上では多いので注意が必要です。
治療では体重管理や薬物療法があり、重症例では手術がすすめられることも。
早期発見のため、愛犬の様子をしっかり観察し、気になることがあれば速やかに獣医さんに相談しましょう。
肺炎
犬の肺炎は細菌やウイルスの呼吸器感染、寄生虫感染、誤嚥が原因で起こります。
咳、くしゃみ、呼吸困難、発熱や食欲不振などの症状があらわれます。
肺に炎症が起こると、呼吸が浅く早くなり、酸素を体内に取り込むことが難しくなります。そのため、点滴や酸素室での治療が必要な場合も。
子犬や老犬は飲み込む力が弱く、ご飯や水が気管に入って誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こしやすいので、食事の時やお水を飲んでいる時など注意して見守ってあげましょう。
ご飯を食べやすい大きさに砕いてあげたり、柔らかくしてあげることも場合によっては必要になります。
肺炎の原因となる感染症などは、混合ワクチンの接種により予防することができます。
喘息
犬の喘息は人間と同じく慢性の呼吸器疾患です。何らかの原因で気管支が突然収縮し、発作的な呼吸困難や咳を発症します。
気管支炎と似ていますが、喘息は一時的に気管支が収縮しても、30分ほどで元の状態に戻ることが多いのが気管支炎との違いです。
喘息を引き起こす要因として多いのは、冷たい外気、煙、ほこり、ストレス、不安、運動などです。
犬の喘息ではアレルギー性喘息が多く、アトピー型喘息とも呼ばれることも。これは人間のアレルギー性喘息と同じで、何がアレルギーの原因となるのかはその犬によって違います。
場合によってはアレルギー検査をする必要もあります。アレルゲンとして考えられるものを直接、少量注射をして反応を見る方法もありますが、傷みやアレルギー反応が重篤な場合は危険も伴います。
現在は採血のみで検査することができる方法が一般的です。何度も採血するのが可哀想であれば、健康診断やフィラリアの検査の採血時などに一緒に検査することも可能です。
治療法も人間とほぼ一緒で、咳止め薬や気管支拡張薬で症状の緩和を目指します。
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僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)は、心臓の僧帽弁が適切に閉まらず、血液が逆流する心臓病の症状です。
一番多く発症するのはシニア期で、僧帽弁が閉まらないことで心臓に余計な負担がかかり、息切れや疲労感といった症状が見られることがあります。
先天性な要因や加齢によるものだと考えられていますが、はっきりした原因は今のところわかっていません。
超音波検査で診断し、薬物療法で治療したり、症状によっては手術が検討されることもあります。
フィラリア症
フィラリア症が原因で咳が出ることがあります。
犬糸状虫とも呼ばれるフィラリアは、蚊に刺されることで感染する病気です。体内に入って成長したフィラリアは肺動脈や心臓に寄生します。
感染初期は無症状であることが多く、なかなか初期段階では検査以外で気づくことができません。
軽い咳をするようになり、毛艶が悪くなり栄養状態も悪くなります。そして元気や食欲がなくなり、やせ衰えていきます。
失神することもあり、腹水が溜まったり咳に血が混ざることも。
フィラリア症は放置すると命にかかわる危険な病気ですが、100%予防できる病気です。
毎年蚊の発生する時期に合わせて事前検査を行ったうえで、5月頃~11月下旬まで月に1回、予防薬を飲ませることで予防が可能です。
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異物誤飲
異物の誤飲でも咳が出ることも。消化できないものや溶けないものを間違って飲み込んでしまったときに、喉に異物が詰まっているために咳がでることがあります。
異物誤飲では咳の他にもさまざまな症状が見られます。
- よだれが出る
- 嘔吐や呼吸が荒かったり
- ゲップ
- 下痢
- 落ち着かずウロウロする
- ぐったりする
誤飲は中毒症状や腸捻転などの原因になることもあるので注意が必要です。
誤飲したら困るものは片付け、万が一のことも考えて「食べてはいけない」ということも教えていきましょう。
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犬の生理現象による咳の対処法・予防
生理現象で起こる咳の場合、事前に対策することができます。
ちょっとした対策で予防することができるものなので、ぜひ覚えておいてください。
湿度は50~60%を保つ
人間と同じで乾いた空気を吸うと咳き込むことがあるので、室内の湿度には気をつけましょう。
理想の湿度は50~60%と言われているので、50%以下にならないように湿度計を置いたり、乾燥する季節には加湿器などで管理することで咳を予防することができます。
適度な湿度を保つことで、愛犬が部屋の中を走り回ってもほこりが舞いにくくなります。
ほこりでも咳を誘発するので、こまめな掃除を心がけましょう。
また、湿度が高すぎてもカビやダニが増殖しやすくなるため、適切な湿度管理が大切です。
毛布やベッドは定期的に洗う
ほこりの原因になる毛布なども、こまめに洗うことも必要です。犬用ベッドなども洗えるものを選ぶと、お手入れしやすいですね。
手洗いでも出来たほうが良いですが、洗濯機で丸洗いできるものならばよりお手軽です。
定期的に洗う機会は訪れますので、汚れが見つかったら早めにお洗濯してあげましょう。
週に1回程度は毛布やベッドを洗うぐらいのペースがおすすめです。
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首が絞まらないようなお散歩グッズを選ぶ
首がしまることも咳の原因になります。お散歩のときにぐいぐい先に行くようなタイプの子は首輪ではなく、ハーネスを選びましょう。
ハーネスタイプだと気管を圧迫する心配もありませんが、首輪だと引っ張ったときに首が締まりがちです。
お散歩のときはリードを引っ張りすぎないように、なるべく自分の横を歩かせるようにしてください。
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食事は小分けにする
ごはんやお水を急いで食べたり飲んだりすると気管に入りやすくなります。
急いで食べる癖がついている場合は少しずつ回数をわけて与えるほか、食器の高さを調整してあげるなどの工夫をしましょう。
上向きに水を飲むことも気管に入りやすい原因になるので、給水ボトルではなくお水用の器を床に置いて上げるのも対処法のひとつです。
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犬の病気やケガによる咳の対処法・予防
病気やケガの場合には、それぞれに適した対処法や予防策があるため、ひとえにこれというのはありません。
特に病気に関してはワクチン接種がもっとも効果的ですし、100%でなくともある程度の予防は可能です。
また、できる限り病気やケガをしづらい空間を作る、というのも予防策のひとつになるでしょう。
ワクチン接種や予防薬
フィラリアはワクチン接種や予防薬の投与で、予防することができます。定期的にしっかりと予防接種や投薬を行いましょう。
日頃から愛犬の様子をよく観察しておくことで、早期発見できる病気もあります。
咳の様子をスマートフォンなどで動画を撮影しておくことで、動物病院を受診するときにも症状の説明に役立ちます。
咳の回数や時間帯について、どんなときに咳がでやすいのかなどもメモしておくといいでしょう。
病気が原因でもケガが原因でも、咳がおさまったからといって治療や投薬を途中でやめるのは危険です。必ず獣医師の指示に従ってください。
ケガがないかチェックする
喉の損傷や事故や犬同士のケンカなどで、負った傷が咳を引き起こすこともあります。
ご飯を食べづらそうにしていたり元気がなかったり、水を飲むのに時間がかかったりするなどの兆候がみられることも。
注意深くいつもと違う様子がないか、観察する癖をつけておきましょう。
症状を見て受診する場合はまず病院へ電話をして、どんな症状なのかいつから症状が出たのかを簡潔に伝えておきましょう。
併発している症状には要注意
咳だけではなく、他の症状がある場合も全て伝えるようにしましょう。
一見無関係に思えることでも、疾患特定の材料になることもあります。
咳に加えて鼻水や鼻詰まり、皮膚・被毛の変化や排泄物の変化など、思い当たる節があれば必ず伝えておきましょう。
病院へ行く際にも安静に
連れて行く際は、なるべく安静な状態で連れて行くことが望ましいです。
急いで受診したい気持ちもわかりますが、抱えて走ったりすると振動が刺激になったり、肺や気道を圧迫する原因になってしまいます。
横になったまま、揺らさずに移動できるようなカートを万が一に備えて用意しておくことも、事前にできる対処法のひとつです。
また、誤飲が原因だとわかっている場合でも勝手な判断で取り出そうと背中を叩いたり、逆さまにしたりするのはやめましょう。
誤飲だと確信できる場合は、電話の際に獣医師の判断を仰ぎましょう。
愛犬が咳をするときの病院受診目安
愛犬が咳をしているとき、病気が原因なのか生理現象による一過性のものなのか、見極めるのはなかなか難しいですよね。
すぐに受診したほうがいい場合と、様子を見ても大丈夫な場合の受診する目安となる症状やポイントをご紹介します
様子を見て問題ない咳の症状
- 頻度が少ない場合
- すぐにおさまる場合
- 原因がわかっている場合(獣医師の診断・説明を受けている)
このような場合は様子を見ても大丈夫です。
咳の頻度が1日1回程度なら問題ありません。また、遊んだり走ったりして興奮した時に出た咳でも、すぐにおさまって元気な様子なら心配ないでしょう。
飼い主さんが帰宅したときなど、嬉しくてはしゃいだときに出る咳もすぐにおさまる場合は問題ありません。
タバコの煙や香水の香り、花粉など咳をするときに特定の条件がある場合は、それらを避けることで対処することができます。
ただし、頻度が少なかったり、すぐにおさまる場合でも気管や喉に軽い疾患があることもあります。
長期にわたって症状が見られる場合は、病院を受診しましょう。
すぐに動物病院を受診すべき咳の症状
すぐに受診したほうがいい咳の特徴は、下記のとおりです。
- 30分以上続いている
- 呼吸が苦しそう
- ソワソワと落ち着かない様子
- 呼吸が荒い
- 数日で急に回数が増えた
- 食後に激しく咳き込む
- ぐったりしている
- 発熱
- 食欲がない
- 舌や歯茎の色が紫色でチアノーゼを起こしている
- 横になって寝ない
このような症状がみられた場合はすぐに受診しましょう。
肺が圧迫されていると苦しくて、横になって寝ることができません。
夜中に症状が出ることもあるので、自宅付近で救急も受け付けている動物病院を事前にチェックしておくことも大切です。
早めに受診しておきたい咳の症状
救急で受診するほどではありませんが、比較的早めに受診すべき症状もご紹介します。
要注意
- 寝ているときや安静にしている時に出る咳
- 興奮したり、運動したりした時に出て、なかなかおさまらない咳
- 数ヶ月続いている咳
このような咳をしている場合は慢性気管支炎、喘息などの気管支疾患や、心臓病の可能性もあります。
少ししておさまる場合は緊急性が低いものの、診察を受けたほうが安心です。
この記事の執筆者・監修者
ライター
学生時代には、ブリーダーさんのもとでアルバイトをし、3年前に17歳の愛犬を見送り、現在は5ヶ月のチワワと暮らしています。
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nademo編集部
編集部
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